加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護

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58話 友達とのお出かけ *ナナリス視点

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リョウトさんが家庭教師になって、初日の訓練が終わった。
湯船に入ったことで、ようやく今日の疲れが癒やされていく。

「悔しい…こんな気持ち、初めて」

訓練内容自体は、簡単なものだった。
体内で魔力循環しながら、敷地境界線を走る。
3周走って30分休憩、これを3回繰り返しただけ。

リノアが先頭で走ってくれたけど、そのペースは私にとって少し遅く感じたものだった。それなのに…

「たったあれだけの行為で、何でボロボロなの?」
「お嬢様は、体力強化と魔力循環の併用訓練を怠っていたということです。御病気のことを考慮すれば無理もありませんが」

ドアの開く音がしなかった。
そういえば、今日のお風呂お世話係って、タルパのサーシャだったわ。
半透明の彼女が、いつの間にか私のすぐ近くまで来ていた。

「お嬢様。今のあなたは、総合的に見て7歳のあの子たちより弱いです。強くなるためにも、今日の訓練を続けないといけません」

サーシャの言葉が、心に響く。

これまでは魔道具を装備しながら、毎日ジョギングをして、基礎体力を養っていたわ。家庭教師に魔力循環や魔力制御を教えてもらっていたけど、発作が怖くて、運動しながらの訓練なんてしていない。

リョウトさんの言葉が頭に響く。

『日常生活で不器用な人の多くは、魔力制御に不慣れなんだよ。魔法を取り入れた訓練で、複数の動作を同時にこなす時、その不慣れさが顕著に現れる。簡単な言葉で言い換えるなら、君たちが不器用だから、ぶっ倒れたってことだね』

私とルティナは不器用、私自身これまでの生活で気づいていたけど、私とルティナでは、レベルが全然違う。私の場合は[走る][魔力循環]という2つの作業、ルティナは[走る][魔力循環][魔法発動][魔力制御]、最低でも4つの作業を同時にこなして、9周走りきった頃に疲労困憊になって立ち上がれなくなったもの。

「今日、何度も発作を起こしかけて動揺したけど、その度にルティナが解毒と回復魔法を使って助けてくれたわ。私は仲間を信じて、病気の恐怖に負けず、この訓練を乗り越えてみせるわ」

この訓練のおかげで、ルティナとリノアも裏のない明るい女の子たちだとわかったし、お友達にもなれた。この関係を、ずっと継続させたい。

「その意気です」

これから私の先生となるリョウトさん、彼はお茶会に参加した貴族の令嬢令息と違い、嘘を吐かず、私の事情を察してくれたのか、本心で私に語りかけてくれていた。あんなにズケズケ言ってくるのに、私の心は全然傷ついていない。不思議な人…明日以降も来てくれるんだよね。

何故か、楽しんでいる自分がいる。
何でだろ?


○○○


翌朝、私はサーシャと一緒に中庭で待っていると、集合時刻に現れたのはルティナとリノアの2人だけでした。

「あれ? ルティナとリノアだけなの?」
「ナナリスお姉ちゃん、やっぱり疲れで昨日の話を聞いてなかったんだね」
「え?」

どういうこと? あの時、私は地面に倒れたままで、リョウトさんが今日の訓練開始時間を言っていたはず。

「ナナリス様、リョウトさんは午前中、冒険者ギルドに行って、魔法講義を行なっていますので、ここへ来るのは午後からです」

「え!? それだと朝の訓練は?」

そういえば、あの時そんな事を言っていたような? 疲れていたせいで、殆ど聞き流していたのね。

「一応、自由時間なんですけど、『3人は常に魔力循環しながら行動するように』と言われてます。毎日魔力を身体中に循環させることで、魔力伝達が速くなっていき、スキルや魔法の発動するまでの時間が短縮されるそうです。私とルティナは、今の時点でやってます」

魔力循環しながらの行動、身体の負担にならないよう長時間維持させたい。庭周辺を歩き回るだけだと、面白みがないから、集中力も保たない。どうせなら、楽しみながら訓練したいな。

「サーシャ、私たち3人が楽しめながら、魔力循環できる場所ってあるかしら?」

サーシャは私の専属メイド兼護衛でもあるから、彼女の薦める場所なら、お父様も許可を出してくれるはず。

「それなら、[蚤の市]はどうでしょう?」
「「「蚤の市?」」」

初めて聞く言葉だわ。
平民の間では、有名な場所なのかしら?

「月に2日間だけ、神殿内で催されている行事です。丁度、今日から2日続けて開催しているはずです。そこには食べ物・衣服・魔道具・武器・防具などの露店が幾つもあり、大変賑やかで、偶に貴重な掘り出し物も出るそうです」

なにそれ、面白そう!? 
そんな、行事が月に2度も開催されていたの!! 

それに神殿なら馬車を停める場所もあるし、サーシャが一緒に行ってくれるのなら、お父様も許してくれるはずよ。

「先生、武器と防具の店って、普通の店とどう違うの?」
「お兄ちゃんと一緒に、服や武器防具屋に行ったことあるけど、違いがわかんない」

あ、確かに。
私も、わからないわ。

「全てが中古なんですよ。中古品の手入れも店によってバラバラ、見た目だけを新品同然にして、中身がガラクタにしている詐欺店もあれば、全てにおいて超一級の手入れをして、新品同然で販売している店もあります。服などは見た目でわかりやすいですが、武器・防具・魔道具類は、素人が見てもわかりません。全ては、買い手側の目利き次第なんです」

なるほど、皆もそれをわかって購入しているのね。
奥が深いわ。
是非、行ってみたい。

昨日、リョウトさんにリュックサック型の治療用魔道具を修繕し改良してもらっているから、今後はそれを装備し、マスクを予備として持っていれば、私も注目されず、蚤の市を楽しめる。

「なんか面白そう!!」
「うん、これは絶対に行きたい。ナナリス様はどうですか?」

ルティナとリノアも目を輝かせて、ウキウキした気分になっているようね。

「私も、是非行きたいわ。そういえば、2人とも神殿内で開催されている蚤の市をどうして知らないの?」

聖女候補なら、知っていて当然のような気もするけど?

「う~ん、今思い出したけど、聖女様やジェイコブ先生がそんな行事のことを話してくれたような? でも、聖女候補はお祈り、座学、魔法訓練とかで毎日忙しくて、私もリノアも必死に食らいついていくので精一杯、そんな行事なんて忘れてた」

「ルティナと同意見。休みも7日に1度あったけど、頭も身体も疲れて何もしたくなかったから、ルティナと一緒に部屋でぐ~たらしてた」

それってハードスケジュールのような……聖女候補って、貴族令嬢より大変なんだ。

「決まりですね。フレミングス子爵様から許可をもらい、私たちだけで蚤の市に行きましょう」

ルティナとリノアは、私にとって初めてのお友達。
3人で訓練しながら、蚤の市で楽しみましょう。
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