47 / 61
47話 底知れぬ憎悪と欲望
しおりを挟む
2人共、さっきから何も語らず、互いを睨んでいる。
いつまで、この膠着状態は続くんだ?
「フレデリック、そこまでして私の開発した天候魔法を望むのか?」
「ああ。これまで言わなかったが、ヒライデン家こそがあの魔法を持つべきだと思っている」
結局、爺さんだけでなく、元父も天候魔法とやらに魅了された1人じゃないか。
「ならば、自分で開発しろ……と言いたいところだが、お前にチャンスをやろう」
「チャンスだと?」
元父は怪訝な顔で、アランさんを見る。
「今から、私と勝負をしよう。これに勝てば、お前の頭の中には、天候魔法の制御方法が入ることになる」
アランさん、どんな勝負を仕掛ける気なんだ?
「負ければ?」
「私がフレデリックとなり、君の意志は消滅する。いわゆる、タルパ特有の乗っ取りというやつだ。私の意志に勝てば、私が消滅し、君は今の私の魔力と天候魔法の制御方法を入手できる。悪い話じゃないだろう?」
乗っ取りには、そんな効果も隠されていたのか。
アランさんが勝てば、情報が引き継がれ、元父の身体へと宿すことが可能となり、フレデリック・ヒライデンとして生きていける。天候魔法を発表して、ヒライデン伯爵家を繁栄させるもよし、自分の正体を打ち明け、家族を殺めた関係者全員に対して復讐するも良しだ。
ヒライデン伯爵が勝てば、アランさんの全てを自分のものにでき、天候魔法の真髄を知識と魔法の両方で取得できるわけだ。
天候魔法に魅了されている以上、元父はこの勝負を飲まざるをえない。ただ、乗っ取りにおいて、重要なのは魔力量ではなく、目的を達成させるための信念の強さにある。どちらの意志が強いのか、僕的にはアランさんだと思う。
「その勝負を受けよう」
ヒライデン伯爵が勝負を飲んだことで、どちらも険しい顔となるも、アランさんがふと僕の方を見る。
「リョウト君、一ついいかね?」
「はい、何でしょう?」
ラリマンド伯爵からの質問、受けて立ちましょう。
「君は、この男の元息子だ。父が殺されるかもしれないのに、どうして私に何も言わないんだい? そもそも、今の時点で何故平然としていられるのかね?」
なんだ、そんな事か。
「そんなの決まってるでしょう? 生物学上、この方は僕の父親で間違いありませんけど、僕自身が父、母、兄、祖父母たちを他人と思っているんですよ。物心がついて以降、僕は人に愛されたことがありません。全員が僕に対して、ヒライデン家を繁栄させるための人形として、これまで厳しい教育を施してきた。そこに、愛情など皆無でした」
アランさんは、気の毒そうな顔で僕を見る。
「フレデリック、君は自分の身に起きたことを、子供達にもしていたのか? その行為が、どれほど悲しいことかを知っているだろうに」
それは、初耳だ。
元父も、祖父母に愛されていなかったのか。
「家に役立つ者には、愛を与えていた。だが、リョウトは違う。5歳以降、我々を散々期待させておいて、魔法を一つも習得できなかった愚か者だ。そんな愚者に、愛など必要ない!! 甘やかせば勘違いし、努力を怠るからな」
元父は家の役に立てる力があるのに、両親から愛されていなかった。その過ちを犯さないために、早い段階から家の役に立てるとわかっていた兄だけに愛を与え、役に立てるか不明な僕に対しては、愛を与えなかったのかよ。
「愚かなことを」
同意見です。
「なんとでも言え。伝統ある我が家に、愚者はいらん。だが、今のリョウトならば、家の役に立つか」
全然、嬉しくないお言葉をありがとう。
そして、僕を利用する気満々の発言をありがとう。
「続きを言わせてもらいます。この方は、僕にとって他人同然なんですよ。故に、僕が家に戻ることは、未来永劫ありえません。元父がこの戦いに勝利し、僕を家に連れ戻そうとしても、全力で抵抗します」
正直、どちらが勝つのかは薄々わかっているけど、あえて口にはしない。
「無駄な足掻きだ。私が勝てば、絶大な力を入手できる。貴様をヒライデン家の奴隷にして、そのギフトを有効利用させてもらおう」
欲望丸出しじゃないか、爺さんとよく似ている。
「リョウト君、私が勝利した場合、君は何を望む?」
アランさんは僕の力を知っているせいか、勝利後の事を気にかけている。
「特に、何も望みませんよ。強いて言うなら、僕や仲間たちに関わらないで欲しいですね」
勝利すれば、アランさんがフレデリック・ヒライデンとなるのだから、関わってくると色々と面倒な事態が起きるからね。
「了解した。フレデリック、貴様を殺し、その身体をもらうぞ」
「アラン……お前を殺して天候魔法を戴く」
さっきまで言い訳とかして狼狽えていたけど、天候魔法を余程欲しいのか、ヒライデン伯爵も覚悟を決めた顔つきとなっている。タルパが乗っ取り行為を行う際、相手の身体の中に入らないといけない。
アランさんが宙に浮き、狙いを定め、ヒライデン伯爵の心臓目掛けて突進する。伯爵は彼を受け入れると、部屋中に轟かせるほどの大声をあげる。
魂と魂の衝突、この戦いは身体の中で行われるので、外の世界に影響しない。互いを食い合い、勝者が敗者の魂を吸収し、身体の主人となる。ヒライデン伯爵は突っ立ったまま微動だにしないけど、今その内部では激しく戦いが繰り広げられているはずだ。
[家族を殺された恨み]VS[天候魔法を欲する欲望]。
さあ、どちらが勝つかな?
いつまで、この膠着状態は続くんだ?
「フレデリック、そこまでして私の開発した天候魔法を望むのか?」
「ああ。これまで言わなかったが、ヒライデン家こそがあの魔法を持つべきだと思っている」
結局、爺さんだけでなく、元父も天候魔法とやらに魅了された1人じゃないか。
「ならば、自分で開発しろ……と言いたいところだが、お前にチャンスをやろう」
「チャンスだと?」
元父は怪訝な顔で、アランさんを見る。
「今から、私と勝負をしよう。これに勝てば、お前の頭の中には、天候魔法の制御方法が入ることになる」
アランさん、どんな勝負を仕掛ける気なんだ?
「負ければ?」
「私がフレデリックとなり、君の意志は消滅する。いわゆる、タルパ特有の乗っ取りというやつだ。私の意志に勝てば、私が消滅し、君は今の私の魔力と天候魔法の制御方法を入手できる。悪い話じゃないだろう?」
乗っ取りには、そんな効果も隠されていたのか。
アランさんが勝てば、情報が引き継がれ、元父の身体へと宿すことが可能となり、フレデリック・ヒライデンとして生きていける。天候魔法を発表して、ヒライデン伯爵家を繁栄させるもよし、自分の正体を打ち明け、家族を殺めた関係者全員に対して復讐するも良しだ。
ヒライデン伯爵が勝てば、アランさんの全てを自分のものにでき、天候魔法の真髄を知識と魔法の両方で取得できるわけだ。
天候魔法に魅了されている以上、元父はこの勝負を飲まざるをえない。ただ、乗っ取りにおいて、重要なのは魔力量ではなく、目的を達成させるための信念の強さにある。どちらの意志が強いのか、僕的にはアランさんだと思う。
「その勝負を受けよう」
ヒライデン伯爵が勝負を飲んだことで、どちらも険しい顔となるも、アランさんがふと僕の方を見る。
「リョウト君、一ついいかね?」
「はい、何でしょう?」
ラリマンド伯爵からの質問、受けて立ちましょう。
「君は、この男の元息子だ。父が殺されるかもしれないのに、どうして私に何も言わないんだい? そもそも、今の時点で何故平然としていられるのかね?」
なんだ、そんな事か。
「そんなの決まってるでしょう? 生物学上、この方は僕の父親で間違いありませんけど、僕自身が父、母、兄、祖父母たちを他人と思っているんですよ。物心がついて以降、僕は人に愛されたことがありません。全員が僕に対して、ヒライデン家を繁栄させるための人形として、これまで厳しい教育を施してきた。そこに、愛情など皆無でした」
アランさんは、気の毒そうな顔で僕を見る。
「フレデリック、君は自分の身に起きたことを、子供達にもしていたのか? その行為が、どれほど悲しいことかを知っているだろうに」
それは、初耳だ。
元父も、祖父母に愛されていなかったのか。
「家に役立つ者には、愛を与えていた。だが、リョウトは違う。5歳以降、我々を散々期待させておいて、魔法を一つも習得できなかった愚か者だ。そんな愚者に、愛など必要ない!! 甘やかせば勘違いし、努力を怠るからな」
元父は家の役に立てる力があるのに、両親から愛されていなかった。その過ちを犯さないために、早い段階から家の役に立てるとわかっていた兄だけに愛を与え、役に立てるか不明な僕に対しては、愛を与えなかったのかよ。
「愚かなことを」
同意見です。
「なんとでも言え。伝統ある我が家に、愚者はいらん。だが、今のリョウトならば、家の役に立つか」
全然、嬉しくないお言葉をありがとう。
そして、僕を利用する気満々の発言をありがとう。
「続きを言わせてもらいます。この方は、僕にとって他人同然なんですよ。故に、僕が家に戻ることは、未来永劫ありえません。元父がこの戦いに勝利し、僕を家に連れ戻そうとしても、全力で抵抗します」
正直、どちらが勝つのかは薄々わかっているけど、あえて口にはしない。
「無駄な足掻きだ。私が勝てば、絶大な力を入手できる。貴様をヒライデン家の奴隷にして、そのギフトを有効利用させてもらおう」
欲望丸出しじゃないか、爺さんとよく似ている。
「リョウト君、私が勝利した場合、君は何を望む?」
アランさんは僕の力を知っているせいか、勝利後の事を気にかけている。
「特に、何も望みませんよ。強いて言うなら、僕や仲間たちに関わらないで欲しいですね」
勝利すれば、アランさんがフレデリック・ヒライデンとなるのだから、関わってくると色々と面倒な事態が起きるからね。
「了解した。フレデリック、貴様を殺し、その身体をもらうぞ」
「アラン……お前を殺して天候魔法を戴く」
さっきまで言い訳とかして狼狽えていたけど、天候魔法を余程欲しいのか、ヒライデン伯爵も覚悟を決めた顔つきとなっている。タルパが乗っ取り行為を行う際、相手の身体の中に入らないといけない。
アランさんが宙に浮き、狙いを定め、ヒライデン伯爵の心臓目掛けて突進する。伯爵は彼を受け入れると、部屋中に轟かせるほどの大声をあげる。
魂と魂の衝突、この戦いは身体の中で行われるので、外の世界に影響しない。互いを食い合い、勝者が敗者の魂を吸収し、身体の主人となる。ヒライデン伯爵は突っ立ったまま微動だにしないけど、今その内部では激しく戦いが繰り広げられているはずだ。
[家族を殺された恨み]VS[天候魔法を欲する欲望]。
さあ、どちらが勝つかな?
36
お気に入りに追加
851
あなたにおすすめの小説
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。
烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。
その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。
「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。
あなたの思うように過ごしていいのよ」
真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。
その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる