42 / 61
42話 ルティナの葛藤
しおりを挟む
*ルティナ視点(2回目のタルパ襲撃直後からのスタートです)
「エリアヒール」
第二陣として出現したタルパが全然減らない!!
倒しても倒しても、次から次へと湧いて出てくる。
私とリノアだけで20体以上討伐したと思うけど、これだけ数が多い場合、皆を操る親玉がいるはずだけど、全然姿を見せてくれない。このままだと、こっちの魔力と体力が尽きちゃうよ。
『ほら、魔力補充だ。自分の体力はヒールで回復するように』
あ、魔力が一気に満タン近くまで回復した!!
『お兄ちゃん、ありがとう!!』
お兄ちゃん、ずっと裏で動きながら私たちを見守ってくれているんだ。
「魔法がどうして使えないのよ!! あなたたち、神官なんだから、私を守りなさいよ!!」
せっかくの気分が台無しだ。
ここから少し離れた位置にいるいるマクレミーサが煩い。
あいつ…魔法が使えないせいで追い詰められたこともあって、リノアにやったような行為を、今度は神官たちにやってる。
マクレミーサのせいで、3人の神官がタルパに憑かれてしまい、仲間割れを起こした。しかも、憑かれた神官全員が攻撃魔法を味方に放とうとして、そこにタルパたちの襲撃も加わってきたから、他の神官たちはタルパもろとも、仲間を殺してしまった。
そのせいで、全員が彼女を見放した。
やっぱり、マクレミーサは最低だ。
「巫山戯るな!! 我が身可愛さのために、我々の仲間を投げ出すような非道な輩など守れるか!! お前は、タルパの親玉と相打ちでもして、ここで死ね。あとは、私たちで説明しておく。それが、一番都合の良い展開だ」
最低だ、この人たちも自分のことしか考えていない。タルパは、そういった負の感情を持つ人々に引き寄せられるせいで、今では全体の7割くらいが神官たちの方に行ってる。
「マクレミーサ、無駄口を叩くのなら邸内に入れ!! お前らが無駄口を叩くせいで、タルパたちがこっちに集まってきているんだぞ!!」
ジェイコブ先生、凄。相手は侯爵令嬢なのに、命令してる。
「うっさいわね!! 入れないから言ってんのよ!! 平民のジェイコブ先生が、私の盾になりなさいよ!!」
精霊様が、中に入れないようにしているんだ。
「君というやつは…」
ジェイコブ先生だけじゃなく、他の神官たちも、マクレミーサの本性を見て絶句してる。ただ、ジェイコブ先生以外の神官たちも屑だ。混乱の中、私たちに鞍替えして、マクレミーサに全責任を負わせようとしてるもん。
「おい、そこの2人、気をつけろ!! タルパが後方から襲ってくるぞ!!」
「ぎゃああ~~」「ぐ!!」
タルパたちが攻撃方法を変えて、普通に相手を殺しにきてる。せっかくジェイコブ先生が声をかけたのに、マクレミーサの方へ意識を向けていたから気づくのに遅れ、お腹を貫かれて絶命した。
「最悪、この役立たず!!」
最悪なのは、マクレミーサだ。神官たちが彼女から離れていくせいで、タルパがあいつの周辺に集まりつつある。変な悲鳴をあげて必死に逃げ回っているけど、あのままだと憑かれるか殺されるのどちらかになる。このまま放置すれば、自滅するのも時間の問題だけど、それでいいのかな?
彼女を見ると、誰も助けてくれないせいで、さっきまでの強がりが消え失せて、泣きながら必死になってタルパから逃げ回ってる。
「ルティナ、変なこと考えてない?」
リノアが、私に話しかけてきた。
「別に…」
動揺して、そっけない返事になった。
「あれは、あの人の自業自得。私を殺し、あなたを欺いたのだから」
「……」
それはわかってるけど、このまま見殺しにしてもいいのかな?
なんだか、胸がモヤモヤする。
あの人は間違いなく私たちの敵だけど、このまま放っておいたら間違いなくタルパに食べられる。
[見殺しにする]、この選択が正しいの?
「ルティナ、危ない!?」
しまった、いつの間にか余所見してた!?
リノアが、私の後方にいるタルパをやっつけてくれた。
「ありがとう、リノア」
そう言うと、リノアは苦笑する。
「もう、あなたの好きにしていいんじゃない?」
「へ?」
突然、何を言ってるの?
「リョウトさんが言ってたよ。『心に迷いがあると、魔法効果も薄くなる』って。エリアヒールの力が、少しずつ低下してる」
「あ……」
私の好きに動いていいのかな?
【悪い人たちであっても死なせたくない】、これが私の本音。
でも、マクレミーサはリノアを殺した。
お兄ちゃんがいなかったら、私も殺されてた。
あんな奴を助ける必要があるの?
でも、彼女の窮地をこの目で確認すると、どうしても助けたいという気持ちが生まれちゃうよ。
「このまま見捨てたら、マクレミーサと同じになっちゃう。それだけは、嫌。でも、彼女を許せない…あいつを殺したいと思う自分がいるの」
「それは、私も同じ気持ちだよ。だったら、聖女様や教皇様に裁いてもらおうよ。あの人たちなら、正しい判断をしてくれる」
「他人任せにしていいの?」
「あいつは光精霊様に嫌われ、もう二度と光と聖魔法を使えない。それが更なる証拠となって、マクレミーサの嘘も完全に暴かれる。今は、それで十分」
リノア…光精霊様、マクレミーサを助けていいですか?
私は顔を見上げ空に祈ると、精霊様が姿を見せてくれた。
『いいよ』
『ルティナなら言うと思った』
『いざとなれば、リョウトが助けてくれる』
『マクレミーサを助けていいよ』
ありがとう、光精霊様。
「助けに行ってくる!!」
「わかった」
私はマクレミーサのいる方へ駆け出す。
「エリアヒール」
第二陣として出現したタルパが全然減らない!!
倒しても倒しても、次から次へと湧いて出てくる。
私とリノアだけで20体以上討伐したと思うけど、これだけ数が多い場合、皆を操る親玉がいるはずだけど、全然姿を見せてくれない。このままだと、こっちの魔力と体力が尽きちゃうよ。
『ほら、魔力補充だ。自分の体力はヒールで回復するように』
あ、魔力が一気に満タン近くまで回復した!!
『お兄ちゃん、ありがとう!!』
お兄ちゃん、ずっと裏で動きながら私たちを見守ってくれているんだ。
「魔法がどうして使えないのよ!! あなたたち、神官なんだから、私を守りなさいよ!!」
せっかくの気分が台無しだ。
ここから少し離れた位置にいるいるマクレミーサが煩い。
あいつ…魔法が使えないせいで追い詰められたこともあって、リノアにやったような行為を、今度は神官たちにやってる。
マクレミーサのせいで、3人の神官がタルパに憑かれてしまい、仲間割れを起こした。しかも、憑かれた神官全員が攻撃魔法を味方に放とうとして、そこにタルパたちの襲撃も加わってきたから、他の神官たちはタルパもろとも、仲間を殺してしまった。
そのせいで、全員が彼女を見放した。
やっぱり、マクレミーサは最低だ。
「巫山戯るな!! 我が身可愛さのために、我々の仲間を投げ出すような非道な輩など守れるか!! お前は、タルパの親玉と相打ちでもして、ここで死ね。あとは、私たちで説明しておく。それが、一番都合の良い展開だ」
最低だ、この人たちも自分のことしか考えていない。タルパは、そういった負の感情を持つ人々に引き寄せられるせいで、今では全体の7割くらいが神官たちの方に行ってる。
「マクレミーサ、無駄口を叩くのなら邸内に入れ!! お前らが無駄口を叩くせいで、タルパたちがこっちに集まってきているんだぞ!!」
ジェイコブ先生、凄。相手は侯爵令嬢なのに、命令してる。
「うっさいわね!! 入れないから言ってんのよ!! 平民のジェイコブ先生が、私の盾になりなさいよ!!」
精霊様が、中に入れないようにしているんだ。
「君というやつは…」
ジェイコブ先生だけじゃなく、他の神官たちも、マクレミーサの本性を見て絶句してる。ただ、ジェイコブ先生以外の神官たちも屑だ。混乱の中、私たちに鞍替えして、マクレミーサに全責任を負わせようとしてるもん。
「おい、そこの2人、気をつけろ!! タルパが後方から襲ってくるぞ!!」
「ぎゃああ~~」「ぐ!!」
タルパたちが攻撃方法を変えて、普通に相手を殺しにきてる。せっかくジェイコブ先生が声をかけたのに、マクレミーサの方へ意識を向けていたから気づくのに遅れ、お腹を貫かれて絶命した。
「最悪、この役立たず!!」
最悪なのは、マクレミーサだ。神官たちが彼女から離れていくせいで、タルパがあいつの周辺に集まりつつある。変な悲鳴をあげて必死に逃げ回っているけど、あのままだと憑かれるか殺されるのどちらかになる。このまま放置すれば、自滅するのも時間の問題だけど、それでいいのかな?
彼女を見ると、誰も助けてくれないせいで、さっきまでの強がりが消え失せて、泣きながら必死になってタルパから逃げ回ってる。
「ルティナ、変なこと考えてない?」
リノアが、私に話しかけてきた。
「別に…」
動揺して、そっけない返事になった。
「あれは、あの人の自業自得。私を殺し、あなたを欺いたのだから」
「……」
それはわかってるけど、このまま見殺しにしてもいいのかな?
なんだか、胸がモヤモヤする。
あの人は間違いなく私たちの敵だけど、このまま放っておいたら間違いなくタルパに食べられる。
[見殺しにする]、この選択が正しいの?
「ルティナ、危ない!?」
しまった、いつの間にか余所見してた!?
リノアが、私の後方にいるタルパをやっつけてくれた。
「ありがとう、リノア」
そう言うと、リノアは苦笑する。
「もう、あなたの好きにしていいんじゃない?」
「へ?」
突然、何を言ってるの?
「リョウトさんが言ってたよ。『心に迷いがあると、魔法効果も薄くなる』って。エリアヒールの力が、少しずつ低下してる」
「あ……」
私の好きに動いていいのかな?
【悪い人たちであっても死なせたくない】、これが私の本音。
でも、マクレミーサはリノアを殺した。
お兄ちゃんがいなかったら、私も殺されてた。
あんな奴を助ける必要があるの?
でも、彼女の窮地をこの目で確認すると、どうしても助けたいという気持ちが生まれちゃうよ。
「このまま見捨てたら、マクレミーサと同じになっちゃう。それだけは、嫌。でも、彼女を許せない…あいつを殺したいと思う自分がいるの」
「それは、私も同じ気持ちだよ。だったら、聖女様や教皇様に裁いてもらおうよ。あの人たちなら、正しい判断をしてくれる」
「他人任せにしていいの?」
「あいつは光精霊様に嫌われ、もう二度と光と聖魔法を使えない。それが更なる証拠となって、マクレミーサの嘘も完全に暴かれる。今は、それで十分」
リノア…光精霊様、マクレミーサを助けていいですか?
私は顔を見上げ空に祈ると、精霊様が姿を見せてくれた。
『いいよ』
『ルティナなら言うと思った』
『いざとなれば、リョウトが助けてくれる』
『マクレミーサを助けていいよ』
ありがとう、光精霊様。
「助けに行ってくる!!」
「わかった」
私はマクレミーサのいる方へ駆け出す。
37
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる