加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護

文字の大きさ
上 下
39 / 61

39話 戸惑うマクレミーサ *リノア視点

しおりを挟む
今のところ、上空から降りてくる人や動物などのタルパの数は13だけど、嫌な予感が消えない。あの雲の中に大量のタルパがいると思うけど、そこから更に高い位置に、何かがいる。タルパとは似て非なるような奇妙な気配だ。

それがなんなのかわからないけど、今はタルパを掃討させることに専念しよう。あの13体以外にももっといるはずだから。

あの神官やマクレミーサと離れた事で、ルティナとの打ち合わせも済んでる。ルティナは私と違った形で、リョウトさんからアドバイスを貰い、自信を持てたと言ってたけど大丈夫かな?

「ルティナ、いけそう?」
「うん、いける!! 昨日の爆発事故の時と違って視認できるし、魔力消費もそこまで大きくないと思う」

あとは、私か。
大丈夫、絶対上手くいく。
自信を持つんだ。

「ルティナ、やろう!!」
「うん!!」

私は闇魔術[暴食]を、ルティナは光魔法を発動させるため、意識を集中させる。彼女はリョウトさんに、『詠唱は無駄が多すぎるから必要ない。イメージと制御さえしっかりしていれば、魔法を100%以上の力で放てる』と言われ、ひたすらイメージの強化を訓練させられてきた。私はそれをしっかりと聞き、見よう見まねで暴食を発動できたのだから、ルティナだってきっと思い描いた魔法が放てるはずよ。13体のタルパが、かなり近い距離まで降りてきてる。

「いっけ~~~~【エリアヒール】」

聖属性魔法は強力な分、威力も大きいし、消費魔力も多い。特に、単体ではなく、広範囲で強力なものほど、消費量が多くなる。ルティナも単体魔法を一つ、広範囲魔法を一つ習得しているけど、今の時点だと制御が未熟なせいで、命中率も低くて使えない。

光魔法の中でも、単体回復魔法[ヒール]を攻撃として使用する場合、消費魔力は少ないけど、必ず相手に接触しないといけない。広範囲魔法[エリアヒール]、普通の魔物だと体力を回復させるけど、タルパのようなアンデッド系魔物には弱点となる。でも、指定した範囲から外に移動しちゃうと、攻撃対象から外れてしまう。

昨日の事件のおかげで、彼女は光魔法[エリアヒール]の対象指定に関して、リョウトさんからアドバイスをもらった。そして今日、身体に聖属性を纏うだけで、身体の回復力が向上することを教わった。

それらの知識を利用して、彼女は聖属性を纏った状態で、光魔法[エリアヒール]を放った。ここでの魔法対象は視認したタルパ13体のみ、ある工夫を施したことで、100%の命中率となり、魔力消費もかなり抑えられる。

「やった、成功!! 指定範囲を視界内にして、個体から感じる魔力や気配だけを対象にしたら、100%で命中したよ」

やっぱり、この子は天才だ。
思いついても、普通1発で成功しない。

「ここからは、私の出番だね」

聖属性を纏った光魔法のせいか、威力がかなり上がってる。
魔法で討伐されないうちに、私も動く。

「暴食発動」

私は身体に暴食の力を纏い、私自身を一種の鳥に変化させる。
タルパは思念体、生前の強い思いで姿を形成させる。

それなら、私のイメージ次第で、この形態を自由に変化させることもできるはず。私は目を閉じて、頭の中にある動物を強くイメージしていく。

信じよう、スキルと魔法の可能性を。

そして、目を開くと、私は不死鳥フェニックスのような鳥へと形態変化していた。鳥に変身し、飛翔性と敏捷性を向上させ、暴食の力を槍の穂先のように変化させることで、貫通力を向上させる。

「いく!!」

私は、全力で弱った13体のタルパの頭に向けて飛翔し、次々と貫通させていく。タルパが私の魔力よりも低くなったのを見計らい、嘴を蛇の口のように変化させ、次々と捕食していく。

「あ…濃密で美味しい。それに、全員が異なる恨みを持っているから、異なる味がする」

リョウトさんは、こんな感じでタルパを食べていたんだ。人や動物の思念体、人であって人でないものだから、人型や動物型のクッキーを食べたと思えばいいのかな。全員食べ終わり、元の姿に戻って、ステータスを確認すると…

「やった、魔力が642に上がった!!」

弱体化させて捕食したから、あまり大きな増加じゃないけど、これで暴食の効果を証明できた。

「おお、いいね~~~」
「「いえ~~~~い」」

私は、ルティナとハイタッチを交わす。

「なんなのよ、さっきの魔法は!! あんなの私の知るエリアヒールじゃないわ!!」

マクレミーサが私たちを見て、悔しがってる。
いい気味。
あ、尋常じゃないタルパの大群が上空から一気に降りてきてる。
いい気分に浸っている時間もないのね。

ルティナも気づいたいのか、悪巧みを思いついたかのようにニヤッと笑い、マクレミーサの方を見る。

「お~い、マクレミーサ様~~前言撤回しま~~~す。数が多すぎて捌ききれないから、余った分をあなたたちにあげる~~~。そっちは、そっちで頑張ってね~~~」

「ルティナ、あんた!?」

「撤回するって言ったも~~~ん。それに、次襲ってくるタルパの数って、軽くさっきの倍はいるよ~~。普通に考えて、私たちだけで戦えるわけないじゃん。常識を知ろうよ。あなたたちが何もしなくても、そっちにも大勢のタルパが押し寄せるよ~~。多分、誰も手出ししなかったら、結界を張ってもすぐに破られるよ~。あなたは私なんかより、習得した魔法の数も多いんだから、なんとかするよね~~~」

ルティナ……さっきの発言を簡単に覆してる。そう言う時って、普通悔しがるものじゃないの? どうして、そんなに面白そうな顔で言えるのだろう?

「く、しゃべってる余裕もないか。皆さん、今から聖の結界を張ります。戦いに疲れたら、そこに入って身体を休ませてください」

マクレミーサが、戦闘で邪魔にならないよう西側の壁近くへと移動する。

「神官たち~~~、私たちみたいに見捨てられないようにね~~~」

「あなたね!! ち、いきます。[サンクチュアリ(聖域結界)]!!」

聖魔法の中でも上位に位置する結界魔法、指定した範囲に強固な結界を作り上げ、魔物の侵入を阻みつつ、大地の力で体力と魔力を回復させる効果がある。次代聖女候補ナンバーワンと言われるだけのことはあるけど、その魔法が一瞬だけ発動して、円形のシールドが発生したけど、すぐに粉々に砕け散る。

……やっと、その時が来たんだ。

私は、ついニヤッと笑ってしまう。
精霊様、ルティナに魔法を見させるために一瞬だけ発動させたんだ。

「割れた? え、どうして? [サンクチュアリ][サンクチュアリ]!!」

割れて以降、魔法が発動しなくなった。

「光精霊様、このタイミングで罰を与えたんだ」
「やっとだ」

状況は、あの時と似ている。

目の前に近づきつつあるタルパの大群、何らかの理由で誘引されているはずなのに、どうして王都中に散らばらず、ここへ集中するのかは謎だけど、今はこれを全滅させることだけに集中しよう。

「リノア、いくよ!!」
「ええ、いつでもいいわ」

タルパたちが、マクレミーサにお仕置きしてくれればいい。
私たちは、自分たちのことだけに集中だ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...