加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護

文字の大きさ
上 下
36 / 61

36話 子供たちの自主性を尊重しよう

しおりを挟む
ギフト[配置転換]、これには【指定した2つの対象の位置を入れ替える】という隠し効果がある。召喚系のシステムで動いていないので、これなら干渉されることもないだろうけど、今回の場合、普通に入れ替えるだけではすぐに気づかれる。

まずは、2人に通信して会話が可能か確かめるか。

『リノア、聞こえるか?』

何だろう?
繋がってはいるけど、ノイズが激しくて、声を聞き取れない。
やはり、何らかの妨害を受けているようだ。 
先に、ルティナと話し合おう。

『ルティナ、聞こえるか?』
『お兄ちゃんの声が、頭の中に響いてきた!?』

リノアとはテイムで生じた絆、ルティナとは掌握で生じた絆、同じ絆でもギフトで構成されたものの方が強力ということか。

『そういえば、まだ話していなかったかな? 君を掌握しているから、リノア同様、僕とは強い絆で結ばれているんだよ。こうやって離れた場所からでも、頭の中で会話可能なのさ』

『うへ~便利~って、それどころじゃない!! 私たち、背後から急に袋の中に入れられて、今担がれて移動中なの。意識ははっきりしてるんだけど、何故か動けないし、力も入らないんだ』

何らかの薬を、袋の中に入れているようだ。というか、僕としてもそっちの方が都合が良い。

『君たちは誘拐され、旧ラリマンド邸に連れて行かれるだろう』

僕は、神殿側の状況をルティナに教えた。

『4日も経ってるのに、解決の糸口すら見つけられてないの?』

『ああ、今では毎晩10体以上の強いタルパが庭に出現して、邸内にいる全員が討伐に向かう始末だよ。聖魔法を使える巫女たちが6名、神官が11名、タルパに殺され、他にも大怪我を負って戦線離脱した者もいる。今戦力になる巫女は、マクレミーサだけらしい。だから、君たちに協力を求めてるってことさ』

マクレミーサの力は、未だに健在だ。光精霊は、タイミングを窺っているとルティナに言ったそうだけど、この誘拐をどう思っているのだろう?

『最低、散々私を人殺し扱いしておいて……あ、待てよ…良いこと思いついた。リノアも誘拐されたってことは、みんなが私を無実だと思ってるんだよね?』

『その可能性はあるけど、まだ半信半疑ってところだろうね』  

研究所での爆発騒動で、神官たちもマクレミーサに不信感を持ったのは間違いないけど、まだ記事が出て間もないし、旧ラリマンド邸で起きている事件を片付けるのが先決と思い、あまり深く追求していないだろう。現時点で、巫女として戦力になるのは、彼女しかいないのだから。

『だったら、私とリノアだけでタルパをやっつけて、神官たちの前で私たちの仲を証明させる!! 私とリノアが表で頑張っている間、お兄ちゃんが裏から事件を解決させて』

おっと、そうきたか。

『僕のギフトで、こっちに転移させる手段があるけど、どうする?』

『それだと、先延ばしにしてるだけだよ。まどろっこしいのは嫌だから、自分の無実をこのまま証明したいの。だめかな?』

逃げずに、立ち向かうわけか。ここで言い聞かせて転移させることも可能だけど、後々不和をもたらせる可能性があるな。

『危険な手段だよ。奴らのことだから、事件解決後に、《リノアが暴走し君を殺した》ように装い君を殺すか、リノアを討伐して利用価値の高い君だけを監禁する可能性もある』

『お兄ちゃんの中には、神殿側が私たちに謝罪するという選択肢はないの?』
『真の謝罪なんて、ありえないね』

表面上の謝罪はするだろうけど、自分たちの評価が落ちないよう、奴らはあらゆる汚い手段を使うはずだ。

『ルティナ、人の言葉を完全に信じたら、自分で次の選択肢を狭めることになる。常に、最悪を想定して考えるんだ』

人を信じる行為も大切なのはわかるけど、裏切られた後の精神的苦痛がきついんだよ。親しければ、親しい程にね。7歳の時点で、それを味わってほしくない。

『わかった』
『君の考えを、リノアにも伝えておくよ』
『大丈夫、もう聞いたから』

突然、リノアの声が割り込んできた。さっきまでノイズが激しくて聞こえなかったけど、リノアの方で何かしたのか?

『おお、お兄ちゃんを経由することで、3人で話し合えるんだ!! すげ~~~』

いや、3人で話し合えるのを今初めて知ったよ。

『リノア、さっき試したら何かに妨害されていたようだけど?』
『この聖なる袋のせい。これのせいで、力を出せない』

なるほど、聖属性に覆われているせいで、ノイズが走っていたのか。

『リョウトさんに見せてもらった闇魔術[暴食]を狭い範囲だけ使えるようになったから、それで袋の聖属性だけを食ったの。そうしたら魔力量も574に上がって、[聖属性]の耐性スキルを取得した』

おいおい、昨日見せただけの暴食を、もう使えるようになったのか。狭い範囲だけとはいえ、恐ろしい才能を秘めているな。

『私も、ルティナの意見に賛成。このまま先延ばしにしていたら、記事の内容を忘れた頃に、神殿側が私たちに何か仕掛けてくると思う』

2人揃って、同じ意見か。それなら、僕は裏方として行動しよう。

『わかった。君たちの意見に従おう。それとルティナ、聖魔法使用時の感覚を思い出して、魔力に聖属性を纏わせて、それを身体中に循環させろ。聖属性の効果で、身体の回復力が向上するから。その程度なら、今でもできるだろ?』

『お兄ちゃん、物知り!! 大丈夫、できるよ』

『僕も邸に向かうけど、手助けが欲しい時は言ってくれ。遠隔であっても、魔力譲渡程度なら可能だから』

『『了解』』

この子たちは孤児のせいなのか、自主的かつ積極的に動こうとする。冒険者としての資質は申し分ないけど、自分たちの力の限界がどこまでなのかをきちんと把握しているのだろうか? 裏方として、きちんと見守っておく必要があるな。

僕は、今話し合った内容をリオさんに伝える。

「2人の気持ちもわかるけど、無謀すぎるでしょ? よく、許可したわね」
「あそこで反発したら、2人だけで突っ走る気がします」

「あ~、確かに。あの子たちは、ハキハキと自分の意見を主張して行動に移すタイプだから、下手に反発したら怒っちゃうかもね」

その通りです。

「2人には、対抗手段を既に教えていますので、僕は裏方に徹して、邸を調査しますけど構わないですか?」

ルティナにはエリアヒールの多様性、リノアには暴食、どちらもタルパに有効だ。暴食に関しても、いきなり全てを食うのではなく、少しずつ食べていけば問題ない。

「そうね。特殊なギフトを持つあなたなら、解決できるかもしれないわね。ただ、報酬が出るかはわからないわよ。一応、掛け合ってみるけど」

「了解です、交渉の方はお願いします」

こちらも、無駄働きはごめんだからね。

ルティナとリノアが神官やマクレミーサに対して、どんな行動を起こすのか、裏から見させてもらおう。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...