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20話 悩む子供たち

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僕は、2人の出会いをリオさんに話すと、彼女も驚きを隠せなくなり、動揺の色が顔に見えてくる。

「嘘でしょ? 次期聖女候補の中でも最有力とされているマクレミーサ様が、そんな愚かな行為をするだなんて…」

「彼女は、皆の思うような存在ではないですよ。権力を使い、昨日の任務で起きた事件の責任の全てをルティナに押し付けた悪女です。大司教様方はそれを信じ、現在任務の再調査を行っています。多分、提出される冒険者ギルドへの中間報告書には、全責任をルティナに背負わせ、破門させたことが記載されるはずです」

僕がリオさんと話し合っている間、ルティナとリノアは、既に大勢の冒険者たちに囲まれ、事情を話したのか、多くの人たちが憤慨しながら神殿側のことを罵っている。女性陣の中には泣いている人もいて、2人のことを罵るものは誰もいない。

この雰囲気なら、明日以降の活動にも問題なさそうだ。先輩冒険者たちとは、これからお世話になる間柄になるのだから、あとで僕からもご挨拶しておこう。

「普通の貴族なら、そう言った行為を平然とやるけど、まさか次期聖女候補の筆頭が……緊急措置とはいえ、あまりにも残忍な行為だわ。旧ラリマンド邸で何が起きているのかも気掛かりだけど、今はギルドマスター、教皇様、枢機卿様、聖女様も隣国にいて、あっちもあっちでかなりの重要案件をこなしているところだから、迂闊に連絡出来ない状況なのよね」

教皇様方は不在か、ルティナとマクレミーサの事情聴取において、3人の名前が出てこなかったのも納得だ。実質、今は大司教がトップ代理だから、あっちも早く解決させたいだろう。

「とにかく、今はその報告書待ちね。ありがとう、副ギルドマスターに報告して、判断を仰ぐわ。多分、様子見になるでしょうけど。あ、これが部屋の鍵ね。そこそこ広いから、3人でも問題ないわ」

ルティナとリノアに関わった以上、マクレミーサとの1件が解決するまで、僕も王都を出られない。マクレミーサたちと僕の元家族、この2組が今後どう関わってくるかが問題だ。

「ありがとうございます」

魔物の強さはその脅威度で、S・A・B・C・D・E・F・Gと8種類に区分されている。今のリノアの脅威度は魔力量から判断すると、Fランク相当だ。魔力量が少ない今のうちに、怨恨の力と両立できるよう制御させないといけないから、早速今日から始めよう。

僕は2人のいる場所へと行き、先輩冒険者方に自己紹介してから、2人にリオさんから言われた条件を説明していく。

「お兄ちゃん、3日以内に制御出来ないと、私たちは冒険者登録も出来ないの?」

「それが、ギルドの規定なんだ。そんなに難しく考える必要はないよ。喜怒哀楽、これらの感情を制御すると思えばいい。リノアが一定基準をクリアできれば、僕たちは正式な冒険者として認められる」

と言っても、この一定基準というものが曲者なんだよ。リオさんから鍵と一緒に冒険者教本という本を貰ったけど、タルパ加入の詳細な内容が記されていない。難癖付けられて不合格にならないよう、僕がしっかりフォローしていこう。

「一定基準……不安です。タルパの身体は思念体で半透明、魔力が常に剥き出しになっている状態だから、どんなに制御しても、完全には消せません。感情に大きく左右され、人や魔物に察知されやすい、これって最大の短所です」

「だよね。タルパとしての攻撃・防御手段も新しく考えなきゃいけないし」

ルティナもリノアも、物事を前向きに考えていく傾向があるけど、こればかりは2人の力だけで、すぐに解決しない。

「そこは、使役者の僕がフォローする」
「リョウトさん、フォローってどうやって?」
「そうだよ。お兄ちゃんのギフトで何とかなるものなの?」

「ここではギフトを使わず、スキルでフォローする。詳しくは、部屋の中で話すよ」

加工に関しては、人に対してどこまで応用可能なのか不明な点も多いし、一度実行して解除できるかもわからない。リノアで、そんな危険行為を試すわけにはいかない。

僕は、周囲にいる先輩冒険者たちに2人と話し合ってくれたことへの感謝を述べ、今後のご挨拶も兼ねて軽く談笑してから、2人を連れてリオさんの用意してくれた3階の部屋へと向かった。
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