20 / 61
20話 悩む子供たち
しおりを挟む
僕は、2人の出会いをリオさんに話すと、彼女も驚きを隠せなくなり、動揺の色が顔に見えてくる。
「嘘でしょ? 次期聖女候補の中でも最有力とされているマクレミーサ様が、そんな愚かな行為をするだなんて…」
「彼女は、皆の思うような存在ではないですよ。権力を使い、昨日の任務で起きた事件の責任の全てをルティナに押し付けた悪女です。大司教様方はそれを信じ、現在任務の再調査を行っています。多分、提出される冒険者ギルドへの中間報告書には、全責任をルティナに背負わせ、破門させたことが記載されるはずです」
僕がリオさんと話し合っている間、ルティナとリノアは、既に大勢の冒険者たちに囲まれ、事情を話したのか、多くの人たちが憤慨しながら神殿側のことを罵っている。女性陣の中には泣いている人もいて、2人のことを罵るものは誰もいない。
この雰囲気なら、明日以降の活動にも問題なさそうだ。先輩冒険者たちとは、これからお世話になる間柄になるのだから、あとで僕からもご挨拶しておこう。
「普通の貴族なら、そう言った行為を平然とやるけど、まさか次期聖女候補の筆頭が……緊急措置とはいえ、あまりにも残忍な行為だわ。旧ラリマンド邸で何が起きているのかも気掛かりだけど、今はギルドマスター、教皇様、枢機卿様、聖女様も隣国にいて、あっちもあっちでかなりの重要案件をこなしているところだから、迂闊に連絡出来ない状況なのよね」
教皇様方は不在か、ルティナとマクレミーサの事情聴取において、3人の名前が出てこなかったのも納得だ。実質、今は大司教がトップ代理だから、あっちも早く解決させたいだろう。
「とにかく、今はその報告書待ちね。ありがとう、副ギルドマスターに報告して、判断を仰ぐわ。多分、様子見になるでしょうけど。あ、これが部屋の鍵ね。そこそこ広いから、3人でも問題ないわ」
ルティナとリノアに関わった以上、マクレミーサとの1件が解決するまで、僕も王都を出られない。マクレミーサたちと僕の元家族、この2組が今後どう関わってくるかが問題だ。
「ありがとうございます」
魔物の強さはその脅威度で、S・A・B・C・D・E・F・Gと8種類に区分されている。今のリノアの脅威度は魔力量から判断すると、Fランク相当だ。魔力量が少ない今のうちに、怨恨の力と両立できるよう制御させないといけないから、早速今日から始めよう。
僕は2人のいる場所へと行き、先輩冒険者方に自己紹介してから、2人にリオさんから言われた条件を説明していく。
「お兄ちゃん、3日以内に制御出来ないと、私たちは冒険者登録も出来ないの?」
「それが、ギルドの規定なんだ。そんなに難しく考える必要はないよ。喜怒哀楽、これらの感情を制御すると思えばいい。リノアが一定基準をクリアできれば、僕たちは正式な冒険者として認められる」
と言っても、この一定基準というものが曲者なんだよ。リオさんから鍵と一緒に冒険者教本という本を貰ったけど、タルパ加入の詳細な内容が記されていない。難癖付けられて不合格にならないよう、僕がしっかりフォローしていこう。
「一定基準……不安です。タルパの身体は思念体で半透明、魔力が常に剥き出しになっている状態だから、どんなに制御しても、完全には消せません。感情に大きく左右され、人や魔物に察知されやすい、これって最大の短所です」
「だよね。タルパとしての攻撃・防御手段も新しく考えなきゃいけないし」
ルティナもリノアも、物事を前向きに考えていく傾向があるけど、こればかりは2人の力だけで、すぐに解決しない。
「そこは、使役者の僕がフォローする」
「リョウトさん、フォローってどうやって?」
「そうだよ。お兄ちゃんのギフトで何とかなるものなの?」
「ここではギフトを使わず、スキルでフォローする。詳しくは、部屋の中で話すよ」
加工に関しては、人に対してどこまで応用可能なのか不明な点も多いし、一度実行して解除できるかもわからない。リノアで、そんな危険行為を試すわけにはいかない。
僕は、周囲にいる先輩冒険者たちに2人と話し合ってくれたことへの感謝を述べ、今後のご挨拶も兼ねて軽く談笑してから、2人を連れてリオさんの用意してくれた3階の部屋へと向かった。
「嘘でしょ? 次期聖女候補の中でも最有力とされているマクレミーサ様が、そんな愚かな行為をするだなんて…」
「彼女は、皆の思うような存在ではないですよ。権力を使い、昨日の任務で起きた事件の責任の全てをルティナに押し付けた悪女です。大司教様方はそれを信じ、現在任務の再調査を行っています。多分、提出される冒険者ギルドへの中間報告書には、全責任をルティナに背負わせ、破門させたことが記載されるはずです」
僕がリオさんと話し合っている間、ルティナとリノアは、既に大勢の冒険者たちに囲まれ、事情を話したのか、多くの人たちが憤慨しながら神殿側のことを罵っている。女性陣の中には泣いている人もいて、2人のことを罵るものは誰もいない。
この雰囲気なら、明日以降の活動にも問題なさそうだ。先輩冒険者たちとは、これからお世話になる間柄になるのだから、あとで僕からもご挨拶しておこう。
「普通の貴族なら、そう言った行為を平然とやるけど、まさか次期聖女候補の筆頭が……緊急措置とはいえ、あまりにも残忍な行為だわ。旧ラリマンド邸で何が起きているのかも気掛かりだけど、今はギルドマスター、教皇様、枢機卿様、聖女様も隣国にいて、あっちもあっちでかなりの重要案件をこなしているところだから、迂闊に連絡出来ない状況なのよね」
教皇様方は不在か、ルティナとマクレミーサの事情聴取において、3人の名前が出てこなかったのも納得だ。実質、今は大司教がトップ代理だから、あっちも早く解決させたいだろう。
「とにかく、今はその報告書待ちね。ありがとう、副ギルドマスターに報告して、判断を仰ぐわ。多分、様子見になるでしょうけど。あ、これが部屋の鍵ね。そこそこ広いから、3人でも問題ないわ」
ルティナとリノアに関わった以上、マクレミーサとの1件が解決するまで、僕も王都を出られない。マクレミーサたちと僕の元家族、この2組が今後どう関わってくるかが問題だ。
「ありがとうございます」
魔物の強さはその脅威度で、S・A・B・C・D・E・F・Gと8種類に区分されている。今のリノアの脅威度は魔力量から判断すると、Fランク相当だ。魔力量が少ない今のうちに、怨恨の力と両立できるよう制御させないといけないから、早速今日から始めよう。
僕は2人のいる場所へと行き、先輩冒険者方に自己紹介してから、2人にリオさんから言われた条件を説明していく。
「お兄ちゃん、3日以内に制御出来ないと、私たちは冒険者登録も出来ないの?」
「それが、ギルドの規定なんだ。そんなに難しく考える必要はないよ。喜怒哀楽、これらの感情を制御すると思えばいい。リノアが一定基準をクリアできれば、僕たちは正式な冒険者として認められる」
と言っても、この一定基準というものが曲者なんだよ。リオさんから鍵と一緒に冒険者教本という本を貰ったけど、タルパ加入の詳細な内容が記されていない。難癖付けられて不合格にならないよう、僕がしっかりフォローしていこう。
「一定基準……不安です。タルパの身体は思念体で半透明、魔力が常に剥き出しになっている状態だから、どんなに制御しても、完全には消せません。感情に大きく左右され、人や魔物に察知されやすい、これって最大の短所です」
「だよね。タルパとしての攻撃・防御手段も新しく考えなきゃいけないし」
ルティナもリノアも、物事を前向きに考えていく傾向があるけど、こればかりは2人の力だけで、すぐに解決しない。
「そこは、使役者の僕がフォローする」
「リョウトさん、フォローってどうやって?」
「そうだよ。お兄ちゃんのギフトで何とかなるものなの?」
「ここではギフトを使わず、スキルでフォローする。詳しくは、部屋の中で話すよ」
加工に関しては、人に対してどこまで応用可能なのか不明な点も多いし、一度実行して解除できるかもわからない。リノアで、そんな危険行為を試すわけにはいかない。
僕は、周囲にいる先輩冒険者たちに2人と話し合ってくれたことへの感謝を述べ、今後のご挨拶も兼ねて軽く談笑してから、2人を連れてリオさんの用意してくれた3階の部屋へと向かった。
37
お気に入りに追加
851
あなたにおすすめの小説
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる