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第二章 波乱の魔導具品評会
三十話 事件の顛末
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魔導具の暴走事故、その衝撃は凄まじいもので、あの火柱は王都全土で観測される。大火傷を負った兄とベイツ様は、すぐさま病院に連行され、品評会自体は中止という前代未聞の結末となる。
翌日の新聞には、空魔石の応用性と危険性が取り沙汰され、使用には注意が必要と記載され、おそらく今回の事件は王都どころか他国にまで広がるでしょうね。去年の中等部メンバーにとって、かなり不利になる内容と思われがちだけど、二人の先輩方はこの程度で絶対にめげない。むしろ、危険性を他国にまで知られたことで、今後世界中の研究者たちは、細心の注意を払い、空魔石の研究を続けていくことになる。
私はというと、魔導具事故の事故調査委員会に抜擢されてしまう。去年と今年の件で、私の魔導具に関する知識と技術は専門職並みにあると証明された証拠ね。これまで欠陥品と言われてきたけど、私の存在が着実に認められつつある。
今回自分で設計したものだから、暴発事故の原因に関しては大凡わかっているものの、事故直後にそれを口にすれば、絶対に怪しまれる。また、その場で兄のこれまでの監視映像を見せれば、すぐさま事情も把握され、事件解決となるのだけど、プライズの力を公表できない以上、ここは通常の調査方法で解析を進めることにした。
調査解析対象となる肝心の二つの魔導具が木っ端微塵となっており、私たちは高等部のクラブメンバーから魔導具の設計図と製作方法を教えてもらいながら、それらだけで調査を進めていき、解明に至るまでの道中、私が少しずつ正解へ導けるよう誘導しながら、原因は空魔石の同調方法が不完全であることを指摘し、その歪みとダメージの肩代わり分が魔石に少しずつ蓄えられたことで、初級魔法約十数発分の大爆発を引き起こしたと結論付けることとなった。
そして事故調査委員会の調査も終了し解散となる頃には、暴走事故から五日が経過していた。兄とベルツ様の意識は不明であるものの、回復魔法の使い手が事故後すぐさま招集され、四六時中魔法を行使されたこともあり、大火傷に関してはほぼ完治している。私とアデリーヌが水魔法による消化作業を行ったこと、この応急処置が二人の命を救ったとされており、私たちの評価が学園内だけでなく、今では王都中において際限なく高まっている。
○○○
調査委員会も解散されたことで、私とルミネは父から招集を受ける。国王の執務室には、父と母がソファーに隣同士で座っており、私たちの到着を待っていた。話し合いの準備が整ったところで、父が口を開く。
「ティアナ、ウィンドルが目を覚ました」
その一言で、私たちはほっと胸を撫で下ろすものの、父は衝撃の一言をつける。
「起きて早々……『くそ、全てティアナのせいだ』と呟いたそうだ。すぐ近くに看護師がいたことに気づき、そのまま医師や看護師に問い詰められても、ずっと口を閉ざしたままらしい」
あの男、命の恩人に対して、何を言っているのかしら?
父と母には、兄の監視映像を見せているため、全ての事情を把握している。
《設計図の盗難》《魔導金庫の盗難》《私の誘拐》
これらは私の都合で、全て表に出ていない。
全ての状況を把握しているからこそ、兄の行く末を妹に委ねようとしているのかもしれない。
「はあ~~~」
兄の態度を聞き、私は不敬承知で盛大な溜息を吐く。
「あの事故の原因も私のせいにするとは……お仕置き確定ですね。お父様、お母様、私の卒論で発表しても構いませんよね?」
二人共、かなり悩んでいるわね。
兄の件を卒論で明るみにするということは、私のプライズも各国に知られることになる。せっかく各諸侯を納得させたところに、また兄と私が問題を起こそうとしているのだから、そういった顔をするのもわかるわ。
「キューブの件が知られることになるが……仕方あるまい」
おお、父は納得してくれたわ。
「このまま放置すると、後々今以上のことが起こりそうね。あの子が反省しないのならやむなしです」
二人とも苦渋の表情に満ちているものの、このままでは兄の王位継承すら危ういと踏んだのか、卒論発表の場で兄の監視映像を流すことを承諾してくれたわ。
当然、事前に各諸侯たちに、卒論の場で私のプライズを明かすことを納得させないといけないけど、これに関しては私なりの考えがある。後で説明して、両親に納得してもらいましょう。
「ただし、レインブルク公爵家の許可を得てからだ。私と王妃が公爵と奥方を説得しよう。ティアナはミルフィアを必ず説得しなさい」
そう、私の卒論のタイトルには、《婚約破棄》が含まれている以上、レインブルク家の承諾が必要不可欠、必ず説得してみせるわ。
「無論です。この件は、ミルフィア様の許可が必要不可欠ですもの。二人の関係がどうなるかは、お兄様の態度次第ですわ」
ただ、卒論発表後でもああいった態度を示すのであれば、兄の王位継承を剥奪して臣籍降下してもらうことになる。でも、それは最悪の手段、兄が更生する場合もありうるから、もう一度監視映像を全て見直して、兄の心境を知る必要があるわ。発表まで残り三週間ほど、まだ時間がある。
私の手で、兄の将来を潰したくない。
急いで、兄の更生手段を考えないといけないわ。
翌日の新聞には、空魔石の応用性と危険性が取り沙汰され、使用には注意が必要と記載され、おそらく今回の事件は王都どころか他国にまで広がるでしょうね。去年の中等部メンバーにとって、かなり不利になる内容と思われがちだけど、二人の先輩方はこの程度で絶対にめげない。むしろ、危険性を他国にまで知られたことで、今後世界中の研究者たちは、細心の注意を払い、空魔石の研究を続けていくことになる。
私はというと、魔導具事故の事故調査委員会に抜擢されてしまう。去年と今年の件で、私の魔導具に関する知識と技術は専門職並みにあると証明された証拠ね。これまで欠陥品と言われてきたけど、私の存在が着実に認められつつある。
今回自分で設計したものだから、暴発事故の原因に関しては大凡わかっているものの、事故直後にそれを口にすれば、絶対に怪しまれる。また、その場で兄のこれまでの監視映像を見せれば、すぐさま事情も把握され、事件解決となるのだけど、プライズの力を公表できない以上、ここは通常の調査方法で解析を進めることにした。
調査解析対象となる肝心の二つの魔導具が木っ端微塵となっており、私たちは高等部のクラブメンバーから魔導具の設計図と製作方法を教えてもらいながら、それらだけで調査を進めていき、解明に至るまでの道中、私が少しずつ正解へ導けるよう誘導しながら、原因は空魔石の同調方法が不完全であることを指摘し、その歪みとダメージの肩代わり分が魔石に少しずつ蓄えられたことで、初級魔法約十数発分の大爆発を引き起こしたと結論付けることとなった。
そして事故調査委員会の調査も終了し解散となる頃には、暴走事故から五日が経過していた。兄とベルツ様の意識は不明であるものの、回復魔法の使い手が事故後すぐさま招集され、四六時中魔法を行使されたこともあり、大火傷に関してはほぼ完治している。私とアデリーヌが水魔法による消化作業を行ったこと、この応急処置が二人の命を救ったとされており、私たちの評価が学園内だけでなく、今では王都中において際限なく高まっている。
○○○
調査委員会も解散されたことで、私とルミネは父から招集を受ける。国王の執務室には、父と母がソファーに隣同士で座っており、私たちの到着を待っていた。話し合いの準備が整ったところで、父が口を開く。
「ティアナ、ウィンドルが目を覚ました」
その一言で、私たちはほっと胸を撫で下ろすものの、父は衝撃の一言をつける。
「起きて早々……『くそ、全てティアナのせいだ』と呟いたそうだ。すぐ近くに看護師がいたことに気づき、そのまま医師や看護師に問い詰められても、ずっと口を閉ざしたままらしい」
あの男、命の恩人に対して、何を言っているのかしら?
父と母には、兄の監視映像を見せているため、全ての事情を把握している。
《設計図の盗難》《魔導金庫の盗難》《私の誘拐》
これらは私の都合で、全て表に出ていない。
全ての状況を把握しているからこそ、兄の行く末を妹に委ねようとしているのかもしれない。
「はあ~~~」
兄の態度を聞き、私は不敬承知で盛大な溜息を吐く。
「あの事故の原因も私のせいにするとは……お仕置き確定ですね。お父様、お母様、私の卒論で発表しても構いませんよね?」
二人共、かなり悩んでいるわね。
兄の件を卒論で明るみにするということは、私のプライズも各国に知られることになる。せっかく各諸侯を納得させたところに、また兄と私が問題を起こそうとしているのだから、そういった顔をするのもわかるわ。
「キューブの件が知られることになるが……仕方あるまい」
おお、父は納得してくれたわ。
「このまま放置すると、後々今以上のことが起こりそうね。あの子が反省しないのならやむなしです」
二人とも苦渋の表情に満ちているものの、このままでは兄の王位継承すら危ういと踏んだのか、卒論発表の場で兄の監視映像を流すことを承諾してくれたわ。
当然、事前に各諸侯たちに、卒論の場で私のプライズを明かすことを納得させないといけないけど、これに関しては私なりの考えがある。後で説明して、両親に納得してもらいましょう。
「ただし、レインブルク公爵家の許可を得てからだ。私と王妃が公爵と奥方を説得しよう。ティアナはミルフィアを必ず説得しなさい」
そう、私の卒論のタイトルには、《婚約破棄》が含まれている以上、レインブルク家の承諾が必要不可欠、必ず説得してみせるわ。
「無論です。この件は、ミルフィア様の許可が必要不可欠ですもの。二人の関係がどうなるかは、お兄様の態度次第ですわ」
ただ、卒論発表後でもああいった態度を示すのであれば、兄の王位継承を剥奪して臣籍降下してもらうことになる。でも、それは最悪の手段、兄が更生する場合もありうるから、もう一度監視映像を全て見直して、兄の心境を知る必要があるわ。発表まで残り三週間ほど、まだ時間がある。
私の手で、兄の将来を潰したくない。
急いで、兄の更生手段を考えないといけないわ。
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