婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

文字の大きさ
上 下
27 / 36
第二章 波乱の魔導具品評会

二十七話 魔導具品評会

しおりを挟む
 本日、放課後にて、魔導具品評会が開催される。
 場所は校舎から少し離れた訓練場。

 今回のテーマが、学生の魔法訓練に相応しい魔導具を製作することに重きを置いている以上、当然の計らいだろう。周辺には、審査員とVIP見学者用の座席が用意されれており、立見の見学者も大勢いる。学園の生徒もいれば、冒険、商人、魔導具といった各ギルドの人員もチラホラいる。

 元々、このイベント事態は極小規模で実施されていたけど、所属する学生たちの技術レベルが年々増加していき、ここ十年では中等部の時点で、プロと同レベルの技術を有した学生が出始め、年々注目度が上がっていく。そして去年、私たち中等部が世界を震撼させるほどの大発見を成し遂げ、良い意味でも悪い意味でも、国内で目立ってしまう。学内だけの小さな品評会だったものが、今では国内、いえ他国にも注目されるレベルになってしまった。多分、見学者の中に、他国の間者も混じっているでしょうね。私たち中等部も、対戦相手の高等部メンバーも、失敗は許されない。

 私、アデリーヌ、オースティンの三人は発表の場となる訓練場の東側に位置するテントに、対する高等部メンバー三人は西側のテントに位置し、二チームともに最後の調整へと入っている。

 誘拐から解放されて以降、私は、兄や高等部の状況を知らない。全部監視すると、品評会での進行方法も知ってしまうからよ。勝負である以上、対等でやらないとね。監視対象はあくまでお兄様、高等部達の開発状況に関しては、又聞きでしか知らないから、何らの秘策を残しているかもしれない。彼らが私の設計図を基に、一つの魔導具としてどこまで昇華させたのか、私はそれを期待している。

 審査員の数は五人、高等部の先生方が二人、中等部の先生方が二人、去年審査員として参加した先生方は一人もいない。あれだけ問題を起こし、高等部の品位を落とせば当然でしょうね。そして最後の一人は、魔導具ギルドのギルドマスター。

 どちらにも有利に働かないよう、厳選した人選ね。ただ、見学席の方をチラッと見ると、去年の審査員の教師たちもいるから、勝負の行方だけは気になるようね。

 今年の司会進行役はウィンドル・アレイザード、お兄様自らが司会を立候補したらしいけど、何かを企んでいるのかしら? まあ、司会だから問題ないと思うけど。

 お兄様が訓練場の中心に移動し始める。
 そろそろ、品評会開始のようね。

「只今より、魔導具品評会を開催する。今年は、ウィンドル・アレイザードが司会を進行させてもらうことになった。見学者の方々も待ち遠しいようだから、早速始めたいと思う。この学内イベントが開始されてから、二十一年の年月が流れている。これまではいずれも高等部が勝利を収めていたが、去年初めて中等部が勝利し、世間を注目させただろう」

 へえ、真面目に司会しているわ。
 お兄様としては、単に目の前でこの行く末を見届けたかっただけなのかもね。

「例年通りだと、去年の敗者から魔導具を発表させる。本来であれば、高等部のメンバーたちから新規開発した魔導具を発表してもらうのだが、今回高等部側から後攻に回してほしいと要望された」

 ここにきて、例年通りに培ってきた順番を破棄するの?
大勢の見学者達の前で言うのだから、高等部側も大恥をかくことになるのよ?
少しでも時間稼ぎをして、魔導具の微調整を行いたいってことかしら?

「突然の順番変更というものは、中等部側にとってもイレギュラーなことだ。そこで、中等部のメンバー全員が賛同を受けた場合に限り、許可することになったが如何だろうか?」

 なるほど、そうきたか。私はアデリーヌとオースティンを見ると、二人とも言葉を発することなく、静かに頷いてくれたわ。私が兄に構わないことを伝えると、早速発表する場が整えられ、私たちは訓練場中央へと赴いていく。

 発表者と魔導具の操縦者は私、魔導具の練習相手となってくれるのがオースティンとアデリーヌ。いよいよ発表するのだけど、肝心の高等部のメンバーの方は私たちを一瞥することもなく、魔導具の調整に取り掛かっている。どうやら、調整に相当手こずっているようね。

 まあ、いいわ。
 私たちは、自分たちの出来うる限りの力を使い、この勝負に勝つことよ。
 さあ、始めましょう‼︎
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】しるしを刻む者 ~異世界に渡った判子屋~

シマセイ
ファンタジー
寿命を終えた判子職人、田中健三、八十二歳は、女神によって異世界へ。 少年ケンとして新たな生を受け、生前の「印を刻む技術」を特殊スキル『印』として授かる。 新しい家族や村人たちとの温かい交流の中、ケンは物に様々な効果を与える『印』の力で、人々の役に立つ喜びを知っていく。 そのユニークなスキルは次第に村で評判となり、様々な依頼が舞い込むようになるが、同時にスキルの限界や更なる可能性にも気づき始める。 ケンは『印』の力をより高めるため、まだ見ぬ外の世界へと目を向け始めるのだった。

転生したら捨て子でしたが、優しい家族に拾われました。~恩返ししつつ快適な異世界生活を目指します~

りーさん
ファンタジー
ある日、森に捨てられた子どもに転生したアイン。薬草を探しに来た夫婦に拾われ、一緒に暮らすことに。  子どもとは思えない身体能力や強すぎる魔法に翻弄されながらも、たくましく生きてきたアインは、トラブルに巻き込まれるうちに、自分が捨てられた理由や転生した理由を知っていく。 基本ほのぼのですがシリアスも挟まります。私の作品の中では戦闘描写が多いです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔王の俺が伯爵家の無能になったんだが!?〜魔界で疲れたので今世では好き勝手に過ごそうと思います〜

パクパク
ファンタジー
かつて魔界を支配し、あらゆる悪を統べた“魔王”は、永き戦いと支配の果てに疲れ果てていた。 休息と自由を求め、すべてを捨てた彼は、異世界へと自らを転移させる。 そこで目覚めたのは、名門伯爵家の“無能な三男坊”としての新たな人生だった。   新たな世界、新たな肉体。 彼は「クロード」という名を引き継ぎつつも、過去の力も正体も隠しながら、好き勝手に生きていくことを決める。 だが、彼の奇行と才能は、否応なく周囲を巻き込み、動かしていく。   日々の中で出会う人々、忍び寄る陰謀、そして過去に背負ってきた重さ。 無気力だった“魔王”は、知らず知らずのうちにこの世界で何かを得て、何かを守りたくなっていく。   これは、かつて悪であった者が「自由」に惹かれ、「絆」に巻き込まれ、 それでも「自分らしく」生きようともがく物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...