婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

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第二章 波乱の魔導具品評会

十八話 降りかかる災難

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 中等部は三学年あり、各学年のクラスはS、A、B、Cの四つがある。一年生は入試成績、二年生と三年生は前学年の総合成績によって決められ、優秀な者から順にS→A→B→Cと配属されていく。私とスウェンは三年Bクラスに在籍している。

 教室に到着するまで注目の的だったけど、教室に入ってからも同じ事象が続く。流石に四六時中見られるのは勘弁してほしいので、私は入室早々、皆の緊張を解す。

「みんな、おはよう。もう聞いていると思うけど、私はデモンズキューブに気に入られ、常時そのネックレスを身につけているわ。どういうわけか、外せないのよ。だからと言って、別に呪われているわけじゃないから安心してね」

 全員が私に集中し、話を聞いているようね。特に、貴族の人たちは親御さんから、私との接し方について、色々と言われているはず、私の出方次第で対応を決めようと思っているのかもしれない。

「今は、私が継承者として相応しいかどうか、見極めさせてもらっている段階よ。だから、これだけは言っておくわね。【キューブは常に私を見張っている】、これまでと同様に、普通に接してくれれば、何も問題ないから安心して」

 私は話し終えると、平然としたまま自分の席へと着席する。

 その後、私の見立て通り、平民の男女は始めこそ少し怯えていたようだけど、私がこれまで通り振る舞っているため、その怯えも消えて普通に接してくれるようになった。ただ、貴族の男女に関していえば、昼休みになるまで誰一人話しかけてくる者はいなかった。今日一日は、様子見ってところかな?

 そして昼休み、私が食堂へ行こうと思い席を立つと、魔導具開発クラブに在籍している親友が教室へ入って来て、こっちへ向かってくる。どうやら、私に用があるようね。昼食ついでに、進行状況を聞いておきましょう。

「アデリーヌ、久しぶり~~~」

 いや~相変わらず愛くるしい存在ですな~。

 私的には、学園人気ナンバーワンとも言えるクリス様よりも、アデリーヌの方が保護欲をそそられるわ。ふわ~っとした長く流れる銀髪、粒らな瞳、とても十五歳とは思えない小柄で可愛い容姿、私にとって癒しの存在です。彼女は子爵令嬢だけど、初等部の一年生から欠陥王女の私を見ても差別することなく、普通に接してくれる稀有な存在なのよね。今では、互いに名前で呼び合える仲になっているし、口調も私の話し方に近い。彼女は常に学年総合順位を十位圏内を保っていて、三年連続でSクラス、私とクラスを被ったことが一度もない。

 それでも、クラブで毎日顔を合わせているから、今ではミルフィア様同様、親友と言える存在ね。

「ティアナ~よかった~治ったのね~~~」

 互いに名前で呼び合える仲、これが周知されているからこそ、校内の貴族連中も、誰もアデリーヌに文句を言わない。

 親友よ、私を見て慌てて駆けつけてくるなんて嬉しいわ。

「心配かけてごめんね~。もう大丈夫!! と言っても悪魔に気に入られたせいで、変な噂が立ってるけど」

 それを聞いたアデリーヌは、苦笑いを浮かべる。

「あはは…皆、あなたというよりも、悪魔からの攻撃を恐れているのよ」

「でしょうね。これまで私を陰で散々馬鹿にしてきた連中は大勢いたもの。私と悪魔の関係性を知らない者たちは、そう思って当然よね」

「仕返しはしないの?」

 アデリーヌの言葉で、教室内の雰囲気が変わった。彼女も私の性格を熟知しているから、あえてここで皆に聞こえるよう話している。

 そして、首をコテンと傾ける仕草が可愛すぎる‼︎
 思わず、抱きしめたくなるわ……って、これってお父様と同じ考え方じゃない‼︎
 危ない危ない、きちんと自重しないとね。

「しないしない、というより気に入られただけで、力をもらっていないから。今後の私の動き次第で、その力も入手できるかもしれないけどね」

 既に入手済なんだけど、これだけはアデリーヌにも言えない。

「そうなんだ…私から広めておこうか?」
「自分で広げるのも癪だし、お願い。ところで、私の設計した魔導具の進捗度合いはどうなったの?」

 うん?
 言った瞬間、何故か浮かない顔をしているわ。
 もしかして、何か起きた?

「ここへ来たのは、その件を教えるためなの。ここではなんだし、部室へ移動しましょう」

 あの件は極秘裏に進められているから、こんな場所では話せないわね。
 でも、その前に昼食で栄養補給しないと。

「ふふふ、大丈夫。部長のオースティンが、既に三人分の食事を部室に用意してくれているから」

 顔に出ていたのか、先に言われてしまった。
 何だか、嫌な予感がするわ。
 三人分の食事をわざわざ部室に運ばせるってことは、話が長くなると言うこと。
 製作面で何か事故でも起きたのだろうか? 

 設計図自体が完璧であっても、製作する際に何か予期せぬ出来事が起きてもおかしくない。私はアデリーヌと手を繋ぎ、急ぎ部室へと小走りで向かっていく。部室に到着すると、テーブルには三人分の昼食が置かれているけど、冷めないよう銀製のクローシュで覆われているため、中身が何なのかわからない。

 部室には、窓から校庭を物思いにじっと眺めている一人の男性がいた。部長のオースティン・アデルガム伯爵令息、彼の容姿を一言で言うのであれば、《少し幼さの残るハンサムインテリ眼鏡》だろう。

「オースティン、久しぶり」

 私が声をかけると、彼はゆっくりと振り返り、こちらを見る。
 
「ティアナ、その様子だと全開したようだな」

 学生のうちは、《学園は皆平等だから同学年ならタメで話そう》という私の案も通じているけど、卒業したら全員が私に対して敬語で話しかけてくるのだろうか? いや、このままだと平民になる可能性もあるから、私が皆に敬称をつけて敬語で話さないといけないのかな。

「どうした?」
「ううん、何でもない。身体は全開しているわ。それより、まだアデリーヌから何も聞いていないの。魔導具の製作状況はどうなっているの?」

 普段無表情に近いくらいのオースティンが、私の一言で明らかに顔色を変えた。
これは、予想以上に深刻のようね。
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