婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

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第一章 不遇からの脱出

十一話 善悪どちらに進んでも脅威

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【見事だティアナ・アレイザード‼︎ 私は、其方のような豪気で底の見えぬ者を待っていた‼︎】

 あれ?
 予想とは違うお言葉が飛んできたわ。

【これまでに数千人の生物を手当たり次第に吸引し食ってきたが、殆どの者たちが馬鹿正直にパズルをやるだけで、我が悪戯をしても文句一つ言わず、黙々と作業をこなすだけで面白くなかった。稀に我に歯向かう者もいたが、我を受け入れる程の器を持ち合わせていなかった】

 デモンズキューブが相手で、そのキューブの腹の中という不利極まりない場所で試験をやらされているのだから、誰も逆らえるわけがない。私の場合、知恵熱で倒れてしまい、体調が中途半端な状態、いくら魔力が復帰したと言っても、その量は微々たるもの、帰還しても家族や学生たちに精神的に虐げられる日々が今後も続くと思い、ヤケクソで思いのまま文句を言ったのだけど、それが気に入られたのだろうか?

【手当たり次第に吸引しても継承者が現れないからこそ、我は考えたのだ。わざと封印されたように装い、この国の者たちをずっと監視し、才能に満ち溢れ器の大きな者が出現してくるのをな】

 こうしてペラペラ話してくれるけど、キューブの存在意義がわからない。
 悪魔がキューブ内に囚われている? 
 それとも、キューブ自体が悪魔?
 悪魔のくせに、善悪無視して人に力を継承させる意味は、何処にあるの?

 その理由は不明だけど、キューブは封印されたように装い、候補者が生まれてくるのをじっと待ち続けていたのね。
 
【我に歯向かう豪気な女、我の悪戯を先読みし、我と駆け引きする豪胆な心の持ち主、我の波長と合うのも頷けるわ】

 波長? どういうこと?

【その様子だと気づいていないか? お前だけは、他の連中と違い騒がなかっただろう?】

 ここへきた当初、私は妙に居心地が良かったせいもあって、特に騒がなかった。
それが、何か関係しているってこと?

【私と貴様の持つ魔力の波長は、極めて相性が良い。だからこそ、突然ここへ吸引されても、心が戸惑わなかったのだ】

 魔力同士の相性? そんなの聞いたこともないけど、確かにここへ来た時、まるで自分の家の中にいるかのような感覚を味わったわ。

【極め付けは、貴様の将来性だ。善悪どちらに進んでも世界の脅威となる存在。我の器として申し分なし‼︎】

 これは褒められているの? 
 そもそも、魔力のない私が世界の脅威となる?
 ないない、それはないわ~。

【約束通り、お前たち全員を帰還させよう。そして、ティアナ・アレイザード、貴様は我の継承者(仮)となってもらう】

「おい、(仮)って何よ、(仮)って!?」

【いいな、その返答‼︎ 実に良い‼︎ ティアナよ、まずは我の力を十全に扱えるのか試させてもらう。試用期間は今から一年、その期間でいかに其方が魔王として相応しい存在になりえるのかを見極めさせてもらう】

「ちょっと待てい‼︎ 魔王なんかになるわけないでしょうが‼︎ 」

 とんでもない奴に、目を付けられてしまった。

 パズルキューブやメイズキューブの持つ力だけでも、貴族に目をつけられるほど強いのに、そこにデモンズキューブの力を身に付けた私が参戦すれば、周辺諸国もその騒動に巻き込むかもしれない。ここ最近の世界情勢も不安定になりつつあるのに、私が火種になってたまるもんですか‼︎

【カカカカカカカ、我の力を知れば、我の言った意味もわかる】

 たとえわかったとしても、魔王なんてごめんよ。

「それよりも、あなたは生きているのに、何故私が力を継承されなければいけないのよ?」

【ほう…さすがだ。そこに気づくか。その疑問を感じた者も少数いるが、力が足りなかった。カカカカカ、我の内情を知りたければ、我の力を使い、感嘆させるほどの成果を一つ生み出せ。それができれば教えてやろう】

 この…そうきたか。
 悪魔を感嘆させる成果となると、《ざまぁ系》かしら?
 今の私の環境は、まさにざまぁ系に相応しいものだわ。
 ざまぁしたい人物なら、いくらでもいる。
 すぐ、近くにもいるしね。

「わかった、継承者(仮)になってやるわよ」

【良い返事だ。時期を見て、其方に我の力を渡す。その際、どんな力なのかが脳内に刻み込まれる。いつかは、我の気分次第だ】

 気分屋の悪魔ね。
 それがいつなのか、今教えなさいよ‼︎

 そもそも、こいつらキューブは何のために存在しているの?

 今相対している者は悪魔と名乗っているけど、どこまで本当なのかわからない。キューブの力は間違いなく本物だけど、与えられた者たちに関しては、力を善悪どちらにも使っている。

 こいつらの存在する理由と目的は何なのかしら?

【帰還させる前に、お前たちに今から十五分の猶予をやる。その間に、今後の行動を考えることだ。今以降、我はティアナの動向を常に見張り、一年間其方の生き様を見させてもらう。我の力の一端を与えはするが、まずは自分の魔力だけで扱ってみろ。くくくあはははははは】

 豪快な高笑いの後、奴の声はプツリと消えた。私を常に見張る存在か、そうなると急に話しかけてくる場合もあるから気をつけておきましょう。問題は帰還した後の事だけど、私たちって異なる場所にいたのだけど、何処に帰還されるのだろう? 帰還先次第では、いきなり問題が発生するかもしれない。

「お兄様、ミルフィア様、クリス様、率直に申し上げます」

 私は貴重な十五分を使い、自分に対する扱いを述べていく。
 帰還した直後の一手で、私の未来は大きく変わる。

 皆を納得させるため、私は次の一手を語り出したのだけど、内容が内容だけに、皆の心を動揺させるほどの大きな衝撃を与えた。私の提案に対して、始めに反論を入れてきたのはクリス様だ。

「ティアナ様、継承者の件を黙っておくようにって正気ですか‼︎ これを話せば、あなたのこれまでの評価や印象も全て覆るのに‼︎」

 話し方が平民口調なせいもあって、彼女も私に対して敬称こそ付けるけど、友人のような話し方になっている。これは、半分私も悪い。そうは言っても、今更話し方は変えられないし、このままで良い。

 私は、【継承者(仮)に選ばれたこと】、これ自体を秘匿事項にするよう提案した。パズルやメイズキューブなら言ってもいいけど、相手は最高峰のデモンズキューブ、帰還しただけで注目を浴びるし、私の場合、病気だって完治しているのだから、今後も貴族たちが放っておかない。

 そこに継承者が絡んでくると、間違いなく大騒動となる。

 その情報が他国へ漏れてしまうと、周辺諸国も必ず動く。ただでさえ、ここ最近きな臭くなっているのだから、この騒動を最小限に抑えておかないと後々まずいことになる。

 それを懇切丁寧に説明することで、二人は納得してくれた。
 そう二人は…だ。

 残る一人は当然ウィンドルお兄様で、『ふざ…けるなよ。デモンズキューブを打倒した名誉を秘密にするだと…それを公表すれば、お前の評価が全て覆る。そう…全て…お前には、支配欲と言うものがないのか…俺は…俺は…』こう呟いた後、ダンマリだ。

 何も言わないから、納得したと思っておこう。

 私だって、欲はある。お兄様が言ったように、この力を使えば、全ての評価が覆るだろう。でも、物事にはタイミングというものがある。時期を誤れば、どんな名誉なことであっても、ただの紙切れになってしまう。

 だから、今は静観する。

 何とか話も終息したところで十五分経過したのか、周囲が光に満ちていく。
 何処へ戻されるのか、そこが問題ね。
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