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第一章 不遇からの脱出
十話 不気味に笑うデモンズキューブ
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私以外の三人にとって、試験結果は重要でしょうね。
でも、私にとっては試験結果を言い渡された後の展開が重要なのよ。
頭がふらつくけど、気を抜いちゃいけない。
【《第四位はウィンドル・アレイザード、百四分五十二秒》、クハハハハハハ、無様極まりないな。願い損だけでなく、九十分以上の者は、貴様だけだぞ。王位継承権第一位、次期国王としての教育を受けているにも関わらず、貴様は子爵令嬢にも劣るようだな。表向き国王として相応しい威厳を周囲に見せているようだが、貴様は所詮ハリボテの王子のようだ。今回で、それが証明されたな】
兄をあからさまに馬鹿にするキューブの言い様に、私が文句を言うとすると、ミルフィア様に止められた。彼女は私を見て、静かに顔を横に振る。私はハッとなり兄を見ると、相当効いたのか、身体が弛緩しており、顔を真っ青にしている。ここで慰めの言葉やキューブに何かを訴えたとしても、兄の心を傷つけるだけなの?
【《第三位はクリス・ミッドレート、八十九分二十一秒》。クククク、愉快愉快、お前も面倒極まりない男に好かれたものだな~~逆恨みで殺されないように注意することだ】
「それって、どう言う意味ですか?」
【さあな、自分で考えろ】
キューブは、まるで全てを見透かしているかのように話しかけてくる。クリス様自身は、誰に好かれているのかわかっていないようだけど、婚約者はいないと聞いているから、彼女に恋慕を抱く男は結構いるでしょうね。
【第二位はミルフィア・レインブルク、七十四分四十七秒。気の毒な女よ。婚約者は表向き愛をよく囁いているようだが、そこに真実は一切含まれていない。お前の良さは、外見だけだとさ。可哀想な女よ】
「何も知らないくせに、ウィンドル様のことを語らないでください‼︎ たとえ、彼から愛されていなくとも、私自身が彼を愛し抜きます‼︎」
【カカカカカカ、その姿勢が、いつまでもつか見ものよ】
キューブが順位を発表するごとに、いちいち面倒な言葉を投げかけてくるせいで、九十分以内であっても、素直に喜べない。兄の方も、このままだとキューブに食われてしまうと悟ったせいか、顔に生気がない。
残るのは私だけ、第一位と分かっていても四十五分未満に終えているとは誰も思っていないのか、三人から悲壮感が漂ってくる。そんな雰囲気の中、キューブが私のクリア時間を告げる。
【第一位はアレイザード王国第一王女、ティアナ・アレイザード、四十三分十七秒】
「「え!?」」「なんだと!?」
三人が一斉に私の方を見る。
「ミルフィア様のおかげです。あれがなければ、四十五分を切ることはできませんでした。周囲から欠陥品と言われているからこそ、知識や精神面に関しては誰にも負けないよう、常に努力してきたんです。それが、今に結び付いて良かった」
さっきまで絶望に浸っていた三人の表情が急に明るくなり、クリス様とミルフィア様の二人だけが私のもとへ駆けつけ、私を抱きしめる。そんな中、兄だけは納得がいかないのか、何か呟いているようだけど、小声のせいで聞き取れない。
抱きしめられている私としては、二人が素直に褒め称えてくれるので、流石に照れてしまう。今まで、ここまで称賛されることはなかった。
……特に、家族からは。
お母様やクエンタは、時折褒めてくれたけど、ウィンドルお兄様とお父様には、あの事故以降、一度も褒められたことがない。これまで魔力を必要としない科目に関しては、全て満点に近い点数を取っているのに、父は…
《知識があっても…それを活かさないと…意味がない》
《王族ならば…当たり前の成績だ。認められたいのなら…功績を残せ》
だから、地方領の抱える農業問題や魔導具の新規開発などで、何度か臣下の人たちに進言したこともあるけど、全ての手柄を横取りされた。『それは私が言ったことよ!!』と宣言しても、誰も信用しない。そのせいで私は人間不信となり、一時期心を閉ざした。
その際、父の護衛が、『あの方はあなたを溺愛しています。それを我慢するため、あえて遠ざけている。国王陛下を…自分の父を信じてあげなさい』と言っていたけど、私はその言葉を信じなかった。信じられる要素がないからだ。
学園内でも、ミルフィア様のような人間性を持つ貴族は一握りしかいないから、これまでの私は、その人たちや平民にしか心を開いていない。
前世の記憶が蘇ったことで、私は以前よりも物事を前向きに考えることができる。この一件で魔力を取り戻したけど、父がこの国に生きていく上で、今後も居場所を用意してくれないのなら、自分自身の力で居場所を作るしかない。
私たちが帰還できる喜びを噛み締める中、クリス様が私も忘れていた重大事項を告げる。
「あ、ティアナ様が四十五分未満で終わらせたと言うことは…キューブ継承者になるんじゃあ?」
クリス様が言ってくれた事で、私も継承者のことを思い出す。
「欠陥品のティアナが継承者だと!?」
さっきから兄の感情の起伏が激しい。
《吸引直後の自白》
《キューブの無意味な解放》
《試験結果も最下位で一人だけ九十分以上》
これだけで彼の自尊心はズタズタ、そこに私の継承者が加われば……無理もないか。
悪魔の力を私に継承する、他のキューブの場合、悪魔自体がおらず、内蔵されているギミックを解くことで入手すると言われているけど、当の悪魔が生きているのだから、継承する意味ってあるの?
【く、くははははははは、愉快だ、真に愉快だ、くははははははは】
私の心を読んだのか、デモンズキューブが豪快な笑い声をあげる。
ここからどうなるかが問題よね。
この悪魔の気分次第で、私たちはこの場で殺される。
みんなもこの笑い声で、さっきまでの喜びが吹き飛び、恐怖を交えなが身を硬くしている。どう返答すれば正解なのかわからない以上、奴からの言葉を待つしかない。
でも、私にとっては試験結果を言い渡された後の展開が重要なのよ。
頭がふらつくけど、気を抜いちゃいけない。
【《第四位はウィンドル・アレイザード、百四分五十二秒》、クハハハハハハ、無様極まりないな。願い損だけでなく、九十分以上の者は、貴様だけだぞ。王位継承権第一位、次期国王としての教育を受けているにも関わらず、貴様は子爵令嬢にも劣るようだな。表向き国王として相応しい威厳を周囲に見せているようだが、貴様は所詮ハリボテの王子のようだ。今回で、それが証明されたな】
兄をあからさまに馬鹿にするキューブの言い様に、私が文句を言うとすると、ミルフィア様に止められた。彼女は私を見て、静かに顔を横に振る。私はハッとなり兄を見ると、相当効いたのか、身体が弛緩しており、顔を真っ青にしている。ここで慰めの言葉やキューブに何かを訴えたとしても、兄の心を傷つけるだけなの?
【《第三位はクリス・ミッドレート、八十九分二十一秒》。クククク、愉快愉快、お前も面倒極まりない男に好かれたものだな~~逆恨みで殺されないように注意することだ】
「それって、どう言う意味ですか?」
【さあな、自分で考えろ】
キューブは、まるで全てを見透かしているかのように話しかけてくる。クリス様自身は、誰に好かれているのかわかっていないようだけど、婚約者はいないと聞いているから、彼女に恋慕を抱く男は結構いるでしょうね。
【第二位はミルフィア・レインブルク、七十四分四十七秒。気の毒な女よ。婚約者は表向き愛をよく囁いているようだが、そこに真実は一切含まれていない。お前の良さは、外見だけだとさ。可哀想な女よ】
「何も知らないくせに、ウィンドル様のことを語らないでください‼︎ たとえ、彼から愛されていなくとも、私自身が彼を愛し抜きます‼︎」
【カカカカカカ、その姿勢が、いつまでもつか見ものよ】
キューブが順位を発表するごとに、いちいち面倒な言葉を投げかけてくるせいで、九十分以内であっても、素直に喜べない。兄の方も、このままだとキューブに食われてしまうと悟ったせいか、顔に生気がない。
残るのは私だけ、第一位と分かっていても四十五分未満に終えているとは誰も思っていないのか、三人から悲壮感が漂ってくる。そんな雰囲気の中、キューブが私のクリア時間を告げる。
【第一位はアレイザード王国第一王女、ティアナ・アレイザード、四十三分十七秒】
「「え!?」」「なんだと!?」
三人が一斉に私の方を見る。
「ミルフィア様のおかげです。あれがなければ、四十五分を切ることはできませんでした。周囲から欠陥品と言われているからこそ、知識や精神面に関しては誰にも負けないよう、常に努力してきたんです。それが、今に結び付いて良かった」
さっきまで絶望に浸っていた三人の表情が急に明るくなり、クリス様とミルフィア様の二人だけが私のもとへ駆けつけ、私を抱きしめる。そんな中、兄だけは納得がいかないのか、何か呟いているようだけど、小声のせいで聞き取れない。
抱きしめられている私としては、二人が素直に褒め称えてくれるので、流石に照れてしまう。今まで、ここまで称賛されることはなかった。
……特に、家族からは。
お母様やクエンタは、時折褒めてくれたけど、ウィンドルお兄様とお父様には、あの事故以降、一度も褒められたことがない。これまで魔力を必要としない科目に関しては、全て満点に近い点数を取っているのに、父は…
《知識があっても…それを活かさないと…意味がない》
《王族ならば…当たり前の成績だ。認められたいのなら…功績を残せ》
だから、地方領の抱える農業問題や魔導具の新規開発などで、何度か臣下の人たちに進言したこともあるけど、全ての手柄を横取りされた。『それは私が言ったことよ!!』と宣言しても、誰も信用しない。そのせいで私は人間不信となり、一時期心を閉ざした。
その際、父の護衛が、『あの方はあなたを溺愛しています。それを我慢するため、あえて遠ざけている。国王陛下を…自分の父を信じてあげなさい』と言っていたけど、私はその言葉を信じなかった。信じられる要素がないからだ。
学園内でも、ミルフィア様のような人間性を持つ貴族は一握りしかいないから、これまでの私は、その人たちや平民にしか心を開いていない。
前世の記憶が蘇ったことで、私は以前よりも物事を前向きに考えることができる。この一件で魔力を取り戻したけど、父がこの国に生きていく上で、今後も居場所を用意してくれないのなら、自分自身の力で居場所を作るしかない。
私たちが帰還できる喜びを噛み締める中、クリス様が私も忘れていた重大事項を告げる。
「あ、ティアナ様が四十五分未満で終わらせたと言うことは…キューブ継承者になるんじゃあ?」
クリス様が言ってくれた事で、私も継承者のことを思い出す。
「欠陥品のティアナが継承者だと!?」
さっきから兄の感情の起伏が激しい。
《吸引直後の自白》
《キューブの無意味な解放》
《試験結果も最下位で一人だけ九十分以上》
これだけで彼の自尊心はズタズタ、そこに私の継承者が加われば……無理もないか。
悪魔の力を私に継承する、他のキューブの場合、悪魔自体がおらず、内蔵されているギミックを解くことで入手すると言われているけど、当の悪魔が生きているのだから、継承する意味ってあるの?
【く、くははははははは、愉快だ、真に愉快だ、くははははははは】
私の心を読んだのか、デモンズキューブが豪快な笑い声をあげる。
ここからどうなるかが問題よね。
この悪魔の気分次第で、私たちはこの場で殺される。
みんなもこの笑い声で、さっきまでの喜びが吹き飛び、恐怖を交えなが身を硬くしている。どう返答すれば正解なのかわからない以上、奴からの言葉を待つしかない。
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