転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

19話 前世の知識を有効利用しよう

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「1つ目は、体内にある神経の強化だよ」

あれ? 
全員が首を傾げている。 
もしかして、その言葉を知らないのかな?

「ユミル、神経って何だ? 基本スキル[身体強化]なら、習得すら出来なかった。俺の魔力量が少な過ぎて、身体全体に魔力を行き渡らせることができないんだ」

「それは私もわかってる。あのね、神経というのは…」

[神経]は、身体を動かせるために必要な組織。

一つ一つの動作が脳から命令として神経内へと射出され、身体中に伝えられていく。これが切断されると、箇所次第で下半身全てが動かせなくなる場合もある。私は3人にそう言った知識を教えて、マジックバッグから一枚の紙を取り出し、ペンで身体全体の神経像を書いていくと、皆が驚きの声をあげる。

「これは、大したもんだ。身体の中に、こんなものがあるのか?」

「すげ~な。これが、俺たちの身体の中にあるのかよ!! でも、これを俺に教えてどうするんだ?」

「そうだよユミル、神経が身体の動作を担う重要なものと理解できたけど、これをどうしたいのさ?」

トマス爺、カイトさん、トーイに、私の言いたいことが伝わっていない。
これは、ここで答えを言った方がいいかな。

「神経はね、とても細く小さくて長いの。カイトさんの中にある微量の魔力でも、この神経だけになら全身に流し込むことができるんじゃないかな? 成功すれば、神経が強化されて、攻撃力は上がらなくとも、反射神経や瞬発力といった回避行動に関わる能力が大幅に強化されるかもしれない」

言いたいことを理解できたのか、3人は絶句する。スキル[身体強化]とどこまで差が出るか不明だけど、少しは魔力持ちの人たちに近づけるんじゃないかな?

「やる…俺、やるぜ!!  なあトーイ、俺に自分の魔力を感知させる方法を教えてくれ!! もう、みんなから笑われたり、揶揄われたりするのは嫌なんだ!!」

やる気になったカイトさんを見て、トーイも笑顔となる。

「面白そうだね。わかった、君に教えよう。ただし、危険な可能性もあるから、僕も観察しておく。君は、自分の力で判断して無理しないようにね」

精霊カーバンクルでもあるトーイの教えは、非常にわかりやすい。私も短期間の教えで、魔力が3倍近く向上したもの。問題は、彼自身がスキルを習得できるかだ。


○○○


「よっしゃ~~~~強化スキルを習得した~~~~」

私の思った通り、トーイが魔力感知方法と循環方法を外で教えると、カイトさんもわかりやすかったのか、すぐに理解し実践に移した。微量のせいで感知にはかなり時間がかかったけど、その後の循環に関しては30分ほどでマスターした。紙に書いた神経の図が非常に参考になったようで、かなりお礼を言われた。

彼はそこから少しずつ身体を動かすことで、自分の回避行動がかなり向上していることに気づき、そこからは夢中になって身体を動かしていく。途中トーイが注意しなかったら、足の筋肉が壊れていたかもしれないほどの過負荷を掛けていたようで、私だけでなく、当の本人も驚いていたけど、そのおかげで現状の限界点を理解したようだ。

そこからは、神経に流し込む魔力量の最適条件を探っていき見つけ出したことで、走力だけでも、最大2倍くらい向上させることに成功した。この成果を叩き出した時に、スキル[神経強化]を入手した。効果は、体内の魔力を全く無駄にすることなく、全身の神経に適量流すことで、身体の反応速度を大きく向上させるというもの。

しかも、神経を伝い、手、目、耳、鼻、口、脳などの1ヶ所に集め、その部位だけを局所的に強化させることも可能で、手なら触覚、目なら視覚、耳なら聴覚、鼻なら嗅覚、口なら味覚、脳なら記憶・計算・読解能力など、その強化率は[身体強化]を大きく上回る。

念願の強化スキルの習得、普通の人と違うスキルであるからこそ、今まさに喜びを爆発させている。

「これは驚きの一言に尽きる。あの方も4歳の子供に無理難題を言うと思っとったが、本当に改善策を生み出すとは思わなんだ。ユミルよ、カイトは儂の孫のような存在だ。ありがとう」

トマス爺から褒められちゃったよ。

「えへへ、上手くいってよかったです」
「ところでユミル、もう1つの策って何なの?」

トーイに言われて、私も思い出す。

「それはね、モバイルバッテリーを作って、カイトさんがそれを通して、魔道具を発動させることだよ」

「何それ?」「それは何だ?」

カイトさんは、喜びで外を駆け回っているから、2人だけに言っておこう。カーバンクルたちは、森に落ちているものを興味本位で拾ってくる習性があるから、何かに使えるかなと思い、私のアイテムボックスの中には、そういったガラクタがいっぱい入っている。

私は、その中から使用済みの小指サイズの魔石を取り出す。

魔道具などで使用されている魔石の内部には、魔石の主人となっていた魔物の魔力が蓄えられている。それが空になると、魔石としての機能を失い、枯れ果てたような色へと変化するため廃棄処分される。

「空の魔石? そんな使い道のないものを入れてたのかい?」

「トーイ、この空魔石に、こうやって私の魔力を魔石の持つ蓄積量の限界近くまで入れるの」

割れないように、少しずつ入れていこう。魔石の中に液体が入っていくかのように、入れた部分の色が変化していく。8割ほど満たしたところで、魔力の流し込みを止める。

「うんうん、それをどうするのさ?」
「ちょっと待って!! 何故、魔力を入れられる!?」
「え……あ!?」

トマス爺の言葉に、トーイも気づいたようだ。カーバンクルに色々と教わっていく中で、空になった魔石を何故廃棄するかの意味がわからなかった。再利用した方が、断然有意義だと思ったから、私なりに研究していたのだ。

「ふふふ、空になった魔石は属性も無くなって、干からびたような色になるでしょ? ここに人の魔力を入れたら、再利用できるのではと思ったの。実際、色も変化したでしょ? カイトさんがこの魔石の中にある他人の魔力を自在に扱えることができたら、魔道具だって発動できると思う。なくなれば、誰かに補充して貰えばいいんだよ。魔石が割れたら、空魔石を探せばいいの」

人は、魔石の中にある魔物の魔力を直接弄ることはできないし、無理に触れようとしたら、制御出来ずに爆発すると教わった。それなら、人の魔力ならある程度制御出来るのではと考えたんだよ。 

私の案に対して、トマス爺はどんな反応をしてくれるかな?

「あはは、こいつはいい!! まさか、言ったその場から、革命的な案を言われるとは思わなんだ」

「あははは、ユミル、君って最高だよ‼︎ その案も採用だね。空魔石の再利用、これまで誰も考えなかったことだ。トマス爺、早速試してみようよ」

「ああ、そうだな。大型魔道具で使用する大きな魔石の充填作業は1人で無理だが、拾ってきた魔石付きの小さな指輪程度なら、私たちにも問題なくできよう」

トマス爺もトーイも喜んでくれるのはいいけど、妙にテンションが高くないかな? 結論から言うと、モバイルバッテリーの案も成功し、カイトさんは指輪を経由することで、魔道具の発動に成功した。

ただ、この2つの案がキッカケで、貴族の子供に目をつけられることになるとは、この時点では夢にも思わなかった。
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