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5章 猫の恩返し
71話 アレスとの別れ
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私たちは、今リリアム駅の構内にいる。
閉幕式も無事に終わり、私とミケーネ、シロが舞台から降りると、多くの人々から「おめでとう」の賛美が飛び交い、握手を求められたり、頭を撫でられたり、写真を撮られたりもした。私は失礼のないよう、周囲に御礼を言いながら頭を下げていき、ユウキとリットのもとへ辿り着いた。そこに、アレスとザフィルドさんがやって来ると、私におめでとうと言ってくれたのだけど、その後に続く言葉が、『君の勇姿も見れたし、僕たちは王都へ帰るよ』と突然言ったので、私はその理由を聞いた。
どうやらアレス以外の6名は、別任務を公爵様から言い渡されていたようで、それが昨日解決したので公爵様に報告したら、『フェスタが終了次第、早急に帰還しろ』と言われたみたい。公爵様の命令である以上、アレスもザフィルドさんも逆らえない。昨日も今日も、その任務のせいで私たちに言い出す暇もないくらい忙しかったのね。だから、私、ユウキ、リット、ベイツさん、ルウリ、フリードは、アレスとザフィルドさんと共に駅へと向かった。5名の部下の人たちは、別任務で捕縛した者たちを囚人用の牢屋に入れて、それを列車の貨物車の方へ移し、監視するため既に所定位置に付いているみたい。
そして現在、私たちは駅の中央入口改札口前で向かい合っている状態だ。フェスタ最終日ということもあり、駅構内は帰還する観光客で混雑している。
「咲耶、君と出会えてよかったよ。あのさ…僕と過ごした7日間で、記憶は戻ったのかな?」
どうしよう?
アレスの記憶に関しては、全く思い出せていない。
「ごめんね。リリアーナの家族と過ごした記憶をうっすらと覚えているくらいで、他は全く思い出せないの。王都の生家に行けば、何か思い出すかもしれないわ」
そう言うと、アレスは少し悲しげな顔を浮かべる。
「僕と君は幼馴染、婚約するまでは月に5回程会うレベルだった。でも、婚約して追放されるまでの2ヶ月、その間に21回会っているのだけど思い出せないか」
婚約して以降、月に5回だったものが、月に10回程にまで上がっているわ。
この世界の1ヶ月は30日だから、3日に1度くらいのペースで会っていたことになるけど、その頻度って多いの? リットは私とアレスを見て、ニヤニヤした顔を浮かべているけど、ユウキとベイツさんを見ると、何故か少し引いているような顔をしているわ。3人の違いの意味がわからないよ。2ヶ月程度の期間なら、まだお友達同士の関係だから、家族と比べると希薄だし、記憶に残っていないのかもしれない。
「僕は、12歳から学園に入らないといけない。その勉強もあるから、今後ここへ訪れる機会は少ないと思う。だから……文通しても良いかな?」
文通か。それは前世でもやったことないわ。今後も王都の情報を知りたいし、アレス自身も悪い人じゃないから、文通くらいいいよね。記憶を思い出せないけど、これから友達として仲を深めていければいいかな。
「うん、私は構わないわ」
私がOKしたからなのか、アレスの顔から緊張感が失せていく。
文通の許可を求めるくらいで、そこまで緊張しなくてもいいのに。
「よかった。これからは週1回の頻度で、君に手紙を送ろうと思う」
1週間は6日に相当するから、6日に1回か。
「うん、それでいいよ。ただ、副賞の旅行がいつ出発になるのかわからないの。分かり次第、私から手紙を送るね」
急なお別れだから、あの件を今聞いておこう。
渡す機会は、今しかないもの。
「そういえば、アレス自身の課題はどうなったの? 求めるデザートは見つかったの?」
「ああ、全ての露店を見たけど、焼き物、揚げ物、お菓子と色々と販売されていたけど、僕の求める気品あるデザートはなかった。一応、全ての店のリストをまとめた資料を作成したから、父も納得してくれると思う」
残念な笑みを浮かべているということは、やっぱり自分の手で見つけたかったんだ。よし、それならアレを渡そう。もう電車の時間だし、ここで食べている暇もないから、どんな顔をされるのかわからないけど、少しでも彼の評価に繋がるなら渡しておいた方がいい。
「それならこのデザートを、魔道蒸気列車の中で食べてみて。私、ユウキ、リットの3人で作ってみたの。デザート名は[クレープ]だよ。7人分あるからね」
私は、大きな紙袋をベイツさんのマジックバッグ(実際はアイテムボックス)から取り出した。光希たちからアドバイスを貰いながら、3人で協力して作った自信作だ。
「え…君達が作ってくれたの?」
「うん、オリジナルデザート…だと思うわ。レシピを書いた紙を入れてあるから、気に入ったら、そっちでアレンジして露店販売してみて。どんな物なのかは、列車の中で見てね」
「僕のために…レシピも…ありがとう!! 列車…」
アレスが話している最中で、アナウンスの声が聞こえてきた。彼らの乗る列車が、後5分で出発するみたいだ。彼もお別れを悟ったのか、見る見るうちに表情が沈んでいく。
「もう、お別れか。あっという間の旅行だった。必ず手紙を書くよ…僕は…いや…今はいいかな。咲耶…さよなら」
今、何かを告げようとしていたけど?
それを聞き返すのも野暮かな。
「うん…さよなら」
アレスが別れの言葉を告げると、ザフィルドさんも私たちに深くお辞儀し、御礼の言葉を言ってくれた。そして、2人が改札口を通り、列車の中へ入っていき見えなくなってしまった。
私の元婚約者か、 全然その実感がないから、今後はお友達としてお付き合いしていこう。
○○○ *アレス視点
列車に入ると、部下の1人が僕たちのいる指定個室へと入ってきて、貨物列車の状況を教えてくれた。どうやら捕縛された2人は怯えているようで、頻繁に『鳥が…鳥が』と呟いているようで、こちらに敵意を見せる素振りすら見せないようだ。僕は、部下に労いの言葉をかけ、咲耶からもらった5人分のデザートとドリンクを紙袋に入れ渡すと、彼は喜んで貨物車の方へ戻っていった。
「さて、僕たちも咲耶のデザートを拝んでみるか」
「そうですね。一体、どんな物を……これは扇型の形状ですか。この紙で覆われている箇所を手で持って食べればいいのでしょうか?」
紙袋の中に、レシピと食べ方が書かれた紙があった。ヘニャヘニャした黄色い生地の中には、生クリームと果物が入っているようだ。ザフィルドの言っていた箇所を持って、食べていくわけか。
「どうやらそのようだな。この紙に、食べ方が書かれている」
僕とザフィルドは、その食べ方を見ながら一口齧り付く。
「「これは!?」」
なんて上品で甘い味なんだ。この甘さは、生クリームと瑞々しい果物によるものだから、少しもくどく重い感じがしない。生クリームと果物のバランスが絶妙のせいか、清々しい気分に陥る。こんなデザートが、この世にあったなんて……あまりの美味さに言葉が出てこない。それは、ザフィルドも同じようだ。
これほど完成度の高い一品を、3人だけで作り上げたのか?
「アレス様、全てのバランスが整わないと、この味を出せませんよ。外側の生地の厚さ、生クリームの甘さと口触り、果物の瑞々しさ、どれか一つでも欠けてしまうと、おそらく後味の悪いものに変わるかもしれません。これは露店販売であっても、貴族に必ず流行りますよ。私自身が、食べたいと思うのですから」
「同じ…意見だ。クレープ自体から、貴婦人のような気品を感じる。それに、これは中身の具材を変化させれば、多くの味を味わえる」
「3人の開発と聞きましたが、おそらく咲耶の持つスキルが大きく関わっているかと。それを基に、3人で試行錯誤して完成させたのではないかと思われます」
そうだろうな。具材を相当こだわらないと、これ程の上品な味を引き出せない。多種類ある果物や生クリームから厳選して選び出し、そこから味を整えないといけない。何の知識もない10歳の女の子たちだけで、一から全てを開発できるわけがない。必ず、原点となった何かがあったはずだ。
「ザフィルド、これを必ず商品化させるぞ。当然、開発者はあの3人だ。咲耶たちが原型を考え、我が家のシェフたちが商品化にまで味を引き上げたことにする」
「ルウリ様たちのことを考慮すると、それが無難ですね」
ルウリから加護をもらっている以上、今も何処からか監視されているかもしれない。自分の名誉ばかりに拘る貴族になったら、その場で加護が外されるだろう。
ルウリ、フリード、マナリオに認めてもらいたい。
咲耶に、恋愛という意味合いでの異性として見てもらいたい。
そう考えていくうちに、僕の中にある枷が一つ外れたような感覚がした。
「アレス様?」
どうしてかな? つい笑みを浮かべてしまう。
「ああ、すまない。今日以降、僕の人生が楽しくなると思うと、どうしても笑みを浮かべてしまうんだ。今までは父や母のご機嫌ばかりを考えていたけど、この街に来て自分の視野の狭さを思い知った。僕はもっと視野を広げて、自分自身を成長させないといけない」
咲耶たちに、僕をもっと見てもらい認めてもらいたい。
心の中にあるこの思い、それを実現させるには、自分で行動に移すしかない。
咲耶と結ばれることはないと自分勝手に思い込み、半分諦めていた。咲耶自身が何らかの功績を打ち立てないと、公爵家が後ろ盾になることはないと思い込んでいた。
違う、そうじゃない。
全ては、僕の意志次第だ!!
今の時点でも、僕自身が強い意志を持ち、父を必ず説得させるという強い気概を持つんだ!! 勿論、咲耶の活躍もある程度必要だろうけど、僕が彼女の人柄を説明し、後ろ盾として申し分のない力を有していると説明すればいい。たとえ、今の時点で拒絶されようとも、僕は絶対に諦めない!!
強い意志を持って行動していき、いつか貴族として1人の人間として、父やルウリすら納得させるほどの力強さを身につける!!
今はまだ、咲耶も僕のことを普通の友達としてしか見ていない。
僕個人を見てもらうためにも、焦らず少しずつ交流を深めていきたい。
そして、15歳の成人になった時、僕は咲耶に告白しよう。
それまでは、絶対に婚約者を持たない!!
この思いを意志を心に強く秘め、王都へ帰ろう。
閉幕式も無事に終わり、私とミケーネ、シロが舞台から降りると、多くの人々から「おめでとう」の賛美が飛び交い、握手を求められたり、頭を撫でられたり、写真を撮られたりもした。私は失礼のないよう、周囲に御礼を言いながら頭を下げていき、ユウキとリットのもとへ辿り着いた。そこに、アレスとザフィルドさんがやって来ると、私におめでとうと言ってくれたのだけど、その後に続く言葉が、『君の勇姿も見れたし、僕たちは王都へ帰るよ』と突然言ったので、私はその理由を聞いた。
どうやらアレス以外の6名は、別任務を公爵様から言い渡されていたようで、それが昨日解決したので公爵様に報告したら、『フェスタが終了次第、早急に帰還しろ』と言われたみたい。公爵様の命令である以上、アレスもザフィルドさんも逆らえない。昨日も今日も、その任務のせいで私たちに言い出す暇もないくらい忙しかったのね。だから、私、ユウキ、リット、ベイツさん、ルウリ、フリードは、アレスとザフィルドさんと共に駅へと向かった。5名の部下の人たちは、別任務で捕縛した者たちを囚人用の牢屋に入れて、それを列車の貨物車の方へ移し、監視するため既に所定位置に付いているみたい。
そして現在、私たちは駅の中央入口改札口前で向かい合っている状態だ。フェスタ最終日ということもあり、駅構内は帰還する観光客で混雑している。
「咲耶、君と出会えてよかったよ。あのさ…僕と過ごした7日間で、記憶は戻ったのかな?」
どうしよう?
アレスの記憶に関しては、全く思い出せていない。
「ごめんね。リリアーナの家族と過ごした記憶をうっすらと覚えているくらいで、他は全く思い出せないの。王都の生家に行けば、何か思い出すかもしれないわ」
そう言うと、アレスは少し悲しげな顔を浮かべる。
「僕と君は幼馴染、婚約するまでは月に5回程会うレベルだった。でも、婚約して追放されるまでの2ヶ月、その間に21回会っているのだけど思い出せないか」
婚約して以降、月に5回だったものが、月に10回程にまで上がっているわ。
この世界の1ヶ月は30日だから、3日に1度くらいのペースで会っていたことになるけど、その頻度って多いの? リットは私とアレスを見て、ニヤニヤした顔を浮かべているけど、ユウキとベイツさんを見ると、何故か少し引いているような顔をしているわ。3人の違いの意味がわからないよ。2ヶ月程度の期間なら、まだお友達同士の関係だから、家族と比べると希薄だし、記憶に残っていないのかもしれない。
「僕は、12歳から学園に入らないといけない。その勉強もあるから、今後ここへ訪れる機会は少ないと思う。だから……文通しても良いかな?」
文通か。それは前世でもやったことないわ。今後も王都の情報を知りたいし、アレス自身も悪い人じゃないから、文通くらいいいよね。記憶を思い出せないけど、これから友達として仲を深めていければいいかな。
「うん、私は構わないわ」
私がOKしたからなのか、アレスの顔から緊張感が失せていく。
文通の許可を求めるくらいで、そこまで緊張しなくてもいいのに。
「よかった。これからは週1回の頻度で、君に手紙を送ろうと思う」
1週間は6日に相当するから、6日に1回か。
「うん、それでいいよ。ただ、副賞の旅行がいつ出発になるのかわからないの。分かり次第、私から手紙を送るね」
急なお別れだから、あの件を今聞いておこう。
渡す機会は、今しかないもの。
「そういえば、アレス自身の課題はどうなったの? 求めるデザートは見つかったの?」
「ああ、全ての露店を見たけど、焼き物、揚げ物、お菓子と色々と販売されていたけど、僕の求める気品あるデザートはなかった。一応、全ての店のリストをまとめた資料を作成したから、父も納得してくれると思う」
残念な笑みを浮かべているということは、やっぱり自分の手で見つけたかったんだ。よし、それならアレを渡そう。もう電車の時間だし、ここで食べている暇もないから、どんな顔をされるのかわからないけど、少しでも彼の評価に繋がるなら渡しておいた方がいい。
「それならこのデザートを、魔道蒸気列車の中で食べてみて。私、ユウキ、リットの3人で作ってみたの。デザート名は[クレープ]だよ。7人分あるからね」
私は、大きな紙袋をベイツさんのマジックバッグ(実際はアイテムボックス)から取り出した。光希たちからアドバイスを貰いながら、3人で協力して作った自信作だ。
「え…君達が作ってくれたの?」
「うん、オリジナルデザート…だと思うわ。レシピを書いた紙を入れてあるから、気に入ったら、そっちでアレンジして露店販売してみて。どんな物なのかは、列車の中で見てね」
「僕のために…レシピも…ありがとう!! 列車…」
アレスが話している最中で、アナウンスの声が聞こえてきた。彼らの乗る列車が、後5分で出発するみたいだ。彼もお別れを悟ったのか、見る見るうちに表情が沈んでいく。
「もう、お別れか。あっという間の旅行だった。必ず手紙を書くよ…僕は…いや…今はいいかな。咲耶…さよなら」
今、何かを告げようとしていたけど?
それを聞き返すのも野暮かな。
「うん…さよなら」
アレスが別れの言葉を告げると、ザフィルドさんも私たちに深くお辞儀し、御礼の言葉を言ってくれた。そして、2人が改札口を通り、列車の中へ入っていき見えなくなってしまった。
私の元婚約者か、 全然その実感がないから、今後はお友達としてお付き合いしていこう。
○○○ *アレス視点
列車に入ると、部下の1人が僕たちのいる指定個室へと入ってきて、貨物列車の状況を教えてくれた。どうやら捕縛された2人は怯えているようで、頻繁に『鳥が…鳥が』と呟いているようで、こちらに敵意を見せる素振りすら見せないようだ。僕は、部下に労いの言葉をかけ、咲耶からもらった5人分のデザートとドリンクを紙袋に入れ渡すと、彼は喜んで貨物車の方へ戻っていった。
「さて、僕たちも咲耶のデザートを拝んでみるか」
「そうですね。一体、どんな物を……これは扇型の形状ですか。この紙で覆われている箇所を手で持って食べればいいのでしょうか?」
紙袋の中に、レシピと食べ方が書かれた紙があった。ヘニャヘニャした黄色い生地の中には、生クリームと果物が入っているようだ。ザフィルドの言っていた箇所を持って、食べていくわけか。
「どうやらそのようだな。この紙に、食べ方が書かれている」
僕とザフィルドは、その食べ方を見ながら一口齧り付く。
「「これは!?」」
なんて上品で甘い味なんだ。この甘さは、生クリームと瑞々しい果物によるものだから、少しもくどく重い感じがしない。生クリームと果物のバランスが絶妙のせいか、清々しい気分に陥る。こんなデザートが、この世にあったなんて……あまりの美味さに言葉が出てこない。それは、ザフィルドも同じようだ。
これほど完成度の高い一品を、3人だけで作り上げたのか?
「アレス様、全てのバランスが整わないと、この味を出せませんよ。外側の生地の厚さ、生クリームの甘さと口触り、果物の瑞々しさ、どれか一つでも欠けてしまうと、おそらく後味の悪いものに変わるかもしれません。これは露店販売であっても、貴族に必ず流行りますよ。私自身が、食べたいと思うのですから」
「同じ…意見だ。クレープ自体から、貴婦人のような気品を感じる。それに、これは中身の具材を変化させれば、多くの味を味わえる」
「3人の開発と聞きましたが、おそらく咲耶の持つスキルが大きく関わっているかと。それを基に、3人で試行錯誤して完成させたのではないかと思われます」
そうだろうな。具材を相当こだわらないと、これ程の上品な味を引き出せない。多種類ある果物や生クリームから厳選して選び出し、そこから味を整えないといけない。何の知識もない10歳の女の子たちだけで、一から全てを開発できるわけがない。必ず、原点となった何かがあったはずだ。
「ザフィルド、これを必ず商品化させるぞ。当然、開発者はあの3人だ。咲耶たちが原型を考え、我が家のシェフたちが商品化にまで味を引き上げたことにする」
「ルウリ様たちのことを考慮すると、それが無難ですね」
ルウリから加護をもらっている以上、今も何処からか監視されているかもしれない。自分の名誉ばかりに拘る貴族になったら、その場で加護が外されるだろう。
ルウリ、フリード、マナリオに認めてもらいたい。
咲耶に、恋愛という意味合いでの異性として見てもらいたい。
そう考えていくうちに、僕の中にある枷が一つ外れたような感覚がした。
「アレス様?」
どうしてかな? つい笑みを浮かべてしまう。
「ああ、すまない。今日以降、僕の人生が楽しくなると思うと、どうしても笑みを浮かべてしまうんだ。今までは父や母のご機嫌ばかりを考えていたけど、この街に来て自分の視野の狭さを思い知った。僕はもっと視野を広げて、自分自身を成長させないといけない」
咲耶たちに、僕をもっと見てもらい認めてもらいたい。
心の中にあるこの思い、それを実現させるには、自分で行動に移すしかない。
咲耶と結ばれることはないと自分勝手に思い込み、半分諦めていた。咲耶自身が何らかの功績を打ち立てないと、公爵家が後ろ盾になることはないと思い込んでいた。
違う、そうじゃない。
全ては、僕の意志次第だ!!
今の時点でも、僕自身が強い意志を持ち、父を必ず説得させるという強い気概を持つんだ!! 勿論、咲耶の活躍もある程度必要だろうけど、僕が彼女の人柄を説明し、後ろ盾として申し分のない力を有していると説明すればいい。たとえ、今の時点で拒絶されようとも、僕は絶対に諦めない!!
強い意志を持って行動していき、いつか貴族として1人の人間として、父やルウリすら納得させるほどの力強さを身につける!!
今はまだ、咲耶も僕のことを普通の友達としてしか見ていない。
僕個人を見てもらうためにも、焦らず少しずつ交流を深めていきたい。
そして、15歳の成人になった時、僕は咲耶に告白しよう。
それまでは、絶対に婚約者を持たない!!
この思いを意志を心に強く秘め、王都へ帰ろう。
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