10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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5章 猫の恩返し

55話 フードフェスタ開幕

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お姉ちゃんへ

今日、緊急家族会議を開きました。

お父さん、お母さん、お兄ちゃんと相談した結果、魔物の課題に関しては無視してください。足が20本の巨大魔物は、地球に存在しません。ヌメリに関しても、タコと違う性質を持っています。日本で知られている方法でやると、最悪毒ガスが発生するかもしれません。お姉ちゃんに死んでほしくないので、何か起きた場合は、空間魔法[アイテムボックス]の行使も考えておいてね。フェスタ期間中に、誰かがヌメリを除去してくれるかもしれないので、タコに関わる料理のレシピを添付しておきます。

あと、こういった大規模イベントの場合、必ず何か起こるのが異世界小説のセオリーなので、事件が起きても焦らず行動してね。

○○○

現在の時刻は朝6時、フードフェスタが今日開幕する。

昨日、念の為光希たちと交流したけど、お父さんたちの答えは[そんな課題は無視しろ]でした。やっぱり、地球のタコと違う以上、迂闊に弄らない方が良い。強制参加だけど、何もせずにフェスタ最終日に返品しよう。それと最後の文面、大規模イベントで事件なんて、早々起こるものじゃないよ。でも、レストラン[クザン]、大樹マナリオの暴走の件もあるから、一応気にかけておこう。

私たちは魔物の調理課題を無視して行動していくけど、アルドさんは参加を表明して、色々と試すと言っていたわ。定食屋ガブリの営業もあるから、営業時間外に調理の実験を進めていくみたい。万が一、お客様に何かあったら、店を畳まないといけないのだから、当然の配慮だよね。

「咲耶、準備はいいか? ベイツさん、ルウリ、フリードの3人は、もう現地に到着している頃合いだ。私たちも急ごう」

今日の私とユウキの服装は平民用で、人の目を少し惹きやすいものになっている。私たちの露店はかなり特殊で、露店とは言えないかもしれない。主役となる猫たちの数は厳選して総勢12匹、ミケーネをボスとして、既に目的地[大樹マナリオ]のもとへ向かっているだろうから、私たちも向かいましょう。

「大丈夫、行こう‼︎」

フェスタ初日は、大樹マナリオのために用意された社の完成式でもある。私は毎日通っていたこともあり見慣れた光景になっているけど、この地を知らない観光客から見れば、かなり稀有な光景に映ると思うわ。日本の神社に祀られている大樹や社と似たものがあるから、日本の転生者がいれば驚くかもしれない。集合時間は朝7時、フェスタ開催は10時だから、露店の人たちは開催式典を終えたら、大急ぎで開店準備に取り掛からないといけないわ。私たちの場合は、猫たちの朝ごはんの準備だ。昨日のうちに、多めに20匹分用意している。昼食用、販売用、おやつ用の餌類も準備万端、リリアムの街限定で、天候も終日晴れになるよう、大樹マナリオに調整してもらっている。

さあ、猫たちのために頑張りましょう‼︎


○○○


私たちが大樹マナリオのいる場所へ到着すると、木製の柵で囲う社の外側の位置に、大勢の人々と猫がいた。露店参加者たちと、それ以外でイベントに参加する者たちだ。遠くにアルドさんもいて、私に手を振ってくれたので、私も手を振っておく。

「この社、建設中の時から見ているが、見ていて全然飽きないな。大樹正面から少し離れた位置にある巨大鳥居、その鳥居を出入り口として大樹を囲う木製の柵、その内側には鳥居から敷かれている石畳の道があり、石畳のない空間には咲耶の言う日本の庭園が広がっている。そして、大樹に到着すると、大樹を祈るための賽銭箱があり、大きなしめ縄が大樹自身を囲っている。こんな神秘的な光景は私も初めてだ。いつ見ても、美しい」

ユウキはこの社を見ると、いつも褒めてくれるから嬉しい。
周囲を見渡すと、社に見惚れている人々が大勢いるわ。

『あははは、そうだろう、そうだろう。私自身も、見惚れるレベルだからな。この社を完成させてくれた礼として、領主から祈願された天候不順となる地域一帯に、村人たちの望むものを与えた。これからは、私もこの街…いや辺境伯領を守る一員だ。今日は、この社の記念式典とフェスタ初日の開幕式典を同時に執り行う。咲耶も主役の1人なのだから、ここから20メートルほど離れている主催者テントへ行くといい。そこに、ベイツとルウリがいる。猫たちとフリードは、咲耶たちの露店の準備に取り掛かっているぞ。猫が準備しているから、それだけで皆の注目を浴びている』

あの子たちには、今日やる内容を伝えているし、荷物に関しても、フリードの法術[収納]に入っているけど、まさか自分たちで準備しているとは思わなかったわ。

「ありがとう、早速主催者側のテントに行ってくるね」

『ああ、行っておいで。式典では、私も余興として面白い物を用意したから、咲耶は私の言葉に合わせてくれ』

「え…ええ、わかったわ」

面白い余興?
何を見せる気なの?

「咲耶、私は猫たちのところへ行き、全ての準備を整えておこう。ミケーネたちも、与えられた役目を果たすため、既に動いているはずだ」

ユウキもスキル[同調]をオンにしていたようで、マナリオとの会話を聞いていたのね。当初、スパイ班は5名のはずだったけど、余った猫たちも何かしたいとミケーネに強く訴えたようで、その子たちはスパイ班に有益な情報を齎す情報収集班として新規に加わり、総勢34匹の猫たちが[公園敷地内]・[コーティング剤の情報保管場所]・[コーティング剤の展示箱設置場所]に点在してもらっている。

あれから私もスキル[心通眼]を鍛えたことで、教育を施した全ての猫たちと話し合えることに成功しているし、猫側からの連絡も可能になった。何かあれば、必ず私に連絡を入れる手筈となっている。

全ての準備は整っているから、私も頑張らないとね。

「ユウキ、宜しくね」

私はユウキと別れて、1人で主催者側のテントへ行くと、そこにはベイツさん、ルウリだけでなく、大勢の人々がいて、かなり賑やかになっている。アマンガムさんもいるから、街内に存在する各商会のトップたちも揃っているのかな。現状、話しかけられるのはベイツさんとルウリだけで、他の人たちは領主アルバス・オルバイン様と最後の詰め作業に入っているのか、打ち合わせをしている。

「ベイツさん」

「咲耶、こっちの準備はほぼ整った。予定通り、完成記念式典とフェスタ開幕式典が
7時30分に始まる。今年は魔物の件もあるから、色々と騒がしくなるかもしれないが、君はマナリオの隣で、猫たちと戯れているといい」

脅威度・調理度Aランクのテンタクルズオクトパス、この魔物の調理を行い、ある程度の実績を出せれば、小型(積載量上限10kg)だけど時間停止機能のあるマジックバッグを貰えるし、最優秀者には賞金1000万ゴルドが進呈されるから、調理に挑戦する人々も大勢いるはずだ。その人たちは、あらゆる伝手を使って調理を試みると思う。

「わかりました、そうさせてもらいます」
「ただ、記念式典に関しては、領主様と一緒に舞台に上がってもらうよ」

う、そうだった。私は、大樹マナリオと通じ合える【大樹の巫女】として認知されているから、皆の前で挨拶しないといけない。

「舞台上での挨拶は始めてなので緊張します」
「あははは、固い固い。ほらほら、楽にするんだ」

ベイツさんが私の両肩をポンポンと叩くけど、領主様への初めての御挨拶もまだ終わってないし、緊張して当然だと思う。
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