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2章 家族との別離(今世)
28話 フェルデナンド家の末路
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お父さん、お母さん、悠太、光希。
騒動終息直後、私は色々と悩みました。
【実の父に対して、あの処置は正しかったのか?】
【もっと真剣に話し合えば、違う解決の仕方があったのでは?】
私は自問自答しながら悩んだ末、騒動の翌日にルウリに打ち明けました。
「ルウリ、伯爵自身が父親か母親にスキル[コントラクト]で縛られているのだから、伯爵の束縛をあの場で打ち消せば、話し合いに持っていけたんじゃないの?」
すると、ルウリから意外な返答が来ました。
「咲耶、そもそも前提が間違っているんだよ。奴の魂は、スキルによる束縛を受けていない」
「え!? ということは、あれが伯爵の素の性格なの?」
「そうだよ。奴は5歳の頃から英才教育を受けていて、父親のスキル[コントラクト][暗示]の使い方をずっと間近で見ていたんだ。そのせいで、人を操作するという行為に対して、愉悦を感じていたのさ。だから、君はあの末路を辿った父親に同情する必要はない」
それを聞いて、私の蟠りが消えました。ルウリとフリードはそれを知っていたからこそ、人に操作される行為がどれだけ愚かなのかを伯爵に解らせるため、あえてあんな厳しい制約を課したのかもしれません。
自分の中に芽生えた蟠りが消えたせいなのか、その日以降、私の中にあるリリーアナは何も語ろうとしなかった。なんとなくだけど、彼女と私の心が一つになったような気がします。
○○○
猫たちの溜まり場で起きた騒動から、1週間が経過しました。
あの騒動から5日後、内部告発とされる証拠資料が、遂に公のもと新聞の一面にて公開されました。それと同時に、クザンの全店舗にて、食品偽装と魔物養殖も明らかになり、国をあげての大騒動へと発展しました。
クザンだけでなく、オーナーで金銭面の大部分を出資しているフェルデナンド家にも治安騎士たちのガサ入れがあり、[食品偽装][魔物養殖]に関わる証拠が次々と押収されていくと同時に、その犯罪に関わる各地の貴族たちも続々と逮捕されていきました。それを王都の記者会見場にて発表した際には、あまりにも鮮やかで用意周到な捜査であったことから、出席している新聞記者たち全員が驚いたそうです。
ここまでの大規模捜査になると、下準備だけでもかなりの期間を要します。本来であれば、新聞記者の人たちはそういった期間中にスクープのネタを察知するそうですが、そういった気配を一切見せる事なく、下準備・証拠品の押収・一斉捜査・容疑者逮捕に至ったので、『誰が陣頭指揮をとったのか?』『フェルデナンド家の誰が内部告発したのか?』などで、今でも話題に上がっています。新聞の朝刊夕刊には、そういった内容が毎日掲載されているため、新聞だけでなく、貴族関連の雑誌が国内全都市で飛ぶように売れているようです。
私とユウキは、まるで他人事であるかのように、ベイツさんの家でゆっくりと朝食を食べながら、その記事を読んでいます。
「ふふ、誰が内部告発者かだって? クククク、『フェルデナンド家当主のフェルデナンド伯爵だよ』と言っても、誰も信じないだろうさ」
ユウキの言う通り、この犯罪の頂点にいる人物が、全てを吐露しているなんて、誰も思わないよね。
「私もルウリから聞いているけど、伯爵はフェルデナンド家だけでなく、自国や他国の貴族に関わる情報を沢山溜め込んでいるから、今の事件が落ち着き次第、少しずつそういった情報も聞き出していくんだって」
一体、どれだけの情報を隠し持っているのかな?
ベイツさんは魔物養殖の件もあって、今も大忙しだし、この騒ぎは当分続きそう。
「私も、途中経過をフリードから聞いたよ。既に、街の領主様は国王陛下とも連絡を取り合っていて、陛下の指揮のもと、機密情報を伯爵から聞き出しているそうだ」
今回の騒動、私も大きく関わっているので、ベイツさんはリリアムの街を治める領主の辺境伯様と国王陛下にだけ、私の正体と抱える事情を明かしている。そうしないと、伯爵がここへ来た意味を説明できないからだ。私を狙う暗殺者に関しては、伯爵家暗部に存在するユウキとは異なる人物の名を出し、既に処分済みということになっている。詳しく聞くと、その男性は根っからの快楽殺人者で、元々の人格にも大きく問題があるので、ユウキの代わりとしてうってつけの人材だった。実行者はフリードで、コントラクトによる上書きに関しても、全部フリードがやったことになっている。
領主様の邸でどんな話し合いが行われたのか不明だけど、現在王都の方でもフェルデナンド家の中で内乱が起こっているらしく、多くの死傷者が発生している。騎士たちが騒動を終息させるべく、関係者全員を捕縛して事情聴取を行っている。まだ決定じゃないけど、フェルデナンド家そのものが取り潰しになる可能性が非常に高いみたい。
そして、私にとって一番重要なのは[リリアーナ・フェルデナンド]の存在だ。
クザンの件が落ち着き次第、国王陛下はリリアーナに起きた件を全て国中に公表する計画を現在立てている。リリアーナ伯爵令嬢は無能者であったため、伯爵の手で貴族籍からも抹消され、霊峰スムレットへと転移追放された。捜索の結果、リリアーナは魔物に食い殺されており、一部の服と遺体の一部が見つかり、スキル[解析]でも証明されたので、死亡扱いとなった。
この内容を国中に公表すると、ベイツさんや領主様たちに断言した…らしい。
行方不明よりも死亡扱いの方が、私としてもありがたいわ。知り合いが私を見つけても、ただのそっくりさんで押し通せるもの。記憶も一部しか戻っていないし、貴族の礼儀作法なんて知らないから、相手の方も信用してくれると思う。
「コントラクトから解放された連中を気の毒に思うが、奴らも伯爵に性格を歪まされていたとはいえ、レアスキルをとことん利用することで自分達の欲を満たしてきたから、一部の連中は牢獄行きになる。王族がそういった連中の情報を全て把握した後、利用価値の有無を判断して、今後の行き先を決めるかもしれない」
その人たちは、絶対伯爵を恨んでいるよね。今後、フェルデナンド伯爵をどうするのかは不明だけど、王族たちが絶対放っておかないはずだ。
あの時に見えた記憶の断片には、リリアーナの父・母・兄2人・祖父母らしき人々がいたわ。
祖父母は殺されているから、残るは母と兄2人だ。
あの人たちは、今頃どうしているのかな?
解放されたことで、価値観も少しは変化しているといいのだけど。
もう、あの人たちとは2度と関わりたくない。
私-咲耶とリリアーナは、フェルデナンド家と訣別する。
(それでいい。奴らの行く末は、もう既に決まっているのだから)
今、ユウキの心の声が聞こえたわ!!
彼女はスキル[同調]を所持していて、その効果は自分の波長を相手の波長と一致させることで、心の声を聞いたり、動きの先読みが可能となるのだけど、その効果時間は10分だけ。デメリットとして、一度使用すると、1時間のインターバルが必要となる。ユウキは[同調]を使うことで、動物たちと意思疎通できるし、私の記憶が一部だけ復帰し、怒りに身を投じようとした時も、的確な言葉で、私の心を冷やしてくれた。ユウキのおかげで、私はここにいられる。あの時、スキルを使って伯爵を殺してしまったら、多分取り返しのつかないミスを犯し、私は私でいられなくなっただろう。
「騒動が大きくなり過ぎて、私たちの手に負えない事態になったね。そういえば、定食屋ガブリで起きた襲撃事件も2日連続で掲載されてはいたけど、あの騒動以降、物凄く小さな扱いになったわ」
リットたちも少し怒っていたけど、大犯罪となる[魔物養殖]の方が危険度もかなり大きいこともあり、3人とも納得していたわ。近所の人々は襲撃に全然気づけなったから、皆がアルドさんたちに謝罪していた。ベイツさんとルウリのおかげで助かったことを知ると、私にも注目が集まってしまった。
リットたち家族には、私の事情を全て話しているけど、街のみんなはまだ何も知らない。リリアーナの件が明るみになれば、私の正体にきっと気づくと人もいるだろうけど、たとえ気付いたとしても、この人たちはいつも通りに接してくれると思う。
「クザンも営業停止になったから、これでリットたちも安心して店を営業できるな」
今頃、この支店の支店長たちも尋問されて、精神的にボロボロになっている頃合いかな。クザンの営業再開は不可能だから、襲撃される恐れもゼロになったから安心だわ。
「ユウキ、飲み物が空だよ。はい、どうぞ」
「咲耶、ありがとう」
あの騒動以降、私たちの関係にも変化が起きた。
獣人のユウキさんが10歳に戻ったことで、私やリットと同い年となってしまった。当然、話し方も[ユウキさん]だとおかしいので、[ユウキ]になった。彼女は物事をハキハキと話す性格で、とても明るい。今では、ユウキが私とリットに半生を語ってくれたり、私がリットとユウキに前世のことを話し合える程の仲となっている。互いが大親友と言える程の仲に進展したこともあり、私たちは3人で猫カフェ用の【チェロチュール】【キャットフード】【高級猫缶】の開発に携わっている。
「フリードたちの言った通り、この1週間、私にもユウキにも何も起こらないね」
この1週間、ユウキは冒険者登録を行い、Fランクとなって、私とパーティーを組んだ。子供になったことで、身体的強さがかなり弱体化したらしいけど、これまでに培ってきた技術と経験に関しては失っていないから、本気になればCランクの力を発揮できたらしいけど、私と行動を共にしたいから、わざと手加減したんだよね。ベイツさんが彼女の教育者になってくれたこともあり、私と一緒の居候状態となっても何の問題も問われなかった。
「まだ、油断できないぞ。騒ぎが沈静化してからが問題だ。これまで通り、周辺に気を配りながら、街内の依頼や採取依頼をこなしていこう」
リリアーナの件が明るみになったとしても、まだ安心できない。私の死を不審に思い、ここへ訪れる人だって、きっといるはずだ。ボロが出ないよう、私も警戒を解かないでおこう。
「そうだね」
お父さん、お母さん、悠太、光希。
これからは猫カフェ開店のために、お父さんのくれた猫用食料品の再現に力を入れていきます。日本と違い、建築速度が速い以上、私たちに用意されている時間は少ないと思った方がいい。全ての食料品を再現させ、猫カフェを開店し、猫たちに幸せな生活を送らせていこうと思います。
○○○
これにて、第2章終了です。
登場人物リストをUPしてから、第3章をUPしますね( ◠‿◠ )
騒動終息直後、私は色々と悩みました。
【実の父に対して、あの処置は正しかったのか?】
【もっと真剣に話し合えば、違う解決の仕方があったのでは?】
私は自問自答しながら悩んだ末、騒動の翌日にルウリに打ち明けました。
「ルウリ、伯爵自身が父親か母親にスキル[コントラクト]で縛られているのだから、伯爵の束縛をあの場で打ち消せば、話し合いに持っていけたんじゃないの?」
すると、ルウリから意外な返答が来ました。
「咲耶、そもそも前提が間違っているんだよ。奴の魂は、スキルによる束縛を受けていない」
「え!? ということは、あれが伯爵の素の性格なの?」
「そうだよ。奴は5歳の頃から英才教育を受けていて、父親のスキル[コントラクト][暗示]の使い方をずっと間近で見ていたんだ。そのせいで、人を操作するという行為に対して、愉悦を感じていたのさ。だから、君はあの末路を辿った父親に同情する必要はない」
それを聞いて、私の蟠りが消えました。ルウリとフリードはそれを知っていたからこそ、人に操作される行為がどれだけ愚かなのかを伯爵に解らせるため、あえてあんな厳しい制約を課したのかもしれません。
自分の中に芽生えた蟠りが消えたせいなのか、その日以降、私の中にあるリリーアナは何も語ろうとしなかった。なんとなくだけど、彼女と私の心が一つになったような気がします。
○○○
猫たちの溜まり場で起きた騒動から、1週間が経過しました。
あの騒動から5日後、内部告発とされる証拠資料が、遂に公のもと新聞の一面にて公開されました。それと同時に、クザンの全店舗にて、食品偽装と魔物養殖も明らかになり、国をあげての大騒動へと発展しました。
クザンだけでなく、オーナーで金銭面の大部分を出資しているフェルデナンド家にも治安騎士たちのガサ入れがあり、[食品偽装][魔物養殖]に関わる証拠が次々と押収されていくと同時に、その犯罪に関わる各地の貴族たちも続々と逮捕されていきました。それを王都の記者会見場にて発表した際には、あまりにも鮮やかで用意周到な捜査であったことから、出席している新聞記者たち全員が驚いたそうです。
ここまでの大規模捜査になると、下準備だけでもかなりの期間を要します。本来であれば、新聞記者の人たちはそういった期間中にスクープのネタを察知するそうですが、そういった気配を一切見せる事なく、下準備・証拠品の押収・一斉捜査・容疑者逮捕に至ったので、『誰が陣頭指揮をとったのか?』『フェルデナンド家の誰が内部告発したのか?』などで、今でも話題に上がっています。新聞の朝刊夕刊には、そういった内容が毎日掲載されているため、新聞だけでなく、貴族関連の雑誌が国内全都市で飛ぶように売れているようです。
私とユウキは、まるで他人事であるかのように、ベイツさんの家でゆっくりと朝食を食べながら、その記事を読んでいます。
「ふふ、誰が内部告発者かだって? クククク、『フェルデナンド家当主のフェルデナンド伯爵だよ』と言っても、誰も信じないだろうさ」
ユウキの言う通り、この犯罪の頂点にいる人物が、全てを吐露しているなんて、誰も思わないよね。
「私もルウリから聞いているけど、伯爵はフェルデナンド家だけでなく、自国や他国の貴族に関わる情報を沢山溜め込んでいるから、今の事件が落ち着き次第、少しずつそういった情報も聞き出していくんだって」
一体、どれだけの情報を隠し持っているのかな?
ベイツさんは魔物養殖の件もあって、今も大忙しだし、この騒ぎは当分続きそう。
「私も、途中経過をフリードから聞いたよ。既に、街の領主様は国王陛下とも連絡を取り合っていて、陛下の指揮のもと、機密情報を伯爵から聞き出しているそうだ」
今回の騒動、私も大きく関わっているので、ベイツさんはリリアムの街を治める領主の辺境伯様と国王陛下にだけ、私の正体と抱える事情を明かしている。そうしないと、伯爵がここへ来た意味を説明できないからだ。私を狙う暗殺者に関しては、伯爵家暗部に存在するユウキとは異なる人物の名を出し、既に処分済みということになっている。詳しく聞くと、その男性は根っからの快楽殺人者で、元々の人格にも大きく問題があるので、ユウキの代わりとしてうってつけの人材だった。実行者はフリードで、コントラクトによる上書きに関しても、全部フリードがやったことになっている。
領主様の邸でどんな話し合いが行われたのか不明だけど、現在王都の方でもフェルデナンド家の中で内乱が起こっているらしく、多くの死傷者が発生している。騎士たちが騒動を終息させるべく、関係者全員を捕縛して事情聴取を行っている。まだ決定じゃないけど、フェルデナンド家そのものが取り潰しになる可能性が非常に高いみたい。
そして、私にとって一番重要なのは[リリアーナ・フェルデナンド]の存在だ。
クザンの件が落ち着き次第、国王陛下はリリアーナに起きた件を全て国中に公表する計画を現在立てている。リリアーナ伯爵令嬢は無能者であったため、伯爵の手で貴族籍からも抹消され、霊峰スムレットへと転移追放された。捜索の結果、リリアーナは魔物に食い殺されており、一部の服と遺体の一部が見つかり、スキル[解析]でも証明されたので、死亡扱いとなった。
この内容を国中に公表すると、ベイツさんや領主様たちに断言した…らしい。
行方不明よりも死亡扱いの方が、私としてもありがたいわ。知り合いが私を見つけても、ただのそっくりさんで押し通せるもの。記憶も一部しか戻っていないし、貴族の礼儀作法なんて知らないから、相手の方も信用してくれると思う。
「コントラクトから解放された連中を気の毒に思うが、奴らも伯爵に性格を歪まされていたとはいえ、レアスキルをとことん利用することで自分達の欲を満たしてきたから、一部の連中は牢獄行きになる。王族がそういった連中の情報を全て把握した後、利用価値の有無を判断して、今後の行き先を決めるかもしれない」
その人たちは、絶対伯爵を恨んでいるよね。今後、フェルデナンド伯爵をどうするのかは不明だけど、王族たちが絶対放っておかないはずだ。
あの時に見えた記憶の断片には、リリアーナの父・母・兄2人・祖父母らしき人々がいたわ。
祖父母は殺されているから、残るは母と兄2人だ。
あの人たちは、今頃どうしているのかな?
解放されたことで、価値観も少しは変化しているといいのだけど。
もう、あの人たちとは2度と関わりたくない。
私-咲耶とリリアーナは、フェルデナンド家と訣別する。
(それでいい。奴らの行く末は、もう既に決まっているのだから)
今、ユウキの心の声が聞こえたわ!!
彼女はスキル[同調]を所持していて、その効果は自分の波長を相手の波長と一致させることで、心の声を聞いたり、動きの先読みが可能となるのだけど、その効果時間は10分だけ。デメリットとして、一度使用すると、1時間のインターバルが必要となる。ユウキは[同調]を使うことで、動物たちと意思疎通できるし、私の記憶が一部だけ復帰し、怒りに身を投じようとした時も、的確な言葉で、私の心を冷やしてくれた。ユウキのおかげで、私はここにいられる。あの時、スキルを使って伯爵を殺してしまったら、多分取り返しのつかないミスを犯し、私は私でいられなくなっただろう。
「騒動が大きくなり過ぎて、私たちの手に負えない事態になったね。そういえば、定食屋ガブリで起きた襲撃事件も2日連続で掲載されてはいたけど、あの騒動以降、物凄く小さな扱いになったわ」
リットたちも少し怒っていたけど、大犯罪となる[魔物養殖]の方が危険度もかなり大きいこともあり、3人とも納得していたわ。近所の人々は襲撃に全然気づけなったから、皆がアルドさんたちに謝罪していた。ベイツさんとルウリのおかげで助かったことを知ると、私にも注目が集まってしまった。
リットたち家族には、私の事情を全て話しているけど、街のみんなはまだ何も知らない。リリアーナの件が明るみになれば、私の正体にきっと気づくと人もいるだろうけど、たとえ気付いたとしても、この人たちはいつも通りに接してくれると思う。
「クザンも営業停止になったから、これでリットたちも安心して店を営業できるな」
今頃、この支店の支店長たちも尋問されて、精神的にボロボロになっている頃合いかな。クザンの営業再開は不可能だから、襲撃される恐れもゼロになったから安心だわ。
「ユウキ、飲み物が空だよ。はい、どうぞ」
「咲耶、ありがとう」
あの騒動以降、私たちの関係にも変化が起きた。
獣人のユウキさんが10歳に戻ったことで、私やリットと同い年となってしまった。当然、話し方も[ユウキさん]だとおかしいので、[ユウキ]になった。彼女は物事をハキハキと話す性格で、とても明るい。今では、ユウキが私とリットに半生を語ってくれたり、私がリットとユウキに前世のことを話し合える程の仲となっている。互いが大親友と言える程の仲に進展したこともあり、私たちは3人で猫カフェ用の【チェロチュール】【キャットフード】【高級猫缶】の開発に携わっている。
「フリードたちの言った通り、この1週間、私にもユウキにも何も起こらないね」
この1週間、ユウキは冒険者登録を行い、Fランクとなって、私とパーティーを組んだ。子供になったことで、身体的強さがかなり弱体化したらしいけど、これまでに培ってきた技術と経験に関しては失っていないから、本気になればCランクの力を発揮できたらしいけど、私と行動を共にしたいから、わざと手加減したんだよね。ベイツさんが彼女の教育者になってくれたこともあり、私と一緒の居候状態となっても何の問題も問われなかった。
「まだ、油断できないぞ。騒ぎが沈静化してからが問題だ。これまで通り、周辺に気を配りながら、街内の依頼や採取依頼をこなしていこう」
リリアーナの件が明るみになったとしても、まだ安心できない。私の死を不審に思い、ここへ訪れる人だって、きっといるはずだ。ボロが出ないよう、私も警戒を解かないでおこう。
「そうだね」
お父さん、お母さん、悠太、光希。
これからは猫カフェ開店のために、お父さんのくれた猫用食料品の再現に力を入れていきます。日本と違い、建築速度が速い以上、私たちに用意されている時間は少ないと思った方がいい。全ての食料品を再現させ、猫カフェを開店し、猫たちに幸せな生活を送らせていこうと思います。
○○○
これにて、第2章終了です。
登場人物リストをUPしてから、第3章をUPしますね( ◠‿◠ )
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