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2章 家族との別離(今世)
27話 自己暗示、抗うことの出来ない契約
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ルウリとフリードが、伯爵の顔面に近づき、ほぼゼロ距離で目をじっと見つめている。2体は何を始める気なの?
「さあ、僕の目を見つめるんだ」
「何をするつも……」
伯爵が急に動かなくなった!?
それどころが、目の焦点も合ってない。
「今から話す内容を全て、必ず実行すること。いいね?」
「は…い、わかりました」
これって、ルウリが伯爵に何らかのスキルを使用しているってこと?
何となくだけど、テレビで見た催眠術のような気がする。
ルウリの言った内容に、私もユウキさんも驚愕することになる。
・今日以降、君は質問されたら、必ず真実を告げること
・咲耶とリリアーナとユウキに関する情報を誰にも告げないこと
・クザンとフェルデナンド家との関係を聞かれたら、全てを赤裸々に語ること
・フェルデナンド家の罪を聞かれたら、それに繋がる物品全ての保管場所を暴露しろ
・自分と他者を利用しての証拠類隠滅を禁じる
・自殺を禁じる
・今言った内容全てを自己暗示にかけ、自分で自分の魂にコントラクトを実行しろ
・契約を破った場合、契約を解除した場合、例外なく死あるのみ
・契約後、僕、フリード、ベイツ、リバイブルド王国国王の命令に絶対遵守すること
「さあ………やれ!!」
「ほほほほほ、抵抗していますが無駄ですよ」
ルウリとフリードが、容赦なく目を輝かせ、伯爵を力で支配していく。伯爵が苦渋に満ちた表情となっており、必死にもがこうと身体を立ち上がらせ、手を動かそうとしているけど、ルウリもフリードも平気そうな顔で、その動きを見て楽しんでいる。
何故だろう?
また、胸が騒つく。
私の身体が、あの父親の前に行こうと、勝手に動こうとしている。
私は、心臓の位置に右手をそっと置く。
駄目だよ、リリアーナ。
あなたの父親は、大きな罪を犯したの。
人の心をスキルで勝手に縛り、人の尊厳を大きく踏み躙った。
あなたや兄2人だって、小さい頃に性格を弄られたんだよ?
それなのに、あなたはあの男を庇いたいの?
あなたは、あの男から解放されている。
それでもルウリとフリードの前に立ち塞がり、父親を助けて欲しいと懇願したいの?
あなただって、父親のしたことは悪いことだと理解しているでしょ?
リリアーナ自身、葛藤しているのが私にも伝わってくる。
大きな罪を犯した以上、あの男には罰が必要なの。
悪いことをしたのなら、その罪を償わせないといけないの。
私たちは、今から受ける行為を見届けなきゃいけないの。
心が、静まってくる。
リリアーナもわかってくれたんだ。
最後まで見届けよう。
私が心の中のリリアーナと話し合ってから5分程で、伯爵の身体は動かなくなり、両手をだらんと下ろしてしまった。
「わか…り…ました………コントラクト発動」
伯爵は自分自身に自己暗示をかけ、自分のスキルで契約を施すと、両膝を地面に付けたまま、その場から動かなくなった。
「さあ、これで終わりだ。咲耶、黙っていてごめんね。領主やクザンの連中を見張っていたのは本当だけど、それはスキル《分身》による分身体にやらせていて、僕とフリードの本体は、常に姿を消した状態で咲耶の近くに待機していたんだ」
全然、気づかなかった。
それじゃあ、私は2体にずっと守られていたの?
「え…と、それじゃあ、どうしてすぐに助けてくれなかったの?」
「僕たちの目的は、2つある。1つ目はフェルデナンド家を崩壊させること、2つ目は咲耶の自主性を育てること」
私の自主性? どういうこと?
「君は転生者とはいえ、身も心も10歳だから、僕たちに頼ってばかりいると、君自身の成長が阻害されてしまう。心当たりはあるよね?」
ルウリとフリードに頼る?
そうか…ガブリでの深夜襲撃に関しては2体に頼ってばかりで、私は周囲に気を配る事なく、中で熟睡していたわ。今回、周囲に頼れる人が誰もいなかったから、私は自分で考えて行動に移し、自分のできる範囲で、ユウキさんの救出手段を考えた。
自分で考えて行動すること、これが自主性なんだね。
「ちょっと待て!! 咲耶の自主性を育てること、これは私にもわかるが、姿を消した状態で彼女を守り、コントラクトによるスキルの上書きもできるのなら、どうして彼女にスキル《原点回帰》を使わせた? 私を10歳に戻す必要性はないだろ?」
近くにいるユウキさんが、最もな疑問をルウリたちに投げつける。
「それは、あなたのためですよ。私は咲耶と出会う前に、王都にも立ち寄り、[とある情報]を入手するため、色々と動いていたのですが、その過程でフェルデナンド家のことを詳しく知ったのです」
フリードは、あの家のことを知っていたの!! 家の危険性を知っていたからこそ、ルウリと相談し合い、今回のことを計画していたのね。
「リバイブルド王国の中でも、血縁者全員がレアスキルを所持する家系として有名なんです。そのため、王族とも深い繋がりがあります。王族たちは、戦闘面でも政治面でも力の強いフェルデナンド家を常に警戒しており、スパイを送り込んでいるので、ユウキの存在は恐らく漏れています。今回の騒動で、王族は必ず動き出す。奴らにとって恐れるのは国家機密の情報漏洩、特に伯爵にどんな契約を課せられているのかわからない暗部の者たちを野放しにしておくのは危険なので、全員が内密に抹殺される可能性が高いのです」
レアスキルを所持する家系、ということはリリアーナ以外の人たち全員が、強力なスキルを持っているのね。だから、伯爵は寝首をかかれないよう、血縁者や婚姻者たちをスキルで縛っていた。その中でも、私だけが無能者となってしまい、家の恥として必要以上に強く差別していたんだ。
そうなると、私の記憶にある兄2人は、私のことを本気で嫌っていたのかな? 記憶を見る限り、2人の表情は私を明らかに見下している。兄たちと何処かで再会した時に、あの時の表情が本気なのかがわかるわね。
「抹殺……ありえる。あの家は、スキルで様々な貴族の裏情報を収集している。それは、王族とて例外ではない。私は、咲耶たちに助けられたのか」
元々、リットからのお願いで動いた事なのに、クザンでの食品偽装をキッカケに、事がどんどん大きくなっていく。伯爵はルウリたちの操り人形となったから、もう家の崩壊は絶対に止められない。
「お~~~~~い、ルウリ、フリード。事はもう終わったのか~~~~」
遠くから聞こえてくる声は、ベイツさんだ!!
彼も、2体から今回の計画を聞いていたのね。
「ベイツ~~~もう終わってるよ~~~。この男を捕らえて、領主のもとへ連れ行って尋問して~~~~」
ベイツさんは私たちのもとへ来て、真っ先に謝罪してくれた。ユウキさんを見て驚いていたけど、今すべき重要事項を優先するため、軽く自己紹介を済ませてから、伯爵に一緒に来るよう命令する。周囲に寝ている護衛に関しては必要ないので、その場に放置する予定だったけど、この地域を縄張りとしている猫たちから猛烈な抗議が上がったので、ルウリが大きな袋を取り出し、4人を包み、紐で縛る。
「はいよ。あとは任せた」
ルウリはペイっと、その袋を魔法でベイツさんの方へ放り投げる。
「え?」
ドスンと大きな音が鳴ったけど、護衛たちが起きることはなかった。
どれだけ深く眠らされているのだろう?
「君ならスキル《身体強化》を使えば、余裕で引き摺っていけるでしょ?」
「全く、人使いの荒い鳥だよ。そうそう、ユウキはこの事件が落ち着くまで、俺の家に住めばいい」
「え!? いいんですか?」
「ああ、構わないよ。その代わり、咲耶と仲良くすること」
そう言うと、彼は4人の入っている袋を引き摺りながら、ボ~っとしている伯爵と共に路地を進んでいき、この場から消えていった。伯爵が唐突に現れた時はどうなるかと思ったけど、この難局を切り抜けられることができたんだね。結局、最後の最後で助けられてしまったけど、それでもユウキさんに関しては自分だけの力で、救出できたことが嬉しい。
あはは、なんだか気が抜けてきたよ。
「咲耶、大丈夫か?」
気づけば、私は地面に座っていた。
「うん、気が抜けちゃって。ユウキさん、身体の状態は?」
スキルで10歳に戻しているから、彼女の身体の状況が気になる。ベイツさんもルウリたちから彼女の事情を聞いているからこそ、家にいていいと言ってくれた。
この行為は、私としても助かる。
「ああ、問題ない。段々と身体にも慣れてきた。今後も訓練を積んでいけば、スキルや魔法だって使えると思うけど、身体が小さくなった分、威力も減衰しているだろうな。まずは、どこまで弱くなっているのか把握しないといけない。咲耶、本当にありがとう。君……いや君たちのおかげで、私は救われたよ」
今まで伯爵のコントラクトに縛られていたせいで、性格も暗殺者向けに歪まされ、行動だって制限されていたはず、ユウキさんはもう自由だ。私の希望としては仲間になってほしいところだけど、これは我儘かな。
「咲耶、ユウキ、君たちはフェルデナンド家から本当の意味で抜け出すことに成功した。後処理に関しては、王族・貴族たちに任せればいい。伯爵や家族の末路なんて、気にしなくてもいいよ」
ルウリ、私を気遣ってくれているんだね。私自身、あんな記憶を見せられてしまったから、正直あの人たちがどうなろうと関係ないわ。性格を歪められてしまった人たちには気の毒だけど、もう解放されたのだし、あとはその人たちの行動次第だ。私は、自分の生活のことだけを考えよう。
「ルウリの言う通りですね。コントラクトによる縛りが全て消失した以上、縛られた者たちも黙っていないでしょう。現時点で、伯爵の父母が殺されていますので、今後も血生臭いことが必ず起こります。まあ、それは王都限定なので、あなたには一切影響がありませんから、この街でスローライフを築いていけばいいのです」
フリード、ありがとう。
よかった、これでいつも通りの生活に戻れる。
リリアーナ、あなたから見れば悲しい結末かもしれないけど、これで良かったんだよ。あの家を放置すれば、私やユウキさんのような人たちがもっと増えていたと思うもの。
あなたの心はバラバラに砕け散ってしまったけど、私の心の中で生きている。
あなたと私は一心同体、絶対裏切らないからね。
これからも宜しくね。
「さあ、僕の目を見つめるんだ」
「何をするつも……」
伯爵が急に動かなくなった!?
それどころが、目の焦点も合ってない。
「今から話す内容を全て、必ず実行すること。いいね?」
「は…い、わかりました」
これって、ルウリが伯爵に何らかのスキルを使用しているってこと?
何となくだけど、テレビで見た催眠術のような気がする。
ルウリの言った内容に、私もユウキさんも驚愕することになる。
・今日以降、君は質問されたら、必ず真実を告げること
・咲耶とリリアーナとユウキに関する情報を誰にも告げないこと
・クザンとフェルデナンド家との関係を聞かれたら、全てを赤裸々に語ること
・フェルデナンド家の罪を聞かれたら、それに繋がる物品全ての保管場所を暴露しろ
・自分と他者を利用しての証拠類隠滅を禁じる
・自殺を禁じる
・今言った内容全てを自己暗示にかけ、自分で自分の魂にコントラクトを実行しろ
・契約を破った場合、契約を解除した場合、例外なく死あるのみ
・契約後、僕、フリード、ベイツ、リバイブルド王国国王の命令に絶対遵守すること
「さあ………やれ!!」
「ほほほほほ、抵抗していますが無駄ですよ」
ルウリとフリードが、容赦なく目を輝かせ、伯爵を力で支配していく。伯爵が苦渋に満ちた表情となっており、必死にもがこうと身体を立ち上がらせ、手を動かそうとしているけど、ルウリもフリードも平気そうな顔で、その動きを見て楽しんでいる。
何故だろう?
また、胸が騒つく。
私の身体が、あの父親の前に行こうと、勝手に動こうとしている。
私は、心臓の位置に右手をそっと置く。
駄目だよ、リリアーナ。
あなたの父親は、大きな罪を犯したの。
人の心をスキルで勝手に縛り、人の尊厳を大きく踏み躙った。
あなたや兄2人だって、小さい頃に性格を弄られたんだよ?
それなのに、あなたはあの男を庇いたいの?
あなたは、あの男から解放されている。
それでもルウリとフリードの前に立ち塞がり、父親を助けて欲しいと懇願したいの?
あなただって、父親のしたことは悪いことだと理解しているでしょ?
リリアーナ自身、葛藤しているのが私にも伝わってくる。
大きな罪を犯した以上、あの男には罰が必要なの。
悪いことをしたのなら、その罪を償わせないといけないの。
私たちは、今から受ける行為を見届けなきゃいけないの。
心が、静まってくる。
リリアーナもわかってくれたんだ。
最後まで見届けよう。
私が心の中のリリアーナと話し合ってから5分程で、伯爵の身体は動かなくなり、両手をだらんと下ろしてしまった。
「わか…り…ました………コントラクト発動」
伯爵は自分自身に自己暗示をかけ、自分のスキルで契約を施すと、両膝を地面に付けたまま、その場から動かなくなった。
「さあ、これで終わりだ。咲耶、黙っていてごめんね。領主やクザンの連中を見張っていたのは本当だけど、それはスキル《分身》による分身体にやらせていて、僕とフリードの本体は、常に姿を消した状態で咲耶の近くに待機していたんだ」
全然、気づかなかった。
それじゃあ、私は2体にずっと守られていたの?
「え…と、それじゃあ、どうしてすぐに助けてくれなかったの?」
「僕たちの目的は、2つある。1つ目はフェルデナンド家を崩壊させること、2つ目は咲耶の自主性を育てること」
私の自主性? どういうこと?
「君は転生者とはいえ、身も心も10歳だから、僕たちに頼ってばかりいると、君自身の成長が阻害されてしまう。心当たりはあるよね?」
ルウリとフリードに頼る?
そうか…ガブリでの深夜襲撃に関しては2体に頼ってばかりで、私は周囲に気を配る事なく、中で熟睡していたわ。今回、周囲に頼れる人が誰もいなかったから、私は自分で考えて行動に移し、自分のできる範囲で、ユウキさんの救出手段を考えた。
自分で考えて行動すること、これが自主性なんだね。
「ちょっと待て!! 咲耶の自主性を育てること、これは私にもわかるが、姿を消した状態で彼女を守り、コントラクトによるスキルの上書きもできるのなら、どうして彼女にスキル《原点回帰》を使わせた? 私を10歳に戻す必要性はないだろ?」
近くにいるユウキさんが、最もな疑問をルウリたちに投げつける。
「それは、あなたのためですよ。私は咲耶と出会う前に、王都にも立ち寄り、[とある情報]を入手するため、色々と動いていたのですが、その過程でフェルデナンド家のことを詳しく知ったのです」
フリードは、あの家のことを知っていたの!! 家の危険性を知っていたからこそ、ルウリと相談し合い、今回のことを計画していたのね。
「リバイブルド王国の中でも、血縁者全員がレアスキルを所持する家系として有名なんです。そのため、王族とも深い繋がりがあります。王族たちは、戦闘面でも政治面でも力の強いフェルデナンド家を常に警戒しており、スパイを送り込んでいるので、ユウキの存在は恐らく漏れています。今回の騒動で、王族は必ず動き出す。奴らにとって恐れるのは国家機密の情報漏洩、特に伯爵にどんな契約を課せられているのかわからない暗部の者たちを野放しにしておくのは危険なので、全員が内密に抹殺される可能性が高いのです」
レアスキルを所持する家系、ということはリリアーナ以外の人たち全員が、強力なスキルを持っているのね。だから、伯爵は寝首をかかれないよう、血縁者や婚姻者たちをスキルで縛っていた。その中でも、私だけが無能者となってしまい、家の恥として必要以上に強く差別していたんだ。
そうなると、私の記憶にある兄2人は、私のことを本気で嫌っていたのかな? 記憶を見る限り、2人の表情は私を明らかに見下している。兄たちと何処かで再会した時に、あの時の表情が本気なのかがわかるわね。
「抹殺……ありえる。あの家は、スキルで様々な貴族の裏情報を収集している。それは、王族とて例外ではない。私は、咲耶たちに助けられたのか」
元々、リットからのお願いで動いた事なのに、クザンでの食品偽装をキッカケに、事がどんどん大きくなっていく。伯爵はルウリたちの操り人形となったから、もう家の崩壊は絶対に止められない。
「お~~~~~い、ルウリ、フリード。事はもう終わったのか~~~~」
遠くから聞こえてくる声は、ベイツさんだ!!
彼も、2体から今回の計画を聞いていたのね。
「ベイツ~~~もう終わってるよ~~~。この男を捕らえて、領主のもとへ連れ行って尋問して~~~~」
ベイツさんは私たちのもとへ来て、真っ先に謝罪してくれた。ユウキさんを見て驚いていたけど、今すべき重要事項を優先するため、軽く自己紹介を済ませてから、伯爵に一緒に来るよう命令する。周囲に寝ている護衛に関しては必要ないので、その場に放置する予定だったけど、この地域を縄張りとしている猫たちから猛烈な抗議が上がったので、ルウリが大きな袋を取り出し、4人を包み、紐で縛る。
「はいよ。あとは任せた」
ルウリはペイっと、その袋を魔法でベイツさんの方へ放り投げる。
「え?」
ドスンと大きな音が鳴ったけど、護衛たちが起きることはなかった。
どれだけ深く眠らされているのだろう?
「君ならスキル《身体強化》を使えば、余裕で引き摺っていけるでしょ?」
「全く、人使いの荒い鳥だよ。そうそう、ユウキはこの事件が落ち着くまで、俺の家に住めばいい」
「え!? いいんですか?」
「ああ、構わないよ。その代わり、咲耶と仲良くすること」
そう言うと、彼は4人の入っている袋を引き摺りながら、ボ~っとしている伯爵と共に路地を進んでいき、この場から消えていった。伯爵が唐突に現れた時はどうなるかと思ったけど、この難局を切り抜けられることができたんだね。結局、最後の最後で助けられてしまったけど、それでもユウキさんに関しては自分だけの力で、救出できたことが嬉しい。
あはは、なんだか気が抜けてきたよ。
「咲耶、大丈夫か?」
気づけば、私は地面に座っていた。
「うん、気が抜けちゃって。ユウキさん、身体の状態は?」
スキルで10歳に戻しているから、彼女の身体の状況が気になる。ベイツさんもルウリたちから彼女の事情を聞いているからこそ、家にいていいと言ってくれた。
この行為は、私としても助かる。
「ああ、問題ない。段々と身体にも慣れてきた。今後も訓練を積んでいけば、スキルや魔法だって使えると思うけど、身体が小さくなった分、威力も減衰しているだろうな。まずは、どこまで弱くなっているのか把握しないといけない。咲耶、本当にありがとう。君……いや君たちのおかげで、私は救われたよ」
今まで伯爵のコントラクトに縛られていたせいで、性格も暗殺者向けに歪まされ、行動だって制限されていたはず、ユウキさんはもう自由だ。私の希望としては仲間になってほしいところだけど、これは我儘かな。
「咲耶、ユウキ、君たちはフェルデナンド家から本当の意味で抜け出すことに成功した。後処理に関しては、王族・貴族たちに任せればいい。伯爵や家族の末路なんて、気にしなくてもいいよ」
ルウリ、私を気遣ってくれているんだね。私自身、あんな記憶を見せられてしまったから、正直あの人たちがどうなろうと関係ないわ。性格を歪められてしまった人たちには気の毒だけど、もう解放されたのだし、あとはその人たちの行動次第だ。私は、自分の生活のことだけを考えよう。
「ルウリの言う通りですね。コントラクトによる縛りが全て消失した以上、縛られた者たちも黙っていないでしょう。現時点で、伯爵の父母が殺されていますので、今後も血生臭いことが必ず起こります。まあ、それは王都限定なので、あなたには一切影響がありませんから、この街でスローライフを築いていけばいいのです」
フリード、ありがとう。
よかった、これでいつも通りの生活に戻れる。
リリアーナ、あなたから見れば悲しい結末かもしれないけど、これで良かったんだよ。あの家を放置すれば、私やユウキさんのような人たちがもっと増えていたと思うもの。
あなたの心はバラバラに砕け散ってしまったけど、私の心の中で生きている。
あなたと私は一心同体、絶対裏切らないからね。
これからも宜しくね。
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