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1章 家族との別離(前世)

4話 街に到着

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出会った当初に言われた《契約》は従魔契約というもので、鳥さんは私のおでこに嘴をくっつけたことで、私専属の従魔になってくれた。名前は【ルウリ】、フェアリーバード種で数多くのスキルと魔法を扱える精霊の一種とされており、ベイツさんが言った通り、人の世界では非常に稀有な存在で、別名【神の御使】と呼ばれていて、国鳥として崇められている国もあるんだって。だから、自分がフェアリーバードであることを他者に言わないよう厳命された。

ルウリ自身から人の言語でその事を聞かされたことにより、私は契約前に言っていた言葉の意味を真に理解できた。隣で聞いていたベイツさんも、ルウリの存在を信じ、「絶対に話さないことを誓おう」と豪語してくれたのだけど、「ベイツと言ったね。比較的綺麗な魂だけど、しばらくの間監視させてもらう」と言われ、信用されなかったことで少しがっかりしていた。でも、監視期間中に信用に値すべき人物と思ってもらえるよう行動しようと前向きに考え、すぐに立ち直ったわ。

そこから森を抜けるべく、歩行を再開させたのだけど、私たちはルウリのおかげで、1時間程で樹海から抜け出すことに成功した。そこからすぐに街道を見つけ、1キロくらい歩いたのだけど、そこで私の体力が尽きてしまった。

ベイツさんもルウリも私の体調面を考慮し、その場で野宿することを選んでくれた。私自身、足も痛くて歩けない状態だったから、本当に助かった。少しの間仮眠したことで体力も回復し、私はベイツさんと共に三人用のテントを張っていったのだけど、私の手際があまりにいいこともあって褒められたわ。体力はこの子の身体に直結するけど、アウトドアの知識は私の記憶と経験に直結しているから役立てて嬉しい。

お父さんとお母さんがキャンプ好きだから、テントの張り方や焚き火の起こし方も知っているし、お母さんに料理だって習っているから、生活面では役立てるかもしれない。

夕食として、干し肉と野菜スープを調理してくれたけど、味付けが朝食の時と同様薄くイマイチということもあり、私が未知の調味料などを味見しながら再調整すると、ベイツさんもルウリも「「美味い!!」」と喜んで食べてくれた。何故ルウリが、平然と人と同じ物を食せるのかわからないけど、喜んでくれて良かった。

翌日、私たち一行は再出発し、昼前に目的地[辺境都市リリアム]に到着した。

私のいる国は、人間の治める【リバイブルド王国】、ここは獣人の治める隣国【ヘルハイム王国】との国境から近い位置にあるため、交易も盛んで、かなりの人口密度がある。外側からざっと見た限り、そこは日本の都市や村と異なり、街の境界線となる場所には大きな外壁が設置されており、これで魔物の侵入を防いでいるって、ベイツさんが教えてくれた。街の中へ入るためには、四箇所ある門のいずれかで、門番に身分証明書を見せ許可をもらわないといけない。私はそんなものを持っていないので、門入口で呆然と佇んでしまう。

「安心しろ。昨日の夜にも言ったが、証明書がない場合でも、三日間だけ滞在は許される。その間に、何処かのギルドで登録証を作成し身分を保証させ、それをここに報告すれば、ずっと滞在可能になる」

それを聞いて、私も安心です。

「よかった…でも、私の登録先は何処になるのですか?」

昨日の夜の時点で、ギルドについても説明されたけど、数多くあって何処に登録すればいいのかわからないよ。

「咲耶の場合、今後街を離れる可能性もあるから冒険者ギルドだな。規則上、力量を計るための試験を受けてもらわないといけないが、君の場合は無能者だから間違いなく最低ランクのFからだ」

 《無能者》か、昨日の野営時に教えてもらったけど、この言葉は私にとって悪口になる。この世界の人たちは10歳になったら、教会で神からの祝福を受け、今の自分に見合ういくつかの基本スキルが与えられ、自分にしか見えないステータスプレートを顕現できるようになるみたい。魔法に関しても、祝福以降使用可能になるけど、魔力自体は体内に存在しているから、小さい頃から魔力を循環させたり、外に放出させたりと訓練を重ねておけば、10歳の時点から魔法も習得しやすくなるんだって。

でも、ごく稀に10歳でスキルを貰えない人がいるらしく、そういった人たちのことを、《何の能力も無い者》ということで、この名称が付いた。今の自分のステータスプレートを顕現できないから落ち込んだけど、すぐにルウリがフォロをー入れてくれたわ。

「君の場合、魂が安定していないから、ステータス自体を見れないのさ。そうだね……あと3日もすれば、見られるようになるかな。今は無能者だけど、5年以内に必ず何らかの能力が目覚める。出会った際に話した鳥の言語を理解できる以上、もしかしたら1ヶ月以内に目覚めるかもしれない」

ルウリは野生の鳥[ハミングバード]として擬態しているので、こうした平地であっても、人前では絶対に人語で話さない。というか、そもそも人が嫌いみたい。私とベイツさんに限っては、心が綺麗だから気を許し、周囲に誰もいなければ、この国の言語で話しかけてくれる。私の落ち込みでフォローを入れてくれたことは嬉しいのだけど、普通の人と違い遅れて現れるだけで、これといった特別なスキルを貰えるわけではないので、あまり期待しないようにとも言われたわ。

《スキルの発現が平民たちよりも遅い》

多くの貴族たちは、これだけの理由で無能者となった貴族や平民を差別する。この街の人たちは以前そういった人たちに助けられたこともあり、差別意識はないと聞き、私も安心した。
 
 ルウリは私を一目見て無能者と見抜いたけど、生まれたての転生者だからとも言っていたから、詳しい理由を知っている。だから、一人前になれるよう焦らず頑張っていくしかないけど、今の時点で小説とかに出てくる魔物と遭遇したら、勝ち目がない。冒険者になったら、やっぱり魔物と戦うんだよね?

「ベイツさん、私は魔物と戦う術を知りません」

「大丈夫だ、そこは俺に任せろ。冒険者としての生きる術を、3日間で仕込むだけ仕込む。それに、Fランクには《魔物討伐依頼》がない。殆どが街の中での仕事だから、治安の良いこの街では人に襲われることもないから安心して励めばいい」

それを聞けて、なんだか安心した。
私は3日後に、冒険者として働くことになる。
早く一人前になって、この憑依の原因をルウリから聞こう。

街の入口には20人くらい行列となっていたけど、きちんと順番を守り、30分ほどで私たちの番が回ってきた。警備の男性は私の服装を見て怪しんでいたけど、ベイツさんは自分の冒険者カードを見せ、私を発見した際の事情を嘘偽りなく話すと、男性も信じてくれて、私に同情してくれたのか、頭を撫でてくれた。そして、仮の身分証明書となる入場許可証を私に与えてくれた。

私にとって新たな生活が、この街の中で始まるんだ。
頑張ろう!!
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