10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

文字の大きさ
上 下
3 / 76
1章 家族との別離(前世)

2話 私は誰?

しおりを挟む
これってどういうこと?
この子は、誰? 
私なの?
私は日本人なのに、どうして姿が変わってるの?

「おい、身体を震わせてどうしたんだ?」

おじさんが心配そうな目で、私を見ているわ。 
どうしよう…なんて説明したらいいの?

「あの…自分の顔を見たら…」

言葉が出てこない。
本当のことを言っても、絶対信じてもらえないよ。
私が震えていると、突然温かなものが身体全体を覆う。

「え…おじさん?」
 
おじさんが私を抱きしめてくれているの?
何故だろう?

知らない人なのに、まるでお父さんやお母さんに優しく包まれているかのような感じがする。

全然、嫌な感じがしない。

「大丈夫だ。君は助かったんだ。今は、過去のことを考えるな。これからのことだけを考えろ」

これからのこと……おじさんがいるおかげで、心が落ち着いてくる。
私の姿が変化したこと。
家族の安否。
今考えても、解決できることじゃない。
今は、ここを早く抜け出したい。

「あ…ありがとうございます。少し落ち着きました」
「そうか」

そう言うと、おじさんが離れていき、私に温かな目を向ける。
この目、お父さんやお母さんが向けてくるものと似ている。

「よし‼︎ まずは、互いの自己紹介をしよう」

 雰囲気を変えたいのか、おじさんが突然自己紹介を切り出した。
 
「俺はベイツ、Aランク冒険者だ。そもそも、俺は33歳だから、おじさんと呼ばれる年齢じゃないぞ」

33? 
お父さんの年齢が35歳だから……おじさんと呼ばれる歳だよね? 
違うの? 

そもそも…Aランク冒険者って何?
それに私の名前は倉木咲耶くらきさやだけど、この女の子の名前は何なの?

「あの…さっき自分の顔を見た時、驚いたことには理由があるんです。何か重大なことが起きたけど、それが何なのかわからないこと、そして……『この子、誰?』と思いました」

ごめんなさい。
今は状況がわからないので、真実を話せません。
でも、嘘は付いていません。

「つまり…君は記憶喪失ってことか?」

おじ…ベイツさんもキョトンとした顔で、私に尋ねてくる。

「だと思います」
 
記憶喪失…だよね? 
この女の子の記憶なんて、全くないもの。
ベイツさんが何か深く考え込んでいるけど、どうしたのかな?

「どこまで記憶喪失なのかが重要だな。名前はわからないんだな?」
「はい」

 《どこまで》って、どういう意味?

「君の症状を調べてみよう。今からいくつか質問するから、落ち着いて答えてくれ」

こういう時って、どんな質問が出されるのかな?
少し怖いけど、私は覚悟を決めて頷く。

「まず1つ目、この世界の名前は?」
「へ? 世界に、名前なんてあるんですか?」

あれ? 

疑問に思ったことをそのまま口にしたら、ベイツさんの顔がより一層険しくなった。惑星と言ってくれたら、地球と答えたけど、どうして世界なの? 世界に、名前なんてあるわけないわ。

「2つ目、この国の名前は?」

え!? 
ここは日本……だよね?
でも、ベイツさんの服装、どこか日本のものと違う。
私の知る服は、もう少し上質なもの。

それに、ベイツさんの横に置かれているもの、あれって鞘に入っているけど、剣だよね? あんな目立つものを堂々と持ち歩いていたら、銃刀法違反で捕まるはずだよ。え…そうなると、ここは日本じゃないの?

「わからないなら、無理して答えなくていいぞ。三つ目、君の得意な魔法は?」
「魔法!? もう揶揄わないでくださいよ。いくら私が子供でも、魔法なんて存在しないことはわかっています」

アニメとかで、よく使われているけど、現実の世界で使えるわけないわ。そう思って言った言葉なのに、何故かベイツさんは気の毒そうな顔を浮かべる。
 
「これは、かなり重症だな。よし、決めた!! この出会いも、何かの縁だ。俺がこの世界の常識を君に教え、一人前になるまで育てる!!」

「ええ!?」

たった三つの質問だけで、どうしてそこまで飛躍するの!? 
意味がわからないよ!!
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...