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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
シャーロットの怒りを鎮める者は誰だ?
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○○○ オトギ視点
あ……俺、死んだわ。
シャーロット、なんつうタイミングで転移してくるんだよ。《アイツ》から彼女の情報を仕入れていたから、いつか転移してくると思っていたが……何故このタイミングなんだ?
俺の【デュラハン改】としての力があれば、【一本釣り】の罠に嵌ったフレヤを救出することは簡単だったが、俺の王都到着とデュラハン騒動、それに合わせたかのような魔物の召喚、何者かが俺を陥れようとしている事を考慮し、咄嗟に自分の首だけをフレヤの背中に貼り付け様子を見ることにした。
ユニークスキル【身体分離《首限定》】
首を切り離すことで、首だけが自由自在に空中を飛び回れることが可能となる。分離中、身体も操作可能だが空を飛びたい場合は、風魔法かスキルを利用すること。
デュラハンやデュラハン改に備わっているユニークスキル、こいつがここで活きてくるは思わなかった。魔導具【一本釣り】にはユニークスキルを封印する力はないが、俺の存在に勘づかれるとフレヤの身が危ないかもしれない。
俺《首》は上空にいるドラゴンの姿を確認後、フレヤからそっと離れ、気配を殺し更なる上空からずっとフレヤとカビバラの会話を聞いていた。そして、魔導具がドラゴンの背中に固定されるのを見計らい、フレヤの背後にずっと息を潜ませ、誘拐相手の正体を突き止める事に成功した。俺の《身体》は気づかれないよう、奴等と同じ高度のかなり後方でスキル【空歩】を使いながら待機していたんだが、まさかこんな結末を迎えようとはな。
上空1000m付近にいるフェルボーニ達は、シャーロットの吹き荒れる魔力のせいもあって、恐怖でその場を動けないようだ。
この周囲一帯は、平野となっている。日も暮れかかっており、周囲が少し薄暗いものの、近辺には大きな街や村もない。周囲に吹き荒れる彼女の魔力に当てられ、死ぬ者もいないだろう。
それにしても、魔力が漏れ出ただけで、勝機が俺にないとわかる。《アイツ》は、『シャーロット様は現人神だ。お前の願いも簡単に叶えてくれる』と言っていたが、実際対面したことで、その意味が嫌でも理解できるぜ。
俺の強さはステータス999を超えている。その俺が、彼女の溢れ出る魔力の存在を認識できても、その強さ自体を感知できない。
まるで、何も感じない。
俺との力量差がありすぎるせいだ。
現状の彼女は、【憤怒】に囚われている。とてもじゃないが、俺の話を聞いてくれそうにない。俺の心願成就ともいえる夢は叶いそうにないが、それとは違うもう1つの夢【自分を殺してほしい】、これだけは叶いそうだ。
フレヤを巻き添えにしたくない。
地面に下ろそう。
「オトギさん!?」
「フレヤは離れていろ。君も巻き込まれて死ぬぞ」
「そんな! シャーロットは誤解しているだけです! 話し合えばわかってくれます!」
「だと…いいがな」
俺と同じように、フレヤも何かを隠している。
シャーロットへのあの謝罪……何を意味しているのか。
「フレヤ、そこを退いて。其奴を殺せない」
「ダメ! シャーロット、落ち着いて!」
フレヤが俺の前面に出た。
俺を庇いながら、シャーロットを説得するつもりか?
「シャーロット、聞いて。私は竜人族の運び屋カビバラに攫われたの。そして、この真上に位置する上空5000mで依頼人であるフェルボーニと出会ったわ。私が2人から情報を収集している時、オトギさんが私を助けてくれたのよ!」
フレヤの声が届いたのか、シャーロットの怒気が少しだけ鎮まっている。
頼むフレヤ、彼女を説得してくれ!
「それじゃあ、どうして上空5000mから落下したの?」
「え…と、オトギさんがカビバラ、フェルボーニ、従魔2体を威圧して話し合いが始まったのよ。そこに私も加わって、フェルボーニが《誘拐の動機》や《北と南の魔物騒動》について丁寧に話してくれたことで、オトギさんも納得して威圧を解いてくれたの。だけど、従魔スカイドラゴンの1体がその状況に耐えられなくなって暴れてしまったの。そうしたら私を捕らえていた魔導具【一本釣り】の固定器具が壊れてしまい、私は魔導具ごと地上へ落下する羽目になったの」
フレヤ、その通りなんだが、その説明だとまずくないか?
「なるほど。オトギさんはカビバラ、フェルボーニへの対処をミスって、フレヤを地上に落としたのね」
そう、結局のところ、俺が悪いんだよ。
カビバラとフェルボーニは、フレヤを《国賓》として迎えるつもりだった。
俺がそこに乱入したせいで、こうなったからな。
「そうなんだけど…でも、彼はギリギリのところで私を助けてくれたの!」
フレヤが必死になって、彼女の怒りを鎮めようと動いてくれている。
このまま子供の彼女に、全てを任せるわけにはいかねえよな。
元はと言えば、俺が全ての元凶なんだ。
ここは……精一杯誠意を見せるべきだ!
「シャーロット、すまない! 全ての引き金は俺だ。魔導具【一本釣り】は、ノーマルスキルと魔法を封印する効果を持つ。フレヤは落下中、その魔導具を殴り続けたせいで、両手が血塗れになった。俺がギリギリのところで、彼女を助けて抱いたせいもあって、俺の服が血だらけとなってしまったんだ!」
俺とフレヤの声が届くか?
頼む、届いてくれ!
「シャーロット、私はね、オトギさんに感謝しているの。私は上空5000mから落下した事で、初めてあなたのあの時の《転移》を共感できたの。ごめんね……12000mに転移させて……ごめんね」
フレヤは、やはり……イザベル・マインなのか?
しかし、彼女は処刑されたはず……
シャーロットは、フレヤの言葉を聞いた事で目を見開いた。それと同時に、吹き荒れる魔力が急速に鎮まっていくのを感じる。
フレヤがゆっくりとシャーロットに近づいていき、彼女をそっと抱きしめる。
「フレヤ……」
「シャーロット、私の危機に駆けつけてくれた事は嬉しいの。でも、あなたは間に合わなかった」
「う! それは…その…」
今、ここでそれを言うのか!? シャーロットも痛いところを突かれたせいで、完全にペースを崩ししどろもどろになっている。
「オトギさんは、自分の不用意な【威圧】の所為で私を落とすことになったけど、諦めずに私を助けてくれた。上空にいるカビバラやフェルボーニ達だって私を誘拐したけど、《国賓》として私を迎える予定だったらしく、私に危害を加えることなく、質問にも真面目に接してくれたわ。今回は……許してあげて」
不思議だ。
彼女は10歳のはずだ。
だが、今見せている彼女の表情は何だ?
自分自身を責める言葉、自分自身を悔いる言葉、他者を慈しむ言葉、1つ1つが重い。彼女はどれだけの経験を積んで、これまでを生きてきたのだろう?
それに時折見せる仕草が、妙に大人っぽく感じる。
「わかったよ。今回、私は間に合わなかった。オトギさんがフレヤを救出したのも事実だもんね」
「シャーロット、ありがとう!」
俺もフェルボーニ達も、フレヤのおかげで命を助けられたな。
というか、あいつらはいつまで上空にいるつもりだ?
○○○ シャーロット視点
転移した瞬間、フレヤの現状を見て、つい怒りで我を忘れてしまった。その後、フレヤとオトギさんが事情を説明してくれたことで状況を理解し、最後フレヤに抱きしめられ、上手い具合に説得されたこともあって、怒りがすっ飛んでしまった。
フレヤは、上空5000mからスカイダイビングを強制決行されたこともあって、相当の恐怖が彼女の心を支配したのだろう。彼女自身が私と似た経験をしたことで、改めて自分の行った行為のエグさを理解したんだね。
今回、私はフレヤの救助に間に合わなかった。オトギさんがいなければ、彼女は死んでいた。私自身、自分の力を過信していたわけじゃない。でも、私の力があれば転移魔法で危機的状態となっている仲間のもとへと駆けつけ、救出できると思い込んでいた。
《突発的事故》というものは、何処にでも起こりうる。
今回、私自身もオトギさんやフレヤに助けられたね。
「フレヤ、あなたを誘拐した人達がこの真上にいるんだね?」
「え…ええ…私を誘拐したのは、竜人族のカビバラとフェルボーニよ」
真上を見るとかなり高い位置に、ドラゴンらしき魔物が2体いるけど、竜人族の2人は何処にいるのかな?
魔力を感知できるから、とりあえずオトギさんと上の2人を構造解析しておこう。
あら~、あの2人、スカイドラゴンの頭の上で気絶しているのね。
肝心のスカイドラゴンも、私が真下にいるせいで、どう行動すべきか悩んでいる。次の自分達の行動次第で《死ぬ》と思っているね。私の声を上空のドラゴンに届くよう、拡声魔法を上空だけに絞り使用しよう。
「こら~~~そこのドラゴン共~~~降りてこ~~~い! 10秒以内に降りて来ないと……食べるよ?」
あ!
食べられると思ったのか、物凄い勢いで急降下してきた!
《ドーーーーーン》
「グワワザカ、ボギリギリファドギエガガグウガガ」
(フレヤ様、誠に申し訳ありませんでした!)
「ザゴソウバブグルガ、バゲファレツコバウタラ」
(シャーロット様、食べないでください!)
あちゃあ~~、スカイドラゴン達が着陸と同時に土下座謝罪したせいで、気絶した竜人族の2人が吹っ飛ばされて、おかしな体勢になってるよ。手足が変な方向に曲がっているところを見ると骨折しているようだ。ドレッドヘアーの髪型、漆黒の大剣を装備しているのがフェルボーニで、こっちの釣竿を持っているのがカビバラか。
「シャーロット、すまないが回復魔法を使ってもらえないか?」
このまま死なせてしまうと後々問題になりそうだし、オトギさんの言う通り、完全回復させてあげよう。私のせいで、スカイドラゴン達もかなり疲弊している。フレヤの両手だって血だらけのまま。皆の心を落ち着かせるためにも、時間のかかる【リジェネレーション】を行使すればいいかな。
「わかりました。全員の怪我を治します。【リジェネレーション】」
竜人族達に関しては、完治してから話を聞こう。
問題は、オトギさんだ。
構造解析でチラッとステータス欄を見たけど、種族欄がゴースト族【デュラハン改】となっている。しかも、種族説明欄を見ると、ミスラテル様が追記事項を加えている。
………………
ゴースト族【デュラハン改】 ※追記部分 《シャーロットのみ閲覧可能》
この《名称》は、地球側のものと酷似しています。しかし、地球側のデュラハンは空想の魔物で本来妖精族に分類されており、頭部そのものがありませんし、鎧の中身も空となっています。
ガーランドがこの空想上の魔物を制作する際、『姿から判断して、ゴースト族の方が合っている』という理由で、この惑星ではゴースト族に分類されており、中身も生前の身体が採用され存在しています。
通常のデュラハンは光属性にやや耐性を持つため、幻惑魔法を使用可能としていますが、オトギの《デュラハン改》に限り完全耐性を身につけているため、回復魔法も使用可能です。その理由に関しては、ここに記載するよりも本人から聞いた方が良いでしょう。
………………
ミスラテル様、御説明して頂きありがとうございます。
私としては、デュラハンが《妖精族》、《ゴースト族》、どちらでも構わないです。
オトギさんが目の前にいるのだから、《種族について》《どんな目的で王都に訪れたのか?》、ここで全部聞いてしまおう。
あ……俺、死んだわ。
シャーロット、なんつうタイミングで転移してくるんだよ。《アイツ》から彼女の情報を仕入れていたから、いつか転移してくると思っていたが……何故このタイミングなんだ?
俺の【デュラハン改】としての力があれば、【一本釣り】の罠に嵌ったフレヤを救出することは簡単だったが、俺の王都到着とデュラハン騒動、それに合わせたかのような魔物の召喚、何者かが俺を陥れようとしている事を考慮し、咄嗟に自分の首だけをフレヤの背中に貼り付け様子を見ることにした。
ユニークスキル【身体分離《首限定》】
首を切り離すことで、首だけが自由自在に空中を飛び回れることが可能となる。分離中、身体も操作可能だが空を飛びたい場合は、風魔法かスキルを利用すること。
デュラハンやデュラハン改に備わっているユニークスキル、こいつがここで活きてくるは思わなかった。魔導具【一本釣り】にはユニークスキルを封印する力はないが、俺の存在に勘づかれるとフレヤの身が危ないかもしれない。
俺《首》は上空にいるドラゴンの姿を確認後、フレヤからそっと離れ、気配を殺し更なる上空からずっとフレヤとカビバラの会話を聞いていた。そして、魔導具がドラゴンの背中に固定されるのを見計らい、フレヤの背後にずっと息を潜ませ、誘拐相手の正体を突き止める事に成功した。俺の《身体》は気づかれないよう、奴等と同じ高度のかなり後方でスキル【空歩】を使いながら待機していたんだが、まさかこんな結末を迎えようとはな。
上空1000m付近にいるフェルボーニ達は、シャーロットの吹き荒れる魔力のせいもあって、恐怖でその場を動けないようだ。
この周囲一帯は、平野となっている。日も暮れかかっており、周囲が少し薄暗いものの、近辺には大きな街や村もない。周囲に吹き荒れる彼女の魔力に当てられ、死ぬ者もいないだろう。
それにしても、魔力が漏れ出ただけで、勝機が俺にないとわかる。《アイツ》は、『シャーロット様は現人神だ。お前の願いも簡単に叶えてくれる』と言っていたが、実際対面したことで、その意味が嫌でも理解できるぜ。
俺の強さはステータス999を超えている。その俺が、彼女の溢れ出る魔力の存在を認識できても、その強さ自体を感知できない。
まるで、何も感じない。
俺との力量差がありすぎるせいだ。
現状の彼女は、【憤怒】に囚われている。とてもじゃないが、俺の話を聞いてくれそうにない。俺の心願成就ともいえる夢は叶いそうにないが、それとは違うもう1つの夢【自分を殺してほしい】、これだけは叶いそうだ。
フレヤを巻き添えにしたくない。
地面に下ろそう。
「オトギさん!?」
「フレヤは離れていろ。君も巻き込まれて死ぬぞ」
「そんな! シャーロットは誤解しているだけです! 話し合えばわかってくれます!」
「だと…いいがな」
俺と同じように、フレヤも何かを隠している。
シャーロットへのあの謝罪……何を意味しているのか。
「フレヤ、そこを退いて。其奴を殺せない」
「ダメ! シャーロット、落ち着いて!」
フレヤが俺の前面に出た。
俺を庇いながら、シャーロットを説得するつもりか?
「シャーロット、聞いて。私は竜人族の運び屋カビバラに攫われたの。そして、この真上に位置する上空5000mで依頼人であるフェルボーニと出会ったわ。私が2人から情報を収集している時、オトギさんが私を助けてくれたのよ!」
フレヤの声が届いたのか、シャーロットの怒気が少しだけ鎮まっている。
頼むフレヤ、彼女を説得してくれ!
「それじゃあ、どうして上空5000mから落下したの?」
「え…と、オトギさんがカビバラ、フェルボーニ、従魔2体を威圧して話し合いが始まったのよ。そこに私も加わって、フェルボーニが《誘拐の動機》や《北と南の魔物騒動》について丁寧に話してくれたことで、オトギさんも納得して威圧を解いてくれたの。だけど、従魔スカイドラゴンの1体がその状況に耐えられなくなって暴れてしまったの。そうしたら私を捕らえていた魔導具【一本釣り】の固定器具が壊れてしまい、私は魔導具ごと地上へ落下する羽目になったの」
フレヤ、その通りなんだが、その説明だとまずくないか?
「なるほど。オトギさんはカビバラ、フェルボーニへの対処をミスって、フレヤを地上に落としたのね」
そう、結局のところ、俺が悪いんだよ。
カビバラとフェルボーニは、フレヤを《国賓》として迎えるつもりだった。
俺がそこに乱入したせいで、こうなったからな。
「そうなんだけど…でも、彼はギリギリのところで私を助けてくれたの!」
フレヤが必死になって、彼女の怒りを鎮めようと動いてくれている。
このまま子供の彼女に、全てを任せるわけにはいかねえよな。
元はと言えば、俺が全ての元凶なんだ。
ここは……精一杯誠意を見せるべきだ!
「シャーロット、すまない! 全ての引き金は俺だ。魔導具【一本釣り】は、ノーマルスキルと魔法を封印する効果を持つ。フレヤは落下中、その魔導具を殴り続けたせいで、両手が血塗れになった。俺がギリギリのところで、彼女を助けて抱いたせいもあって、俺の服が血だらけとなってしまったんだ!」
俺とフレヤの声が届くか?
頼む、届いてくれ!
「シャーロット、私はね、オトギさんに感謝しているの。私は上空5000mから落下した事で、初めてあなたのあの時の《転移》を共感できたの。ごめんね……12000mに転移させて……ごめんね」
フレヤは、やはり……イザベル・マインなのか?
しかし、彼女は処刑されたはず……
シャーロットは、フレヤの言葉を聞いた事で目を見開いた。それと同時に、吹き荒れる魔力が急速に鎮まっていくのを感じる。
フレヤがゆっくりとシャーロットに近づいていき、彼女をそっと抱きしめる。
「フレヤ……」
「シャーロット、私の危機に駆けつけてくれた事は嬉しいの。でも、あなたは間に合わなかった」
「う! それは…その…」
今、ここでそれを言うのか!? シャーロットも痛いところを突かれたせいで、完全にペースを崩ししどろもどろになっている。
「オトギさんは、自分の不用意な【威圧】の所為で私を落とすことになったけど、諦めずに私を助けてくれた。上空にいるカビバラやフェルボーニ達だって私を誘拐したけど、《国賓》として私を迎える予定だったらしく、私に危害を加えることなく、質問にも真面目に接してくれたわ。今回は……許してあげて」
不思議だ。
彼女は10歳のはずだ。
だが、今見せている彼女の表情は何だ?
自分自身を責める言葉、自分自身を悔いる言葉、他者を慈しむ言葉、1つ1つが重い。彼女はどれだけの経験を積んで、これまでを生きてきたのだろう?
それに時折見せる仕草が、妙に大人っぽく感じる。
「わかったよ。今回、私は間に合わなかった。オトギさんがフレヤを救出したのも事実だもんね」
「シャーロット、ありがとう!」
俺もフェルボーニ達も、フレヤのおかげで命を助けられたな。
というか、あいつらはいつまで上空にいるつもりだ?
○○○ シャーロット視点
転移した瞬間、フレヤの現状を見て、つい怒りで我を忘れてしまった。その後、フレヤとオトギさんが事情を説明してくれたことで状況を理解し、最後フレヤに抱きしめられ、上手い具合に説得されたこともあって、怒りがすっ飛んでしまった。
フレヤは、上空5000mからスカイダイビングを強制決行されたこともあって、相当の恐怖が彼女の心を支配したのだろう。彼女自身が私と似た経験をしたことで、改めて自分の行った行為のエグさを理解したんだね。
今回、私はフレヤの救助に間に合わなかった。オトギさんがいなければ、彼女は死んでいた。私自身、自分の力を過信していたわけじゃない。でも、私の力があれば転移魔法で危機的状態となっている仲間のもとへと駆けつけ、救出できると思い込んでいた。
《突発的事故》というものは、何処にでも起こりうる。
今回、私自身もオトギさんやフレヤに助けられたね。
「フレヤ、あなたを誘拐した人達がこの真上にいるんだね?」
「え…ええ…私を誘拐したのは、竜人族のカビバラとフェルボーニよ」
真上を見るとかなり高い位置に、ドラゴンらしき魔物が2体いるけど、竜人族の2人は何処にいるのかな?
魔力を感知できるから、とりあえずオトギさんと上の2人を構造解析しておこう。
あら~、あの2人、スカイドラゴンの頭の上で気絶しているのね。
肝心のスカイドラゴンも、私が真下にいるせいで、どう行動すべきか悩んでいる。次の自分達の行動次第で《死ぬ》と思っているね。私の声を上空のドラゴンに届くよう、拡声魔法を上空だけに絞り使用しよう。
「こら~~~そこのドラゴン共~~~降りてこ~~~い! 10秒以内に降りて来ないと……食べるよ?」
あ!
食べられると思ったのか、物凄い勢いで急降下してきた!
《ドーーーーーン》
「グワワザカ、ボギリギリファドギエガガグウガガ」
(フレヤ様、誠に申し訳ありませんでした!)
「ザゴソウバブグルガ、バゲファレツコバウタラ」
(シャーロット様、食べないでください!)
あちゃあ~~、スカイドラゴン達が着陸と同時に土下座謝罪したせいで、気絶した竜人族の2人が吹っ飛ばされて、おかしな体勢になってるよ。手足が変な方向に曲がっているところを見ると骨折しているようだ。ドレッドヘアーの髪型、漆黒の大剣を装備しているのがフェルボーニで、こっちの釣竿を持っているのがカビバラか。
「シャーロット、すまないが回復魔法を使ってもらえないか?」
このまま死なせてしまうと後々問題になりそうだし、オトギさんの言う通り、完全回復させてあげよう。私のせいで、スカイドラゴン達もかなり疲弊している。フレヤの両手だって血だらけのまま。皆の心を落ち着かせるためにも、時間のかかる【リジェネレーション】を行使すればいいかな。
「わかりました。全員の怪我を治します。【リジェネレーション】」
竜人族達に関しては、完治してから話を聞こう。
問題は、オトギさんだ。
構造解析でチラッとステータス欄を見たけど、種族欄がゴースト族【デュラハン改】となっている。しかも、種族説明欄を見ると、ミスラテル様が追記事項を加えている。
………………
ゴースト族【デュラハン改】 ※追記部分 《シャーロットのみ閲覧可能》
この《名称》は、地球側のものと酷似しています。しかし、地球側のデュラハンは空想の魔物で本来妖精族に分類されており、頭部そのものがありませんし、鎧の中身も空となっています。
ガーランドがこの空想上の魔物を制作する際、『姿から判断して、ゴースト族の方が合っている』という理由で、この惑星ではゴースト族に分類されており、中身も生前の身体が採用され存在しています。
通常のデュラハンは光属性にやや耐性を持つため、幻惑魔法を使用可能としていますが、オトギの《デュラハン改》に限り完全耐性を身につけているため、回復魔法も使用可能です。その理由に関しては、ここに記載するよりも本人から聞いた方が良いでしょう。
………………
ミスラテル様、御説明して頂きありがとうございます。
私としては、デュラハンが《妖精族》、《ゴースト族》、どちらでも構わないです。
オトギさんが目の前にいるのだから、《種族について》《どんな目的で王都に訪れたのか?》、ここで全部聞いてしまおう。
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