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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
一難去ってまた一難
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○○○ フレヤ視点
オトギさんの生首が、彼らを威圧している。フェルボーニは真っ青となり小刻みに震え、先程まで私に与えていた勇猛な強さを微塵も感じられない。
「ほぼ…同時期に…騒動を起こす? あ…あ…ありえないわ。私達とあなたは…全くの…無関係だもの」
《ほぼ同時期に騒動を起こす》という行為は、偶然にしては出来過ぎているわ。何か裏があるのかしら?
「ほう……俺から見れば、タイミングがあまりにも合致しているんだが?」
「私達は…デュラハン騒動を利用しただけ。あなたが元凶とは…知らなかったのよ」
フェルボーニの言葉から、嘘を感じ取れないわ。
フェルボーニ達の目的は《私》、オトギさんの目的は《シャーロット》。
どうして、こうもタイミングが……
「あ、春蘭祭!?」
私がつい叫んだせいか、全員が私を見る。
「フレヤ、どういうことだ?」
「オトギさんは旅芸人でもあるから、春蘭祭のイベントに参加するため、ここへ来たんでしょ?」
「ま…そうだな」
生首のままで答えてほしくないわ。身体は、何処にあるの?
そもそも、何故生首だけで登場する必要性があるのかしら?
「フェルボーニさん達は、春蘭祭開催中に私の誘拐をも企んでいたのでは?」
「ええ…そうね」
「「あ!?」」
2人も察したようだ。
ミーシャ
1) シャーロットに強さの秘密を聞き出すため、学園へ入学。
オトギさん
1) シャーロットに用事あり。
2) 春蘭祭もあることから、早めに王都へ到着。
3) ミーシャとの再会は偶然。
4) この再会がキッカケとなり、デュラハン騒動が起きる。
フェルボーニ達
1)帰還したシャーロットの情報を2年かけて収集する。
2)春蘭祭でお祭り騒ぎの中、私を誘拐するため動く。
3)デュラハン騒動を利用して、王都北と南に魔物を大量召喚させる。これにより、冒険者や騎士達が王都外へと追いやられ、王都内の警備が薄まる。
4)デッドスクリームの警戒は、騒動のせいもあって魔物に集中している。だから、今回のような小さな罠に対しては反応が鈍る。
両者のタイミングが春蘭祭と重なっていたからこそ、こんな事象が発生したんだわ。
「ち、そういうことかよ。本当に偶然なんだな」
オトギさんから感じる雰囲気が柔らかくなった。
威圧を解いてくれたんだわ。
とりあえず、これで落ち着けるけど、これからどうなるの?
「あの…オトギさん…ですよね?」
「フレヤ、こんな姿ですまん。身体も、もうすぐここに到着する」
《もうすぐ到着》って、首が空を飛んでいるのだから、身体も空を飛んで何処かに浮いているわよね?
すぐ、来れるんじゃないの?
オトギさんって、不思議すぎるわ。
「今の状態が、まるで《デュラハン》のように感じます。それって、《スキル》なんですか?」
「この姿を見られたから言うが、《ユニークスキル》だよ」
やっぱり、《ユニークスキル》なのね。ノーマルスキルだったら、首と身体を分離させた人々が大勢いるはずだもの。そんな人々、見たこともないわ。
「あと…《蒼青の悪魔》って……」
う、彼の目が鋭くなった。
なんか、気まずいわ。
「その二つ名は……」
オトギさんの口から真実を語られると思った瞬間、突然地面じゃなくて、スカイドラゴンの背中が動いた。
『グギャ、ギャワグワ~~~デ。グワアアア~~~~』
(もう、ここにいたくなーーーーーい。お家に帰る~~~~~~)
「あ、こら! 暴れるなっす!」
突然何なの!?
「きゃああ~~~揺れる~~~~~」
う…吐きそう。
《バキバキバキバキ》
え、なんの音!
あれ?
なんか浮遊感が?
「あ、フレヤ様! ヤバイっす! 固定具が壊れたっす! 急いで竿に移行させないと! こら、暴れるなっす!」
カビバラのスカイドラゴンが威圧を解かれた影響で、この緊張状態に耐えられなくなったの!?
「きゃああぁぁ~~~転がる~~~目が~~~~」
もしかして……この後は……
「いや~~~~~~落ちる~~~~」
強烈な浮遊感に襲われ転がされたと思ったら、私は地上へと落下していく。
オトギさん(首)もフェルボーニさんも、突然のことで立ち止まったままだわ。
「グアアアア~~~~(お家に帰る~~~)」
「帰るな~~~~私を助けろ~~~~!!!」
あのドラゴン、許すまじ!
みんなが、どんどん小さくなっていく!
「いや~~~オトギさ~~~~ん、助けて~~~~~」
オトギさん達が遠ざかり、地上がどんどん近くなっていく。
でも、何故か恐怖心が芽生えてこない。
どうして?
今のこの状況、本来ならば風圧・酸素濃度・音・高度・迫り来る地上、死の恐怖、様々なものが私に襲ってくる。でも、魔導具の影響で感じるのは《音》と《高度》だけ、まさか恐怖心がそのせいで薄れている?
この感覚……覚えがある。
前世、私が4日間の有給休暇をもぎ取って、1人でU○Jに遊びに行き、体感アトラクションに乗った時の感覚とそっくりだわ。あれは、映画の世界を一時的に体験できるもので、《揺れ》や《風》などがあっても決して本物ではない。
今のこの状況は、《体感アトラクション》や《ゲーム》でもない。
紛れもなく現実に起きている出来事!
このまま落下して地上に激突すれば、私は間違いなく……死ぬ。
そう、死ぬのよ!
感覚を研ぎ澄ませろ!
意識を覚醒させろ!
「【グラビトン《ゼロ》】!」
え……何も起きない?
あ、そうか!
今の私は、魔法もスキルも封印されているわ。
これじゃあ、何も対処できない。
私……死ぬの?
イザベルに転生して、マリルさんのおかげで自分を取り戻せた。フレヤになって以降、聖女代理として一生懸命働いていたこともあって、多くの人達が私に対して、優しく接してくれたわ。回復魔法で治療した後の患者さんの笑顔を、今でも忘れられない。
シャーロット、リーラ、オーキス、4人で共同訓練し互いに強くなり、模擬戦で敗北して泣いたり、勝利して笑ったりもした。4人で談笑し、リーラの話が可笑しくてお腹が痛くなる程笑いあったりもした。
前世の時に味わったものとは、全然違う。
《これが【生きている】という証なんだ》と、初めて実感できた。
楽しかった…この生涯を失いたくない。
シャーロット…リーラ…オーキス…ミーシャ…クラスメイトのみんなと、もっと話し合いたい。
もっと笑い合いたい!
嫌だ、死にたくない!
こんなところで死にたくないわ!
「こんな魔導具、ぶっ壊してやる!」
私は自分の真下にある魔導具を掴み、殴る…殴る…殴る!
自分の手が壊れようとも関係ない。
私は、最後まで諦めない!
「うわあああ~~~死んでたまるか~~壊れろ~~~!!!」
あ…そうか。
私は、シャーロットを高度12000mへ転移させた。
彼女も、こんな思いで【死】に立ち向かったんだ。
今になって、あの時の彼女の気持ちを真に理解するなんて。
「私も生き残る! これからの人生を幸せにするんだ!」
お願い!
壊れて…壊れて…壊れて!
《バゴ》
壊れた!
やったわ!
「え…きゃあ!!! 風圧が……」
魔導具が壊れた影響で、風が一気に押し寄せてきた!
凄い風圧だわ!
「グラ…」
え、地上が……もう…目の前!?
ああ…間に合わない。
このまま衝突したら、私は…嫌だ…死にたくない…もう…ダメ!
私は死を覚悟して、目を閉じた。
「グラビトン《ゼロ》!」
《どーーーーーーーーん》
あれ?
いつまでたっても浮遊感は消えないわ。
え!?
誰かが、そっと私を抱き上げた!
「ふう~~~ギリギリだぜ」
この声は、まさか!?
私はゆっくりと目を開けると、そこには……首と身体を結合させたオトギさんがいた。
「フレヤ、すまない」
「オトギさん!!!」
あの状況下で、首と身体を結合させて私を助けてくれたの!?
私は、オトギさんにお姫様抱っこされているわ!
「あれ? クレーターが地面に出来てる? どうして?」
「ああ、俺が着地したからだ。俺は風魔法を使えない。だから、身体を結合させた後、スキル【空走】を使って急降下し着地した。その後、【グラビトン】を使って君を助けたんだ」
あの高度から急降下して着地した?
いくらオトギさんが強くても、身体が耐えられるはずがない!
それに首だけの状態の時、彼は浮いていたわ!
「フレヤ…落ち着け。今は、余計なことを考えなくていい。心を落ち着かせろ」
私の様子がおかしい事に気づいたのか、オトギさんは優しく微笑んでくれた。
その微笑みから、何の下心もないことがわかるわ。
高ぶる私の心が、急速に落ち着いていくのを感じる。
「私……生きているんですよね?」
「ああ、生きてる」
生きてる…助かった…あ…手が震えてる。今になって、落下している時の恐怖が…地面と衝突するという恐怖が……ふつふつと込み上がってくる。
「生きてる…う…う……うわあああぁぁぁ~~怖かった~~いぎでてよがった~~~」
「ああ…怖がらせてごめんな」
「シャーロット~~、ごめんね~~~ごめんね~~~転移させてごめんね~~~」
身体全体が震えている。魔導具を破壊した瞬間に見たあの地面の近さ、私はあの恐怖をシャーロットに経験させた。《死の恐怖》《親友シャーロットに経験させた苦しみ》、それらの思いが頭の中で共鳴し、私はその場にいないシャーロットに悔いた。
オトギさんは何も言わず、私を抱きしめてくれた。
「フレヤ、今助けるから~ってあれ? フレヤ? オトギさん?」
「「え?」」
私の正面3m程前方に、突然シャーロットが現れた。
余りにも唐突に出現したため、私もオトギさんも固まったまま。
もしかして、シャーロットも私の危機に気づいて駆けつけてくれたの?
え? 何故、私とオトギさんを見て、顔を真っ青にしているの?
「フレヤが号泣している…両手が血塗れ…オトギさんの服も血だらけ……」
え? え?
シャーロットの身体からドス黒い魔力が漏れてきた。
彼女の表情が、《驚き》から《憤怒》へと変化していく。
「フレヤを虐めたのね。やっぱり、あなたが誘拐犯で全ての黒幕…許せない!」
その言葉を呟いた瞬間、シャーロットの身体からドス黒い魔力が吹き荒れた!
あ!
突然転移魔法で現れたシャーロット、そこで目に映ったのは……
《両手を血だらけにして、オトギさんに抱きつき号泣する私》
《服が血だらけとなっているオトギさん》
勘違いする条件が整い過ぎているわ!
これは……まずい!
オトギさんの生首が、彼らを威圧している。フェルボーニは真っ青となり小刻みに震え、先程まで私に与えていた勇猛な強さを微塵も感じられない。
「ほぼ…同時期に…騒動を起こす? あ…あ…ありえないわ。私達とあなたは…全くの…無関係だもの」
《ほぼ同時期に騒動を起こす》という行為は、偶然にしては出来過ぎているわ。何か裏があるのかしら?
「ほう……俺から見れば、タイミングがあまりにも合致しているんだが?」
「私達は…デュラハン騒動を利用しただけ。あなたが元凶とは…知らなかったのよ」
フェルボーニの言葉から、嘘を感じ取れないわ。
フェルボーニ達の目的は《私》、オトギさんの目的は《シャーロット》。
どうして、こうもタイミングが……
「あ、春蘭祭!?」
私がつい叫んだせいか、全員が私を見る。
「フレヤ、どういうことだ?」
「オトギさんは旅芸人でもあるから、春蘭祭のイベントに参加するため、ここへ来たんでしょ?」
「ま…そうだな」
生首のままで答えてほしくないわ。身体は、何処にあるの?
そもそも、何故生首だけで登場する必要性があるのかしら?
「フェルボーニさん達は、春蘭祭開催中に私の誘拐をも企んでいたのでは?」
「ええ…そうね」
「「あ!?」」
2人も察したようだ。
ミーシャ
1) シャーロットに強さの秘密を聞き出すため、学園へ入学。
オトギさん
1) シャーロットに用事あり。
2) 春蘭祭もあることから、早めに王都へ到着。
3) ミーシャとの再会は偶然。
4) この再会がキッカケとなり、デュラハン騒動が起きる。
フェルボーニ達
1)帰還したシャーロットの情報を2年かけて収集する。
2)春蘭祭でお祭り騒ぎの中、私を誘拐するため動く。
3)デュラハン騒動を利用して、王都北と南に魔物を大量召喚させる。これにより、冒険者や騎士達が王都外へと追いやられ、王都内の警備が薄まる。
4)デッドスクリームの警戒は、騒動のせいもあって魔物に集中している。だから、今回のような小さな罠に対しては反応が鈍る。
両者のタイミングが春蘭祭と重なっていたからこそ、こんな事象が発生したんだわ。
「ち、そういうことかよ。本当に偶然なんだな」
オトギさんから感じる雰囲気が柔らかくなった。
威圧を解いてくれたんだわ。
とりあえず、これで落ち着けるけど、これからどうなるの?
「あの…オトギさん…ですよね?」
「フレヤ、こんな姿ですまん。身体も、もうすぐここに到着する」
《もうすぐ到着》って、首が空を飛んでいるのだから、身体も空を飛んで何処かに浮いているわよね?
すぐ、来れるんじゃないの?
オトギさんって、不思議すぎるわ。
「今の状態が、まるで《デュラハン》のように感じます。それって、《スキル》なんですか?」
「この姿を見られたから言うが、《ユニークスキル》だよ」
やっぱり、《ユニークスキル》なのね。ノーマルスキルだったら、首と身体を分離させた人々が大勢いるはずだもの。そんな人々、見たこともないわ。
「あと…《蒼青の悪魔》って……」
う、彼の目が鋭くなった。
なんか、気まずいわ。
「その二つ名は……」
オトギさんの口から真実を語られると思った瞬間、突然地面じゃなくて、スカイドラゴンの背中が動いた。
『グギャ、ギャワグワ~~~デ。グワアアア~~~~』
(もう、ここにいたくなーーーーーい。お家に帰る~~~~~~)
「あ、こら! 暴れるなっす!」
突然何なの!?
「きゃああ~~~揺れる~~~~~」
う…吐きそう。
《バキバキバキバキ》
え、なんの音!
あれ?
なんか浮遊感が?
「あ、フレヤ様! ヤバイっす! 固定具が壊れたっす! 急いで竿に移行させないと! こら、暴れるなっす!」
カビバラのスカイドラゴンが威圧を解かれた影響で、この緊張状態に耐えられなくなったの!?
「きゃああぁぁ~~~転がる~~~目が~~~~」
もしかして……この後は……
「いや~~~~~~落ちる~~~~」
強烈な浮遊感に襲われ転がされたと思ったら、私は地上へと落下していく。
オトギさん(首)もフェルボーニさんも、突然のことで立ち止まったままだわ。
「グアアアア~~~~(お家に帰る~~~)」
「帰るな~~~~私を助けろ~~~~!!!」
あのドラゴン、許すまじ!
みんなが、どんどん小さくなっていく!
「いや~~~オトギさ~~~~ん、助けて~~~~~」
オトギさん達が遠ざかり、地上がどんどん近くなっていく。
でも、何故か恐怖心が芽生えてこない。
どうして?
今のこの状況、本来ならば風圧・酸素濃度・音・高度・迫り来る地上、死の恐怖、様々なものが私に襲ってくる。でも、魔導具の影響で感じるのは《音》と《高度》だけ、まさか恐怖心がそのせいで薄れている?
この感覚……覚えがある。
前世、私が4日間の有給休暇をもぎ取って、1人でU○Jに遊びに行き、体感アトラクションに乗った時の感覚とそっくりだわ。あれは、映画の世界を一時的に体験できるもので、《揺れ》や《風》などがあっても決して本物ではない。
今のこの状況は、《体感アトラクション》や《ゲーム》でもない。
紛れもなく現実に起きている出来事!
このまま落下して地上に激突すれば、私は間違いなく……死ぬ。
そう、死ぬのよ!
感覚を研ぎ澄ませろ!
意識を覚醒させろ!
「【グラビトン《ゼロ》】!」
え……何も起きない?
あ、そうか!
今の私は、魔法もスキルも封印されているわ。
これじゃあ、何も対処できない。
私……死ぬの?
イザベルに転生して、マリルさんのおかげで自分を取り戻せた。フレヤになって以降、聖女代理として一生懸命働いていたこともあって、多くの人達が私に対して、優しく接してくれたわ。回復魔法で治療した後の患者さんの笑顔を、今でも忘れられない。
シャーロット、リーラ、オーキス、4人で共同訓練し互いに強くなり、模擬戦で敗北して泣いたり、勝利して笑ったりもした。4人で談笑し、リーラの話が可笑しくてお腹が痛くなる程笑いあったりもした。
前世の時に味わったものとは、全然違う。
《これが【生きている】という証なんだ》と、初めて実感できた。
楽しかった…この生涯を失いたくない。
シャーロット…リーラ…オーキス…ミーシャ…クラスメイトのみんなと、もっと話し合いたい。
もっと笑い合いたい!
嫌だ、死にたくない!
こんなところで死にたくないわ!
「こんな魔導具、ぶっ壊してやる!」
私は自分の真下にある魔導具を掴み、殴る…殴る…殴る!
自分の手が壊れようとも関係ない。
私は、最後まで諦めない!
「うわあああ~~~死んでたまるか~~壊れろ~~~!!!」
あ…そうか。
私は、シャーロットを高度12000mへ転移させた。
彼女も、こんな思いで【死】に立ち向かったんだ。
今になって、あの時の彼女の気持ちを真に理解するなんて。
「私も生き残る! これからの人生を幸せにするんだ!」
お願い!
壊れて…壊れて…壊れて!
《バゴ》
壊れた!
やったわ!
「え…きゃあ!!! 風圧が……」
魔導具が壊れた影響で、風が一気に押し寄せてきた!
凄い風圧だわ!
「グラ…」
え、地上が……もう…目の前!?
ああ…間に合わない。
このまま衝突したら、私は…嫌だ…死にたくない…もう…ダメ!
私は死を覚悟して、目を閉じた。
「グラビトン《ゼロ》!」
《どーーーーーーーーん》
あれ?
いつまでたっても浮遊感は消えないわ。
え!?
誰かが、そっと私を抱き上げた!
「ふう~~~ギリギリだぜ」
この声は、まさか!?
私はゆっくりと目を開けると、そこには……首と身体を結合させたオトギさんがいた。
「フレヤ、すまない」
「オトギさん!!!」
あの状況下で、首と身体を結合させて私を助けてくれたの!?
私は、オトギさんにお姫様抱っこされているわ!
「あれ? クレーターが地面に出来てる? どうして?」
「ああ、俺が着地したからだ。俺は風魔法を使えない。だから、身体を結合させた後、スキル【空走】を使って急降下し着地した。その後、【グラビトン】を使って君を助けたんだ」
あの高度から急降下して着地した?
いくらオトギさんが強くても、身体が耐えられるはずがない!
それに首だけの状態の時、彼は浮いていたわ!
「フレヤ…落ち着け。今は、余計なことを考えなくていい。心を落ち着かせろ」
私の様子がおかしい事に気づいたのか、オトギさんは優しく微笑んでくれた。
その微笑みから、何の下心もないことがわかるわ。
高ぶる私の心が、急速に落ち着いていくのを感じる。
「私……生きているんですよね?」
「ああ、生きてる」
生きてる…助かった…あ…手が震えてる。今になって、落下している時の恐怖が…地面と衝突するという恐怖が……ふつふつと込み上がってくる。
「生きてる…う…う……うわあああぁぁぁ~~怖かった~~いぎでてよがった~~~」
「ああ…怖がらせてごめんな」
「シャーロット~~、ごめんね~~~ごめんね~~~転移させてごめんね~~~」
身体全体が震えている。魔導具を破壊した瞬間に見たあの地面の近さ、私はあの恐怖をシャーロットに経験させた。《死の恐怖》《親友シャーロットに経験させた苦しみ》、それらの思いが頭の中で共鳴し、私はその場にいないシャーロットに悔いた。
オトギさんは何も言わず、私を抱きしめてくれた。
「フレヤ、今助けるから~ってあれ? フレヤ? オトギさん?」
「「え?」」
私の正面3m程前方に、突然シャーロットが現れた。
余りにも唐突に出現したため、私もオトギさんも固まったまま。
もしかして、シャーロットも私の危機に気づいて駆けつけてくれたの?
え? 何故、私とオトギさんを見て、顔を真っ青にしているの?
「フレヤが号泣している…両手が血塗れ…オトギさんの服も血だらけ……」
え? え?
シャーロットの身体からドス黒い魔力が漏れてきた。
彼女の表情が、《驚き》から《憤怒》へと変化していく。
「フレヤを虐めたのね。やっぱり、あなたが誘拐犯で全ての黒幕…許せない!」
その言葉を呟いた瞬間、シャーロットの身体からドス黒い魔力が吹き荒れた!
あ!
突然転移魔法で現れたシャーロット、そこで目に映ったのは……
《両手を血だらけにして、オトギさんに抱きつき号泣する私》
《服が血だらけとなっているオトギさん》
勘違いする条件が整い過ぎているわ!
これは……まずい!
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