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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国
トキワとアッシュの配慮
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私達3人は獣人ロードを潜り抜け、20段程ある階段を上り、王族達のいる場所へと辿り着いた。そこは王城入口となっており、少し高い位置にあるためか、後方にいる獣人達もよく見える。
皆が緊張している中、私に話しかけてきたのはトキワさんだ。
「シャーロット、久しぶりだな。王族達が、皆の集まるこの場所にて、話し合いを行いたいと言っているが……どうする?」
ここで話し合い?
私としては別に構わないけど、騎士達が大勢いるのに構わないの?
「私は、別に構いませんけど?」
「よし。それなら、シャーロットと後ろの二人は、ここにいてくれ。王族達は、下に移動しろ」
トキワさん、王族に対し、タメ口で話している。本来ならば不敬罪となり、即刻牢屋行きだ。法王達も警戒しているからか、彼に命令されると、身体全体がビクッと動き、そろそろと階段を下りていく。獣人ロードと化した人達も陣形を崩し、若干後方に下がった後、横15列、縦13列の陣形へと変化させた。そこに、王城の左側面からメイド達、右側面から執事や文官達が続々と現れ、騎士達の両面に並びだす。
まさか、王城に働いている人達が、一斉に集合しているのだろうか?
私達三人は壇上の中央を維持したまま、カムイ、トキワさん、アッシュさん、魔鬼族の女の子4人は、壇上の両端へ移動する。全員が並び終えたのか、動きがピタッと止まる。私の視点から見て、階段下の中央に王族達、その後方に騎士団、左側面にメイド達、右側面に執事や文官達となり、綺麗な陣形を維持している。この状態で、国の存亡をかけた話し合いをするの? 整列している人達からは、敵意を感じない。何を狙っているのだろうか?
階下中央にいる王族達を構造解析すると、法王(64歳)、王妃(61歳)、王太子(39歳)、王太子妃(37歳)、王太子の長男(19歳)、王太子の次男(17歳)、王太子の長女(15歳)、王太子の次女(12歳)となっている
この人達、王族にしては威圧感というものを、まるで感じられない。全員の顔色も悪く、豪華な服を着ている割に、何処かくたびれた印象を受ける。トキワさんの介入により、相当酷い目に遭ったのだろう。
それでも、誇りある王族達なのだから、私の【お国乗っ取り案】に対し、何かしらの反抗を示すと思う。私を言葉巧みに操り、国を存続させようと、何かしらの策を講じてくるはず……油断してはいけない。
意を決したのか、王族全員が私達に対し、一斉に左膝をおり、右手を心臓に添え、私達に服従の姿勢を見せる。そして時間差で、後方にいる騎士やメイド、執事、文官達全員も王族にならい、服従の姿勢をとる。
私もネルエルさんもベルナデッドさんも、その異様な光景を見て呆気にとられる。
この行動は……完全に予想外だ。
この場を代表して、法王が頭を上げ喋り出す。
「聖女様、遥々遠きエルディア王国からようこそお越し頂きました。エルディア国王から、あなた様の案を伺っております。我々ガーランド法王国全国民が、聖女様の案を……全て受け入れます」
今…法王はなんて言った? 全てを受け入れる?
「え…受け入れるって…この国を滅ぼしていいと? 新たな国を建国していいと?」
反論はないの?
「はい。雷精霊様がトキワ様をこの王城へ遣わせた時点で、我が国には神のご加護など、一切ないことが証明されました。トキワ様が我々王族に、神罰をお与えになり、全てを破壊されました。ただ、精霊様方は全ての獣人を悪いとは思っていないようです。お隣にいるアッシュ様が魔人族のもとへ赴き、我々との仲を仲裁して頂いたのです。アッシュ様がいなければ、我々獣人一同は、全滅していたでしょう」
あ、トキワさんとアッシュさんの登場を、そう捉えてしまったのね。
ガーランド様は、私の目標を短期間で達成させるため、獣人のことなんて一切考えず行動していたから、ある意味正しい。ただ、アッシュさんがいたのは、偶々だ。多分、クックイスクイズで脱落していたら、ここにいなかっただろう。まあ、彼がいなかったら、トキワさんの怒りを鎮める者がいなくなるので、本当に王都内の獣人達は死んでいたかもしれない。
「トキワ様とアッシュ様の御活躍により、獣人の中でも、王族貴族だけが地に堕ちました。故に、我々は全ての責任を取る所存でございます。全ての秘密をアストレカ大陸全国家に明るみにし、我々で出来うる限りでの魔人族達を解放致します」
通常、ここに至るまでは、相当な紆余曲折があるはずだ。神様がほんの少し介入しただけで、こんな御都合展開になろうとは……ある意味、王族達も、神ガーランド様の都合に振り回された気の毒な人達になるのか。
でも、ここで私自身が、彼らに同情してはいけない!
これまでに仕出かしたことを考慮すれば、王族達には然るべき罰を与えないといけないのだ! 法王の解析データを確認してみよう。
(トキワさん介入前)
・我が王族こそが、アストレカ大陸の真の支配者である
・いずれは、ガーランド教を全世界に布教させ、我が王族が3大陸全土を支配する
・魔人族達には、我が野望の礎になってもらう
(トキワさん介入後)
・アストレカ大陸にもハーモニック大陸にも、化物がいる。所詮、この世は力が全て。力ある者が支配者になれる。我々は…驕っていた。
・トキワ様の仰った通りならば、聖女シャーロット様に逆らってはいけない。我々が人として生き残るには、彼女の案を、全て受け入れるほかない。
・ただ受け入れるだけではダメだ。それだけでは、新たな国が建国された瞬間、我々は平民達に殺されてしまう。全てを明るみにし、全てを受け入れ、我々自身が民のために貢献し、人として認めてもらわねばならない
・捨てろ…捨てろ…自尊心、傲慢、野望、あらゆるものを投げ捨てろ。これまでの殆どの所業は、私自身や過去の法王達が築いてきたもの。息子や孫達は、私の指示に従っていただけだ。息子達を守る為にも、私自身が行動しろ。自分自身を変えるのだ!
介入前と介入後で、法王の心情がかなり異なるけど、これまでの罪を償ってもらわないといけない。それに、王族達は簡単に《国を明け渡す》と言っているけど、他の貴族達は本当に受け入れているのだろうか?
「貴族達から、反対意見はないのですか?」
「反対意見などありません。王都外での亡者侵攻に関しても、聖女様の従魔カムイが殲滅致しました。我々獣人一同、聖女様庇護下の国が誕生するのであれば、快くこの国を明け渡します」
法王の言葉は本気だ。今後、自分達の過去を清算するため、新たな国のために生きていくと誓っている。
神ガーランドが介入→トキワさんが王都で暴れる→王都にいる全ての獣人が降伏→王族も自尊心を砕かれ、性格までもが変化→国を明け渡す
こんな簡単な流れで、国を乗っ取れるものかな?
法王以外の王族達の解析データを確認しても、皆が納得している。
「……わかりました。当面は法王様が指揮をとり、各国への賠償責任を取ってください。その間、私が全ての膿を取り除きます」
グダグダ考えていても仕方ない。先に進もう。
「その事についてですが、カムイ様が王都外にいる領主達を強制連行し、王城へと連れて来ました。また、トキワ様が王都内にいる爵位持ちの貴族達を脅し、王城へと集め合流させた後、問答無用で全員を地下の牢屋に収監しました。なお、トキワ様は拘束した人物の館にも赴き、関係者達を脅しているため、証拠隠滅も大丈夫かと。あとは、聖女様のスキルで解析ですれば、罪を犯しているか、すぐにわかります」
トキワさんかアッシュさんが、私の構造解析スキルのことを法王に教えたのね。そして、《王族達への説得》、《貴族達の確保》、私のやりたいことの大半が、既にトキワさんとカムイによって処理済とは……ありがたいんだけど……
「今すぐに、トキワさんを【新型拷問具ハンマーヘッド金的地獄】で、お仕置きしたい」
「おいおい、何でそうなる!!」
あ、いけない。私の仕事を取られたせいもあって、つい心で思ったことの一部をボソッと言ってしまった。すぐに、トキワさんから反論がきたよ。
この際だから、私の不満を打ち明けよう。
「今から国を乗っ取ろうとしているのに、王族全員物分かりが良過ぎるんです! 誇りある王族達が服従の姿勢を見せるなんて……トキワさんは、どれだけ彼らの心を踏み砕いたのですか? 私の横にいる魔鬼族のネルエルさんもベルナデットさんも、この進行状況に追いついていないので、さっきから一言も喋れていません。全部、トキワさんのせいです!」
トキワさん、ハッキリ言って動き過ぎです。
全ての状況が整い過ぎている。
ネルエルさんもベルナデットさんも、相当な覚悟を決めて、王城へと立ち入ったんだ。それが入るとすぐに、王族のトップ、法王から【国を明け渡す】とあっさり言われてしまった。あまりの展開速度に、二人の脳が追いついていない。
「いや…俺もこの王都で、ちょっとやり過ぎたなと思って…な。シャーロットが動きやすいよう、俺なりに気を配ったんだよ。シャーロットのことだから、多分王族貴族全員をお仕置きするかもしれないと思い、法王達と協力して、貴族達を手当たり次第に誘拐して、牢屋にぶち込んだのさ」
やり方はともかく、その配慮は私としても嬉しいです。
「2日前に起きたばかりなのに、手が早過ぎますよ。でも……ありがとうございます。これならば、今すぐにでも、魔人族の長の治療に行けますね」
この言葉に、声をあげたのが、アッシュさんの側にいる魔鬼族の女の子だ。
「あのシャーロット様……あ、私はマデリンと申します」
「シャーロット・エルバランです。マデリンさん、何でしょうか?」
この子、何故申し訳なさそうな顔をするのだろうか?
横にいるカムイはニコニコ顔、アッシュさんはそれに対し、何故か苦笑いだ。
3人の表情が異なる。何故だ?
「実は……今日の早朝、カムイとアッシュが私達の隠れ家に来てくれまして……」
長の身に、何か起きたのかな?
「アッシュが長を診てくれたんです。そして、【ハイヒール】と【リムーバル】を同時に使用し、ここまでの顛末をゆっくりと語りかけたことで、長が目覚めてくれたんです。そして、再度状況を説明しますと、初めは長も混乱していましたが、『天は妾を見捨てなかった。我々だけで、悲願を成就できなかったことは…尺ではある。が、妾の声がガーランド様の耳に届き、悲願を叶えるための人材を寄越してくれたのだ! 聖女様の案に、妾も賛成だ』と仰っていました」
アッシュさんが長を完治させるとは……凄いの一言だよ。
ただ、長は誤解している。
【ガーランド様は、長の声を聞いてもいないし、あなた自身を見てもいない】
マデリンさんには、この事実を絶対に言えない。
ここは……誤魔化そう。
「長の仰る通りです。ガーランド様はガーランド法王国に怒り、長の手助けをしたのです。ただ、獣人全てが悪いというわけではないので、被害を最小限に抑えるため、私、アッシュさん、トキワさんの3人をこの国へ寄越したのです」
「本当に、ガーランド様は私達を見てくれていたのですね!!」
マデリンさん自身も半信半疑だったのか、私の言葉を聞いた途端、笑顔になった。う、猛烈に罪悪感を感じる。
《トキワさん、アッシュさん、真相は真逆なんですけど、詳細は後で言います》
然りげ無く、テレパスで二人に伝えておこう。
《真逆だと!?》《え、そうなの!?》
真相を聞いたら、2人とも驚くだろう。
「ところで聖女様、さっき【新型拷問具ハンマーヘッド金的地獄】と仰いましたけど、本来誰にお仕置きさせるつもりだったのですか?」
おっとマデリンさん、その質問をしちゃいますか。
【ガーランド様専用初号機】に関しては、天尊輝星様により再調整され、完璧な簡易神具として生まれ変わった。人用となる2号機以降のものは、多大な神力を必要としないため、初号機を基にすれば、いつでも製作可能だ。
これを誰に試す予定だったのか、それは…言うまでもない。
「せっかくなので、拷問具をお見せしましょう」
私は階下に下り、広場中央へと移動した。それに合わせて、トキワさん達も私に付いてきて、王族や騎士団達の陣形もやや乱れたけど、すぐに私の周囲には誰もいなくなったので、マジックバッグから拷問具を取り出し、地面に【ドーーーン】と置いた。全員が、大型拷問具に注目している。
「これが【ハンマーヘッド金的地獄】です。王族全員に対し、お仕置き敢行予定でした。私は、トキワさんのような一瞬で終わるお仕置きなんて許しません。お仕置き内容は……」
1) 成人した王族全員を拘束し、拷問具の頂上に固定する
2) 王都にいる国民達に見えるよう、王族と拷問具を巨大化させる
3) 指定された者達がハンマーを持ち、土台を何度も何度もぶっ叩く
4) 王族達がダメージで疲れてきたら、マックスヒールで即回復させる
5) ハンマーのエネルギー源は、所持者の怒りであるため、一定量の怒りを蓄積させていれば、子供でも王族の金的にお仕置き可能となる
6) 王族の心が折れるまで、お仕置きを続行する
お仕置き内容を全て明かすと、王族や騎士団達だけでなく、トキワさんやネルエルさん達も、私の所業に息を飲んでいた。
「あ…あの…そのお仕置き…獣人の女性に…些か酷なのでは?」
マデリンさん、お顔が真っ青ですよ。あなたは魔鬼族なんですから、獣人をフォローしなくていいのです。一応、全員を構造解析したけど、皆がマデリンさんと同じ意見となっている。
「男女、関係ありません。ここにいる王族の先祖達が3種族を誑かし、ハーモニック大陸の1国を滅ぼしてしまった。しかも、戦争に加担した国々と結託して、歴史をも捻じ曲げ、魔人族達を差別した。本音を言えば、加担した国々全ての王族、貴族、平民全員に、先祖の犯した大罪を償わせるため、この刑を執行したいのです!」
ちなみに実現したら、アストレカ大陸の北半分から、巨大化された大量の拷問具が至る所から出現し、高所から観察すれば、全てが十字架っぽい柱に見えるだろう。そして、一斉にお仕置きが開始され、《キーーーーーン》という何重もの効果音が、大陸全土に響き渡る。
「しかし、今言った事は実行しません。何故ならば、生きている人達は大罪を犯した者達の子孫ではありますが、彼ら自身が大罪を犯したわけではありません。ですから、ガーランド法王国の王族だけ、罪の償いの一部として執行しようと思っていたのです」
う~ん、《お仕置きしない》と断言しているのに、お仕置きの光景を思い浮かべているのか、誰も互いに話そうとしない。
それでは、私の更なる本音を聞いてもらおう。
「そもそも、ここにいる王族達のせいで、私がハーモニック大陸に転移する羽目になりました。転移直後、本当に死ぬと覚悟したんです。だから、男女関係なく、このお仕置きを受けるべきなのです。成人していない方だけは、除外しますが」
この中で、成人していないのは、【カルシュナ】という王女だけだ。
「最後……私怨が混じっていたような?」
マデリンさんがふと呟いた時、アッシュさんが彼女の右肩をポンっと叩いた。
「マデリン、シャーロットの言いたいこともわかるんだ。彼女の転移先は、この世界の中でも極悪環境と言われる場所だった。転移先が高度12000メートル、そこから高度8000メートルの山の頂上に墜落。空気も薄く、魔素濃度も地上よりも遥かに高い環境だった」
アッシュさんの言葉に、皆が絶句した。
【何故生きているの?】という顔で、一斉に私を見た。
「ガーランド様に助けられたのですよ。普通の子供が生き抜いていける環境ではありませんからね。そういった私怨も含めて、王族達にこのお仕置きを実行するつもりだったのですが……皆さん、既にトキワさんによってお仕置きされ、心も折れ、《過去の罪を償いたい》という思いが強く現れています。ですから……王族へのお仕置き執行を中止します」
中止という言葉を聞き、法王達はホッと胸を撫で下ろす。
「シャーロット様、情けをかけて頂き、ありがとうございます」
法王が話し終えると、王族全員が一斉にトキワさんの方を向いた。
「トキワ様、あなたが先にここへ到着した意味を、真に理解しました。我々をお仕置きして頂き、誠にありがとうございます」
法王、勘違いしないで。
トキワさんは素で怒って、あなた達をお仕置きしたんだよ。
「トキワ様、ありがとうございます。あの時、お祖父様達をあそこまで痛め付けたのは、コレを防ぐためでもあったのですね」
カルシュナさん、違います。
当のトキワさんは、何も知らずに、あんな行為をしたんです。
「いや…まあ…な」
トキワさん、何故そこで嘘をつくかな?
なにこれ?
王族全員が、トキワさんに御礼を言う事態に陥っているんですけど?
一応、全員に警告しておこうかな。
「皆さん、安心されては困ります。現在、あなた方王族にとって、周囲全てが敵の状態です。新たな国が建国されて以降、あなた方の働き次第で、大きく運命が変化します。全員が誰かに暗殺される危険性もあれば、国の一貴族として認められる未来もあります。今日以降、あなた方は皆に試されていると思った方がいいです」
私の言葉の意味を真に理解したのか、そのまま深く項垂れてしまった。
「アッシュ…聖女様って、可愛いお姿と言動が一致しないんだけど?」
「あはは、マデリン、その言葉は今更だよ。僕は、何度もこんな光景を見ているから」
さて、これで一つ落ち着いたことだし、次に進もう。
「王族達への罰は、新たな国の国民達に任せるとして、現在収監されている貴族達に関しては、例外なく全員を構造解析し、全てを暴きます。そして、魔人族に対し、虐殺などの大罪を犯した者達がいれば、見せしめとして、王都の何処か広い場所にて、刑を執行する予定です。そして、先程《指定された者がハンマーを持つ》と言いましたが……執行者は、【私と従魔と精霊様達】です。今回、国民達には何もさせません。何故ならば、国民達は王族貴族を責める権利などないからです。理由はわかりますね?」
騎士団やメイド達は、静かに頷いてくれた。王族の選民思想により操られていたとはいえ、国民達も王族貴族と同様、魔人族を差別したのだ。責める権利などない。王城で働いている人達は、それを理解しているようだけど、おそらく王都の人達の中には理解していない者もいるだろう。お仕置き執行時、私が直接言った方がいい。
「そうそう、前もって昨日の段階で、この拷問器具を《とある男性》に試しました。執行されたら最後、これまでのイメージが完全崩壊します」
「「「「「え!?」」」」」
あ、全員が私の方を凝視している。
「あのさシャーロット、その男性って誰のこと?」
全員を代表して、アッシュさんが私に尋ねてきた。
「その方の名誉を守るため、名前を控えさせて頂きます。ヒントとして、【私が逆らいたくても逆らえないお方】とだけ言っておきましょう」
相手はガーランド様だもん。普通なら逆らえないよ。
みんなも、察しがつくでしょ。
○○○ エルディア王国国王ブライアン視点
《国王ブライアンの執務室にて》
はあ~、不安だ。シャーロットがガーランド法王国に行ってから4時間程か。私が国王に即位して以降、これ程までに不安を感じたことはない。ヘンデルもルルリアも、自分達の持ち場に戻っているはずだが、私と同じ気分を抱えているだろう。仕事が、全く捗らん。
『ピピピピ…ピピピピ…シャーロットから通信です。シャーロットから通信です』
これは…シャーロットの声? 簡易神具からの通信か? 相手の顔を押してから、神具を見れば通信可能と言っていたな。
「シャーロットか?」
「はい。国王陛下」
なんだ、これは? 画面のシャーロットを押した途端、シャーロット自身が画面に現れたぞ?
「この簡易神具、通信中の相手の姿を映せるのか?」
「その通りです」
こんなもの、何処の国々でも製作不可能だ。神具…神の道具か。その意味がわかった。
【シャーロットは、神の領域に足を踏み入れている】
改めて、実感した。ルルリアとヘンデルで相談し合ったあの案を、早急にエルバラン公爵とも話をつけねばならぬ。
「国王陛下?」
「ああ、すまない。シャーロットの案はどうなった?」
「その件についてなんですが、全て解決しました。トキワさんが王族達の心を折り、アッシュさんが魔人族の長を回復させたおかげで、誰一人、反発する者はいませんでした。【お国乗っ取り案】、大成功です」
シャーロットが動く前に、仲間達が動いていたおかげで、円滑に事を運べたか。トキワという者が、【両手両足骨折】、【顔面打撲】以外にも、王族全員の心を折る程の所業を行ったと、法王自らが私に話していた。プライドの高い彼が、自分の国を滅ぼすことにも賛成するとは。
「シャーロット、御苦労だった。後処理の方は任せる」
「はい、お任せを。あと、法王が国王陛下と2人だけで話したい案件があるそうです。こちらでも人払いしますので、そちらもお願いします」
「ああ、わかった」
私にだけ話す案件? 亡者関係の損害賠償のことか?
「エルディア国王、話をしても大丈夫だろうか?」
この顔は、紛れもなく法王だ。だが、以前見た時よりも、ホホがこけ、疲れ切った顔をしている。自分こそが、アストレカ大陸の支配者だという威厳も、全く感じ取れん。ただの草臥れた爺さんに成り果ててしまったか。
「ええ、大丈夫です」
「エルディア国王、聖女が開発した新型拷問具の最初の犠牲者になってくれて、本当に感謝する。私達王族は、あなたとトキワ様に助けられた。君の玉は大丈夫か?」
何を言っているんだ、この爺さんは? 遂にボケたか? いや、待て!
法王は、【聖女が開発した新型拷問具】と言ったな。その最初の犠牲者が、私だと思い込んでいるのか? そこに、私の玉が関係しているのか?
……どんな拷問具なんだ?
「あ~それは…」
感謝されていることだし、黙認しておくか。
「すまない、失言だった。ただ、これだけは言わせてほしい。君の犠牲のおかげで、我々王族が救われた。我々にとって、君は英雄だ。今後の展開次第で、聖女はあの拷問具を、各国の王族に使用するかもしれない。特にミルバベスタ皇国、あの国は亡者の被害を受けていないと聞いている。私があの国の皇族達に、聖女の件を話しておく。今後、聖女を預かるエルディア王国では、色々と大変だと思うが、彼女を怒らせてはいかん」
あの法王が、新型拷問具を恐れているだと?
シャーロットが帰還した時、問いただしておこう。
「助言、感謝します。聖女シャーロットに関しては、現在…………と考えているのです」
「私も、その案に賛成だ。…と、これ以上話すと怪しまれてしまう。我々は、もう王族で無くなってしまう。手助けもできないだろう。聖女の件は任せる」
法王の姿が、画面から消えたか。シャーロットとその仲間達が少し動いただけで、一国が滅ぶ。今回は200年前の件も絡んでいたからだと思うが、このままアストレカ大陸だけに留まれば、どんな現象が起こるかわからん。彼女の存在のおかげで、ハーモニック大陸との国交が復活する日も近いかもしれんな。
…………あ!
まさかと思うが、法王の爺さん、各国の王族達にも、拷問具の最初の犠牲者が、私だと言いふらすつもりでは!?
○○○
数日後、ブライアンの悪い予感は的中した。各国の王達が大型通信機を通して、頻りにブライアンの玉を心配する声が上がり、その件がルルリア王妃や王太子、ヘンデル枢機卿達にも伝わったことで、王城の高位貴族達から同情の目が寄せられた。ブライアンは法王との通信で、【正直に話しておくべきだった~!】と深く深く後悔したのだが、後の祭りである。
○○○作者からの一言
シャーロットと王族との絡みが長くなりそうなので、前半と後半に分けます。
次回更新予定日は、12/18(火)10時40分です。
皆が緊張している中、私に話しかけてきたのはトキワさんだ。
「シャーロット、久しぶりだな。王族達が、皆の集まるこの場所にて、話し合いを行いたいと言っているが……どうする?」
ここで話し合い?
私としては別に構わないけど、騎士達が大勢いるのに構わないの?
「私は、別に構いませんけど?」
「よし。それなら、シャーロットと後ろの二人は、ここにいてくれ。王族達は、下に移動しろ」
トキワさん、王族に対し、タメ口で話している。本来ならば不敬罪となり、即刻牢屋行きだ。法王達も警戒しているからか、彼に命令されると、身体全体がビクッと動き、そろそろと階段を下りていく。獣人ロードと化した人達も陣形を崩し、若干後方に下がった後、横15列、縦13列の陣形へと変化させた。そこに、王城の左側面からメイド達、右側面から執事や文官達が続々と現れ、騎士達の両面に並びだす。
まさか、王城に働いている人達が、一斉に集合しているのだろうか?
私達三人は壇上の中央を維持したまま、カムイ、トキワさん、アッシュさん、魔鬼族の女の子4人は、壇上の両端へ移動する。全員が並び終えたのか、動きがピタッと止まる。私の視点から見て、階段下の中央に王族達、その後方に騎士団、左側面にメイド達、右側面に執事や文官達となり、綺麗な陣形を維持している。この状態で、国の存亡をかけた話し合いをするの? 整列している人達からは、敵意を感じない。何を狙っているのだろうか?
階下中央にいる王族達を構造解析すると、法王(64歳)、王妃(61歳)、王太子(39歳)、王太子妃(37歳)、王太子の長男(19歳)、王太子の次男(17歳)、王太子の長女(15歳)、王太子の次女(12歳)となっている
この人達、王族にしては威圧感というものを、まるで感じられない。全員の顔色も悪く、豪華な服を着ている割に、何処かくたびれた印象を受ける。トキワさんの介入により、相当酷い目に遭ったのだろう。
それでも、誇りある王族達なのだから、私の【お国乗っ取り案】に対し、何かしらの反抗を示すと思う。私を言葉巧みに操り、国を存続させようと、何かしらの策を講じてくるはず……油断してはいけない。
意を決したのか、王族全員が私達に対し、一斉に左膝をおり、右手を心臓に添え、私達に服従の姿勢を見せる。そして時間差で、後方にいる騎士やメイド、執事、文官達全員も王族にならい、服従の姿勢をとる。
私もネルエルさんもベルナデッドさんも、その異様な光景を見て呆気にとられる。
この行動は……完全に予想外だ。
この場を代表して、法王が頭を上げ喋り出す。
「聖女様、遥々遠きエルディア王国からようこそお越し頂きました。エルディア国王から、あなた様の案を伺っております。我々ガーランド法王国全国民が、聖女様の案を……全て受け入れます」
今…法王はなんて言った? 全てを受け入れる?
「え…受け入れるって…この国を滅ぼしていいと? 新たな国を建国していいと?」
反論はないの?
「はい。雷精霊様がトキワ様をこの王城へ遣わせた時点で、我が国には神のご加護など、一切ないことが証明されました。トキワ様が我々王族に、神罰をお与えになり、全てを破壊されました。ただ、精霊様方は全ての獣人を悪いとは思っていないようです。お隣にいるアッシュ様が魔人族のもとへ赴き、我々との仲を仲裁して頂いたのです。アッシュ様がいなければ、我々獣人一同は、全滅していたでしょう」
あ、トキワさんとアッシュさんの登場を、そう捉えてしまったのね。
ガーランド様は、私の目標を短期間で達成させるため、獣人のことなんて一切考えず行動していたから、ある意味正しい。ただ、アッシュさんがいたのは、偶々だ。多分、クックイスクイズで脱落していたら、ここにいなかっただろう。まあ、彼がいなかったら、トキワさんの怒りを鎮める者がいなくなるので、本当に王都内の獣人達は死んでいたかもしれない。
「トキワ様とアッシュ様の御活躍により、獣人の中でも、王族貴族だけが地に堕ちました。故に、我々は全ての責任を取る所存でございます。全ての秘密をアストレカ大陸全国家に明るみにし、我々で出来うる限りでの魔人族達を解放致します」
通常、ここに至るまでは、相当な紆余曲折があるはずだ。神様がほんの少し介入しただけで、こんな御都合展開になろうとは……ある意味、王族達も、神ガーランド様の都合に振り回された気の毒な人達になるのか。
でも、ここで私自身が、彼らに同情してはいけない!
これまでに仕出かしたことを考慮すれば、王族達には然るべき罰を与えないといけないのだ! 法王の解析データを確認してみよう。
(トキワさん介入前)
・我が王族こそが、アストレカ大陸の真の支配者である
・いずれは、ガーランド教を全世界に布教させ、我が王族が3大陸全土を支配する
・魔人族達には、我が野望の礎になってもらう
(トキワさん介入後)
・アストレカ大陸にもハーモニック大陸にも、化物がいる。所詮、この世は力が全て。力ある者が支配者になれる。我々は…驕っていた。
・トキワ様の仰った通りならば、聖女シャーロット様に逆らってはいけない。我々が人として生き残るには、彼女の案を、全て受け入れるほかない。
・ただ受け入れるだけではダメだ。それだけでは、新たな国が建国された瞬間、我々は平民達に殺されてしまう。全てを明るみにし、全てを受け入れ、我々自身が民のために貢献し、人として認めてもらわねばならない
・捨てろ…捨てろ…自尊心、傲慢、野望、あらゆるものを投げ捨てろ。これまでの殆どの所業は、私自身や過去の法王達が築いてきたもの。息子や孫達は、私の指示に従っていただけだ。息子達を守る為にも、私自身が行動しろ。自分自身を変えるのだ!
介入前と介入後で、法王の心情がかなり異なるけど、これまでの罪を償ってもらわないといけない。それに、王族達は簡単に《国を明け渡す》と言っているけど、他の貴族達は本当に受け入れているのだろうか?
「貴族達から、反対意見はないのですか?」
「反対意見などありません。王都外での亡者侵攻に関しても、聖女様の従魔カムイが殲滅致しました。我々獣人一同、聖女様庇護下の国が誕生するのであれば、快くこの国を明け渡します」
法王の言葉は本気だ。今後、自分達の過去を清算するため、新たな国のために生きていくと誓っている。
神ガーランドが介入→トキワさんが王都で暴れる→王都にいる全ての獣人が降伏→王族も自尊心を砕かれ、性格までもが変化→国を明け渡す
こんな簡単な流れで、国を乗っ取れるものかな?
法王以外の王族達の解析データを確認しても、皆が納得している。
「……わかりました。当面は法王様が指揮をとり、各国への賠償責任を取ってください。その間、私が全ての膿を取り除きます」
グダグダ考えていても仕方ない。先に進もう。
「その事についてですが、カムイ様が王都外にいる領主達を強制連行し、王城へと連れて来ました。また、トキワ様が王都内にいる爵位持ちの貴族達を脅し、王城へと集め合流させた後、問答無用で全員を地下の牢屋に収監しました。なお、トキワ様は拘束した人物の館にも赴き、関係者達を脅しているため、証拠隠滅も大丈夫かと。あとは、聖女様のスキルで解析ですれば、罪を犯しているか、すぐにわかります」
トキワさんかアッシュさんが、私の構造解析スキルのことを法王に教えたのね。そして、《王族達への説得》、《貴族達の確保》、私のやりたいことの大半が、既にトキワさんとカムイによって処理済とは……ありがたいんだけど……
「今すぐに、トキワさんを【新型拷問具ハンマーヘッド金的地獄】で、お仕置きしたい」
「おいおい、何でそうなる!!」
あ、いけない。私の仕事を取られたせいもあって、つい心で思ったことの一部をボソッと言ってしまった。すぐに、トキワさんから反論がきたよ。
この際だから、私の不満を打ち明けよう。
「今から国を乗っ取ろうとしているのに、王族全員物分かりが良過ぎるんです! 誇りある王族達が服従の姿勢を見せるなんて……トキワさんは、どれだけ彼らの心を踏み砕いたのですか? 私の横にいる魔鬼族のネルエルさんもベルナデットさんも、この進行状況に追いついていないので、さっきから一言も喋れていません。全部、トキワさんのせいです!」
トキワさん、ハッキリ言って動き過ぎです。
全ての状況が整い過ぎている。
ネルエルさんもベルナデットさんも、相当な覚悟を決めて、王城へと立ち入ったんだ。それが入るとすぐに、王族のトップ、法王から【国を明け渡す】とあっさり言われてしまった。あまりの展開速度に、二人の脳が追いついていない。
「いや…俺もこの王都で、ちょっとやり過ぎたなと思って…な。シャーロットが動きやすいよう、俺なりに気を配ったんだよ。シャーロットのことだから、多分王族貴族全員をお仕置きするかもしれないと思い、法王達と協力して、貴族達を手当たり次第に誘拐して、牢屋にぶち込んだのさ」
やり方はともかく、その配慮は私としても嬉しいです。
「2日前に起きたばかりなのに、手が早過ぎますよ。でも……ありがとうございます。これならば、今すぐにでも、魔人族の長の治療に行けますね」
この言葉に、声をあげたのが、アッシュさんの側にいる魔鬼族の女の子だ。
「あのシャーロット様……あ、私はマデリンと申します」
「シャーロット・エルバランです。マデリンさん、何でしょうか?」
この子、何故申し訳なさそうな顔をするのだろうか?
横にいるカムイはニコニコ顔、アッシュさんはそれに対し、何故か苦笑いだ。
3人の表情が異なる。何故だ?
「実は……今日の早朝、カムイとアッシュが私達の隠れ家に来てくれまして……」
長の身に、何か起きたのかな?
「アッシュが長を診てくれたんです。そして、【ハイヒール】と【リムーバル】を同時に使用し、ここまでの顛末をゆっくりと語りかけたことで、長が目覚めてくれたんです。そして、再度状況を説明しますと、初めは長も混乱していましたが、『天は妾を見捨てなかった。我々だけで、悲願を成就できなかったことは…尺ではある。が、妾の声がガーランド様の耳に届き、悲願を叶えるための人材を寄越してくれたのだ! 聖女様の案に、妾も賛成だ』と仰っていました」
アッシュさんが長を完治させるとは……凄いの一言だよ。
ただ、長は誤解している。
【ガーランド様は、長の声を聞いてもいないし、あなた自身を見てもいない】
マデリンさんには、この事実を絶対に言えない。
ここは……誤魔化そう。
「長の仰る通りです。ガーランド様はガーランド法王国に怒り、長の手助けをしたのです。ただ、獣人全てが悪いというわけではないので、被害を最小限に抑えるため、私、アッシュさん、トキワさんの3人をこの国へ寄越したのです」
「本当に、ガーランド様は私達を見てくれていたのですね!!」
マデリンさん自身も半信半疑だったのか、私の言葉を聞いた途端、笑顔になった。う、猛烈に罪悪感を感じる。
《トキワさん、アッシュさん、真相は真逆なんですけど、詳細は後で言います》
然りげ無く、テレパスで二人に伝えておこう。
《真逆だと!?》《え、そうなの!?》
真相を聞いたら、2人とも驚くだろう。
「ところで聖女様、さっき【新型拷問具ハンマーヘッド金的地獄】と仰いましたけど、本来誰にお仕置きさせるつもりだったのですか?」
おっとマデリンさん、その質問をしちゃいますか。
【ガーランド様専用初号機】に関しては、天尊輝星様により再調整され、完璧な簡易神具として生まれ変わった。人用となる2号機以降のものは、多大な神力を必要としないため、初号機を基にすれば、いつでも製作可能だ。
これを誰に試す予定だったのか、それは…言うまでもない。
「せっかくなので、拷問具をお見せしましょう」
私は階下に下り、広場中央へと移動した。それに合わせて、トキワさん達も私に付いてきて、王族や騎士団達の陣形もやや乱れたけど、すぐに私の周囲には誰もいなくなったので、マジックバッグから拷問具を取り出し、地面に【ドーーーン】と置いた。全員が、大型拷問具に注目している。
「これが【ハンマーヘッド金的地獄】です。王族全員に対し、お仕置き敢行予定でした。私は、トキワさんのような一瞬で終わるお仕置きなんて許しません。お仕置き内容は……」
1) 成人した王族全員を拘束し、拷問具の頂上に固定する
2) 王都にいる国民達に見えるよう、王族と拷問具を巨大化させる
3) 指定された者達がハンマーを持ち、土台を何度も何度もぶっ叩く
4) 王族達がダメージで疲れてきたら、マックスヒールで即回復させる
5) ハンマーのエネルギー源は、所持者の怒りであるため、一定量の怒りを蓄積させていれば、子供でも王族の金的にお仕置き可能となる
6) 王族の心が折れるまで、お仕置きを続行する
お仕置き内容を全て明かすと、王族や騎士団達だけでなく、トキワさんやネルエルさん達も、私の所業に息を飲んでいた。
「あ…あの…そのお仕置き…獣人の女性に…些か酷なのでは?」
マデリンさん、お顔が真っ青ですよ。あなたは魔鬼族なんですから、獣人をフォローしなくていいのです。一応、全員を構造解析したけど、皆がマデリンさんと同じ意見となっている。
「男女、関係ありません。ここにいる王族の先祖達が3種族を誑かし、ハーモニック大陸の1国を滅ぼしてしまった。しかも、戦争に加担した国々と結託して、歴史をも捻じ曲げ、魔人族達を差別した。本音を言えば、加担した国々全ての王族、貴族、平民全員に、先祖の犯した大罪を償わせるため、この刑を執行したいのです!」
ちなみに実現したら、アストレカ大陸の北半分から、巨大化された大量の拷問具が至る所から出現し、高所から観察すれば、全てが十字架っぽい柱に見えるだろう。そして、一斉にお仕置きが開始され、《キーーーーーン》という何重もの効果音が、大陸全土に響き渡る。
「しかし、今言った事は実行しません。何故ならば、生きている人達は大罪を犯した者達の子孫ではありますが、彼ら自身が大罪を犯したわけではありません。ですから、ガーランド法王国の王族だけ、罪の償いの一部として執行しようと思っていたのです」
う~ん、《お仕置きしない》と断言しているのに、お仕置きの光景を思い浮かべているのか、誰も互いに話そうとしない。
それでは、私の更なる本音を聞いてもらおう。
「そもそも、ここにいる王族達のせいで、私がハーモニック大陸に転移する羽目になりました。転移直後、本当に死ぬと覚悟したんです。だから、男女関係なく、このお仕置きを受けるべきなのです。成人していない方だけは、除外しますが」
この中で、成人していないのは、【カルシュナ】という王女だけだ。
「最後……私怨が混じっていたような?」
マデリンさんがふと呟いた時、アッシュさんが彼女の右肩をポンっと叩いた。
「マデリン、シャーロットの言いたいこともわかるんだ。彼女の転移先は、この世界の中でも極悪環境と言われる場所だった。転移先が高度12000メートル、そこから高度8000メートルの山の頂上に墜落。空気も薄く、魔素濃度も地上よりも遥かに高い環境だった」
アッシュさんの言葉に、皆が絶句した。
【何故生きているの?】という顔で、一斉に私を見た。
「ガーランド様に助けられたのですよ。普通の子供が生き抜いていける環境ではありませんからね。そういった私怨も含めて、王族達にこのお仕置きを実行するつもりだったのですが……皆さん、既にトキワさんによってお仕置きされ、心も折れ、《過去の罪を償いたい》という思いが強く現れています。ですから……王族へのお仕置き執行を中止します」
中止という言葉を聞き、法王達はホッと胸を撫で下ろす。
「シャーロット様、情けをかけて頂き、ありがとうございます」
法王が話し終えると、王族全員が一斉にトキワさんの方を向いた。
「トキワ様、あなたが先にここへ到着した意味を、真に理解しました。我々をお仕置きして頂き、誠にありがとうございます」
法王、勘違いしないで。
トキワさんは素で怒って、あなた達をお仕置きしたんだよ。
「トキワ様、ありがとうございます。あの時、お祖父様達をあそこまで痛め付けたのは、コレを防ぐためでもあったのですね」
カルシュナさん、違います。
当のトキワさんは、何も知らずに、あんな行為をしたんです。
「いや…まあ…な」
トキワさん、何故そこで嘘をつくかな?
なにこれ?
王族全員が、トキワさんに御礼を言う事態に陥っているんですけど?
一応、全員に警告しておこうかな。
「皆さん、安心されては困ります。現在、あなた方王族にとって、周囲全てが敵の状態です。新たな国が建国されて以降、あなた方の働き次第で、大きく運命が変化します。全員が誰かに暗殺される危険性もあれば、国の一貴族として認められる未来もあります。今日以降、あなた方は皆に試されていると思った方がいいです」
私の言葉の意味を真に理解したのか、そのまま深く項垂れてしまった。
「アッシュ…聖女様って、可愛いお姿と言動が一致しないんだけど?」
「あはは、マデリン、その言葉は今更だよ。僕は、何度もこんな光景を見ているから」
さて、これで一つ落ち着いたことだし、次に進もう。
「王族達への罰は、新たな国の国民達に任せるとして、現在収監されている貴族達に関しては、例外なく全員を構造解析し、全てを暴きます。そして、魔人族に対し、虐殺などの大罪を犯した者達がいれば、見せしめとして、王都の何処か広い場所にて、刑を執行する予定です。そして、先程《指定された者がハンマーを持つ》と言いましたが……執行者は、【私と従魔と精霊様達】です。今回、国民達には何もさせません。何故ならば、国民達は王族貴族を責める権利などないからです。理由はわかりますね?」
騎士団やメイド達は、静かに頷いてくれた。王族の選民思想により操られていたとはいえ、国民達も王族貴族と同様、魔人族を差別したのだ。責める権利などない。王城で働いている人達は、それを理解しているようだけど、おそらく王都の人達の中には理解していない者もいるだろう。お仕置き執行時、私が直接言った方がいい。
「そうそう、前もって昨日の段階で、この拷問器具を《とある男性》に試しました。執行されたら最後、これまでのイメージが完全崩壊します」
「「「「「え!?」」」」」
あ、全員が私の方を凝視している。
「あのさシャーロット、その男性って誰のこと?」
全員を代表して、アッシュさんが私に尋ねてきた。
「その方の名誉を守るため、名前を控えさせて頂きます。ヒントとして、【私が逆らいたくても逆らえないお方】とだけ言っておきましょう」
相手はガーランド様だもん。普通なら逆らえないよ。
みんなも、察しがつくでしょ。
○○○ エルディア王国国王ブライアン視点
《国王ブライアンの執務室にて》
はあ~、不安だ。シャーロットがガーランド法王国に行ってから4時間程か。私が国王に即位して以降、これ程までに不安を感じたことはない。ヘンデルもルルリアも、自分達の持ち場に戻っているはずだが、私と同じ気分を抱えているだろう。仕事が、全く捗らん。
『ピピピピ…ピピピピ…シャーロットから通信です。シャーロットから通信です』
これは…シャーロットの声? 簡易神具からの通信か? 相手の顔を押してから、神具を見れば通信可能と言っていたな。
「シャーロットか?」
「はい。国王陛下」
なんだ、これは? 画面のシャーロットを押した途端、シャーロット自身が画面に現れたぞ?
「この簡易神具、通信中の相手の姿を映せるのか?」
「その通りです」
こんなもの、何処の国々でも製作不可能だ。神具…神の道具か。その意味がわかった。
【シャーロットは、神の領域に足を踏み入れている】
改めて、実感した。ルルリアとヘンデルで相談し合ったあの案を、早急にエルバラン公爵とも話をつけねばならぬ。
「国王陛下?」
「ああ、すまない。シャーロットの案はどうなった?」
「その件についてなんですが、全て解決しました。トキワさんが王族達の心を折り、アッシュさんが魔人族の長を回復させたおかげで、誰一人、反発する者はいませんでした。【お国乗っ取り案】、大成功です」
シャーロットが動く前に、仲間達が動いていたおかげで、円滑に事を運べたか。トキワという者が、【両手両足骨折】、【顔面打撲】以外にも、王族全員の心を折る程の所業を行ったと、法王自らが私に話していた。プライドの高い彼が、自分の国を滅ぼすことにも賛成するとは。
「シャーロット、御苦労だった。後処理の方は任せる」
「はい、お任せを。あと、法王が国王陛下と2人だけで話したい案件があるそうです。こちらでも人払いしますので、そちらもお願いします」
「ああ、わかった」
私にだけ話す案件? 亡者関係の損害賠償のことか?
「エルディア国王、話をしても大丈夫だろうか?」
この顔は、紛れもなく法王だ。だが、以前見た時よりも、ホホがこけ、疲れ切った顔をしている。自分こそが、アストレカ大陸の支配者だという威厳も、全く感じ取れん。ただの草臥れた爺さんに成り果ててしまったか。
「ええ、大丈夫です」
「エルディア国王、聖女が開発した新型拷問具の最初の犠牲者になってくれて、本当に感謝する。私達王族は、あなたとトキワ様に助けられた。君の玉は大丈夫か?」
何を言っているんだ、この爺さんは? 遂にボケたか? いや、待て!
法王は、【聖女が開発した新型拷問具】と言ったな。その最初の犠牲者が、私だと思い込んでいるのか? そこに、私の玉が関係しているのか?
……どんな拷問具なんだ?
「あ~それは…」
感謝されていることだし、黙認しておくか。
「すまない、失言だった。ただ、これだけは言わせてほしい。君の犠牲のおかげで、我々王族が救われた。我々にとって、君は英雄だ。今後の展開次第で、聖女はあの拷問具を、各国の王族に使用するかもしれない。特にミルバベスタ皇国、あの国は亡者の被害を受けていないと聞いている。私があの国の皇族達に、聖女の件を話しておく。今後、聖女を預かるエルディア王国では、色々と大変だと思うが、彼女を怒らせてはいかん」
あの法王が、新型拷問具を恐れているだと?
シャーロットが帰還した時、問いただしておこう。
「助言、感謝します。聖女シャーロットに関しては、現在…………と考えているのです」
「私も、その案に賛成だ。…と、これ以上話すと怪しまれてしまう。我々は、もう王族で無くなってしまう。手助けもできないだろう。聖女の件は任せる」
法王の姿が、画面から消えたか。シャーロットとその仲間達が少し動いただけで、一国が滅ぶ。今回は200年前の件も絡んでいたからだと思うが、このままアストレカ大陸だけに留まれば、どんな現象が起こるかわからん。彼女の存在のおかげで、ハーモニック大陸との国交が復活する日も近いかもしれんな。
…………あ!
まさかと思うが、法王の爺さん、各国の王族達にも、拷問具の最初の犠牲者が、私だと言いふらすつもりでは!?
○○○
数日後、ブライアンの悪い予感は的中した。各国の王達が大型通信機を通して、頻りにブライアンの玉を心配する声が上がり、その件がルルリア王妃や王太子、ヘンデル枢機卿達にも伝わったことで、王城の高位貴族達から同情の目が寄せられた。ブライアンは法王との通信で、【正直に話しておくべきだった~!】と深く深く後悔したのだが、後の祭りである。
○○○作者からの一言
シャーロットと王族との絡みが長くなりそうなので、前半と後半に分けます。
次回更新予定日は、12/18(火)10時40分です。
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