元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国

聖女としての初仕事

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○○○ ???視点

あの日から…もう200年も経つのか。

待った…待ったぞ。妾(わらわ)の…いや…我々魔人族の怨みを晴らす時がきたのだ。イザベルという子供が馬鹿なことをしてくれたおかげで、奴等の力も急速に失われつつある。奴等を……ガーランド法王国とミルバベスタ皇国に住む王族共を滅ぼす機会は、今をおいてない! 

これまで蓄えてきた力の全てを結集させ、妾の命を賭けて、必ず奴等を潰す! 復讐を成し遂げる準備も、既に完了している。惨劇の種も撒き終わり、各国に少しずつ被害が出始めている。妾の求める惨劇が訪れるのも、もうすぐだ。

ただ、計画を完遂する上で、気掛かりな点が2つある。

1つ目はマリル・クレイトンの存在、部下が復活させたネクローシスドラゴンをいとも容易く討伐させる程の強者。ドラゴン自体が不完全な状態ではあったが、間違いなくAランクの力量を持っていた。もともと、あのドラゴンでミルバベスタ皇国の戦力を図ろうと思っていたが、想定外の事態だ。あんな切り札が、エルディア王国にいようとは。奴の存在は脅威でもあるが、妾の目的を邪魔するのであれば、容赦はしない。強者を殺害する方法は、いくらでもあるのだから。

2つ目は聖女シャーロット・エルバランの存在、転移先でもあるハーモニック大陸から帰還したという情報が舞い込んできた時には、妾も驚いた。この聖女が妾の計画に対し、どう関与してくるのか想像もつかない。8歳児とはいえ、油断せん方がいい。シャーロットの帰還により、エルディア王国の魔人族に対する忌避感が、王都を中心に薄れつつある。元々、あの国の連中は我らの存在自体を知らないから、恨みなどもない。しかし、妾の計画には付き合ってもらうぞ。当初の予定から若干の狂いは生じたものの、計画に変更はない。

「200年前の恨み、忘れるものか! 妾の受けた屈辱、今こそ晴らしてくれる! 奴等は歴史を改竄し、200年という歳月が流れても、我等を愚弄し続ける。ガーランド法王国を必ず潰す! 我が同胞を奴隷にし、こき使うミルバベスタ皇国も同様だ!」

もう少し…もう少しで…あの人の恨みを…待っていて。我々の悲願が叶った時、妾はあなたの元へ参ります。

「さあ、惨劇を始めようではないか!」


○○○ シャーロット視点


あの取調べから翌日、お父様から話を聞いた限り、国王陛下は臣下の者達と共に、隠れ魔人族やガーランド法王国への対処方法を練っているものの、今のところ良案は考案されていない。

そもそも、ネクローシスドラゴンの件が隠れ魔人族の仕業であるのなら、今後ミルバベスタ皇国と、ガーランド法王国で必ず何かが起こる。特にガーランド法王国の国内情勢は、非常に不安定なものとなっている。魔人族側からすれば、絶好の機会だろう。

ただ、この隠れ魔人族が本当に関与しているのか、それがまだ不鮮明だ。こんな状況では、迂闊に動けない。だから、昨日の会議において、確固たる証拠が出揃うまで、隠れ魔人族の存在を隠匿することになった。結局、国王陛下達も、私のお母様と同じ考えに達したのだ。そのため今日の朝、聖女である私は、お父様に…

「シャーロット、先程教会から通信が入った。あと1時間程で、フレヤが別邸に来る手筈となっている。今日から、聖女としての仕事を始めるようだ。いつでも出発できるよう準備しておきなさい。ただ、いつ重大事件が起こるのか不明である以上、いつでも王城へ召集される覚悟を持っておくように」

と言われた。少し急なことだけど、いよいよ聖女としての初仕事が始まる。フレヤがヘンデル枢機卿に、ネルエルさんの取調べ内容を明かしているから、重大事件が起こる前に、まずは聖女としての私の力を国民に披露する算段でも立てているのかな?

とりあえず、今は聖女の仕事に集中しよう。

朝10時頃、フレヤが3名の護衛と共に、別邸に訪れた。お父様は15分程前に、王城へと出掛けたため、私とお母様が応対することになった。フレヤから聞かされた聖女としての初仕事、内容は冒険者ギルド内における怪我人の治療である。私の力が聖女代行のフレヤよりも強く、頼られるべき存在であることを国民達にアピールすることが目的だ。お母様もすぐに了承してくれたので、私は別邸内にて、仕事の流れを教えてもらい、早めの昼食をとってから、カムイとフレヤと3名の護衛と共に、馬車で冒険者ギルドへ向かった。

「シャーロット、フレヤ、なんか凄い行列ができてるよ?」

カムイに言われ、馬車の窓からそっと覗くと、大勢の人達がずら~っと一直線に並んでいた。これ……30人以上はいるよね?

「フレヤ、まさかとは思うけど……みんな診察する人達なのかな?」

「多分。冒険者ギルドには、【聖女シャーロット様が、本日の怪我人の治療にあたります。重篤度の高い人達から、最優先に治療を施します】と通達しているから、私でも完全に治療できなかった人達が、列の先頭にいると思う。これまで多くの人達を診察したけど、【リジェネレーション】でも完治できない人が、4人程いたの。今の私の力じゃあ、短時間で完治させることが困難な病状で、何処に病魔が潜んでいるのかも突き止めれない。その4人に関しては、症状の進行をリジェネレーションで抑えるしかなかった」

リジェネレーションは、病状によって完治するまでの速度が異なる。また、病魔となる部分に集中すれば、その分速度も速まるけど、その病魔自体が何処に潜んでいるのか突き止めなければ、早期回復は難しい。

「その4人に関しては、マックスヒールが必要だね。あと患者を治療する上で、【インフォームドコンセント】こそが重要だから、病状を聞きつつ、構造解析で診察して、一人一人に軽く説明してから、回復魔法を使用していこう」

私が何も言わず回復魔法で治療し、そのまま返してしまったら、患者自身は絶対に再発しないか不安がると思う。

「あ、わかる。私もその事を思い出して、魔力波で診察して、自分の理解できる範囲で説明したら、みんなが新人の私を信用してくれた。ただ……その分、イザベルと比較されるから、内心複雑だったけど」

それは……仕方ないよね。

私達は馬車の窓を開放し、笑顔で行列の人達に挨拶しながら、冒険者ギルドに向かった。ただ、ギルドに近付けば近付く程、怪我人の重篤性が上がっていき、その分重苦しい雰囲気となっていく。そして、ギルドに到着し中に入ると、更に雰囲気が重くなった。入口のすぐ近くに、ロングの赤い髪、年齢は25歳前後のスレンダーな美人女性がいた。

「シャーロット様、お待ちしておりました。私は受付担当のフェアリリーヌ・テルサドスと申します。略称で、フェアリと呼んでもらえると助かります」

うわあ~、凄く丁寧な挨拶だ。
しかも、見た目からして貴族の御令嬢さんかな?

「エルバラン公爵家長女、シャーロット・エルバランです。聖女ですけど、シャーロットと呼んで下さい。ハーモニック大陸では、ずっと平民口調の喋り方だったので、それが定着してしまって……貴族の丁寧な喋り方をすると、こそばゆいというか、なんというか、ですからいつも通りに話してくれて構いませんよ」

そう言うと、フェアリさんは優しく微笑んでくれた。

「ふふふ、そのようね。それじゃあ、私も普段通りの喋り方をするわね。フレヤから聞いていると思うけど、シャーロットには、奥のベッドで寝かされている4人の患者さんを始めに診てもらうわ。こっちよ、案内するわ」

私達は、ベッドに寝かされている4人の患者の下へ向かった。患者達は、1階の広い区画になっているところにいた。本来、ここは冒険者達の憩いの場として、飲み物などが提供される場所のようだ。区画半分が治療用に片付けられているため、私としても非常に動きやすい。

周囲にいるギルド職員達は、フレヤや教会関係者達の仕事を、ほぼ毎日見ている。今回、私の初仕事ということもあり、聖女である私が患者達に対し、どういった態度で接し治療を施していくのか気になるはずだ。フレヤと比較されるのが少し気になるところだけど、私もスキルと魔法を最大限に行使して、患者達を治療していこう。

「フレヤ、まず私が【構造解析】スキルで1人1人を診察して、重篤な人は私が対応し、比較的軽度な人はフレヤが対応してね。重篤な患者さんがいなくなり、人数も少なくなったら、私が一気にリジェネレーションで軽傷の人達を回復させるよ。本当は、1人1人丁寧に応対したいけど、さすがにそれだと、この人数を1日で治療できないから」

「わかりました。それでいきましょう」

まずは、この4人の患者達を診察しよう。

4人の家族から症状を聞いた後、構造解析した結果、46歳の男性が脳腫瘍、63歳の男性が肝臓癌、24歳の女性が膵臓癌、59歳の女性が胃癌に侵されていた。しかも、全員の癌が多くの臓器に転移しており、寿命が残り2ヶ月をきっていた。これだけ病巣の数が多ければ、フレヤも何処にあるのか混乱して把握できないのもわかる。短時間でのリジェネレーションでは回復しきれない。癌の場合、免疫力を向上させるイムノブーストも使用不可だ。

私は4人の家族に、患者の病気を説明した。最後に……

「病巣が身体中に転移しているため、リジェネレーションでも完治には長期を要します。しかし、マックスヒールを病巣だけに使用すれば、大幅に回復するかもしれません」

病気の説明を聞いていた時、全員が絶望していたけど、最後の私の言葉で、希望の光が皆の顔に宿った。

「全力を尽くします!」

家族達が苦しむ患者達の手を握り、励ましの言葉を贈った後、『頑張れ!』と4人を鼓舞した。私のスキルと魔法を駆使すれば、患者達を完治させることは可能だけど、この世界での癌という病気は、【不治の病】とされている。だから、私が癌に苦しむ患者や家族達に対し、【絶対完治する!】と断言してはいけない。聖女なりたての私の発言だと、かえって不安がる人もいるだろう。

「マックスヒール!」

外傷などの場合、目視で傷を確認できるから、身体全体にマックスヒールをかけることで完治可能だ。しかし、内的要因の病気の場合、目視できないため、スキルを駆使して病巣の箇所を把握しないといけない。転移前の私ならば、たとえマックスヒールを使用できたとしても、力不足で全ての病巣を取り去ることは出来なかった。

でも、今の私ならば、【構造解析】で病巣の正確な位置を把握し、魔力波による【マップマッピング】で自分のステータス内に患者さんの3D画像を映し、【ポイントアイ】によるグループ化機能を使用することで、全ての病巣を1つのグループにまとめ上げ、一気に治療させることが可能となる。4人の身体の一部が淡い緑色の光に覆われた。家族や全く関係のない人達も、苦しむ患者達を見て、小声で『治れ、治れ』と言いながら祈っている。この瞬間、ギルド内にいる人達の想いは1つになっているだろう。

回復の光は、数分程で消えた。私は構造解析で患者達を再度診察すると、病気から完全解放されているを確認できた。4人の顔からも、先程までの苦悶の表情が抜け落ちている。

「回復の力の殆どを病巣に使用したので、体力があまり回復していないはずです。ゆっくりと起き上がり、床の上にお立ちになる場合は、ご家族の方が支えてあげてください」

患者であった4人は、恐る恐るベットから降りた。そして、身体がフラつきながらも、家族の手を借りることで、なんとか自分の足で立ち上がれたことを確認すると、自分達が完全に治ったことを実感できたのか、大粒の涙を流し、側にいる家族達と抱き合った。周囲の人達も、この光景に感動したのか貰い泣きしている。

「これで…終了です。全ての病巣を消失させましたが、何処かで再発するかもしれません。具合が悪くなったら、また来てくださいね」

関係者達が私に御礼を言い、頻りに握手を求めてくる。ハーモニック大陸で同じことを経験してきたけど、聖女である私にとって、こういった多くの笑顔が、なによりの報酬かな。

「シャーロット様、凄いです。たった数分であれ程の重い症状を完治させるなんて」

フレヤだけじゃなく、ギルド職員や冒険者達も、私の持つ魔法技術や患者への応対に驚いているようだ。

「魔法とスキルのコンボだよ。ハーモニック大陸でも、様々な怪我人の治療を施してきたの。その過程で、私は新たなスキルを身に付けて、魔法の扱い方にも慣れてきた。回復魔法に合わせたスキルを持っていたらこそ、この短時間で治療できたの。今のフレヤなら、私の持つ技術の一部を習得できるよ」

「是非、教えて下さい!」
「うん、あとで教えてあげる」

フレヤは魔力波を扱えるようだから、魔法【真贋】、スキル【マップマッピング】と【ポイントアイ】を比較的容易に習得できるだろう。当然、悪用される危険性もあるので、他の人達には内緒だ。

○○○

その後、フレヤと私の治療は滞ることなく施されていき、重篤者4名、重傷者12名、軽症者20名、合計36名の患者全員を完治させた。これで終わったと思ったら、フェアリさんとと共に、赤、青、黄色の仮面を被った3人組の男達が私とフレヤのもとにやって来た。素顔はわからないけど、身体つきや肌の具合から見て、3人とも30歳を超えてないように思える。

仮面を被っている時点で、何か訳ありとみた。

「シャーロット、フレヤ、お疲れ様。最後の患者というよりも、相談者を連れてきたわ。この3人は事情があって、素顔を晒せないの。でも、王城に勤めている人達だから信頼できるわ。2階の個室に入って、彼らの悩みを聞いてあげてほしい」

受付嬢のフェアリさんが言うのだから、王城勤めというのも本当のことかな。何か事情がありそうだし、構造解析も控えておこう。

「わかりました」

フェアリさんの案内で、2階個室に入り、全員がソファーに座ると、対面にいる3人のうちの1人が私達に話しかけてきた。

「シャーロット嬢、フレヤ嬢、訳あって素顔も名前も公表できない。ただ、深刻な悩みを抱えている。殆ど愚痴のようなものだから、とりあえず聞いてもらえないだろうか?」

私はフレヤの方を見ると、彼女は静かに頷いた。こういった特別な人達の悩みを聞くのも、聖女の仕事か。

「解決できるかはわかりませんが、とりあえずお話だけでもお伺いします」
「ありがとう」

どうやら、赤色の仮面を被ったこの人が代表して話すようだ。
彼は意を決して、自分達の抱えている悩みを話し出した。

「私達は、ある1人のお方にお仕えしているのですが…そいつは頻繁に仕事をサボるのです」

「「は?」」
私もフレヤも、同時に同じことを口走ってしまった。
どうやら、この人は本当に愚痴を零すようだ。

「あの方が仕事をサボる分、その代償は全部俺達に回ってくるんですよ! そのせいで、学園在籍中も卒業してからも、あいつがサボる時、俺達は必ず残業しているんです! 私達の上司は、仕事サボり魔なんです!」

なんか、赤色の仮面を付けた人の声量が、どんどんと上がってきているし、右拳をきつく握り締めながら熱く語っている。しかも、【あの方】が【あいつ】にランクダウンしている。

「学園在籍時のサボる理由は、【別の用事が入ったから、生徒会の仕事を任せた】ですが、その実態は婚約者とイチャつきたいだけなんです! 卒業後も、適当な理由をつけては、王城内にいる上司の妻とイチャイチャイチャイチャ。どれだけ注意しても、奴は俺達の目を盗んで、仕事を頻繁にサボる。正直我慢の限界なんです! このままだと、あの野郎をぶん殴って、傷害事件を発生させるかもしれません」

【あいつ】から【奴】、【奴】から【あの野郎】、この人達にとっての上司の印象は、相当悪いようだ。その上司とは、一体誰なんだろうか!?

「えーと、つまり上司のサボリ癖を治して欲しいと?」
「「「はい!!!」」」

そんなもん、魔法で治せるか! 横にいるフレヤも呆れている。
いや、まてよ。魔法で治せなくても、アレを使えば治せるのでは?

「魔法では治せません。しかし、これを使えば強制的に治るかもしれません」

私はマジックバッグから、サーベント王国で開発された魔導具【お仕置きちゃん】を皆に見せた。

「シャーロット嬢、これは?」
「この魔導具一式の名称は【お仕置きちゃん】といいます。男女問わず、不倫や浮気をする愚か者達に罰を与える効果があります。ただ、これを設置する場所なんですが……」

魔導具【お仕置きちゃん】

設置場所:股間付近
効果範囲:半径10m
消費MP:1~15
推奨消費MP:1~9
効果:込める魔力が多い程、電撃の威力が増していく。MPを10以上込めると、身体異常は発生しないものの、大絶叫する程の痛みが所持者を襲う。

私が【お仕置きちゃん】の設置場所と効果を説明すると、3人がソファーから飛び上がり、フレヤと一緒に私から後退りした。

「シャーロット様、一体誰に……そんな酷いことを……」
フレヤが何か言いたげだ。

「あ! 違います! これは、私が開発したものではありません。ハーモニック大陸にいるダークエルフのレアナという女性が原案を考えたのです!」

「本当に?」
なんで、フレヤはそんな疑わしい目をするかな?
3人組の目も、フレヤと同じだ。

「フレヤ、本当だよ! とりあえず、3人のうちの誰かが、コレを下着に入れて下さい」
「「「え!?」」」
「だって威力を確認しないとわかってもらえないでしょ? まさか、私達にさせるつもりですか?」

フレヤが3人を見た途端、短い悲鳴をあげて、私の方にすっ飛んできた。

「私達は後ろを向いていますので、終わったら言ってください」

【お仕置きちゃん】をアソコに入れる瞬間なんて、見たくもないよ。彼らの用意が整うまで、約5分を要した。お仕置きちゃん専用指環と【お仕置きちゃん】、誰が担当するかで、かなり揉めた。結局、ジャンケンで青色の仮面の人がお仕置きちゃん専用指輪、赤色の仮面の人が【お仕置きちゃん】を装備した。

「青色の仮面の方、指輪に魔力を3だけ入れてください」
彼が頷くと、赤色の仮面をした人が……

「アポ! アピパパパパパパブボボ、や…め…アアアアア~~や~め~ろ~~」

軽い叫び声をあげ、足が内股となり、股間を押さえながら仰向けとなり踠き苦しんだ。

「や…と…止まった。これ…酷いぞ。城に帰ったら、絶対お前らにも試すからな!」

あはは、やっぱりこうなるよね。

「えーと試してもらってわかるように、公衆の面前でお仕置きしちゃうと、男女関係なく、大切なものを失います。あなた方3人は、これまで上司の尻拭いを何年もしてきました。上司を恨んでいるのなら、上司自身もこういった恥を晒した方がいいと思うのですが?」


3人は、顔を見合わせている。そして、一斉に頷いた。


「シャーロット嬢、効果範囲を延ばす事は可能かな? できれば30メートルくらいにして欲しいのだが?」

現状のお仕置きちゃんの効果範囲は、10mだ。中に入っている空間属性の魔石のランクを上げれば可能かもしれない。私は赤色の仮面さんからお仕置きちゃんを貰い、魔石をEからCランクのものに交換してみた。構造解析すると、丁度効果範囲が30mとなっていた。

「これで大丈夫です。ご注文通りのものに進化しました。この【お仕置きちゃん】を差し上げますが、呉々も仕事をサボった時にだけ使用して下さいね。あと魔力を10以上込めないように。それ以上にすると、威力が強すぎて、叫び声が絶叫レベルとなります」

「シャーロット嬢、ありがとう。その注意点に関しては、必ず守る」

仮面を付けた3人は、私にお礼を言い、部屋を出ていった。赤色の人だけ、歩き方がおかしかったので、私もフレヤもちょっと笑ってしまった。

「ねえシャーロット、上司なら身分だって彼らより上だよね? 不敬罪で逮捕されないかな?」

「それくらい彼らだってわかってるよ。結局、誰が上司なのかわからないけど、今度王城に行った時にわかるかもしれないね」

これで聖女としての初仕事も終了だ。



……後日、私が王城に行った時、上司が誰なのか判明した。あの3人に対して、どうして構造解析しなかったのか、非常に後悔することを、この時の私は知る由もなかった。

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