僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

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最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる

最終話 今はまだこの関係性でいいよね

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ワイバーンが着陸すると、フリオさんが飛び降りる。かなりの高さがあるのに、平気で着地している。一瞬、お腹は大丈夫なのかと心配したけど、顔色も良いから、きっとポーションやお腹を整えるお薬を飲んで回復したのかもしれない。ギフトでお腹の環境を強制的に劣悪にしたけど、呪いでもなんでもないから、食生活を整えれば自然に治ると、マグナリアも言ってたもんね。

お腹も全快したようで良かったよ。

「アーサム様、ご要望通りの方々をお連れしました」

誰を連れてきたの?

「マグナリア様が、こちらで起きた事を全てお話ししており、アーサム様の抱える懸念事項についても説明しています。あとは、互いの話し合いのみです」

マグナリアが、そっちにいるの!?
何か大事な用事があると言っていたけど、彼女は誰を連れてきたの?

「助かる。これは、国家間に関わる事だからな」

国家間!?
僕は、邸内にいた方がいいんじゃあ?
あ、籠の扉が開いた!

中から出てきたのは大人の男性と女性で、男性の顔に見覚えがある。
リリアナのお父さん、セルザスパ辺境伯だ。
誘拐される前、遺跡で見たカッコいい男性だ。

「お父様! お母様!」

僕の横にいたリリアナが急に叫んで、2人のもとへ駆けていく。

「「リリアナ!」」

リリアナが両親のもとに到着すると、父親に抱きしめられる。

「リリアナ、無事で良かった。随分前にアーサムとフリオから聞いてはいたが、かなり厄介な状況だったから迎えにいけなかった。すまない」

「怪我もないようで良かったわ」

感動の再会なんだけど、なんか振る舞いが違う。
3人共、凄く上品だ。

一応、僕も貴族としての礼儀を習ったから、両親と再会しても、あまり騒がないようにしよう。

「アキトとマグナリア様のおかげよ。私1人だけだったら、今頃…」
「そうだな。事情は、マグナリア様から全て聞いているよ。おっと、話を進める前に、あの方々にも出てきてもらわないと。少し移動しようか」

そう言うと、3人は籠から少し離れると、扉から現れたのは、小さなマグナリアと……え? 嘘…なんで…いるの?

「お父さん! お母さん!」
「「アキト!」」

何だろう…急に心が満たされたせいなのか、涙が出てくる。
我慢しないといけないのはわかるけど、衝動が抑えきれそうにない。
気づけば、僕は両親のもとへ駆けていき、お父さんに抱きつく。

「あのね、誘拐されてから、色々な事があったんだ」

2人とも僕の訴えを聞いて、顔を見合わせると、優しく微笑んでくれた。

「マグナリア様から聞いたよ。頑張ったな、アキト」
「偉いわ。リリアナ様やシェリル様を守ってくれたのね」

「うん! 今は、マグナリアとガルーダ様から魔力制御の方法を、ミランダ様たちから礼儀作法を教えてもらっているんだ。この前のパーティーで、色んな人たちと知り合いになれたし、僕の作法を褒めてくれたんだよ」

あれ? 
パーティーや礼儀作法の件を話したら、2人の笑顔が歪になった。
なんで?

「あ~、アキトは貴族になりたいか?」

お父さんからの質問に、僕はポカンとしてしまう。

「平民から貴族になれるものなの?」
「国に大きく貢献した者は、平民であっても貴族になれるんだ」

それは初耳だよ。
貴族…か。

「この敷地内に限って、リリアナやシェリルとは普通に話せるんだけど、周囲に大勢の人々がいる中だと、身分のせいでどうしても話せないんだ。僕は、どんな場所に行っても、いまのような感じで、2人と話し合いたい。もし、その願いが貴族になることで叶えられるなら、貴族になりたい……って、以前の僕なら言ってたかな」

「今は、どうなのかな?」

この際だから、本音を言おう。

「誘拐騒動で、貴族の方々が色んな責任を背負って、領地の治安やその地に住む人たちの生活を守ってくれていると肌で感じたんだ。だから、貴族になりたいなんて、軽々しく言っちゃいけないことだと思った」

お父さんとお母さんだけでなく、アーサム様たちも僕の言葉を聞いて驚いている。というか、お父さんもお母さんもなんで涙ぐんでいるの?

「今の僕にはね、夢があるんだ」
「夢?」

これからお世話になるアーサム様たちもいるから、みんなにも知ってもらおう。

「うん。神様から貰ったスキルやギフトを使って、シェリルやリリアナのいる領地に貢献したい! 僕の周囲にいる人たちの生活を豊かにして、みんな笑顔で過ごせるようにしたいのが、僕の夢!」

あれ? お父さんが遂に泣き出した! 
お母さんは半泣きで、笑顔を保ってる。

「立派に育って嬉しいんだが…息子はまだ5歳なのに、色んなことをすっ飛ばして…お父さん、複雑な気分だよ」

それって褒めてるの?

「ね…ねえ、アキト」

リリアナがドギマギしながら、僕に話しかけてきた。

「何?」
「あのさ…仮に…仮によ…あなたが両方の国に大きな貢献をして、貴族になったとしましょう。その時、あなたはどっちの領に定住したい?」

え? 
う~ん、そんなこと考えたことなかったな。

「その答え、私も知りたいわ」

なんか、シェリルとリリアナが凄い視線で、僕に答えを求めてくる。この眼差し、答えないとまずい展開だよね。

「正直、そんな先のことまで考えたことないよ。強いてあげるなら、今はこの関係性のままでいいかな。セルザスパ領とティムランド領を行ったり来たりして、僕のギフトでどっちも幸せになってもらうんだ」

定住したら、どちらかの領に留まることになるから、それだとなんか嫌だな。

「あはははは」

僕が答えを出すと、アーサム様が急に笑い出す。

「そうか、そうだな。今は、まだこの関係性を保ちたい時期だな。リリアナ嬢もシェリルも、今はそれで納得しなさい。アキトが力を付けた時、いずれ選択する時が必ず訪れる。その時までに、彼の身分がどうなっているかはわからんが、この調子でいけば…おそらく…」

「お父様……そうですね。その時までに、もっと…」

アーサム様とシェリルが、何かを理解したかのように僕を見る。貴族なんて、そう簡単になれるものじゃないでしょ? 今回だって、前世で知っているステンレスに関わる情報をレンヤさんに教えて、彼がミスリル合金を作り上げたのだから。パーティーで起きた騒動についても、一応僕(アキ)と精霊たちが悪意を祓ったけど、大騒動にまで発展してないから、国に貢献したとは言えないよね。

「そうね…今はまだこの関係性でいいわ。でも、シェリル…」
「わかっているわ、リリアナ…」

何故だろう? 2人は見つめ合っているけど、火花が飛ぶくらいのようなバチバチした雰囲気を感じるよ。

「リリアナも、良いお友達が出来て良かったな。アーサム、ずっとここで話し合うのもなんだし、そろそろ…」

「ああ、そうだな。皆さん、続きは邸内で行いましょう」

アーサム様先導のもと、みんなが一斉に移動を始める。
さっきの話の内容が妙に気になるけど、まあいいか。

僕のギフトと前世の知識で、二つのリリアナとシェリルのいる領を幸せにしよう。そこで上手くいけば、結果的に国の貢献につながるのかもしれない。もし、貴族になった時、どっちの領に定住するのか、それはその時に考えよう。

僕はお父さんとお母さんと手を繋いで、3人笑顔でアーサム様の後をついていく。


                《完》
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感想 12

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みんなの感想(12件)

蒼月丸
2024.10.07 蒼月丸

見ましたが、面白かったです!次回作も楽しみにしています!
こちらも小説を書いていますが、お互い書籍化目指して頑張りましょう!

犬社護
2024.10.09 犬社護

蒼月丸さん、本作品を最後まで読んで頂き、ありがとうございます( ◠‿◠ )
はい、書籍を目指し、お互い頑張りましょうね!

解除
猫3号
2024.06.09 猫3号

最終話
敷いてあげるなら、今はこの関係性のままでいいかな。 → 強いてあげるなら

アキトが今の関係性の意味を理解するのは、まだまだ先のこと。

犬社護
2024.06.09 犬社護

誤字報告、ありがとうございます!
該当箇所を修正しました( ◠‿◠ )

猫3号さん、本作品を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
アキト自身、まだ5歳なので、関係性を問われても、きちんと理解していないお年頃。
意味を理解するのは、もう少し先になりそうです(^。^)

解除
猫3号
2024.06.07 猫3号

アキトとリリアナの両親到着かな? アキトにお腹の調子を治してもらえてないフリオ。空の旅でワイバーンの鞍を汚してないと良いけど。

犬社護
2024.06.07 犬社護

次回、最終話となります( ◠‿◠ )

解除

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