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最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる
34話 悪意の暴発
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キャンベル一家にスキル[鑑別]を使ったら、3人の品質が最低ランクの[G]になっていた。しかも、何らかの魔法薬を摂取していて、その影響下で3人の身体自体から発せられる特殊な匂いで、周囲にある負の感情を体内へと少しずつ集積させている。
毎日悪夢を見続けているのは、それが原因だ。
悪意を引き寄せているだけなのだから、発生源なんて見つかるわけがない。
誰が何の目的でこんな酷いことをしているの?
もっと深く探ってみよう。
「……!」
品質管理の中にある鑑別のおかげなのか、深堀できたのは良かったけど、これってまずいよ。誰かがこの親子を利用して、何かを起こそうとしている。この場で説明したいけど、絶対騒がれる。
『ガルーダ様、聞こえますか?』
『む、アキトか。どうした?』
『悪意の集まる原因がわかりました』
『何!』
僕は、鑑別で見た内容を説明していく。
『う~む、不特定多数の悪意を引き寄せる魔法薬、人間はそんな物を開発していたのか。我々も悪意を感知こそしているが、出席者たちに向けられていないから、何かおかしいと思っていたが……よもや薬が原因とは』
『治療できませんか?』
『トウリの光魔法か聖魔法であれば治療可能だが…む、いかん!』
え…あ、キャンベル侯爵様たちが突然苦しみ出した!
「なんだ…これは…」
「父上、胸が張り裂けそうです…痛い…痛いよ…誰か」
「あなた…どうなって…」
「キャンベル侯爵!」
3人が急に苦しみ出したから、アーサム様が侯爵を、ミランダ様が奥様を、アレク様が侯爵令息を慌てて抱き起こす。
「ティムランド辺境伯、我々3人を置いて、この場から逃げろと…皆に…伝えてほしい…魔力が体内で…暴走している…このままだと…」
「あなた…」
「痛いよ…痛いよ…助けて」
まずいよ。
3人から感じる魔力が、どんどん乱れていくのを感知できる。
『いかん、狙いはアーサムだ!』
『どういうこと?』
『あくまで推測だが、精霊を誘拐した犯人共は、自分と深い繋がりのある貴族を、この辺境伯領の新たな領主に仕立て上げるため、この場でアーサムやゴルゴンド公爵たち有力貴族を殺すつもりなのだ』
『でも、マグナリアを誘拐した犯人たちの殆どを捕まえたことで、芋蔓式にどんどん関係者たちを捕縛しているんでしょ?』
『ああ、王都にいる誘拐犯の元締めに関しても、騎士団が動いたことで、先日捕縛された』
『それって、もう解決しているよね?』
『精霊が誘拐されることはなくなったが、奴らの仕組んだ罠を全て解除したわけではない。胴元が捕縛されたとしても、今こうして動き続けているのもある』
あ、魔法薬なんだから、摂取し続ける限り、効力が保持されるんだ。
『今、そこら中の悪意が3人の身体に入り、心も体も侵しつつある。心が限界に達したからこそ苦しんでいるのだ。このままでは、身体を基点に大爆発が起こる』
え~~~!
『急いでトウリの魔法を…』
『無理だ。尋常ではない悪意の量が、周囲に集まりつつある。今のトウリでは、これら全てを浄化できない。悪意のもととなる物を断てれば、あるいは…』
この場合、悪意を引き寄せるものになるから……そうだ!
『マグナリア、僕に力を貸して!』
『話は聞いていた。真の姿で顕現しよう。精霊が出現することで、皆の心の乱れも緩和する』
『そうだな。私も力を貸すぞ。上空に姿を顕現させよう』
『それじゃあ、私も私も! アキの左肩に行くね!』
みんなが協力してくれるのなら、いけるはずだよ。
「アーサム様、私が3人を診ていいですか?」
僕は、苦しむ3人の前に立つ。
「アキ、どうするつもりなんだい? まさか、君のギ…スキルで?」
「はい、それに私には心強い味方もいますから」
僕の言葉に合わせて、ガルーダ様、マグナリア、トウリたち3体の精霊が出現する。ガルーダ様とマグナリアは本来の姿で凛々しく大きいこともあって、皆がそちらに集中したけど、そこに小さな金色の鳶が飛来し、僕の左肩に乗ったことから、皆の視線が僕に集中する。
「キャンベル侯爵様、私はアキ・ボルトンと言います。今から、貴方方を苦しめる悪しきものを断ちますね」
カーテシーを忘れたけど、緊急事態だし許してくれるよね。
「あ…悪しきもの?」
「はい。貴方方は、悪い人に目を付けられ、人の悪意を引き寄せる魔法薬を摂取しています。今から精霊様方と協力して、その悪しき薬を分解して、健康性を向上させます」
3人は、ガルーダ様を見上げる。ガルーダ様に何を言いたいのか伝わったようで、彼は口を開く。
「其方の息子は、シェリルを傷つけた。それは、許し難い行為である。しかし、今日のパーティーに振るわれた優しい料理、3人の直向きで誠意ある謝罪、それは嘘偽りのない真摯なものであった。息子の罪を許そう。其方たちを苦しめる悪しき薬をアキと共に浄化する」
3人はその言葉を聞いて、苦しみながらも涙を流す。
「トウリ、聖属性結界を敷地全体に展開させ、悪意がアキを襲うようなら、聖魔法で撃退しなさい」
「はい!」
トウリにとって初めての実戦、心配だけど任せるしかない。
「さて、パーティー出席者たちよ。私、トウリ、マグナリアが、周囲に蔓延る悪意を全て断つとこの場で宣言しよう。そろそろ人にも見える程の濃度に到達し、君たちも自分たちの状況を知ることになるが狼狽えてはいけない。我々精霊が、必ず守る。だから、その場から動かず、浄化される瞬間を静観していなさい」
ガルーダ様の話が終わると、程なくして黒紫色の靄が僕たちにも見えるようになった。あれらは3人に任せるとして、僕は品質管理を実行しよう。
「今からスキルを行使します。皆様は、成功することを信じてください」
「みんな、アキは精霊の私を救える程の強い力を持っているから安心して。ほら見て、私は彼女のおかげで、聖魔法だって使えるようになったのよ」
トウリの身体を伝わって、青白い聖なる力が僕を覆う。
「いきます。悪しきものよ去れ! 身体よ、健康に!」
僕は両手を合わせて、神に祈る。
品質管理、発動だ!
毎日悪夢を見続けているのは、それが原因だ。
悪意を引き寄せているだけなのだから、発生源なんて見つかるわけがない。
誰が何の目的でこんな酷いことをしているの?
もっと深く探ってみよう。
「……!」
品質管理の中にある鑑別のおかげなのか、深堀できたのは良かったけど、これってまずいよ。誰かがこの親子を利用して、何かを起こそうとしている。この場で説明したいけど、絶対騒がれる。
『ガルーダ様、聞こえますか?』
『む、アキトか。どうした?』
『悪意の集まる原因がわかりました』
『何!』
僕は、鑑別で見た内容を説明していく。
『う~む、不特定多数の悪意を引き寄せる魔法薬、人間はそんな物を開発していたのか。我々も悪意を感知こそしているが、出席者たちに向けられていないから、何かおかしいと思っていたが……よもや薬が原因とは』
『治療できませんか?』
『トウリの光魔法か聖魔法であれば治療可能だが…む、いかん!』
え…あ、キャンベル侯爵様たちが突然苦しみ出した!
「なんだ…これは…」
「父上、胸が張り裂けそうです…痛い…痛いよ…誰か」
「あなた…どうなって…」
「キャンベル侯爵!」
3人が急に苦しみ出したから、アーサム様が侯爵を、ミランダ様が奥様を、アレク様が侯爵令息を慌てて抱き起こす。
「ティムランド辺境伯、我々3人を置いて、この場から逃げろと…皆に…伝えてほしい…魔力が体内で…暴走している…このままだと…」
「あなた…」
「痛いよ…痛いよ…助けて」
まずいよ。
3人から感じる魔力が、どんどん乱れていくのを感知できる。
『いかん、狙いはアーサムだ!』
『どういうこと?』
『あくまで推測だが、精霊を誘拐した犯人共は、自分と深い繋がりのある貴族を、この辺境伯領の新たな領主に仕立て上げるため、この場でアーサムやゴルゴンド公爵たち有力貴族を殺すつもりなのだ』
『でも、マグナリアを誘拐した犯人たちの殆どを捕まえたことで、芋蔓式にどんどん関係者たちを捕縛しているんでしょ?』
『ああ、王都にいる誘拐犯の元締めに関しても、騎士団が動いたことで、先日捕縛された』
『それって、もう解決しているよね?』
『精霊が誘拐されることはなくなったが、奴らの仕組んだ罠を全て解除したわけではない。胴元が捕縛されたとしても、今こうして動き続けているのもある』
あ、魔法薬なんだから、摂取し続ける限り、効力が保持されるんだ。
『今、そこら中の悪意が3人の身体に入り、心も体も侵しつつある。心が限界に達したからこそ苦しんでいるのだ。このままでは、身体を基点に大爆発が起こる』
え~~~!
『急いでトウリの魔法を…』
『無理だ。尋常ではない悪意の量が、周囲に集まりつつある。今のトウリでは、これら全てを浄化できない。悪意のもととなる物を断てれば、あるいは…』
この場合、悪意を引き寄せるものになるから……そうだ!
『マグナリア、僕に力を貸して!』
『話は聞いていた。真の姿で顕現しよう。精霊が出現することで、皆の心の乱れも緩和する』
『そうだな。私も力を貸すぞ。上空に姿を顕現させよう』
『それじゃあ、私も私も! アキの左肩に行くね!』
みんなが協力してくれるのなら、いけるはずだよ。
「アーサム様、私が3人を診ていいですか?」
僕は、苦しむ3人の前に立つ。
「アキ、どうするつもりなんだい? まさか、君のギ…スキルで?」
「はい、それに私には心強い味方もいますから」
僕の言葉に合わせて、ガルーダ様、マグナリア、トウリたち3体の精霊が出現する。ガルーダ様とマグナリアは本来の姿で凛々しく大きいこともあって、皆がそちらに集中したけど、そこに小さな金色の鳶が飛来し、僕の左肩に乗ったことから、皆の視線が僕に集中する。
「キャンベル侯爵様、私はアキ・ボルトンと言います。今から、貴方方を苦しめる悪しきものを断ちますね」
カーテシーを忘れたけど、緊急事態だし許してくれるよね。
「あ…悪しきもの?」
「はい。貴方方は、悪い人に目を付けられ、人の悪意を引き寄せる魔法薬を摂取しています。今から精霊様方と協力して、その悪しき薬を分解して、健康性を向上させます」
3人は、ガルーダ様を見上げる。ガルーダ様に何を言いたいのか伝わったようで、彼は口を開く。
「其方の息子は、シェリルを傷つけた。それは、許し難い行為である。しかし、今日のパーティーに振るわれた優しい料理、3人の直向きで誠意ある謝罪、それは嘘偽りのない真摯なものであった。息子の罪を許そう。其方たちを苦しめる悪しき薬をアキと共に浄化する」
3人はその言葉を聞いて、苦しみながらも涙を流す。
「トウリ、聖属性結界を敷地全体に展開させ、悪意がアキを襲うようなら、聖魔法で撃退しなさい」
「はい!」
トウリにとって初めての実戦、心配だけど任せるしかない。
「さて、パーティー出席者たちよ。私、トウリ、マグナリアが、周囲に蔓延る悪意を全て断つとこの場で宣言しよう。そろそろ人にも見える程の濃度に到達し、君たちも自分たちの状況を知ることになるが狼狽えてはいけない。我々精霊が、必ず守る。だから、その場から動かず、浄化される瞬間を静観していなさい」
ガルーダ様の話が終わると、程なくして黒紫色の靄が僕たちにも見えるようになった。あれらは3人に任せるとして、僕は品質管理を実行しよう。
「今からスキルを行使します。皆様は、成功することを信じてください」
「みんな、アキは精霊の私を救える程の強い力を持っているから安心して。ほら見て、私は彼女のおかげで、聖魔法だって使えるようになったのよ」
トウリの身体を伝わって、青白い聖なる力が僕を覆う。
「いきます。悪しきものよ去れ! 身体よ、健康に!」
僕は両手を合わせて、神に祈る。
品質管理、発動だ!
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