僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

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最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる

30話 出発前の確認事項

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あれからみんなと協力することで、眼鏡フレームの合金候補をいくつか製作していった。それが思った以上に捗ったこともあって、パーティーまでには、第一号を間に合わせることが可能になりそうだから驚きだ。ミスリルを主体にしたフレームなので、色合いも青白く綺麗なものになり、そこにミオンさんの持つスキル[加工]で細かな紋様を施すことで、貴族に相応しいものができるかもしれない。

第一号のフレームとデザインの予定が立ったところで、僕たちは帰ることになった。夢中で話し合っていたこともあり、お昼を迎えていたので、レンヤさんの家でお昼をご馳走になり、少し休息をとってから邸へ戻ると、昨日と同じく、トウリが僕の左肩の上に乗ってきた。

マグナリアとガルーダ様も僕たちのところへ来てくれたけど、なんだかいつもと様子が違う。

「アキト、まずいことになった」

マグナリアが言うのだから、何らかの非常事態が起きたのかな。

「何が起きたの?」

「騎士たちが、調査班の事情聴取で判明した誘拐犯たちの隠れ家を捜索した結果、シェリルに悪さを働いた侯爵家に関わる資料が見つかった。誘拐に関わっているかまでは現状不明だから、今はこちらから動けない。もしかしたら、侯爵家側は謝罪パーティーで何かを起こすかもしれない」

それを聞いたことで、僕たちに緊張が走る。

事情を聞いていたから、薄々誘拐にも関わっているんじゃないかなと思っていたけど、パーティー開催の件もあって関与していないかもと思い始めたところに、この報告だもん。

「出席するしか…ないよね?」
「返事を出した以上、出席するしかないが、こちらも細心の注意を払うつもりでいる。まず、私とガルーダ様は気配を消して、お茶会に参入し、アキトたちを護衛する。トウリは未熟だから、空からの監視を行い、異常があれば報告する手筈になってる」

3人が護衛してくれるのなら安心だけど、侯爵家の人たちって、絶対何かを企んでいるよね。わざわざ公爵家の別邸を借りてまで半年前と同じ出席者を呼び出し、料理を振る舞うことで、騒動の謝罪をするという意味はわかるんだけど、時期が問題だと思う。

「マグナリア、あっちは何をする気なのかな?」
「今の段階では、何とも言えない。だからこそ、細心の注意を払う必要がある」

マグナリアが断言するせいで、緊張感が増してくる。
本当に、ただの謝罪で済んでほしいよ。

「3人とも、私たちが護衛するとはいえ、絶対に気を緩めるな。もしかしたら、こちらに恨みを抱いて襲撃してくる可能性もある」

襲撃? その言葉を聞いて、シェリルも声をあげる。 

「ちょっと待ってください!! どうして、襲撃だなんてそんな…」
「相手側が一方的に悪いとしても、肝心の相手側が反省せず、逆恨みしてくる場合がある」
「そんな…アキト、ごめんなさい。こんな形で巻き込む事になるなんて…」
「シェリル、気にしないで」

欠席できない以上、マグナリアたちは今から対策を練っているんだ。僕も、自分の出来うる限りのことをしたい。何をしたいのかは、もう決まっている。

「アキト、あなたの言葉遣いと、眼鏡を早急に完成させる必要があるわね。私たちも頑張りましょう」

リリアナも力強い意見、これは僕も思っていたことだ。大人たちがパーティーに備えて動いているなら、僕たちも早急に対策を練っていこう。


○○○ 5日後


この5日間、魔力訓練、貴族令嬢に関わる礼儀、眼鏡製作、とかで忙しかった。僕はトウリと一緒に毎日魔力を体内で循環させて、時折魔力操作とかをマグナリアやガルーダ様から教わった。たった5日の訓練だけど、魔力を扱えるようになったのは正直嬉しい、ただ、トウリは精霊のせいか、物覚えが滅茶苦茶早く、この5日だけで、僕やリリアナ、シェリルを守るための光魔法、上位の聖魔法を幾つも覚えていったし、共通語もペラペラと話せるようになった。成長速度があまりに早いので、ガルーダ様も驚いていたよ。

礼儀に関しては、ミランダ様からギリギリの合格点を貰えたけど、肝心の眼鏡に関しては間に合わなかった。フレーム自体は完成したけど、新規に製作したレンズとの固定部位で、問題が発生した。完璧主義のレンヤさんは、昨日の夜に『必ず出発までには直す』と言っていたけど、残念。

邸の玄関に、2台の馬車が停まっている。

僕は貴族令嬢用のドレスを着ているので、女の子らしい歩き方で、馬車のもとへ進んでいく。

「ふふ、アキ、可愛い。リリアナも、そう思うでしょ?」

やっぱり、慣れない。
今の僕はアキトのトだけを取って、アキと呼ばれている。

こんな可愛いドレスを着て、長い銀髪のカツラを付けて、おまけに髪色に映える髪飾りも付けられているから、ここにお父さんやお母さんがいたら、絶対僕に気づかないと思う。

「可愛いと思うし、間違いなく男の子からも注目を浴びるわね」

それを聞いた瞬間、僕の心が急速に冷え込んでいくのを感じる。

「大丈夫、私とリリアナの3人で一緒に行動すれば、連れ去られる危険性もないから」

それって、僕じゃなくてシェリルに起こりうる可能性なんじゃあ? 気を紛らわせるために、あえて言っているのかな?

「もし逸れたら、アレク様のもとに行きますね」

僕は、教えてもらった女性用の微笑みを、アレク様に向ける。

「え!? あ…いや…まあ、その時は僕の所に来ればいいよ」

顔を真っ赤にして返答してくれたけど、大丈夫かな?

「お兄様は純真無垢な貴族令嬢が、タイプなんですね。パーティーで、見つかるといいですね」

そういえば、アレク様は今回のパーティーで、婚約者を探すという目的がある。貴族とかの場合、政略的な意味合いでの婚約というのもあるらしいけど、アーサム様とミランダ様は恋愛結婚だから、できればアレク様とシェリルにも恋愛で結婚してほしいと願っているみたい。昨日の時点でちょこちょこ聞いたけど、恋愛と言われても、いまいちピンとこないんだよ。それを伝えたら、2人に笑われた。『アキトが10歳くらいになれば、恋愛の意味もわかるようになるさ(わ)』と言ってくれた。

「な…まあ、頑張るよ」

なんか、リリアナとシェリルがコソコソと話し合っている。

「(お兄様はアキを見ちゃったせいで、絶対比較しちゃうわね)」
「(そりゃあ、あれだけ意識していれば、比較しちゃうでしょ。出席者にアキを超える逸材っているの?)」
「(いなかったと思う)」

なんの話をしているのかな? 

「緊張感が解けたようだな。みんな、馬車に乗るぞ。シェリル、リリアナ嬢、アキは、マグナリア様と共に後続の馬車に乗りなさい」
「「「はい」」」

僕たちは、アーサム様の声で気を引き締める。後続の馬車に乗ろうとした時、遠くからレンヤさんの声が聞こえたような気がした。

「お~~い、待ってくれ~~~」

視線を声のする方向へ向けると、レンヤさんが左手に眼鏡ケースを携え、全速力でこっちに走ってきている。

「やっぱり、レンヤさんの声ですね」
「もしかして、シェリルの眼鏡が完成したのかしら?」

新型眼鏡のあるなしで、シェリルの注目度がかなり変わってくる。
出発ギリギリのところで、レンヤさんが眼鏡を持ってきてくれたよ。
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