僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

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最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる

26話 まさかの再会

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思い出した!!

黒の覆面をしていたから顔を見ていないけど、この声は間違いなくあの男性だ。あの山からここまでだと、かなりの距離があるのに、どうやって1日で来れたの?

「アキト様、お知り合いで?」

「知り合い…なのかな? 僕とリリアナが誘拐された時、マグナリアを誘拐した仲間の1人が僕を殺そうとしたんですけど、この人が止めてくれました。その後、僕たちは目隠しされて、そのまま馬車に放り込まれ眠らされたんです」

僕の言葉が悪かったのか、レンヤさんとケイトさんの目つきが変化して、あの男性を睨む。この人って、レンヤさんと同じくらいの歳かな。髪が長いのか、紐で後ろに束ねている。

「アキトやリリアナお嬢様の敵ですね」
「フリオ、てめえ、子供たちに何をしやがった? 任務内容を、この場で話せ」

フリオという男性は2人の雰囲気に圧倒されたのか、後ずさる。

「待て待て、誤解だ!! 全部話すから、お前らは殺気を消せ!! あの時、俺はあの連中の中に潜り込んでいて、怪しまれないよう、必死でこの子達を守ろうと動いていたんだ。あいつらは、端っから2人を殺そうとしていた。なんとか人質という体にしてマグナリアのいる馬車内に入れたが、子供の精神がこんな過酷環境に耐えられると思わないから、薬を嗅がせ2日間眠らせたんだよ」

そういえば、そんな事を言っていたような? それに、目覚めてから程なくしてマグナリアとも出会えたし、なんとか脱出できたから、この人のおかげでもあるのか。

「その処置は正しいと思うが、その前に全ての事情を3人に話したか?」

「いや、リーダーの視線を後方から感じたせいで、言葉足らずの状態だった。あの後も、いちいち俺を怪しむせいで、事情を打ち明ける暇がなかった」

この人は、本気で僕たちを助けるつもりだったのか。僕たちは、そんな事情を知る由もなく、敵認定してたよ。

「なるほど、言葉足らずとはいえ、フリオの行動があったからこそ、アキトもリリアナ様もマグナリア様も脱出できたわけか。まあ、それなら許せるな。ケイトもいいだろ?」

「そうですね。そういった事情であれば許せます」

「あの…敵認定してしまい、ごめんなさい」

彼のおかげで助かったのだから、僕も謝っておこう。

「いいよ。この際だから、1から事情を説明しておく」

フリオさんの任務は、誘拐された精霊たちの所在を掴み、その犯人たちを捕縛すること。依頼者は、なんとリリアナの父親ジークハルト・セルザスパ様。元々、テンブルク王国側で起きていた誘拐騒動で、彼はずっと情報収集をしていて、1ヶ月の捜査でようやく関係者と思わしき冒険者チームを見つけ、彼らの仲間になり、その裏に潜む者たちとも、密かに交流を進めていたところで、マグナリアの運搬役が回ってきた。

運搬途中で休憩予定の家に複数人の誰かがいたけど、相手が盗賊の類と知ると、仲間たちは問答無用で殺してしまい、そこで僕とリリアナに遭遇した。フリオさんは僕たちを生かそうと動いたせいで、リーダーからずっと怪しまれてしまい、結局事情を打ち明けられないまま、僕たちは自力で脱出してしまった。

「自力で封印を解いて、3人で脱出した時は、俺も驚いたよ。精霊だから、俺らの健康状態も把握していたんだな。絶妙なタイミングで起きた腹痛だった」

それは僕のギフトで起きた事なんだけど、そう思い込んでいるのなら、無理に言う必要もないよね。レンヤさんもケイナさんも知っているから、奇妙な沈黙が発生している。

「なんだ、どうかしたか?」
「いや…さすが、マグナリア様だ。それで、その後は?」
「そこからが、地獄のデスマーチの始まりなんだよ」

そこから聞いた内容は、まさに地獄とも言えるものだった。奴らは突風を利用して散り散りに吹っ飛ばされたけど、フリオさんはその風を利用して、必死にリーダーの後をついていった。飛ばされた先でも腹痛に悩まされ、ポーションを飲むことで少し和らいだものの、必死に便意を我慢し、気配を殺しながらリーダーを尾行し、合流先の居場所に到着する。そこからは誰にも気取られないよう、合流地点にいた関係者全員を魔道具[カメラ]で撮っていき、その画像とここまでの状況を魔道具[メッセージボード]経由で、ジークハルト・セルザスパ辺境伯に送ると、すぐに返信がきて、内容がアーサム様にも伝えられ、騎士が精霊-霊鳥族に乗って誘拐犯たちのもとへ急行する。

フリオさんは悪人共とアジトへ到着すると、そこの地下には捕獲された精霊たちがいたので、位置情報をジークハルト様に送り、騎士たちが空と陸からアジトを囲い、悪人たちを駆逐していった。そして、捕えられている精霊たちを解放していくことに成功する。

悪人の多くが捕縛されたけど、一部は現在も逃走していて、僕たちの滞在していた村に駐屯している騎士たちは、その人たちを捕縛しようと、今も動いている。

フリオさんの役目は終わったので、従魔の飛竜に乗ってジークハルト様のもとへ帰還すると、娘のリリアナの件で真っ先に怒られたけど、行方を掴めていたので、すぐに怒りも収まった。その後、体調不良のまま、今度はアーサム様のところへ行かされ、現状を報告、そこでようやく解放されたけど、我慢していた体調不良が祟ってしまい、ずっと宿屋のトイレに籠っていた。今日の朝の時点で、事件はかなり大きく動いているけど、完全に収束していないから、ケイナさんや僕たちには、危機感を低下させないよう通達されていない。

「騎士の連中、よくお前の居場所を短時間で掴めたもんだな」

あ、それは僕も不思議に思う。

「俺の持つ魔道具は辺境伯から借りたもんで、全てに発信機が仕込まれてる」
「なるほどな、この2日はお前にとって、地獄のデスマーチだったわけだ」

そう言うと、レンヤさんは歩き出し、壁に飾られている1つの剣を掴み、それをフリオさんの方へ放り投げる。

「うお、危ねえ!? 突然なんだよ」

フリオさんは驚くも、それを軽く受け止める。

「武器の修繕は出来ないから、そいつを使え。あの剣よりやや劣るが、次の相棒が見つかるまでの間なら保つだろう。金はいらん。たった今、アキトは俺にとって、大事な客人となった。あの場で死んでいたら、俺もミオンもあのアイデアに辿り着けなかったからな」

もしかして、合金のことを言ってるの?

「こいつは…かなりの業物だな。こんな子供が、鍛治に役立つアイデアを言ったのか?」

フリオさんは剣を鞘から抜いて、刃を見ただけで判断しているけど、僕には全然わからない。

「ああ、上手くいけば、武器の幅が広がるかもしれん」
「何をやらかす気なんだよ。とりあえず、俺は寝る。剣、ありがとうよ。アキト、リリアナ嬢によろしく言っといてくれ」
「は、はい」

フリオさんは剣を持ったまま、店を出て行った。不思議な人だけど、何処か憎めない性格の持ち主だなと思った。
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