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第2章 もふもふ鳥の抱える苦悩
15話 白虎族の役割
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お風呂の湯船の中でリラックスしている僕たち、マグナリアはここで試すと言っていたけど、何をするのかな?
「幻惑[ゴブリン]」
あ、お湯で浮いている洗面器の中に、緑の皮膚に覆われた小さなゴブリン1体が出現した。
「マグナリア様、私はこんな可愛いゴブリンを見たことありません!! しかも、触れるし!!」
リリアナがミニチュアゴブリンに興味を抱いたのか、目を輝かせながらツンツンと右手人差し指で突っつく。あ、ゴブリンが動き出して、僕たちにお辞儀した!!
「これ、本当に幻惑なの?」
本物に触れた事ないから何とも言えないけど、このゴブリンはフニフニした感触がある。
「これまでの私の幻惑魔法は触れないし、存在感や威圧感などもなかった。だが、アキトと契約した影響なのか、ある称号を得たことで進化した」
「称号?」
「[矜持に目醒めし精霊]、これを取得したことで、幻惑魔法が幻惑召喚へとランクアップした」
ランクアップ?
「幻惑召喚は、これまでに出会えた者たちを幻惑として召喚できる。ただし、出会えた者たちの強さを全て引き出せるわけじゃない。あくまで、私自身が経験した強さを、幻惑として顕現できる。召喚したものを遠隔操作することも可能だし…」
「「あ!?」」
マグナリアがすっと消えた途端、小さなゴブリンの目に光が宿った。
「召喚した者の中に入り込み、直接操作することも可能。アキトとリリアナを助けるために魔法を放った時、私は幻惑で作り出した父の中にいた。突然の現象で、私も力を制御しきれず、6体の幻惑もあっさりやられてしまった」
あの時、そんな理由が隠されていたのか。だから、自分の魔法で驚いていたんだ。それにしても、マグナリアの声がゴブリンから発せられているし、動きもギクシャクしていて、なんだか面白い。
「この力を制御出来れば、私はもっと強くなれる。誇り高き白虎に近づける」
「凄く頼もしいよ。僕も強くなりたいから、魔力の扱い方を教えてね」
「勿論。アキトやリリアナという清き者と出会えたことで、私は父の言う[白虎族の矜持]と言うものを少し理解できた。主従契約とはいえ、君が私の契約者であって良かった。今後ともよろしく頼む」
僕は、小さなゴブリン状態のマグナリアと握手を交わす。
○○○ *マグナリア視点
矜持とは、何を指すのだろう?
私は里で暮らしながら、いつも[矜持]について悩んでいた。
『マグナリアは一族の役割を理解していないから、成長も遅いのだ。知識として習得しても、自分自身で矜持の意味を真に理解しなければ、力へと昇華しない』
私の父は白虎族の族長、私はいつも父や母の背中を見て育ってきたけど、兄や姉と違い、何年経過しても、魔力量が増加していくだけで、基本的なスキルしか扱えないし、魔法も幻惑だけしか扱えない弱き者のままだ。矜持に目覚める期間は個人差もあるけど、平均50年とされている。この矜持に目覚めることで、白虎族としての力が真に解放され、私たちは一人前の精霊として認められる。
【魔に対抗するため、心が清く、強力なギフトを持つ者と精霊契約し、魔を討ち払え】
これが白虎族としての役割。
力を解放させた者は、役割を全うするため里を出ていき、世界中を駆け巡り、自らに相応しい者を探し出して、崇高な精霊契約を交わす。私はこの役割についてイマイチピンとこないままま、100年を里で過ごした。その間、仲間たちは次々と矜持に目覚め、個々の秘めたる力を解放させてから、魔に対抗できる主人を見つけ出すため、里を出ていった。
白虎族には、ある決まりがある。
【生まれてから100年目の者は、人で言うところの成人(15歳)に値する。この年齢になっても矜持に目覚めない者は、里を出て行き、世界を渡り歩きながら経験を重ねなさい。完全に目覚めるまでは、里への帰還を一切禁ず】
これは精霊王様から言われた言葉、そのため誰にも逆らうことはできない。
『マグナリアも、今年で100歳となった。私は里の状況を定期的に嘘偽りなく、精霊王様へお伝えする義務がある。君の事を伝えた結果、【白虎族の族長よ、我の決めた法に従い、娘を外の世界へ旅立たせ、経験を積ませなさい】と言われてしまったよ。矜持に目覚めるまで、この地に戻れない。精霊王様の命令は絶対だ。マグナリア、長として命令する。長い旅の中で矜持を理解し、役割を果たすための旅に出なさい』
族長である父上は、悲しい顔で私に命令を下した。私は歯痒い気持ちになり、父上や仲間たちに迷惑をかけてすまないと謝罪を入れて、里を出た。
あれから2年、私は精霊の気配を隠蔽し、小型化した状態で様々な場所を渡り歩き、多くの種族たちと出会い話し合ったりもしたが、矜持に目覚めることはなかった。旅を続ける程に、惨めな気持ちが増していき、いつしか生きる気力も失っていく。
そんな生活を続けていた事で、周囲への警戒を疎かにしてしまい、私は悪人に誘拐されてしまった。自分が窮地に陥った時になって初めて死にたくないと思い、封印に影響されない波長-感応波を使って、私の波長に合う人物を必死に捜索する。
しかし、私の声を認識してくれるものは誰もいなかった。諦めかけたその時、私を誘拐した連中に動きがあり、アキトとリリアナが私のいる馬車内へと連れ込まれた。どうやら2人も別口で誘拐されていたが、偶然こちらと接触してしまい、相手側は皆殺しにされたようだ。
子供は純粋だから、私の声を認識してくれるかもと思い、感応波を飛ばしたら、アキトだけが私の言葉を全て認識してくれた。そして、助かる可能性を提案すると、彼は自分のことよりも、私のことを心配してくれた。
私にとって、これは意外だった。
アキトは記憶の一部を引き継いだ転生者で、心も清い。魔に対抗できる存在かはともかくとして、私は素直に護りたいと思った。それが影響したのか、ただの威嚇として放った幻惑魔法に、変化が起きた。父上をイメージして放った幻惑、私はいつの間にかその中に入っていて、誘拐犯共と戦っていた。戦闘中、私は自分のステータスの変化に気づいた。いつの間にか矜持に目覚めていて、その理解度は21%、これが100%に到達した時、私の真の力が解放される。
あの時に感じた守護の想い、それが矜持の目覚めに繋がったのだ。
この感覚を忘れてはいけない。
「幻惑[ゴブリン]」
あ、お湯で浮いている洗面器の中に、緑の皮膚に覆われた小さなゴブリン1体が出現した。
「マグナリア様、私はこんな可愛いゴブリンを見たことありません!! しかも、触れるし!!」
リリアナがミニチュアゴブリンに興味を抱いたのか、目を輝かせながらツンツンと右手人差し指で突っつく。あ、ゴブリンが動き出して、僕たちにお辞儀した!!
「これ、本当に幻惑なの?」
本物に触れた事ないから何とも言えないけど、このゴブリンはフニフニした感触がある。
「これまでの私の幻惑魔法は触れないし、存在感や威圧感などもなかった。だが、アキトと契約した影響なのか、ある称号を得たことで進化した」
「称号?」
「[矜持に目醒めし精霊]、これを取得したことで、幻惑魔法が幻惑召喚へとランクアップした」
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「幻惑召喚は、これまでに出会えた者たちを幻惑として召喚できる。ただし、出会えた者たちの強さを全て引き出せるわけじゃない。あくまで、私自身が経験した強さを、幻惑として顕現できる。召喚したものを遠隔操作することも可能だし…」
「「あ!?」」
マグナリアがすっと消えた途端、小さなゴブリンの目に光が宿った。
「召喚した者の中に入り込み、直接操作することも可能。アキトとリリアナを助けるために魔法を放った時、私は幻惑で作り出した父の中にいた。突然の現象で、私も力を制御しきれず、6体の幻惑もあっさりやられてしまった」
あの時、そんな理由が隠されていたのか。だから、自分の魔法で驚いていたんだ。それにしても、マグナリアの声がゴブリンから発せられているし、動きもギクシャクしていて、なんだか面白い。
「この力を制御出来れば、私はもっと強くなれる。誇り高き白虎に近づける」
「凄く頼もしいよ。僕も強くなりたいから、魔力の扱い方を教えてね」
「勿論。アキトやリリアナという清き者と出会えたことで、私は父の言う[白虎族の矜持]と言うものを少し理解できた。主従契約とはいえ、君が私の契約者であって良かった。今後ともよろしく頼む」
僕は、小さなゴブリン状態のマグナリアと握手を交わす。
○○○ *マグナリア視点
矜持とは、何を指すのだろう?
私は里で暮らしながら、いつも[矜持]について悩んでいた。
『マグナリアは一族の役割を理解していないから、成長も遅いのだ。知識として習得しても、自分自身で矜持の意味を真に理解しなければ、力へと昇華しない』
私の父は白虎族の族長、私はいつも父や母の背中を見て育ってきたけど、兄や姉と違い、何年経過しても、魔力量が増加していくだけで、基本的なスキルしか扱えないし、魔法も幻惑だけしか扱えない弱き者のままだ。矜持に目覚める期間は個人差もあるけど、平均50年とされている。この矜持に目覚めることで、白虎族としての力が真に解放され、私たちは一人前の精霊として認められる。
【魔に対抗するため、心が清く、強力なギフトを持つ者と精霊契約し、魔を討ち払え】
これが白虎族としての役割。
力を解放させた者は、役割を全うするため里を出ていき、世界中を駆け巡り、自らに相応しい者を探し出して、崇高な精霊契約を交わす。私はこの役割についてイマイチピンとこないままま、100年を里で過ごした。その間、仲間たちは次々と矜持に目覚め、個々の秘めたる力を解放させてから、魔に対抗できる主人を見つけ出すため、里を出ていった。
白虎族には、ある決まりがある。
【生まれてから100年目の者は、人で言うところの成人(15歳)に値する。この年齢になっても矜持に目覚めない者は、里を出て行き、世界を渡り歩きながら経験を重ねなさい。完全に目覚めるまでは、里への帰還を一切禁ず】
これは精霊王様から言われた言葉、そのため誰にも逆らうことはできない。
『マグナリアも、今年で100歳となった。私は里の状況を定期的に嘘偽りなく、精霊王様へお伝えする義務がある。君の事を伝えた結果、【白虎族の族長よ、我の決めた法に従い、娘を外の世界へ旅立たせ、経験を積ませなさい】と言われてしまったよ。矜持に目覚めるまで、この地に戻れない。精霊王様の命令は絶対だ。マグナリア、長として命令する。長い旅の中で矜持を理解し、役割を果たすための旅に出なさい』
族長である父上は、悲しい顔で私に命令を下した。私は歯痒い気持ちになり、父上や仲間たちに迷惑をかけてすまないと謝罪を入れて、里を出た。
あれから2年、私は精霊の気配を隠蔽し、小型化した状態で様々な場所を渡り歩き、多くの種族たちと出会い話し合ったりもしたが、矜持に目覚めることはなかった。旅を続ける程に、惨めな気持ちが増していき、いつしか生きる気力も失っていく。
そんな生活を続けていた事で、周囲への警戒を疎かにしてしまい、私は悪人に誘拐されてしまった。自分が窮地に陥った時になって初めて死にたくないと思い、封印に影響されない波長-感応波を使って、私の波長に合う人物を必死に捜索する。
しかし、私の声を認識してくれるものは誰もいなかった。諦めかけたその時、私を誘拐した連中に動きがあり、アキトとリリアナが私のいる馬車内へと連れ込まれた。どうやら2人も別口で誘拐されていたが、偶然こちらと接触してしまい、相手側は皆殺しにされたようだ。
子供は純粋だから、私の声を認識してくれるかもと思い、感応波を飛ばしたら、アキトだけが私の言葉を全て認識してくれた。そして、助かる可能性を提案すると、彼は自分のことよりも、私のことを心配してくれた。
私にとって、これは意外だった。
アキトは記憶の一部を引き継いだ転生者で、心も清い。魔に対抗できる存在かはともかくとして、私は素直に護りたいと思った。それが影響したのか、ただの威嚇として放った幻惑魔法に、変化が起きた。父上をイメージして放った幻惑、私はいつの間にかその中に入っていて、誘拐犯共と戦っていた。戦闘中、私は自分のステータスの変化に気づいた。いつの間にか矜持に目覚めていて、その理解度は21%、これが100%に到達した時、私の真の力が解放される。
あの時に感じた守護の想い、それが矜持の目覚めに繋がったのだ。
この感覚を忘れてはいけない。
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