僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

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第1章 誘拐騒動ともふもふとの出会い

9話 ギフトの覚醒

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《白虎族マグナリアによって、アキトのギフト[品質管理]が開放されました》
《規律違反により、白虎族マグナリアとアキトとの間に、主従契約が結ばれました》
《派生スキル[付与術][鑑別]を取得しました》

目隠しされている状態なのに、変な文章が浮かび上がってきたよ。
僕のギフトは、[品質管理]だって。

『品質管理? 聞いたことのない名称。ステータスと心の中で念じてみて。目を閉じていても見える仕組みになっているから』

ステータス?
え、僕の目の前に、変な画面が出現した!!

『ステータスは、自分の現在の強さを示すもの。その中に品質管理という項目があるから、そこを詳しく見たいと強く念じて』

画面を上から見ていくと、ギフト[品質管理]というものがあった。
僕は言われた通りに、強く念じてみる。

ギフト[品質管理]
あらゆる[もの]の品質を見極める事ができ、それを管理することが可能となる。品質を劣化させることもできれば、向上させることも可能だが、この力を自由自在に扱えるかどうかは、所持者の技量次第。

どんな効果があるのか、詳しく記載されていないよ。

『所持者は経験を重ね、自力でギフトの真価を引き出していく。これは、種族共通』

そういうものなんだ。この名称は夢の中にも出てきたけど、この状況を打破したいのなら……[品質劣化]、ううん[品質破壊]かな。牢屋を覆う棒自体の材質を、朽ち果てるよう劣化させ、最終的に破壊すればいい。

『良い考え。ただ、どんなギフトであっても、魔力を必ず消費する。現在の魔力量はいくつ?』

魔力量? ええと……43だよ。

『5歳児で、そのレベルは多い方。魔力量が0になると、魔力枯渇を起こし気を失うから注意して』

43だけで、この牢屋の品質を破壊できるかな?

『43だと、すぐに使い果たす。私とアキトは主従契約で結ばれ、魂間で繋がっているから、私の魔力を使えばいい。私は聖獣の中でも、魔力量だけは神獣に匹敵するから、魔力消費に関しては気にしないで。早速だけど、君たちの目隠しと縛っている紐を噛み切るから、牢屋に顔をくっつけて』

了解。

僕はリリアナに伝えると、彼女も這いずりながら牢屋へ来て、僕と共に顔を牢屋に近づけると、マグナリアが前足で目隠しを剥ぎ取り、縄も牙で噛み切ってくれた。室内のおかげで、僕たちはすんなりと目を開けることに成功すると、目の前に1体のホワイトタイガーの子供がいた。

「可愛いもふもふがいる」
「ほんと…この子がマグナリア様?」

あ、もふもふが頷いてくれた。

『アキト、この牢屋の品質を破壊したいという強いイメージを持って、ギフトを操作すること。操作方法は自由、君のやりやすいようにやればいい』

僕が操作方法を自由に設定できるってことか。マグナリアが魔力を担当してくれるけど、枯渇させたら元も子もない。必要最小限の魔力消費でギフトを発動させたいから、僕の両手で握った箇所だけを破壊すればいいかな。

早速、僕は1本の棒の上端と下端を両手で握る。品質を破壊するといっても、どうやって破壊すればいいかの記載がないから、ここからがイメージだ。

『正解。品質破壊に対するイメージを出来る限り具体的にして。それが鮮明であればある程、相乗効果で速度も向上するから』

品質破壊で1番思い浮かぶのは、食品の劣化だけど、それだと弱い。牢屋自体が金属なのだから、ここは風化が妥当かな。金属であっても、何の手入れもなく放置し続けると錆びて朽ちていくもん。

『いいね、そのイメージはわかりやすい』

このイメージは、マグナリアにも伝わるんだ。

『精霊契約、感応波の一致などの特殊な条件下において、精霊は互いの魔力やイメージを人と共有できる。アキト、私の魔力を感じる?』

身体を探ると、優しく温かいものを感じる。それも2種類、これが魔力?

『そう。今、契約によって繋がったパスに、私の魔力をアキトに流し、君の魔力と一緒に循環させることで、ギフトの効果速度を向上させている。私が魔力を担当するから、君は品質破壊をイメージすることに集中すればいい』

役割分担、その方が効率が良いよね。

ずっと握り続けていると、突然牢屋の棒が何の手応えもなく外れる。握った箇所を確認すると、僕のイメージした通りの風化が起きていて、金属屑が手から崩れ落ちていく。

『お見事。アキトのイメージが鮮明だったおかげで、思った以上に朽ちる時間が速かった。あと1本、お願い。2本分で生じた隙間があれば、私は出られる』

わかった。

僕が牢屋の2本目の棒に取り掛かろうと手を移動させると、リリアナは朽ち果てた棒の先端をじっと見ていた。

「こんな簡単に壊れるなんて…これがアキトのギフトの力」

リリアナも、僕の力に興味を示してくれている。僕自身、自分の力にビックリだ。この調子で2本目にも触れてイメージしていくと、さっきよりも速く壊れ、マグナリアが牢屋を抜け出すことに成功する。彼女はずっと窮屈だったのか、少し背伸びする。

『あとはこの首輪を壊せば、私の力が完全復活する』

2重で封印されていると言ってたね。僕は両手を首輪に触れ、ギフトを発動させると、3回目の影響で慣れてきたのか、品質が急速に劣化していくのを手触りで感知できた。

そして…5分と経たないうちに、首輪が外れる。

「やったわ!! マグナリア様、ここからどうするのですか?」

リリアナも期待の満ちた目で、マグナリアを見る。落ちこぼれで戦闘もダメダメ、幻惑魔法しか使えないと言ってたから、僕もここからの行動が気になる。

「幻惑魔法で、周囲にいる者たちをこの馬車から一時的に引き離す。悪党共の意識が幻惑に向いている時に、私たちはこの区域から逃げよう」

あ、普通に小声で言ってくれた。
逃げる…か。
気掛かりなのは、僕を助けてくれたあの男の人の存在だ。

「僕たちを馬車に入れた男性、あの人はやっぱり敵なのかな?」
「私たちを奴隷商人に売り飛ばす話をしているのだから、敵に決まってるわ」

リリアナからは敵認定されているけど、あの人の存在が妙に気になる。僕たちを生かす方向で動いていれば、そういった話になっても不思議じゃない。でも、味方という保証もない。

「あの男は他の奴らと違い、別の目的があるようだけど、無視して構わない」
「いいの?」
「気遣う必要なし。正体不明の男の都合に、いちいち合わせてなどいられない。こちらは、命がかかっているのだから」

男の人の言葉を信じて待つという選択も考えていたけど、こっちは命がかかっている。それに、僕たちが逃げれば、あの人だって自分の任務に集中できるはずだ。今は、3人で逃げきることだけを考えよう。

「そうだね。それで、どう動くの?」
「今から魔法で馬たちを急停止させるから、牢屋にでも捕まっていて」
「わかりました」
「わかった」

マグナリアの身体が、仄かに輝き出す。
その瞬間、馬が急停止し、かなりの衝撃が僕とリリアナを襲う。
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