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第1章 誘拐騒動ともふもふとの出会い

1話 前世の覚醒(一部)

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何て言えば良いのかな?
僕が僕と認識できたのは、5歳の誕生日を迎えた翌朝だ。

5歳の誕生日の夕方、平民のお父さんが仕事から帰ってくると、ニコニコ顔で僕たちにただいまと言い、お母さんのほっぺにキスしてた。その後、2人が僕に『5歳の誕生日おめでとう』と言って、小箱をくれた。中身を確認すると、腕に付けるアクセサリーで、お母さんがミサンガと教えてくれた。水色の綺麗なミサンガで、『御守りだから、肌身離さず付けておくんだ』とお父さんが言うから、1週間たった今でも身につけてる。

あの時、ご馳走がテーブルにいっぱい並べられ、それらを3人で全部食べて、いっぱいお喋りしていると眠くなってきたから、僕は欠伸をした。すると、お父さんに抱っこされて、布団の中に入れられ、頭を撫でられて気持ち良かったせいか、そのまま眠ったんだ。

その時、僕はおかしな夢を見た。

目線が今より少し高い位置にあって、僕はランドセルっていうのを担ぎ、小学校という場所へ行って6年生の教室に入る。そこでは、みんなが笑顔で可愛い魔物の描かれたカードを見せ合いっこしたり、今度は誰の家に行って遊ぼうか、修学旅行の班決めで誰と組もうか、色々と楽しく話し合い、そこは皆の笑顔で満ち溢れていて、僕もその一員になっている。そこから、舞台が点々と移り変わり、楽しい毎日を過ごしていき、修学旅行に行く前日となった。

学校の帰り道、僕が明日の事を考えながら歩いていると、後方が騒がしくなってきたので、何かあったのかなと思い振り向くと、四角い大きなトラックが乱暴な運転で右往左往しながら、僕に迫ってきていた。僕も逃げようと思ったけど、慌てていたせいで転んでしまい、体勢を整えようと立ち上がった頃には、巨大トラックが目前に迫っていて、そのまま避ける暇もなくぶつかった。

そこで、目が覚めた。
最後が物凄く怖かったから、今でも鮮明に覚えてる。
夢で見た光景、その時に交わした会話、そこで得ていた知識とかも、僕の頭の中に入ってる。あの夢が何だったのかわからないけど、これまで不鮮明だった僕の記憶が一気に明瞭になって、お父さんやお母さんの話している会話も、何故か殆ど理解出来るようになったし、難しい言葉も言えるようになった。

不思議なのは、夢の中で使った言葉と、今使っている言葉が全然違っていて、僕がどちらも理解していること。なんとなくだけど、これを両親に言ったら、何かが壊れるような予感を感じたので、僕は夢のことを誰にも言ってない。

僕たち家族は平民で、日々の生活を守ってくれる稼ぎ頭のお父さん、家庭を守ってくれるお母さん、そして僕-アキトの3人構成、今はテンブルク王国セルザスパ辺境伯領にある領都ミントスで暮らしている。

この街の街並みは中世のヨーロッパに似ていて、隣国のソマルトリア王国と険しい山1つだけで接していることから、交易も盛んに行われていて、人の出入りも激しい。行き交う人々は皆笑顔で、僕はこの街が大好きだ。それに、夢の中で見た世界と違い、神様からの贈り物[ギフト]、それから派生されて出てくる[スキル]、[魔法]なんかもあるから、僕も早くそれらを覚えたい。

あの夢を見て以降、僕はこんな感じで、この街のことをすらすら言えるようになった。何故か夢の中に出てきた言葉も、自然に使えているから驚きなんだよね。ヨーロッパが何かわからないのに、不思議だよ。

あの夢を見てから1週間、教えてもらったことをすぐに覚えられるようになったし、手先も器用になって、モジモジせず堂々と人とお話し出来るようになった。お父さんもお母さんも喜んでくれて、ご褒美としてお父さんの職場見学に行けるよう手配してくれた。

そして、今日がその職場見学の日だ。
お父さんの職業は発掘士で、有名な学者。

国内の色んな遺跡に行って、発掘調査をしている。これまでに、お父さん自身が発掘した物の中で、国宝に指定された物だってある。僕の自慢のお父さんなんだけど、遺跡があれば何処にでも行っちゃうから、必然的に僕もお母さんやお父さんと一緒に国内をあちこち移動している。と言っても、僕自身は小さかったから記憶にないけどね。

この街での滞在期間は6か月と言われていて、今日で2週間と少し経過している。友達も何人か作れたけど、まだ日も浅いから深い仲になれていないのが現状かな。お父さんの職場は街中で発見された遺跡で、そこでの発掘作業がお仕事なんだ。街の中で安全ということもあって、今日は僕以外の子供も来るみたいだから、いっぱいお友達を作ろう!!
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