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本編
27話 突然の宣告
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私にとって、身近な人が目の前で死んだ。
私の行動が原因で、リットさんがゴルドさんに殺された。
イザークさんは私を責めませんが、私が違和感を追求しなければ、死んだのはゴルドさん1人だけのはずだった。私の目の前には、彼女とゴルドさんの遺体があり、周囲には大勢の人々の苦しむ声が聞こえてくる。
リットさん、私はどう動けばいいのでしょう。動くことで、また誰かを死なせてしまうのかと思うと、身体が震えてしまい、全然動けないのです。
「リコッタ、今は苦しんでいる招待客たちを毒から解放させることだけ考えろ。アンチポイズンポーションを飲ませた後に、ポーションを飲ませることで、皆回復するはずだ。今は、身体を動かすことだけを考えるんだ‼︎ 大丈夫、もう誰も死なねえよ」
イザークさんにとって、リットさんは大切な友人です。辛いはずなのに、彼は身体を震わせながら立ち上がります。そうです、私の周囲には大勢の人々が腹痛で苦しんでいるのです。今、行動を起こさないと、皆がその分長く苦しみます。
私がやるべき事は一つです。
余計な事は考えるな‼︎
私は、怯える心を奮起させて立ち上がる。
「わかりました。皆を救いましょう‼︎」
そこからは無我夢中で、私は苦しむ人々にアンチポイズンポーションとポーションを飲ませていった。リットさんの言った通り、皆が軽度の腹痛だけのようで、2つの薬を飲ませたことで、1人また1人と完治していき、私は救った人々から感謝されます。メイドや料理人の方々、回復魔法を所持する招待客たちも協力してくれたことで、騒動そのものは30分ほどで終息しましたが、場の雰囲気は極めて悪いです。
リットさんとゴルドさんの近くにいた人たちが2人のやりとりを聞いていたので、その人たちがその時の状況を周囲に話してしまったのです。だからこそ、様々な意見が問い交います。
リットさんを擁護する者もいますが、大半は家族の復讐のために我々を利用するなと激怒しています。中には、商会ギルドの邸で起きた不祥事をどうやって揉み消すか頭を悩ます者もいます。一つ言えることは、リットさんの死に対し悲しんでいる人々は極小数だけのようです。
両親がゴルドによって、無残な死を遂げてしまったのですよ?
その仇を討つことが悪いのですか?
皆を巻き込みましたが、彼女は死ぬ間際に謝罪したじゃないですか、それだけでは許してくれないのですか? リットさんを批判する人の中には、彼女の遺体を足蹴にする人もいます。私はそれを見て激しい怒りを覚えましたが、彼女の死自体が私の行動で起きたもの、私が動けば、場がかなり混乱すると思うと、怖くて行動に移せません。
どう動けば、正解なのですか?
どうすれば、皆元の優しい人間に戻ってくれるのですか?
「リコッタ、お前はもう宿に帰れ」
「え!?」
隣にいるイザークさんが唐突に言ったものだから、私は彼を見ると、真剣な顔で周囲を見渡しています。
「この騒動で、祝賀パーティーも中止だ。リットとゴルドの遺体は、このまま検死にまわされる。特に、ゴルドに関しては毒物を特定するため、この場で解剖されるかもしれない。子供に、そんなものは見せられない。俺が周囲に言っておくから、お前は宿に帰るんだ。明日の朝、冒険者ギルドへ来ればいい」
私は、帰っていいのでしょうか? 事件が起きてしまった以上、私やイザークさんにも何らかの罰が与えられると思います。特に、私の師匠が犯人なのですから、絶対事情聴取されると思います。
「いいのですか? 事情聴取は?」
「今日に関しては、俺が引き受ける。明日、リコッタも事情聴取されるから、今日のところは身も心も休めておくんだ。事件そのものは解決しているから問題ないさ」
リットさんが犯人で死んでいますし、ゴルドさんだって死んでいますから、もう何も起こりません。
「わかりました。心苦しいのですが、後のことはお願いします」
「おお、任せとけ‼︎」
イザークさんのお言葉に甘えよう。
今日は…もう疲れました。
目の前で起きた尊敬する女性の凄惨な死、今世の私にとっては初めての経験です。
犬の時もそうでしたが、人になっても、心が痛みます。
リットさん、あなたを救えなくてごめんなさい。
……翌朝
『リコッタは2階に入って、すぐ左に見える部屋にいるんだな?』
『そうですけど、疲れた顔で帰ってきましたから、まだ寝ていると思いますよ』
『急用が発生した』
う~ん、なんでしょう?
男性の声が聞こえたような?
この声の主は、イザークさんですか?
宿の女将さんと、何を話し合っているのでしょう?
目覚まし時計の指し示す時刻は午前7時12分、悪夢を見たような気もしますが覚えていません。昨日起きた出来事が、全て夢であったならと何度も思いましたから、おかしな夢を見たのかもしれません。私は怠い身体を我慢して起き上がり、ベッドから出ると同時に、ドアが突然開きました。
「イザークさん?」
「リコッタ、今すぐこの街…いやこの国から出て行くんだ」
「は?」
突然、何を言い出すのでしょう?
国を出て行けって、私はそこまでの罪を犯した覚えがありません。
「あいつら……恩を仇で返しやがった!!」
どういうことでしょう?
私が混乱して何も言わないため、イザークさんが話を進めてくれました。
「昨日起きたパーティー内での騒動、情報自体はあの会場の外に漏れていないが、時間の問題だ」
まだ、街に広がっていないのですね。あれだけの人数がいたのですから、情報自体も漏れて、かなりの騒ぎになっていると思っていました。
「いいか、よく聞け。奴らは目先の欲に溺れ、全ての責任をリコッタとカトレアという女の子に押しつけたんだ。お前たちが招待客に毒を盛り、ゴルドとリットを殺したことになったんだよ‼︎」
「え!? あれだけ大勢の目撃者がいるのに?」
ちょっと待ってください‼︎
どこがどう拗れて、私と全く無関係のカトレアが犯人になるんですか!?
私の行動が原因で、リットさんがゴルドさんに殺された。
イザークさんは私を責めませんが、私が違和感を追求しなければ、死んだのはゴルドさん1人だけのはずだった。私の目の前には、彼女とゴルドさんの遺体があり、周囲には大勢の人々の苦しむ声が聞こえてくる。
リットさん、私はどう動けばいいのでしょう。動くことで、また誰かを死なせてしまうのかと思うと、身体が震えてしまい、全然動けないのです。
「リコッタ、今は苦しんでいる招待客たちを毒から解放させることだけ考えろ。アンチポイズンポーションを飲ませた後に、ポーションを飲ませることで、皆回復するはずだ。今は、身体を動かすことだけを考えるんだ‼︎ 大丈夫、もう誰も死なねえよ」
イザークさんにとって、リットさんは大切な友人です。辛いはずなのに、彼は身体を震わせながら立ち上がります。そうです、私の周囲には大勢の人々が腹痛で苦しんでいるのです。今、行動を起こさないと、皆がその分長く苦しみます。
私がやるべき事は一つです。
余計な事は考えるな‼︎
私は、怯える心を奮起させて立ち上がる。
「わかりました。皆を救いましょう‼︎」
そこからは無我夢中で、私は苦しむ人々にアンチポイズンポーションとポーションを飲ませていった。リットさんの言った通り、皆が軽度の腹痛だけのようで、2つの薬を飲ませたことで、1人また1人と完治していき、私は救った人々から感謝されます。メイドや料理人の方々、回復魔法を所持する招待客たちも協力してくれたことで、騒動そのものは30分ほどで終息しましたが、場の雰囲気は極めて悪いです。
リットさんとゴルドさんの近くにいた人たちが2人のやりとりを聞いていたので、その人たちがその時の状況を周囲に話してしまったのです。だからこそ、様々な意見が問い交います。
リットさんを擁護する者もいますが、大半は家族の復讐のために我々を利用するなと激怒しています。中には、商会ギルドの邸で起きた不祥事をどうやって揉み消すか頭を悩ます者もいます。一つ言えることは、リットさんの死に対し悲しんでいる人々は極小数だけのようです。
両親がゴルドによって、無残な死を遂げてしまったのですよ?
その仇を討つことが悪いのですか?
皆を巻き込みましたが、彼女は死ぬ間際に謝罪したじゃないですか、それだけでは許してくれないのですか? リットさんを批判する人の中には、彼女の遺体を足蹴にする人もいます。私はそれを見て激しい怒りを覚えましたが、彼女の死自体が私の行動で起きたもの、私が動けば、場がかなり混乱すると思うと、怖くて行動に移せません。
どう動けば、正解なのですか?
どうすれば、皆元の優しい人間に戻ってくれるのですか?
「リコッタ、お前はもう宿に帰れ」
「え!?」
隣にいるイザークさんが唐突に言ったものだから、私は彼を見ると、真剣な顔で周囲を見渡しています。
「この騒動で、祝賀パーティーも中止だ。リットとゴルドの遺体は、このまま検死にまわされる。特に、ゴルドに関しては毒物を特定するため、この場で解剖されるかもしれない。子供に、そんなものは見せられない。俺が周囲に言っておくから、お前は宿に帰るんだ。明日の朝、冒険者ギルドへ来ればいい」
私は、帰っていいのでしょうか? 事件が起きてしまった以上、私やイザークさんにも何らかの罰が与えられると思います。特に、私の師匠が犯人なのですから、絶対事情聴取されると思います。
「いいのですか? 事情聴取は?」
「今日に関しては、俺が引き受ける。明日、リコッタも事情聴取されるから、今日のところは身も心も休めておくんだ。事件そのものは解決しているから問題ないさ」
リットさんが犯人で死んでいますし、ゴルドさんだって死んでいますから、もう何も起こりません。
「わかりました。心苦しいのですが、後のことはお願いします」
「おお、任せとけ‼︎」
イザークさんのお言葉に甘えよう。
今日は…もう疲れました。
目の前で起きた尊敬する女性の凄惨な死、今世の私にとっては初めての経験です。
犬の時もそうでしたが、人になっても、心が痛みます。
リットさん、あなたを救えなくてごめんなさい。
……翌朝
『リコッタは2階に入って、すぐ左に見える部屋にいるんだな?』
『そうですけど、疲れた顔で帰ってきましたから、まだ寝ていると思いますよ』
『急用が発生した』
う~ん、なんでしょう?
男性の声が聞こえたような?
この声の主は、イザークさんですか?
宿の女将さんと、何を話し合っているのでしょう?
目覚まし時計の指し示す時刻は午前7時12分、悪夢を見たような気もしますが覚えていません。昨日起きた出来事が、全て夢であったならと何度も思いましたから、おかしな夢を見たのかもしれません。私は怠い身体を我慢して起き上がり、ベッドから出ると同時に、ドアが突然開きました。
「イザークさん?」
「リコッタ、今すぐこの街…いやこの国から出て行くんだ」
「は?」
突然、何を言い出すのでしょう?
国を出て行けって、私はそこまでの罪を犯した覚えがありません。
「あいつら……恩を仇で返しやがった!!」
どういうことでしょう?
私が混乱して何も言わないため、イザークさんが話を進めてくれました。
「昨日起きたパーティー内での騒動、情報自体はあの会場の外に漏れていないが、時間の問題だ」
まだ、街に広がっていないのですね。あれだけの人数がいたのですから、情報自体も漏れて、かなりの騒ぎになっていると思っていました。
「いいか、よく聞け。奴らは目先の欲に溺れ、全ての責任をリコッタとカトレアという女の子に押しつけたんだ。お前たちが招待客に毒を盛り、ゴルドとリットを殺したことになったんだよ‼︎」
「え!? あれだけ大勢の目撃者がいるのに?」
ちょっと待ってください‼︎
どこがどう拗れて、私と全く無関係のカトレアが犯人になるんですか!?
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