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本編
24話 毒物について学びましょう
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祝賀祭の開催は7日後、それまで私はリットさんと共に、冒険者ギルド内にある8畳ほどの作業室で様々な毒物や毒草について学んでいくことになりました。私は毒について何も知らないので、テーブルに置かれている毒草の匂いを興味本位で嗅いだら、リットさんに怒られてしまいました。なんでも、匂いを嗅ぐだけで人の味覚にダメージを与える毒物もあるらしく、先程嗅いでしまった毒草が、それに値するそうです。ただ、それはあくまで地面に生えている状態でのことを指します。森に自生しているこの毒草の匂いを嗅いでしまうと、葉から放出されている物質を吸い込んでしまい、量次第で味覚や嗅覚を完全に失う可能性があるようです。それを聞き、私は血の気が引きました。
「毒草、怖いです」
「あなたには、スキル《身体硬健》がある。どんな毒も効かないから安心だけど、あなたが成人(15歳)する頃には、私と同じ指導する立場になるわ。後輩たちに教えていくにあたって、今の行為は絶対に禁止ね」
「はいです」
そうでした、私は大丈夫でも、私以外の人たちは毒耐性スキルを持っていない人だっていますから、今の行為は厳禁です。今まで自分のことばかり考えていましたが、今後指導していく立場になったら、相手のことを第一に考えないといけませんね。
「リットさんのような鑑定持ちであれば、匂いを嗅がなくとも、どんな毒でも見抜けるんですよね。それって、凄いことです」
「ありがとう。でもね、ある程度のスキルと薬物の知識を持った人であれば、スキル《鑑定》から逃れられる術を知っているから、こういった祝賀祭でもその方法を使えば、楽に標的を毒殺できるのよ」
「そんな方法があるのですか!?」
世の中には、鑑定を妨害する方法が2つあるようです。1つ目がスキル《鑑定妨害》、このスキルを持っている人は鑑定を100%妨害できます。ただし、効果はスキル所持者限定のようです。2つ目が《アイテム》、ダンジョンなどで入手できる様々な物品の中には、使い方次第で、指定した人や物の鑑定を妨害できるそうです。
「でも、鑑定できない物があれば、それ自体が怪しいということになりますから、意味がないのでは?」
「それがそうでもないのよ。狡賢い連中は、一般的に知られていない穴を突いてくるの。例えば、料理に含まれている毒物だけを鑑定妨害すれば、その料理は鑑定できるから安心だと思い込んでしまうの」
あ、なるほど。
予め、アイテムで毒物に鑑定妨害を仕掛ければ、今言った行為が実現可能になりますから、スキル《鑑定》で得られた結果も、絶対安心とは言い切れません。
だから、私も呼ばれたのですね。
「私のようなスキル《鑑定》を持つ人たちにとって信用が第一、一度でも失敗すれば、その人はこの世界で這い上がれない。今言った手口を防ぐには、レアスキル《看破》が必要になるの。これがあれば、鑑定妨害や偽装された品々を見抜くことができるのよ」
「そんなスキルがあるんですか!? リットさんは、持っているのですか?」
「残念ながら持ち合わせていないわ。スキル《看破》は、《鑑定》よりもレアだから、持っている人は少ないし、持っていたとしても利用されたくないから明かさない人も多いのよ。外で無断で鑑定を使って、スキル持ちを探す人もいるようだけど、それがバレたら懲罰行為になるわ」
スキル《鑑定》を持っている人も、色々と苦労するのですね。そうなると、私の役目も結構重要になります。自分の出来うる範囲で、警備をこなしていきましょう。
「私は毒の匂いを覚えて、匂いで食器類や食材に含まれる毒物を感知しないといけないのですね」
食器類に塗られた毒物の探知なら私もできると思いますが、料理や飲み物の中に入れたものに関しては、他の匂いも混じってきますから、かなり厳しいかもしれません。
「ええ、この7日間、みっちり鍛えてあげるわ。薬草などの選別業務も入れてあるから、最低限の給料もきちんと支払うから安心してね」
「よろしくお願いします、リット先生‼︎」
それを聞いて安心しました。
お金はあるだけあった方が良いです。
どこで、大金が必要になってくるかわかりませんから。
こうして、私はリットさんの指導のもと、訓練が始まりました。
訓練中に用意された毒物は全部で22種類、うち15種類の匂いを覚えましたが、残り7種類は無臭だったので、残念ながら判別不可でした。ただ、その毒を持つ植物自体に独特な匂いがしたので、毒草による判別は出来ました。そのおかげで、ギルド内で運ばれた薬草から毒草を分別させることには成功しています。
そうして厳しい訓練を受けてから5日後、私とリットさんを含めたスキル持ち6人は、祝賀祭で用意される食材と食器類の品質を管理すべく、開催場所となる商業ギルドの保有する邸の地下にある倉庫へ向かいました。部屋へ入ると、そこはひんやりしており、温度も湿度も完璧に制御されている空間でした。倉庫内には食材保管庫と食器類保管庫に区分されていて、今からこれらの点検を行うことを考えると、少し億劫な気分になってしまいます。
今回、私たちの行うべき品質管理には、2点あります。
《使用前点検》と《運搬前点検》です。
毒物がどこで混入されるかわかりませんので、まずは使用する前に全ての食材と食器類を点検します。そして、食材を用いて料理を調理し、食器に載せられ運搬する前に、再度点検を実施します。この2つの点検をクリアして初めて、料理を招待客の皆様へと運ばれます。
「この量を見ると、ちょっと萎えるわね。でも、祝賀祭で事件を起こすわけにはいかないから、全員が真剣に取り組んで挑むわよ」
リットさんの目は真剣そのもの、ここで何かが起きれば、私たちの信頼は失墜してしまう。他の4人(男性2人、女性2人)も同じ気持ちのようで、静かに頷きます。年齢的に皆彼女と同じくらいですね。
今日からの作業は、この邸内で行います。
私の任務、スタートです!!
1日がかりで、食材と食器類を6人で点検したのですが、毒物は検出されませんでした。私は食材担当を任されたのですが、毒草が食材に紛れ込んだり、毒物が埋め込まれているような痕跡もなかったです。とりあえず、現在の邸内にある食材と食器類全て料理に使用可能です。
今回の祝賀祭の催される場所は、商業ギルドの保有する館の庭園です。この地域を治める領主様はこの街に住んでいませんから、ギルドの方々で相談し合った結果、ここになったそうです。元々、この館は古くから平民にも開放されていて、商売人同士の重要な契約に関わる話し合いでよく使用されており、庭園自体も有名だそうです。
立食形式で執り行われるため、料理と食器も頻繁に入れ替わりますので、調理場に1人、食材保管庫に1人、食器類保管庫に1人、庭園に3人で見張ることになったのですが、私は食器類保管庫担当となりました。
私の年齢だと、庭園任務は目立つそうです。
調理場にしても、背が低いので、料理人たちの通行の邪魔になります。
年齢と身長の低さもあって、消去法的に保管場所での任務となりました。
食材と食器類の保管場所に関しては、一度全ての物を確認していますので、危険度も低いです。一番危険度の高いのは、リットさんのいる庭園担当ですね。パーティー中の庭園内で毒を仕込まれたら、いくら鑑定持ちでも対応しきれません。招待客全員を鑑定してほしいところですが、個人のプライバシーに大きく関わりますので、そんな大それたことはできません。実行してバレたら、私たちが逮捕されてしまいます。
ただ、今回冒険者の中にライオン顔の獣人《ゴルド》がいるので、リットさんは奴が他の冒険者に毒物を仕込むと思っているようです。私とカトレアを囮にし、その後平然と真摯に謝罪してくる男、他の4人の鑑定士方も奴の裏の顔を知っているようで、皆がゴルドの行動に注視することとなりました。
「毒草、怖いです」
「あなたには、スキル《身体硬健》がある。どんな毒も効かないから安心だけど、あなたが成人(15歳)する頃には、私と同じ指導する立場になるわ。後輩たちに教えていくにあたって、今の行為は絶対に禁止ね」
「はいです」
そうでした、私は大丈夫でも、私以外の人たちは毒耐性スキルを持っていない人だっていますから、今の行為は厳禁です。今まで自分のことばかり考えていましたが、今後指導していく立場になったら、相手のことを第一に考えないといけませんね。
「リットさんのような鑑定持ちであれば、匂いを嗅がなくとも、どんな毒でも見抜けるんですよね。それって、凄いことです」
「ありがとう。でもね、ある程度のスキルと薬物の知識を持った人であれば、スキル《鑑定》から逃れられる術を知っているから、こういった祝賀祭でもその方法を使えば、楽に標的を毒殺できるのよ」
「そんな方法があるのですか!?」
世の中には、鑑定を妨害する方法が2つあるようです。1つ目がスキル《鑑定妨害》、このスキルを持っている人は鑑定を100%妨害できます。ただし、効果はスキル所持者限定のようです。2つ目が《アイテム》、ダンジョンなどで入手できる様々な物品の中には、使い方次第で、指定した人や物の鑑定を妨害できるそうです。
「でも、鑑定できない物があれば、それ自体が怪しいということになりますから、意味がないのでは?」
「それがそうでもないのよ。狡賢い連中は、一般的に知られていない穴を突いてくるの。例えば、料理に含まれている毒物だけを鑑定妨害すれば、その料理は鑑定できるから安心だと思い込んでしまうの」
あ、なるほど。
予め、アイテムで毒物に鑑定妨害を仕掛ければ、今言った行為が実現可能になりますから、スキル《鑑定》で得られた結果も、絶対安心とは言い切れません。
だから、私も呼ばれたのですね。
「私のようなスキル《鑑定》を持つ人たちにとって信用が第一、一度でも失敗すれば、その人はこの世界で這い上がれない。今言った手口を防ぐには、レアスキル《看破》が必要になるの。これがあれば、鑑定妨害や偽装された品々を見抜くことができるのよ」
「そんなスキルがあるんですか!? リットさんは、持っているのですか?」
「残念ながら持ち合わせていないわ。スキル《看破》は、《鑑定》よりもレアだから、持っている人は少ないし、持っていたとしても利用されたくないから明かさない人も多いのよ。外で無断で鑑定を使って、スキル持ちを探す人もいるようだけど、それがバレたら懲罰行為になるわ」
スキル《鑑定》を持っている人も、色々と苦労するのですね。そうなると、私の役目も結構重要になります。自分の出来うる範囲で、警備をこなしていきましょう。
「私は毒の匂いを覚えて、匂いで食器類や食材に含まれる毒物を感知しないといけないのですね」
食器類に塗られた毒物の探知なら私もできると思いますが、料理や飲み物の中に入れたものに関しては、他の匂いも混じってきますから、かなり厳しいかもしれません。
「ええ、この7日間、みっちり鍛えてあげるわ。薬草などの選別業務も入れてあるから、最低限の給料もきちんと支払うから安心してね」
「よろしくお願いします、リット先生‼︎」
それを聞いて安心しました。
お金はあるだけあった方が良いです。
どこで、大金が必要になってくるかわかりませんから。
こうして、私はリットさんの指導のもと、訓練が始まりました。
訓練中に用意された毒物は全部で22種類、うち15種類の匂いを覚えましたが、残り7種類は無臭だったので、残念ながら判別不可でした。ただ、その毒を持つ植物自体に独特な匂いがしたので、毒草による判別は出来ました。そのおかげで、ギルド内で運ばれた薬草から毒草を分別させることには成功しています。
そうして厳しい訓練を受けてから5日後、私とリットさんを含めたスキル持ち6人は、祝賀祭で用意される食材と食器類の品質を管理すべく、開催場所となる商業ギルドの保有する邸の地下にある倉庫へ向かいました。部屋へ入ると、そこはひんやりしており、温度も湿度も完璧に制御されている空間でした。倉庫内には食材保管庫と食器類保管庫に区分されていて、今からこれらの点検を行うことを考えると、少し億劫な気分になってしまいます。
今回、私たちの行うべき品質管理には、2点あります。
《使用前点検》と《運搬前点検》です。
毒物がどこで混入されるかわかりませんので、まずは使用する前に全ての食材と食器類を点検します。そして、食材を用いて料理を調理し、食器に載せられ運搬する前に、再度点検を実施します。この2つの点検をクリアして初めて、料理を招待客の皆様へと運ばれます。
「この量を見ると、ちょっと萎えるわね。でも、祝賀祭で事件を起こすわけにはいかないから、全員が真剣に取り組んで挑むわよ」
リットさんの目は真剣そのもの、ここで何かが起きれば、私たちの信頼は失墜してしまう。他の4人(男性2人、女性2人)も同じ気持ちのようで、静かに頷きます。年齢的に皆彼女と同じくらいですね。
今日からの作業は、この邸内で行います。
私の任務、スタートです!!
1日がかりで、食材と食器類を6人で点検したのですが、毒物は検出されませんでした。私は食材担当を任されたのですが、毒草が食材に紛れ込んだり、毒物が埋め込まれているような痕跡もなかったです。とりあえず、現在の邸内にある食材と食器類全て料理に使用可能です。
今回の祝賀祭の催される場所は、商業ギルドの保有する館の庭園です。この地域を治める領主様はこの街に住んでいませんから、ギルドの方々で相談し合った結果、ここになったそうです。元々、この館は古くから平民にも開放されていて、商売人同士の重要な契約に関わる話し合いでよく使用されており、庭園自体も有名だそうです。
立食形式で執り行われるため、料理と食器も頻繁に入れ替わりますので、調理場に1人、食材保管庫に1人、食器類保管庫に1人、庭園に3人で見張ることになったのですが、私は食器類保管庫担当となりました。
私の年齢だと、庭園任務は目立つそうです。
調理場にしても、背が低いので、料理人たちの通行の邪魔になります。
年齢と身長の低さもあって、消去法的に保管場所での任務となりました。
食材と食器類の保管場所に関しては、一度全ての物を確認していますので、危険度も低いです。一番危険度の高いのは、リットさんのいる庭園担当ですね。パーティー中の庭園内で毒を仕込まれたら、いくら鑑定持ちでも対応しきれません。招待客全員を鑑定してほしいところですが、個人のプライバシーに大きく関わりますので、そんな大それたことはできません。実行してバレたら、私たちが逮捕されてしまいます。
ただ、今回冒険者の中にライオン顔の獣人《ゴルド》がいるので、リットさんは奴が他の冒険者に毒物を仕込むと思っているようです。私とカトレアを囮にし、その後平然と真摯に謝罪してくる男、他の4人の鑑定士方も奴の裏の顔を知っているようで、皆がゴルドの行動に注視することとなりました。
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