御主人様を求めて異世界へ〜チート幼女となった元わんこの不遇な逆境生活〜

犬社護

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本編

22話 リコッタからのお手紙 *アリア視点

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私は馬車の中で、昨日届いたリコッタからの手紙を読み返した。
何度読んでも腹立たしく思うけど、あの子らしいという気持ちにもなる。

手紙の始めは、非常識極まりない公爵家の仕打ちについてだった。真夜中の野営場に訪れて、今から送迎を代われって、普通じゃありえないことだわ。リコッタがそれを了承したら、案の上薬で眠らされて、気づけば深い森の中か。そんな状況下であの子はフォレストウルフとお友達になって、従魔契約を交わした。リコッタには、テイマー《魔物使い》としての才能もあったのね。フォレストウルフの親に何かあった時に限り、リコッタが子供たちを召喚して、一緒に暮らしていくようだけど、今のところ何も起きていないようね。

「それにしても、この非常識な行為は絶対にメアリーヌの仕業ね。だから、学園復帰した私を見て、親の仇と言わんばかりに睨んできたんだ」

あの時、私は不思議に思った。

復帰初日だから、絶対絡まれると思ったけど、彼女は睨んでくるだけで、何も言い寄ってこなかった。自分の想定通りにリコッタを追放できたのに、何故何もしてこないのか疑問に思ったけど、この手紙を読んだことで理解できたわ。あの子は自分の思惑通りに事が運ばないどころか、手下たちが公爵様に確認をとったことで、こってり怒られたんだ。

勝手に公爵家の印を使い、下の者を動かしたのなら怒られて当然よ。でも、その公爵様自身は、娘の教育のためにリコッタを追放すると言ったのだから、もしかして全てを知った上で娘の愚行を放置したのかもしれない。あのマクガイン公爵様が、そんな失態を犯すとは思えないもの。

私もお父様も、そしてメアリーヌも、あの公爵の掌の上で弄ばれている。
いつか絶対に、牙を剥いてやる。
それまでは、力を蓄えておかないと。

「これはいいとして、新聞の一面に掲載されていた鉱山での騒動、あれにリコッタも関わっていたのね。しかも、この手紙の内容が真実なら、彼女が殆ど掌握したようなものだわ」

あの子のスキルなら、Aランクの魔物を討伐や掌握もできる。討伐メンバーに入っていないから、手柄は全部持っていかれたけど、この騒動で奴隷のカトレアという女の子とお友達になれたのね。

「喋り方が出会った頃の私と似ているのなら、きっと私と同じように誰かに裏切られたのね」

リコッタが追放されても前に進んでいる以上、私も負けていられない。もっと勉強して、全てにおいてメアリーヌよりも上回ってやる!! 彼女は私を敵視している以上、今後色んなイベントに絡んでくる。さしずめ、今日は秋季中間試験の結果が貼りだされる日でもあるから、朝から大きな態度をとって私に絡んでくるはずだ。夏休み前の期末試験では学年で23位、メアリーヌは2位、今回は絶対に負けるだろうけど、どこまで狭まっているかが重要だ。

○○○

「あら~アリアさん、おはようございます」

学園に到着して校舎に入ろうとしたところで呼び止められた。さては、待ち伏せしていたわね。嫌味ったらしい言い方、私を挑発しているかのような顔つきだ。3人の友達を引き連れて、試験結果を一緒に見ましょうとでも言いたいのかしら。

「メアリーヌ様、おはようございます」
「試験結果、もう貼り出されていますわ。せっかくなので、見に行きませんこと?」

ほらね。

「ええ、わかりました」

本当に、嫌な奴!!
復帰して以降、ことごとく私に絡んできて私の評価を落とそうとしてくる!!

初めて出会った時は公爵令嬢らしい優雅な振る舞いだったのに、あの裏切り以降、クラスのみんなを扇動して私の評価を下げていき、あの子自身も傲慢になっていった。あいつのせいで、私は人間不信に陥り、授業も休みがちになってしまったけど、夏休み前にリコッタと出会ってから、少しずつ緩和されていった。

リコッタが追放されても頑張っているのだから、私だってあいつの虐めなんかに屈しない。クラスのみんなも、私を虐めることに違和感を感じ始めたのか、夏休み明け以降、何もされていない。私の評価を上げていくのなら、今しかない!!

校舎の中に入り、1階の1年生の掲示板が置かれている場所へ行くと、皆が試験結果の順位を見ていて、喜んでいる者もいれば、悲しんでいる者もいる。私たちは人混みの中を入っていき、掲示板の近くへと到着した。

「あなたの場合、下から見た方が早いかもしれませんわね」

この人、日に日に馬鹿になっている気がする。

私の前回の期末試験の順位は100人中29位、中間試験の手応えもまずまずだったから、多分30位以内に入っていると思うけど、私の心の乱れを察知したのか、さっきから嫌な視線を感じる。視線の主はメアリーヌの後方にいる3人の令嬢で、ニヤニヤした顔が気持ち悪い。自分の婚約者やその知り合いが見ているかもしれないのに、よくそんな感情を表に出せるわね。奴らの悔しがる表情を見たいけど、今の私ではまだ無理だ……あ……無理だけど、こういう展開もあるんだ。

「メアリーヌ様は35位のようですね」

50位付近から上位を順に見ていったら、まさかの名前が飛び込んできた。

「はあ!? そんなはず…あ…ありえませんわ…そんな馬鹿なこと」
「ですが、事実です。私は20位ですね」

やった、順位が少し上がったし、点数も前より高い。メアリーヌは自分の成績を見て呆然としているわ。まさか、自分からこっちに堕ちてくるなんて思わなかったけど、いい気味だ。

メアリーヌの3人のお友達の順位は11、14、17位。
この3人も気づいたようで、顔色が真っ青だわ。
当然か、私よりも上だけど、メアリーヌよりも上だもの。
怒りが自分に向いてくるかもしれないから、誰も何も言えないようね。

この人、私やガイアス様に変に関わり出したせいで、大きく順位を落としたのは明白だけど、カンニングしたとかで逆恨みしてこないわよね? 

言われる前に、立ち去ろう。

「自分の順位も知れたので、私は失礼します」

私がススっと離れていっているのに、ショックのせいで何も言ってこない。
ちょっとスッキリしたかな。
リコッタがいたら、『自業自得です!!』とか言いそう。
ふふ、手紙でリコッタに知らせてあげよう。

「アリア、ご機嫌だね。順位が上がったのかな?」

声の主は、第一王子ガイアス様だ。
流れるような金髪、青い瞳、女性なら誰でも見惚れるレベルだわ。

私はこの方と世間話をしていただけで、メアリーヌに目を付けられた。彼の内面は知らないけど、外面は冷静で感情を決して乱さない穏やかな人柄、人を惹きつけるカリスマ性もあって、知力も魔力も全てにおいて超一流、子爵令嬢の私にとってこんな人と話し合える機会は早々ないから、世間話だけでもと思い、話し合ったら意外と気が合った。

彼の周囲には、側近候補と呼ばれる2人の男子生徒がいる。
私は彼らとも面識があるし、疎まれてもいない。

「上がりはしましたが、9つだけです。今は、掲示板に行かない方がいいかと」

私的には29位から20位でも十分凄いことだけど、前回と今回で1位になっているガイアス様からすれば、大したことに感じないかもね。

「うん? それはどうしてかな?」
「メアリーヌ様の順位が35位で、周囲もそれを知り、おかしな雰囲気になっています」

あそこにガイアス様が行けば、私と入れ替わる形になるから、メアリーヌは絶対勘違いを起こすに決まっている。私の思惑に勘づいたのか、ガイアス様がクスッと笑った。

「ああ、そういうことか。それなら行くのは控えよう。彼女に関しては、マクガイン公爵から聞いているし、影からも報告が上がっている。ククク、2位から35位に転落か、どこまで馬鹿になっていくのやら」

マクガイン公爵様ご自身が、ガイアス様に報告している?
自分の家の評価が下がるだけなのに、どうして?
何か企んでいるのかしら?

「あの…」
「ああ、失礼。彼女は勝手に自滅していくだろうから放っておけばいい」

冷たい言い方だ。
私も同意見だけど、ガイアス様はメアリーヌ様のことを見限った?

「それより、これから王都はべクルトンのスライムの件で騒がしくなる。良からぬ連中も紛れ込んでくるだろうから、君も早めに家へ帰った方がいい」

それは、お父様からも言われているわ。メタルリキッドスライム、掌握された液体金属の量は国内一、服飾には剥いていないけど、武具、防具、魔道具など幅広い分野に応用できるから、全ギルドが注目している。今、どう配分していくか揉めに揉めていると聞いている。

「そうですね。心配をかけたくないので、授業が終わり次第帰宅します」

リコッタとカトレアは、偶然巻き込まれ、結果的に囮として活躍したと言われている。殿下の言い方だと、まだ真実は知らないみたい。べクルトンの街で、何事も起きなければいいのだけど。


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