御主人様を求めて異世界へ〜チート幼女となった元わんこの不遇な逆境生活〜

犬社護

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本編

21話 リットさんに話してしまいました

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騒ぎが終息すると、何処かに避難していた従業員の方々が続々と外に出てきて、討伐されたスライムを興味本位で見ていました。まだ、冒険者たちが『毒が浄化されていないから絶対に触るな‼︎』と宣言していたこともあり、誰も触ろうとしませんでした。私の戦いを誰も見ていなかったこともあり、感謝される事なく、皆が私を素通りしていきます。そんな私を見た冒険者の人たちは、謝罪するように頭を軽く下げ、自分達が討伐したことを宣言しました。

「リコッタ、ゴルドから何もされなかった?」

そんな事を言ったのは、カトレアです。
どうやら、怪我も完治したようです。
彼女は奴を強く睨み、そこからは強い《恨み》の匂いを感じます。

「大丈夫なんですが、あの人の人柄がよくわかりません。あの時、悪意を持って私たちを囮にしたのに、誠意ある謝罪を受けました」

彼から漂ってくる匂いも巧妙に隠されていて、反省しているのかわかりませんでした。

「あいつの人柄に騙されちゃダメ‼︎ ゴルドは悪人、絶対に信用しちゃダメ‼︎ あいつは何の躊躇いもなく仲間を裏切り、手柄を独り占めにする悪い奴、奴隷になって間もない頃、私は荷物持ちとしてあいつと行動し、魔物たちの囮にされた」

子供に荷物持ちっておかしくないですか?
まさか、初めからカトレアを囮にするつもりだった?
だとしたら、奴は悪です‼︎

「今回も、ゴルドが一番の手柄を手にしてる……あいつだけは許せない」

ゴルドは従業員の人たちからお礼を言われ、ご機嫌のようですね。
あの人は、裏表のある人物のようです。

「カトレア、気持ちもわかりますが、冒険者全員がゴルドのような屑とは限りません。あなたの怪我を無償で治療してくれた方もいるじゃないですか」

「そうだけど…そうだね…治療してくれた男の人、ポーションを使ったのにお金を請求してこなかった。『巻き込んですまない』って、申し訳ない顔で優しく言ってくれた。大人全員が、悪い人じゃない」

今回の一件で、カトレアの過去を知ってしまいました。そんな手酷い裏切りがあれば、誰だって人間不信になります。

騒ぎも落ち着いてきましたが、鉱山内と周囲に倒れている遺体の処理など、色々と後処理が大変そうです。


○○○


あの騒動から、2日が経過しました。
この任務についてから計算すると、5日目になります。

あのスライムが鉱山の外に出てきて建物を次々と破壊したせいで、全員の業務が中止となりました。現在、奴隷たちが鉱山内で生じた瓦礫の撤去作業と清掃作業を、従業員たちが外で生じた瓦礫の撤去作業、清掃作業、業務用のテント設営などで忙しなく動いています。私とカトレアは、外で清掃作業に携わっているのですが、そこに施設長のオルフェンさんと冒険者ギルドの受付嬢リットさんがやって来ました。

多分、スライム討伐の件ですね。

あの騒動後、オルフェンさんは、終始ニコニコ顔で機嫌がとても良かったです。あのスライムは、鉱山に幸福をもたらしてくれたようですね。討伐の裏事情を知らないはずですから、話を合わせましょう。

「リコッタ、お疲れ様。スライム討伐メンバーたちから、鉱山での死闘を聞いたわ。あなたも巻き込まれて、大変だったわね」

リットさんとオルフェンさんからは嫌な匂いもしませんので、ゴタゴタに巻きこまれることはなさそうですね。2日も経過していますから、全部終わったのかもしれません。

「討伐に関する裏付け調査ですか?」
「当たり、そこの仮説テントで2人だけで話し合いましょう」

オルフェンさんにわからないよう、彼女は右目でウィンクしました。どうやら、彼は討伐の裏事情を現在も知らされていないようですね。

「了解です」

私たちは仮設テントの中に入り、配備されている椅子に座りました。冒険者の方々が、あのスライムをアイテムバッグに入れて、ここを離れましたから、どうなったのかだけでも知りたいです。

「リコッタ、お手柄よ!! 今、冒険者ギルドは大忙しなんだから‼︎」

獣人のリットさんが感情剥き出しで、私を褒めてくれました。
これは、相当珍しい行為です。

「あのスライムって、そんなに珍しいものなのですか?」
「あ…そうか…あれの価値も知らないのね。それじゃあ、今から説明するわね」

リットさんがメタルリキッドゴーレムについて、わかりやすく説明してくれました。あのスライム自体が非常に珍しい個体のようで、国内での報告例も今回で3例目です。ギルドが忙しくなっている要因は、構成される物質《液体金属》というものにあるようです。あの金属は、掌握した魔石を利用することで、形を自由自在に変化させたり、大小様々な形で分裂させることも可能だそうです。おまけに固形化させると、その硬度は世界一のオリハルコン並みに硬くなり、ミスリル並みに軽い特性を持っています。

元々、ギルド側も冒険者側もスライムをただ討伐するのではなく、魔石の掌握を望んだ。これには、2つの目的があります。

普通に討伐すると、液体金属に含まれる毒素がその土地を侵食してしまい、最悪人の住めない土地になってしまう。魔石を掌握さえすれば、掌握者たちが自在に液体金属を操縦することができ、内部の毒素も自由に出し入れできるそうです。冒険者、ギルド、国に莫大な利益をもたらすからこそ、ギルド側も冒険者側も掌握を望んだ。

現在、各ギルドのギルドマスターと領主が液体金属の使用用途を決めるため、会議中です。今回の討伐に関わった冒険者全員が、あの金属で武具や防具を作りたいようで、それを討伐報酬として申請しているので、その分を差し引いたものをどう配分するかで、頭を悩ませているようです。

「そんな…大事になっていただなんて……」

「メタルリキッドゴーレムの討伐ランクは、大きさに依存するの。当初聞いた情報を基に討伐ランクをB下位に設定したけど、実際の奴は二回りも大きく、討伐ランクはSに限りなく近いA上位だった。この大きさは、国内初なのよ。あのパーティー編成でよく勝てたと、ギルドマスターも私も怪しんだわ。パーティーリーダーの獣人ゴルドに追求したら、あなたの名前が出てきたわけ」

Sに限りなく近いA、私はそんな魔物と戦っていたのですね。ここまで怪しまれている以上、私のスキル《身体硬健》を明かした方がいいですね。

「リコッタ、私はスキル《鑑定》を持っているわ。普段はプライバシーの権利もあって、ギルドマスターの管理者権限で、ギルド内でのスキル使用が封印されているの。今回、スキルの使用を許可されているから、今から使っていいかしら?」

スキル封印はあくまでギルド内だけですよね? ここは管理外だから、普通に使用できるはずです。それをわざわざ私に言ってくるとは、リットさんも律儀な人です。そうなると、私の持つスキル全てが見られてしまいます。う~ん、彼女なら信頼できますから承諾しましょう。

「はい、構いません」
「ありがとね」

そういうと彼女は無言になり、私を見た後、空中を見ました。多分、私のスキルを確認していると思うのですが、途中からずっと口を開けたままになりました。

「あ…はは、《絶対嗅覚》《身体硬健》《獣化》の3つは反則でしょう? なるほど理解できたわ。これらのスキルがあれば、あのスライムにも勝てるわけだわ」

どうやら納得してくれたようです。

「リコッタ、ありがとう。あと聞きたいことがあるのだけど、ゴルドともう1人があなたたちを囮にしたと聞いているのだけど本当なの?」

あ、ゴルドはその件を白状したんですね。
私が生きている以上、絶対明るみになりますもんね。

「はい、間違いありません。あの時、あいつらは大声で叫び、魔物の注意を私とカトレアに向けました。その後、1人は死にましたが、生き残ったゴルドからは誠意ある謝罪を受けましたが、カトレアが騙されるなと忠告してくれました」

「その通りよ、あいつは表向き人望のある冒険者で通っているけど、裏では弱い奴を囮にし、その人たちが食べられている間に魔物を討伐する悪い奴なのよ」

なんで、そんな悪者が普通に生活しているの?
何故、逮捕されないの?

「ふふ、顔に出ているわよ。そういった行為を証明するための証拠がないのよ。あなたの友達のカトレアちゃんの件に関しても、証言だけで証拠がない。だから、ギルド側も動けない」

うぬぬぬ、許せないです。
そんな悪人には、天罰が降ればいいのです‼︎

リットさんからもかなり強い恨みの匂いを感じますので、昔に何かあったのでしょう。
金輪際、ゴルドとは関わりたくないです‼︎

今回の騒動はマクガイン公爵家と無関係だと思いますが、近況も含めてこちらで起きた真実を全てアリアお嬢様にお伝えしておきましょう。
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