御主人様を求めて異世界へ〜チート幼女となった元わんこの不遇な逆境生活〜

犬社護

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本編

12話 これが私のステータスです

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私のステータス数値、これって強いのでしょうか?
確か上限は9999と言われていますので、数値としてはかなり低いはずです。

名前:リコッタ
性別:女
年齢:8
種族:獣人

         通常時  スキル《身体硬健》適用時
物理攻撃    101           未知数
魔法攻撃    30             30
物理防御    32             ♾
魔法防御    25             ♾
敏捷       216           未知数
器用       78             78
魔力量     328            328

ノーマルスキル 
《魔力循環》《魔力感知》《魔力制御》《暗視》《体術》《空間把握》
《恐怖耐性》《混乱耐性》《幻惑耐性》

レアスキル    
《獣化》
《【ソニックブレイカー】》《【無慈悲の咆哮】》
《「アニマルセラピー」》

チートスキル   
《絶対嗅覚》・《身体硬健》

【】:狛犬形態時のみ使用可能
「」:愛玩形態時のみ使用可能

習得魔法:なし

当初、この画面を見た時、《♾》や《未知数》の意味がわかりませんでした。

旦那様は、『防御関係の♾は無限という意味で、このマークが付いているものに限り、強さに限界はないということだ。物理と敏捷の未知数に関しては、リコッタ次第で大小様々な数値を出せるのだろうが、君自身が力を制御できていないから、無限ではなく未知数と表示されているのだろう』と言ってました。

一見、強そうに感じましたが、これまでに実感できたのは、パーティー中に遭遇した不審者と、私とお嬢様を拉致した連中だけなので、自分の強さをイマイチ理解でません。

《身体硬健》発動時は、攻撃自体が全部無効になるのかなと思っています。気になる点は、健康に害を及ぼす攻撃が、どこまで適用されるのかです。拉致される際、薬品を嗅がされ眠らされましたので、あの薬品に関しては害はないと判断されたのでしょう。

これは全部ケイナさんに言えないので、数値だけを少し明かしましょう。

「攻撃・敏捷・魔力量が100を少し超えています。残りは50前後ですね」

そう言うと、ケイナさんは苦笑いを浮かべる。

「少し偏っているけど、今の年齢で100を超えるものがあるのは恵まれているわ。その数値を考慮すると、リコッタのジョブは《獣闘士》が妥当ね。前衛タイプだけど、防御の薄さがネックね。今から鍛えていけば、弱点も克服できるわ」

ジョブ《獣闘士》ですか、興味のそそる言葉ですね。嘘の臭いを感じませんから、その助言に従いましょう。

「習得しておいた方がいい魔法やスキルはありますか?」
「ごめんね。そこは専門外だから、流石にわからないわ。でも、魔力量もそれなりにあるから、自分に見合った近接系の攻撃魔法や身体能力を向上させる補助魔法のいくつかを覚えておいた方が良いかもね」

問題は、そこです。

「その魔法についてなんですが、色んな属性があると聞いています。ステータスに属性の項目がありませんので、これって何でも使えるってことですか?」

以前、お嬢様やクラリッサさんにも聞いてはいるのですが、念のため本職の方々の意見も聞いておきたいです。

「懐かしいわね。私も、あなたぐらいの時に、同じ質問をしたわ。理論上、全ての種族はどの魔法も使用可能と言われているけど、実際は違う。その人の持つ資質次第で、習得しやすいものとしにくいものがあるのよ。こればかりは、挑戦しないと誰にもわからない。だから、あなたも冒険者登録したら、ギルドでいつか属性の相性を見てもらいなさい」

なるほど、相性ですか。
まずは、自分自身を知ることから始めるのですね。

5年という期間で、どれだけ魔法やスキルを習得できるかわかりませんが、可能な限り、どんどん挑戦していくです!!


……その日の夜、私たちは街道から少し離れた草原で野営を取りました。近くに大岩があるため、それを利用して街道からは見えにくくなるよう配慮しています。


ケイナさんが、リーダーのマイトさんとガインさんに私の事情を話したら、彼らはすぐに私に同情してくれて、夕食後、冒険者の野営に関する色々な知識を教えてくれました。《火の起こし方》《テントの張り方》《食用となる野草》《毒を持つ植物》など、大変有意義なものでした。黒髪のマイトさんはリーダーだけあって非常に頼もしく、茶髪のガインさんはちょっとガサツなところもありますが、面倒見の良い人で、私は好きですね。ケイナさんは料理上手で、男性2人との仲も良好のようです。

「うん? マイト、あの馬車、こっちに近づいて来ないか?」
「そのようだけど、盗賊ってわけでもなさそうだな」

盗賊が、あんな堂々と馬車を連れてこないと思います。しかも、わざわざ発見されにくいよう配慮してテントを張り、真夜中に迫ってきているのですから、絶対何らかの目的があります。

馬車が私たちの目の前に止まりました。焚き火と魔道具《ランタン》だけの薄暗い状況ですが、3人の40歳くらいの人間族の男性がいるようです。マイトさんが前に出て、男性の1人に語りかけます。

「あんたら、俺らに何か用でもあるのか?」
「夜分遅くに申し訳ありませんね。まずは、この手紙を拝見してください。あなた方の依頼主からです」

この人たち、何処か怪しいです。
ケイナさんたちにはない如何わしい嫌な臭いを感じます。

依頼主と聞き、ケイナさんとガインさんはマイトさんのもとへ向かい、その手紙を一緒に読みます。すると、3人の顔が見る見るうちに険しくなっていきます。

「こいつは……おいアンタ、この時間に本気で実行する気か?」

マイトさん、なんだか怒っていませんか?
あの手紙に、何が書かれていたのでしょう?

「私らとて不本意ですよ。常識からかなりズレていますからね。ですが、これも命令なんです。彼女の輸送任務を我々と交代し、ここから離れてくれませんかね? 急な変更な分、依頼料に関しては、この場で全額支払わせて頂きます。ギルドには通達済みなのでご安心を」

それって、私の送迎を交代するってことですか?
いくら何でも、急過ぎませんか?
こんな時間に実行する必要性がどこにあるのですか?

「マイト、どうする? この印は本物だ」

ガインさんも戸惑っているようですが、命令には逆らえないようです。
私は、一体どうなるのでしょう?

「ちょっとマイト!! そんな命令、無視しなさいよ。どう考えても、非常識極まりないわよ!! こんな真夜中に、得体の知れない3人の男たちに8歳のリコッタを引き渡せないわ!!」

ケイナさんはそう言ってくれますが、マイトさんはかなり悩んでいるようです。この匂い、旦那様と同じです。彼は、心の中で葛藤しています。多分、答えは決まっていますね。それならば、私から言いましょう。

「皆さん、私はこの人たちについていきます」
「え!?」
「な!?」
「なに言ってるの、リコッタ!?」

私の言葉に驚いたのか、彼だけでなく、ガインさんやケイナさんも私を凝視します。

「この命令に逆らったら、3人とも冒険者としての評価が大きく下がると思います。ヨークランド子爵家の時と同じ手口です。誰が依頼主であろうとも、逆らわない方がいいです」

あの手紙からは、マクガイン公爵ではなく、メアリーヌ様の匂いしか感じません。どういう意図でこんな事をしているのか不明ですが、あの女なら何でもやりそうな気がします。

「良い判断です。さて、彼女はこう言っていますが、あなた方の判断は?」
「ち……わかったよ。だが、必ずリコッタをべクルトンへ送り届けろよ?」
「ええ、勿論」

この男の笑顔、怪しいです。
何かを企んでいるような気がします。
私が考え事をしていると、ケイナさんが私を抱きしめ、小声で何か言いました。

「怪しいから、絶対に警戒を緩めないでね」
「はいです」

3人は依頼料を貰い、野営具を片付けると、魔道具のランタンを点灯させて、馬車と共に王都へ戻っていきます。

馬車が見えなくなったところで、先程の男がこちらに近づいてきました。

「あなたも不運ですね。あの方に目をつけられてしまったのだから」

あの方ですか。
この場合、誰を指しているのでしょう?

「その手紙からは、メアリーヌ様の匂いしか感じません。その通りに動けば、公爵様から大目玉を食らいますよ」

私が依頼主の名前を言ったせいか、3人とも動揺しています。
私が強く断言したせいか、かなり動揺しているようです。

「この子の匂いの識別は、本物ですよ? どうします?」
「事実ならやばいんじゃあ?」
「馬鹿、信じるな。とっとと命令を遂行させるぞ」

3人が私を取り囲むと、懐から何を取り出し、私に振りかけてきました。

「急に、何を!?」

この不快な臭いは、袋の中で嗅がされたものと同じものです!!

「これは効くようだから安心しました」

そう言われた瞬間、また眠気が襲ってきました。
やっぱり、こいつら端から私を街へ送る気はなかったよう…です…ね。
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