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本編
6話 旦那様からの忠告です
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あの後、メアリーヌ様は渋々ながら、アリアお嬢様に謝罪していましたが、それは見た目だけであって、内心は全く反省していないことが身体から発せられる醜悪な臭いでわかりました。マクガイン公爵や奥方様も溜息を吐き、私たちに再度謝罪し、私の持つ金貨入りのポシェットに関しては、『それは迷惑料として君に譲渡する。好きに使ってくれて構わない』と言い、大怪我を負った護衛の男を引き連れて、邸を出ていきました。流石に、こんな騒ぎを起こしたのですから、パーティーに戻れませんよね。
ポシェットの中には、金貨が10枚(約10万円相当)も入っており、私1人で慎ましく生活するのであれば、半年は楽に生活できる額です。正直、こんな汚れた大金を貰っても嬉しくないので、孤児院に寄付しますと旦那様に伝えました。
その後、私もクラリッサさんも業務に戻り、私は再び食器洗いをやっているのですが、心には一抹の不安を感じます。あの時、公爵様も奥方様も頭を下げ謝罪してくれたのですが、あの時に感じた奇妙な匂いには、謝罪以外のものを感じました。巧妙に隠されていて、それが何なのかわかりません。漠然とした不安を感じるからこそ、何かが起こりそうな気がするのです。
………結局、私の不安は杞憂に終わり、何事もなく誕生日パーティーも終了しました。
私は先輩メイドの方々と共に庭内の後片付けを終わらせると、旦那様からお呼び出しがかかりました。私がノックをして執務室に入ると、そこには旦那様、アリアお嬢様、先輩メイドのクラリッサさんがいました。
重苦しい雰囲気です。
これから何が行われるのでしょうか?
「これで、先程のメンバーが揃ったな。まずリコッタ、アリアの部屋で起きた騒動で、奴に取引を持ちかけられても動じず、娘を守ろうとしたことを嬉しく思う」
やった、旦那様から褒められました!!
「リコッタ、私を守ってくれてありがとう。でも、危ないことはしないでね。あの映像を見てヒヤッとしたわ」
アリアお嬢様からも褒められました!!
忠実度の高い犬は、ご主人様のために誇りを持って働きますからね。
この言葉は私にとって、何よりのご褒美です。
「メイド見習いとして、当然のことをしたまでです。私も死ぬと思いましたが、スキルに助けられました」
あの時、私は刺されそうになっただけでなく、何度も殴られましたが、全然痛くありませんでした。今まで何の反応も示さなかったスキル《身体硬健》が、ここにきて発動したので助かりました。
「リコッタ、君の持つスキルに関しては採用時に聞いている。あの護衛に勝てたのは、スキル《身体硬健》の効果が大きく関与している」
そういえば、あの不審者さんは護衛騎士の中でも、トップクラスの実力を誇ると後から教えられてびっくりしました。てっきり、最弱騎士なのかと思い、酷いことを言ってしまいました。
「早く使いこなしたいのですが、発動方法に関しては今でもわかりません」
「初めての発動だろう? 【ステータス】の記載内容に、何の変化もないのか?」
旦那様の言った【ステータス】とは何でしょう?
初めて聞く言葉です。
「旦那様、ステータスとは何でしょうか?」
あれ?
何故か、この場にいる全員が驚き、私を凝視しています。
「リコッタ、5歳の時に教会で神から祝福を受けただろ? その時に、自分のステータスの開示方法を教わらなかったのか?」
5歳の時? そもそも、そんな小さい時のことなんて殆ど覚えていません。私のいる孤児院は当時貧乏だったので、少しでも経費を抑えるため、野菜などを隣の畑に植えていましたから……あ、思い出しました‼︎
「収穫などで色々と忙しい時期に、教会に呼ばれました。私の頭の中は、どうやって小さい身体で効率よく野菜を収穫していくかで頭がいっぱいでしたから、神父様の話を殆ど聞き流していました。神様に祈った後、神父様が私の持つスキルの説明をしてくれたことだけは少しだけ覚えています」
みんなが、呆れ顔になっています。
当時の私は、かなり失礼な態度をとっていたのでしょうか?
「あ~うん、まあいいだろう。部屋に戻ったら、《ステータスオープン》と言いなさい。自分の目の前に、強さの基準となるステータスウィンドウが開かれる。そこには、君のスキルの詳細が記載されているから、今後はそれを見て訓練に励むといい」
ステータスオープンですか?
それを言ったら、何が出現してくるのでしょう?
なんだか、心がワクワクしてきました。
「わかりました」
何故か、全員苦笑いです。理由がわからないため、私が首を少し横に傾けると、部屋の雰囲気が少し軟化しました。
「君から聞いたスキル《身体硬健》だが、恐らく健康に害を及ぼす際の攻撃が襲ってきた場合に限り、身体が硬化し、全ての攻撃を弾く効果があるのだろう。その力を攻撃に転化させる事で、あの護衛を倒せたんだ」
そうなんですか?
女神様は、そんな凄いスキルを私に与えてくれたんですね。
あの時、護衛に噛み付く際、自分の歯が欠けてもいいくらいの渾身の力を込めたからこそ、スキルが発動したのですね。
「いずれ君は、我が家の重要戦力になるかもしれないな。……さて、今から重要な案件を皆に報告する」
さっきまで和やかな雰囲気だったのに、急に空気が張り詰めました。やはり、メアリーヌ様の件ですよね。
「わかっていると思うが、マクガイン公爵家メアリーヌ嬢の犯した一件だ。あの公爵家は王家を支える屋台骨ともいえる存在だが、それは闇の政治的意味合いを指している」
旦那様の語る闇、どういう意味でしょう?
「国としての国力を上げるには、優秀な王族による求心力が必要不可欠だ。だが、国を成り立たせるためには、内部の膿を定期的に闇へ葬らなければならない。あの公爵家は代々、そういった闇の仕事を王家から引き受け、誰にも悟られないよう情報を収集し、証拠を確保して、王家に献上したり、相手を暗殺したりもしている。これは、貴族の当主間で周知されている」
公爵家、貴族の中では最上位に位置する存在、絶対に敵対するなと言いたいのでしょうか?
「今回のパーティーの一件で、我々は恐らく目を付けられただろう。今後、メアリーヌ嬢への再教育の一環として利用される恐れがある」
あの方の再教育に利用されるって、どういうことでしょう?
ああ、喋りたい、喋りたい。
でも、ルカさんから…
『いいこと、旦那様がお話ししている間、絶対に喋っちゃダメだからね。貴族の場合、その行為だけで不敬と判断されて追い出される危険性もあるの、覚えておきなさい』
ときつく言われています。我慢です、ここは我慢なのです。そもそも、私以外の人たちは皆理解しているようで、誰も何も言いません。旦那様が最後まで語り終えるのを待っているようです。私も我慢なのです!!
「恐らく、公爵はアリアとリコッタに何か仕掛けてくる」
え!?
「クラリッサ、君は1ヶ月間、アリアの護衛に付け。リコッタは、1ヶ月間この敷地内から出るな」
《敷地内から出られないのですか!! 私にとって、外に出て少ない小遣いで買い食いするのが楽しみなのに~~。我慢です、1ヶ月間の我慢なのです。貯金して、1ヶ月後の買い食いを豪勢にすればいいのです》
「リコッタ、全部声に出ているから」
「ふえ!?」
不意に、お嬢様から教えられたので、変な声が出ちゃいました。
不覚です、全部声に出ていたとは。
旦那様も、笑っています。
なんだか、急に恥ずかしくなってきました。
先輩メイドのクラリッサさんも呆れています。
「ふ、こんな状況であっても、リコッタはリコッタだな。君に関しては、教育担当のルカに任せればいいだろう。クラリッサ、アリアのことを頼んだぞ」
「はい、お任せあれ。相手がマクガイン公爵家である以上、いつどこで襲われるかわかりませんので、しっかりと護衛させていただきます」
クラリッサさんは、《戦闘メイド》という上位メイドで、私たちの中で一番強いです。彼女がお嬢様を護ってくれるのなら、私も安心できます。私の場合、皆の言うことをきちんと聞いて、絶対に外に出ないようにしましょう。
「今、執事のエリオットたちがマクガイン公爵家の動向を探ってもらっている。情報が分かり次第、私も動こうと思っている。いいか、奴らは1ヶ月以内に必ず何かを仕掛けてくる。全員、気を抜くなよ。クラリッサ、明日の早朝、改めて全員をリビングに召集させろ。今日起きた出来事を全て伝えておく」
全員が頷いたので、私もそれに合わせます。
なんだか、空気が重いです。
あの事件がキッカケで、何が起こるのでしょう?
ポシェットの中には、金貨が10枚(約10万円相当)も入っており、私1人で慎ましく生活するのであれば、半年は楽に生活できる額です。正直、こんな汚れた大金を貰っても嬉しくないので、孤児院に寄付しますと旦那様に伝えました。
その後、私もクラリッサさんも業務に戻り、私は再び食器洗いをやっているのですが、心には一抹の不安を感じます。あの時、公爵様も奥方様も頭を下げ謝罪してくれたのですが、あの時に感じた奇妙な匂いには、謝罪以外のものを感じました。巧妙に隠されていて、それが何なのかわかりません。漠然とした不安を感じるからこそ、何かが起こりそうな気がするのです。
………結局、私の不安は杞憂に終わり、何事もなく誕生日パーティーも終了しました。
私は先輩メイドの方々と共に庭内の後片付けを終わらせると、旦那様からお呼び出しがかかりました。私がノックをして執務室に入ると、そこには旦那様、アリアお嬢様、先輩メイドのクラリッサさんがいました。
重苦しい雰囲気です。
これから何が行われるのでしょうか?
「これで、先程のメンバーが揃ったな。まずリコッタ、アリアの部屋で起きた騒動で、奴に取引を持ちかけられても動じず、娘を守ろうとしたことを嬉しく思う」
やった、旦那様から褒められました!!
「リコッタ、私を守ってくれてありがとう。でも、危ないことはしないでね。あの映像を見てヒヤッとしたわ」
アリアお嬢様からも褒められました!!
忠実度の高い犬は、ご主人様のために誇りを持って働きますからね。
この言葉は私にとって、何よりのご褒美です。
「メイド見習いとして、当然のことをしたまでです。私も死ぬと思いましたが、スキルに助けられました」
あの時、私は刺されそうになっただけでなく、何度も殴られましたが、全然痛くありませんでした。今まで何の反応も示さなかったスキル《身体硬健》が、ここにきて発動したので助かりました。
「リコッタ、君の持つスキルに関しては採用時に聞いている。あの護衛に勝てたのは、スキル《身体硬健》の効果が大きく関与している」
そういえば、あの不審者さんは護衛騎士の中でも、トップクラスの実力を誇ると後から教えられてびっくりしました。てっきり、最弱騎士なのかと思い、酷いことを言ってしまいました。
「早く使いこなしたいのですが、発動方法に関しては今でもわかりません」
「初めての発動だろう? 【ステータス】の記載内容に、何の変化もないのか?」
旦那様の言った【ステータス】とは何でしょう?
初めて聞く言葉です。
「旦那様、ステータスとは何でしょうか?」
あれ?
何故か、この場にいる全員が驚き、私を凝視しています。
「リコッタ、5歳の時に教会で神から祝福を受けただろ? その時に、自分のステータスの開示方法を教わらなかったのか?」
5歳の時? そもそも、そんな小さい時のことなんて殆ど覚えていません。私のいる孤児院は当時貧乏だったので、少しでも経費を抑えるため、野菜などを隣の畑に植えていましたから……あ、思い出しました‼︎
「収穫などで色々と忙しい時期に、教会に呼ばれました。私の頭の中は、どうやって小さい身体で効率よく野菜を収穫していくかで頭がいっぱいでしたから、神父様の話を殆ど聞き流していました。神様に祈った後、神父様が私の持つスキルの説明をしてくれたことだけは少しだけ覚えています」
みんなが、呆れ顔になっています。
当時の私は、かなり失礼な態度をとっていたのでしょうか?
「あ~うん、まあいいだろう。部屋に戻ったら、《ステータスオープン》と言いなさい。自分の目の前に、強さの基準となるステータスウィンドウが開かれる。そこには、君のスキルの詳細が記載されているから、今後はそれを見て訓練に励むといい」
ステータスオープンですか?
それを言ったら、何が出現してくるのでしょう?
なんだか、心がワクワクしてきました。
「わかりました」
何故か、全員苦笑いです。理由がわからないため、私が首を少し横に傾けると、部屋の雰囲気が少し軟化しました。
「君から聞いたスキル《身体硬健》だが、恐らく健康に害を及ぼす際の攻撃が襲ってきた場合に限り、身体が硬化し、全ての攻撃を弾く効果があるのだろう。その力を攻撃に転化させる事で、あの護衛を倒せたんだ」
そうなんですか?
女神様は、そんな凄いスキルを私に与えてくれたんですね。
あの時、護衛に噛み付く際、自分の歯が欠けてもいいくらいの渾身の力を込めたからこそ、スキルが発動したのですね。
「いずれ君は、我が家の重要戦力になるかもしれないな。……さて、今から重要な案件を皆に報告する」
さっきまで和やかな雰囲気だったのに、急に空気が張り詰めました。やはり、メアリーヌ様の件ですよね。
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旦那様の語る闇、どういう意味でしょう?
「国としての国力を上げるには、優秀な王族による求心力が必要不可欠だ。だが、国を成り立たせるためには、内部の膿を定期的に闇へ葬らなければならない。あの公爵家は代々、そういった闇の仕事を王家から引き受け、誰にも悟られないよう情報を収集し、証拠を確保して、王家に献上したり、相手を暗殺したりもしている。これは、貴族の当主間で周知されている」
公爵家、貴族の中では最上位に位置する存在、絶対に敵対するなと言いたいのでしょうか?
「今回のパーティーの一件で、我々は恐らく目を付けられただろう。今後、メアリーヌ嬢への再教育の一環として利用される恐れがある」
あの方の再教育に利用されるって、どういうことでしょう?
ああ、喋りたい、喋りたい。
でも、ルカさんから…
『いいこと、旦那様がお話ししている間、絶対に喋っちゃダメだからね。貴族の場合、その行為だけで不敬と判断されて追い出される危険性もあるの、覚えておきなさい』
ときつく言われています。我慢です、ここは我慢なのです。そもそも、私以外の人たちは皆理解しているようで、誰も何も言いません。旦那様が最後まで語り終えるのを待っているようです。私も我慢なのです!!
「恐らく、公爵はアリアとリコッタに何か仕掛けてくる」
え!?
「クラリッサ、君は1ヶ月間、アリアの護衛に付け。リコッタは、1ヶ月間この敷地内から出るな」
《敷地内から出られないのですか!! 私にとって、外に出て少ない小遣いで買い食いするのが楽しみなのに~~。我慢です、1ヶ月間の我慢なのです。貯金して、1ヶ月後の買い食いを豪勢にすればいいのです》
「リコッタ、全部声に出ているから」
「ふえ!?」
不意に、お嬢様から教えられたので、変な声が出ちゃいました。
不覚です、全部声に出ていたとは。
旦那様も、笑っています。
なんだか、急に恥ずかしくなってきました。
先輩メイドのクラリッサさんも呆れています。
「ふ、こんな状況であっても、リコッタはリコッタだな。君に関しては、教育担当のルカに任せればいいだろう。クラリッサ、アリアのことを頼んだぞ」
「はい、お任せあれ。相手がマクガイン公爵家である以上、いつどこで襲われるかわかりませんので、しっかりと護衛させていただきます」
クラリッサさんは、《戦闘メイド》という上位メイドで、私たちの中で一番強いです。彼女がお嬢様を護ってくれるのなら、私も安心できます。私の場合、皆の言うことをきちんと聞いて、絶対に外に出ないようにしましょう。
「今、執事のエリオットたちがマクガイン公爵家の動向を探ってもらっている。情報が分かり次第、私も動こうと思っている。いいか、奴らは1ヶ月以内に必ず何かを仕掛けてくる。全員、気を抜くなよ。クラリッサ、明日の早朝、改めて全員をリビングに召集させろ。今日起きた出来事を全て伝えておく」
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