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第38話 村長
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「一難去って、また一難というところか」
火傷でボロボロになった身体を引き起こすと、ジョウシは刃の長い二本のナイフを握る手に力を込めて油断なく左右を警戒した。巨大な円形闘技場の前の広場に陣取った彼女の前方には五十人弱の屈強な戦士が扇形状に布陣して、隙あらば彼女を斬り伏せようと彼我の差をじりじり埋めつつあった。ジョウシは闘技場のエントランス前から身動きが取れない自身の境遇を愚痴りたかったが、それを聞いてくれたとしても、彼女が後ろに庇っている三十人あまりの非力な人間たちは慰めの言葉一つかけてはくれないだろう。彼らはそれほど現在の状況に大きな恐怖を感じて口もきけないほどに怯えていたからだ。彼らはファニュ以外に、ジョウシが出会った殺意を持たない唯一の人間たちだった。彼らは戦士と違って一様に灰色のみすぼらしい防寒着に身を包んでおり、年齢は―――人間は自分たちヴァンパイアより遙かに短命種なので、あくまで見た目ではあるが―――自分たちの両親ぐらいの者からファニュより幼い者まで、まちまちだった。
闘技場の屋上から落下して雪のクッションの中で気を失っていたジョウシを正気づかせたのは彼らの悲鳴の大合唱だった。完全に意識を回復した彼女は先ず状況を把握するため、うつ伏せのまま身体を起こしてみた。陽光に焼かれた皮膚が引き攣れて刺すような痛みが全身を貫いた。しかし痛みに堪えて観察しても悲鳴の先は緩いカーブを描く闘技場の外壁が邪魔をして見えなかった。
ジョウシは歯を食いしばって立ち上がると、吸い寄せられるように悲鳴の元をたどって進んだ。外壁に沿って暫く進んだ彼女の目に飛び込んできたのは凄惨極まりない行為だった。武器を持った者が持たない者を集団で追い回し、捕まえては命乞いもお構いなしに殺戮してゆく。しかもわざわざ手足を斬り刻んで出血させた上で、薄ら笑いを浮かべながら、次に喉を切り裂いていくのだ。 ジョウシの目は眼前で繰り広げられる蛮行に釘付けとなった。絶望的な悲鳴が耳朶を打つ毎に、彼女の心に芽生えた怒りは大きくなり、全身の激痛を抑え込んでいった。身体の弱い弟が村の子供たちに一方的にいじめられていた過去の思い出が脳裏に甦ってくる。ジョウシの傷ついた全身を血が激流となって駆け巡った。彼女はいてもたってもいられず、勢いよく赤く染まった舞台に飛び出した。
「お前たちの得物は弱きを、いたぶり殺すためのものか。それとも闘うためのものか?!」
戦士たちは突然現れたジョウシに一瞬たじろぎ、殺戮の手を止めたものの、相手がぼろ雑巾のような素手の小娘だと知ると、互いに顔を見合わせて下卑た笑い声をあげた。
「やることも下の下なら、笑い方も下品この上なしじゃな」
一番近くにいた戦士が二人、赤いシャーベット状の雪を蹴散らしてジョウシに近づいた。彼らが全身に纏った血糊の不快な刺激臭がジョウシの鼻をついたとき、二人の戦士はほとんど同時にその場に倒れた。ジョウシの両手には倒れた二人の腰から抜き取った刃の長い二本のナイフが、それぞれ逆手に握られていた。斃れた二人の血潮を浴びたジョウシの焼け爛れた皮膚が、見る見る再生してゆく。
「ゆめゆめ、我らヴァンパイアを侮ることなかれじゃ。うつけどもめ」
ジョウシは言い終わるや否や、別の二人の喉に鋭いアンダースローでナイフを投げつけ、彼らが地面に倒れるよりも早く、向かってきた別の二人から長刃のナイフを奪い取ると戦士の集団に斬りかかっていった。しかし重度の火傷が治癒しきっていないジョウシの動きは精彩を欠いていた。九人を斃した時点で、彼女は数でまだ優勢な戦士たちと膠着状態に陥ってしまった。ジョウシは間合いを計りながら、戦士たちから目を離さずに、今度は弱者たちへ声を掛けた。
「お前たちが何者かはわからぬが、我が後方にかたまれ。さぁ、早くするのじゃ!」
「怖いよ……」
弱音が聞こえた方にジョウシはちらりと視線を走らせた。視線の先にはファニュよりも幼い栗色の髪の痩せた少年がいた。その少年の瞳は絶望の中に一筋の光明を見出そうと必死にもがいていた。それがかつての弟のそれと重なった。
「助かりたくば、お前自身も闘え」
隙をついてジョウシに襲いかかろうとした一人の戦士が、彼女の投げたナイフに喉を深く刺し貫かれて絶命した。
「我れがついておる。恐ろしいのはわかるが、お前も闘うのじゃ」
ジョウシは戦士たちを牽制しながら死体に近づいて油断なく武器を回収すると、そのベルトからも武器を取って震える少年に投げ渡した。少年は両手に握った手斧の重さにたじろいだ。
「意識を研ぎ澄まし、たった一人の敵にだけ対峙せよ。その他には目もくれるな。さすれば道も開ける」
「でも、ぼく……」
「やるか、死ぬかじゃ」目に涙を溜めた少年にジョウシは言葉を継いだ。「他の者たちにも同じ事を伝えよ、武器は我れが斃した戦士のものが役立とう。よいな、では参るぞ」
討って出ようとした、その時だった。ジョウシの鋭い聴覚が聞いたこともない奇妙な雄叫びが急速に接近してくるのを捉えた。次いで固く踏みしめられた雪上からの振動で、それらがかなりの人数であることもわかった。ジョウシは自分が死ぬことなど微塵も考えなかった。むしろ心配なのはナナクサやファニュの安否だった。早く彼らと合流したい。でも命の危険にさらされた少年少女を含む三十人あまりの人間たちを置いていくことは、もはやできなかった。
「一難去って、また一難……」
ジョウシの口から、また愚痴が洩れた。いまや彼女は紛れもなく三十人あまりの人間たちを率いる村長だった。
*
勢力を盛り返した吸血鬼は誰もいない大通りを闘技場へ向けて通りをひた走っていた。彼らを動かす原動力はただ一つ。血への渇望。彼らは鼻をひくつかせ、空気中に漂い流れてくる微かな血の微粒子を嗅ぎ分けて、目標が近いことを本能的に悟った。やがて遥か前方に巨大な円形闘技場が姿を現した。そして、その前には襲ってくれと言わんばかりに多くの獲物がひしめいている。彼らは口々に人ならざる雄叫びをあげ、我れ先にその場所めがけて殺到していった。
*
ジョウシに対峙していた戦士のほとんどは自分らの後方から援軍が来たと思ったが、それも自分たちが襲われるまでの話だった。勘のいい戦士の何人かは襲撃される前に防戦準備をすることができたが、凶暴な吸血鬼たちが相手では所詮は、ただそれだけのことだった。吸血鬼たちは瞬く間に戦士たちの上に黒山となって群がり、襲われた戦士たちは訳もわからないままに引き裂かれ、血を啜られ、ものの二分もすると自分たちを襲った者たちの同類となって起き上がった。
ジョウシと三十人あまりの人間は、なにが起こっているのかわからなかったが、尋常ではないことが進行していることだけは感じとった。衝突から数分が経過したときだっただろうか。戦士の死体から顔を上げた吸血鬼の一体がジョウシたちを新たな獲物と認識するや、牙を剥いて飛び掛ってきた。ジョウシは咄嗟にナイフを放って空中でそれを撃ち落したが、喉を深々と直撃されたにも関わらず、その吸血鬼は暫くのたうち回った挙句に立ち上がろうとまでした。他の吸血鬼たちも戦士の死体から次々と顔を上げはじめた。それを見たジョウシはやっと大声で指示を出した。
「退け。闘技場の中に入るのじゃ!」
闘技場と聞いて逃げる途中に身体を強張らせた者が何人もいた。不幸にもそのうちの二人は側面から襲い掛かってきた吸血鬼の餌食となった。ジョウシは残った人間を闘技場に急きたてつつ、自身は彼らを守って蟻のように追いすがる吸血鬼軍団を蹴散らしては前に進んだ。人間たちは、やっと幅広い石造りの十段ほどの階段を駆け上がった。しかし上りきったエントランス前で完全に動きが停まってしまった。
「なにをしておるのじゃ、お前たち?!」
「ジョウシ」
自分の名を呼ぶ声に、ジョウシは自分の耳を疑った。
「ジョウシ」
再び聞こえた仲間の声は自分が守ると決めた人間たちの先頭の方から聞こえた。人間たちが壁になって、その人物は見えなかったが、それは間違いなくチョウヨウの声だった。
「聞こえてんなら返事ぐらいしなよ、このチビ助」
「なに用じゃ?」ジョウシは警戒感を隠そうともしなかった。
「あんたに止めてもらいたいんだ」
ジョウシは自分を呼ぶチョウヨウの声がした途端、人間たちを半包囲している吸血鬼軍団の動きがピタリと止んだことに気付いてはいたが、敢えて言葉をはぐらかした。
「怯えた人間たちの動きなら、もう止まっておろう」
「あんたが相変わらずの皮肉屋で安心したよ……」
チョウヨウの言葉尻が急に消え入るようになり、咳きこんだのが合図でもあったかのように吸血鬼軍団が人間の集団に一歩にじり寄った。
「お前に一つ問うが、この怪物どもはなんじゃ?」
ジョウシの問いは沈黙で応じられた。
「説明したくはないようじゃな」
「あたいがね」心の痛みをチョウヨウがみせた。「あたいが造っちまったのさ、そいつらを……」
「話が見えぬぞ」
「そうだろうね」チョウヨウは苦しそうに咳き込んだ。
「これでは埒が明かぬ。今より、そちらへ行く」ジョウシはいったん言葉を切った。「ところで、この怪物どもじゃが……」
「大丈夫」チョウヨウはジョウシの懸念を察して彼女の言葉を遮った。「たぶん、大丈夫だ」
ジョウシは油断な吸血鬼軍団に睨みを利かすと、怯える人間たちの間をかき分けて闘技場のエントランス前に進み出た。そこにはチョウヨウと彼女を支えて立っているタンゴがいた。ジョウシには自分より頭一つ半は大きいはずのチョウヨウの姿が随分と小さく見えた。それほど目の前の仲間はやつれきっていたのだ。
「酷い姿じゃな、二人とも」
「あんたこそ、見られたもんじゃないよ」
チョウヨウは乾いた弱々しい笑い声をたてた。
「お願いだ。この人をあんたに止めてほしいんだ」
超然と佇むタンゴにジョウシは視線を移した。
「想い人の暴走を止めに行った者が、今度は止めらるる側になったというわけか、タンゴ?」
タンゴはジョウシに顔を向けた。しかし、その目はガラス球のように無表情で、そこには自分が知っている陽気で仲間思いの青年の姿はなかった。
「あたいのために悪いことをしようとしてんだよ」チョウヨウは哀願した。「いくら言っても聞き入れてくんないから、あんたに頼むんだ。あたいが造っちまった奴らは見ての通り、“やめろ”って念じたら、辛うじて止まったんだが、それだって、いつまでもつかわかんない。もう限界なんだよ、あたい……」
「堪えよ、チョウヨウ。頑張るのじゃ」
気丈な者の弱音ほど聞いていると居たたまれなくなる。それが苦楽を共にしてきた仲間であるなら、なおさらだ。チョウヨウに陳腐な言葉しか掛けてやれない自分の非力がジョウシは恨めしかった。
「さっき、身体を支配してた奴をやっつけてやろうとしたんだけど、駄目だった。それどころか、言葉が何度も何度も頭の芯にズキズキ響くんだ。『人間の血を飲め。飲めば傷も治る。楽になる』って……」
「そうだよ、チョウヨウ」突然、タンゴが口を開いた。「さっき僕も言ったろ。血だよ。嫌だろうけど飲むんだ。そしてたっぷりと傷にも塗りこめばいい。しっかり両方やるんだ。そうすれば、きっと良くなる。でも、戦士の汚れた血だけは絶対に駄目だ」
「もうよせ、タンゴ」
「ジョウシ……」タンゴは自分をたしなめたジョウシを見ると、彼女がいたことに、いま初めて気付いたように目を見開いた。「そうだ。君からも言ってやってくれよ、君が言ってたことを」
「我れが何を言うた?」
「忘れたとは言わせないぞ」タンゴのガラス球のような目に狂気の炎が瞬いた。「ほら、橇で話してたじゃないか。チョウヨウがおかしくなったのも、蘇りが遅れたのも、邪悪な血を使ったからだって」
「断言してはおらぬ」
「でも、まだやってないことを試さなきゃ。ナナクサがいれば、きっと同じことをするはずだよ」
「なにをしようというのじゃ?」
「『なにを』って。邪悪な戦士のじゃなく、彼らの血を使うんじゃないか」
タンゴは怯えた人間の中でも少年と少女を顎で指し示すと、ジョウシの顔を見やった。
「ナナクサなら絶対に賛成はすまいな」
「わかんない奴だな、君は。だから試してみるんだよ。それに心配しなくたっていい。別に彼らを殺そうなんて思ってないんだから。彼らからは汚染されてない新鮮で健康な血を少しもらうだけなんだ。それを使うだけだ。どうだい、君も名案だって思うだろ?」
ジョウシはゆっくりと頭を横に振った。
「こんな年端もゆかぬ子どもから血を獲るのか。で、どれほどの量じゃ。もし足りなければどうする、この子らが死ぬまで絞りつくすつもりか。それに人間たちの周りの怪物どもはどうじゃ。血を見ても大人しくしておるのか。あんなに、もの欲しそうに鼻をひくつかせておるぞよ」
「あいつらなら」タンゴは考えをまとめようとして言いよどんだ。「チョウヨウの命令がなきゃ動かないさ。今だってそうだろ。命令には絶対忠実なんだ」
「チョウヨウの状態が、お前にわからぬでもなかろう。抑えておくのも、もう限界のようじゃが」
「そんなことはない」
「お前らしくもない、冷静になれ」
「僕は正気だ!」
「いや。今のお前は……」
「うるさい!」
タンゴは突如、ジョウシの首を掴むとぐいと締め上げた。チョウヨウは彼の腕をもぎ放そうと試みたが、深手を負った彼女の力ではどうすることもできなかった。ジョウシの頸骨が軋む音がチョウヨウにも聞こえた。チョウヨウは苦肉の策にうってでた。彼女は正面にいた人間の少女からナイフを奪い取ると、自らのみぞおちに刃を当ててるや否や、それを一気に滑り込ませた。鋭い刃が肺を破って心臓に達すると気管を逆流した血がチョウヨウを激しく咳き込ませて大量吐血に導いた。彼女が血溜まりに膝を屈すると、吸血鬼軍団は自分たちを造った者の軛を解かれるどころか、一斉に両膝を屈して苦痛に顔を歪めた。
「駄目だー!」
自ら命を断とうとしたチョウヨウの姿にタンゴが恐怖の叫び声を上げた。彼はジョウシを放り出してチョウヨウに駆け寄ると彼女を抱きかかえてナイフを引き抜いた。傷口を押さえたタンゴの掌がみるみる真っ赤に染まっていった。タンゴの口から再び絶叫がほとばしった。それと同時に彼の身体から黒い靄が染み出してチョウヨウの傷口を掌ごと覆った。
「お姉ちゃん!」
投げ出されたジョウシは栗色の髪の痩せた少年の大声で我にかえった。数瞬前まで膝を屈していた吸血鬼軍団だったが、今は先ほどよりも毒々しい活気に満ち溢れていた。彼らは血を求めてジョウシが保護している人間たちに飛びかかろうと身構えた。その時、なんの前触れもなくエントランスの内側から大きな音が鳴り響いた。闘技場内へと続く大扉の閂が外れる音だ。続いて奥へと続く重い扉が次々と開け放たれ、そこから長い廊下の先にあるフィールドの一角が垣間見えた。ジョウシのヴァンパイアの目は巨大な何かから逃げ回る傷だらけのナナクサの姿をフィールドの遙か彼方に認めた。
「ナナクサ……」
吸血鬼軍団の行動は、さながら狭い場所に吹き込む疾風のようだった。彼らは新たな命令が出たかのように目の前の獲物そっちのけで、エントランスから闘技場のフィールドを目指して移動していった。
後には瀕死のチョウヨウと彼女を抱きかかえて悲嘆にくれるタンゴ。ジョウシと彼女を取り巻く三十人足らずの人間たちだけが残された。
火傷でボロボロになった身体を引き起こすと、ジョウシは刃の長い二本のナイフを握る手に力を込めて油断なく左右を警戒した。巨大な円形闘技場の前の広場に陣取った彼女の前方には五十人弱の屈強な戦士が扇形状に布陣して、隙あらば彼女を斬り伏せようと彼我の差をじりじり埋めつつあった。ジョウシは闘技場のエントランス前から身動きが取れない自身の境遇を愚痴りたかったが、それを聞いてくれたとしても、彼女が後ろに庇っている三十人あまりの非力な人間たちは慰めの言葉一つかけてはくれないだろう。彼らはそれほど現在の状況に大きな恐怖を感じて口もきけないほどに怯えていたからだ。彼らはファニュ以外に、ジョウシが出会った殺意を持たない唯一の人間たちだった。彼らは戦士と違って一様に灰色のみすぼらしい防寒着に身を包んでおり、年齢は―――人間は自分たちヴァンパイアより遙かに短命種なので、あくまで見た目ではあるが―――自分たちの両親ぐらいの者からファニュより幼い者まで、まちまちだった。
闘技場の屋上から落下して雪のクッションの中で気を失っていたジョウシを正気づかせたのは彼らの悲鳴の大合唱だった。完全に意識を回復した彼女は先ず状況を把握するため、うつ伏せのまま身体を起こしてみた。陽光に焼かれた皮膚が引き攣れて刺すような痛みが全身を貫いた。しかし痛みに堪えて観察しても悲鳴の先は緩いカーブを描く闘技場の外壁が邪魔をして見えなかった。
ジョウシは歯を食いしばって立ち上がると、吸い寄せられるように悲鳴の元をたどって進んだ。外壁に沿って暫く進んだ彼女の目に飛び込んできたのは凄惨極まりない行為だった。武器を持った者が持たない者を集団で追い回し、捕まえては命乞いもお構いなしに殺戮してゆく。しかもわざわざ手足を斬り刻んで出血させた上で、薄ら笑いを浮かべながら、次に喉を切り裂いていくのだ。 ジョウシの目は眼前で繰り広げられる蛮行に釘付けとなった。絶望的な悲鳴が耳朶を打つ毎に、彼女の心に芽生えた怒りは大きくなり、全身の激痛を抑え込んでいった。身体の弱い弟が村の子供たちに一方的にいじめられていた過去の思い出が脳裏に甦ってくる。ジョウシの傷ついた全身を血が激流となって駆け巡った。彼女はいてもたってもいられず、勢いよく赤く染まった舞台に飛び出した。
「お前たちの得物は弱きを、いたぶり殺すためのものか。それとも闘うためのものか?!」
戦士たちは突然現れたジョウシに一瞬たじろぎ、殺戮の手を止めたものの、相手がぼろ雑巾のような素手の小娘だと知ると、互いに顔を見合わせて下卑た笑い声をあげた。
「やることも下の下なら、笑い方も下品この上なしじゃな」
一番近くにいた戦士が二人、赤いシャーベット状の雪を蹴散らしてジョウシに近づいた。彼らが全身に纏った血糊の不快な刺激臭がジョウシの鼻をついたとき、二人の戦士はほとんど同時にその場に倒れた。ジョウシの両手には倒れた二人の腰から抜き取った刃の長い二本のナイフが、それぞれ逆手に握られていた。斃れた二人の血潮を浴びたジョウシの焼け爛れた皮膚が、見る見る再生してゆく。
「ゆめゆめ、我らヴァンパイアを侮ることなかれじゃ。うつけどもめ」
ジョウシは言い終わるや否や、別の二人の喉に鋭いアンダースローでナイフを投げつけ、彼らが地面に倒れるよりも早く、向かってきた別の二人から長刃のナイフを奪い取ると戦士の集団に斬りかかっていった。しかし重度の火傷が治癒しきっていないジョウシの動きは精彩を欠いていた。九人を斃した時点で、彼女は数でまだ優勢な戦士たちと膠着状態に陥ってしまった。ジョウシは間合いを計りながら、戦士たちから目を離さずに、今度は弱者たちへ声を掛けた。
「お前たちが何者かはわからぬが、我が後方にかたまれ。さぁ、早くするのじゃ!」
「怖いよ……」
弱音が聞こえた方にジョウシはちらりと視線を走らせた。視線の先にはファニュよりも幼い栗色の髪の痩せた少年がいた。その少年の瞳は絶望の中に一筋の光明を見出そうと必死にもがいていた。それがかつての弟のそれと重なった。
「助かりたくば、お前自身も闘え」
隙をついてジョウシに襲いかかろうとした一人の戦士が、彼女の投げたナイフに喉を深く刺し貫かれて絶命した。
「我れがついておる。恐ろしいのはわかるが、お前も闘うのじゃ」
ジョウシは戦士たちを牽制しながら死体に近づいて油断なく武器を回収すると、そのベルトからも武器を取って震える少年に投げ渡した。少年は両手に握った手斧の重さにたじろいだ。
「意識を研ぎ澄まし、たった一人の敵にだけ対峙せよ。その他には目もくれるな。さすれば道も開ける」
「でも、ぼく……」
「やるか、死ぬかじゃ」目に涙を溜めた少年にジョウシは言葉を継いだ。「他の者たちにも同じ事を伝えよ、武器は我れが斃した戦士のものが役立とう。よいな、では参るぞ」
討って出ようとした、その時だった。ジョウシの鋭い聴覚が聞いたこともない奇妙な雄叫びが急速に接近してくるのを捉えた。次いで固く踏みしめられた雪上からの振動で、それらがかなりの人数であることもわかった。ジョウシは自分が死ぬことなど微塵も考えなかった。むしろ心配なのはナナクサやファニュの安否だった。早く彼らと合流したい。でも命の危険にさらされた少年少女を含む三十人あまりの人間たちを置いていくことは、もはやできなかった。
「一難去って、また一難……」
ジョウシの口から、また愚痴が洩れた。いまや彼女は紛れもなく三十人あまりの人間たちを率いる村長だった。
*
勢力を盛り返した吸血鬼は誰もいない大通りを闘技場へ向けて通りをひた走っていた。彼らを動かす原動力はただ一つ。血への渇望。彼らは鼻をひくつかせ、空気中に漂い流れてくる微かな血の微粒子を嗅ぎ分けて、目標が近いことを本能的に悟った。やがて遥か前方に巨大な円形闘技場が姿を現した。そして、その前には襲ってくれと言わんばかりに多くの獲物がひしめいている。彼らは口々に人ならざる雄叫びをあげ、我れ先にその場所めがけて殺到していった。
*
ジョウシに対峙していた戦士のほとんどは自分らの後方から援軍が来たと思ったが、それも自分たちが襲われるまでの話だった。勘のいい戦士の何人かは襲撃される前に防戦準備をすることができたが、凶暴な吸血鬼たちが相手では所詮は、ただそれだけのことだった。吸血鬼たちは瞬く間に戦士たちの上に黒山となって群がり、襲われた戦士たちは訳もわからないままに引き裂かれ、血を啜られ、ものの二分もすると自分たちを襲った者たちの同類となって起き上がった。
ジョウシと三十人あまりの人間は、なにが起こっているのかわからなかったが、尋常ではないことが進行していることだけは感じとった。衝突から数分が経過したときだっただろうか。戦士の死体から顔を上げた吸血鬼の一体がジョウシたちを新たな獲物と認識するや、牙を剥いて飛び掛ってきた。ジョウシは咄嗟にナイフを放って空中でそれを撃ち落したが、喉を深々と直撃されたにも関わらず、その吸血鬼は暫くのたうち回った挙句に立ち上がろうとまでした。他の吸血鬼たちも戦士の死体から次々と顔を上げはじめた。それを見たジョウシはやっと大声で指示を出した。
「退け。闘技場の中に入るのじゃ!」
闘技場と聞いて逃げる途中に身体を強張らせた者が何人もいた。不幸にもそのうちの二人は側面から襲い掛かってきた吸血鬼の餌食となった。ジョウシは残った人間を闘技場に急きたてつつ、自身は彼らを守って蟻のように追いすがる吸血鬼軍団を蹴散らしては前に進んだ。人間たちは、やっと幅広い石造りの十段ほどの階段を駆け上がった。しかし上りきったエントランス前で完全に動きが停まってしまった。
「なにをしておるのじゃ、お前たち?!」
「ジョウシ」
自分の名を呼ぶ声に、ジョウシは自分の耳を疑った。
「ジョウシ」
再び聞こえた仲間の声は自分が守ると決めた人間たちの先頭の方から聞こえた。人間たちが壁になって、その人物は見えなかったが、それは間違いなくチョウヨウの声だった。
「聞こえてんなら返事ぐらいしなよ、このチビ助」
「なに用じゃ?」ジョウシは警戒感を隠そうともしなかった。
「あんたに止めてもらいたいんだ」
ジョウシは自分を呼ぶチョウヨウの声がした途端、人間たちを半包囲している吸血鬼軍団の動きがピタリと止んだことに気付いてはいたが、敢えて言葉をはぐらかした。
「怯えた人間たちの動きなら、もう止まっておろう」
「あんたが相変わらずの皮肉屋で安心したよ……」
チョウヨウの言葉尻が急に消え入るようになり、咳きこんだのが合図でもあったかのように吸血鬼軍団が人間の集団に一歩にじり寄った。
「お前に一つ問うが、この怪物どもはなんじゃ?」
ジョウシの問いは沈黙で応じられた。
「説明したくはないようじゃな」
「あたいがね」心の痛みをチョウヨウがみせた。「あたいが造っちまったのさ、そいつらを……」
「話が見えぬぞ」
「そうだろうね」チョウヨウは苦しそうに咳き込んだ。
「これでは埒が明かぬ。今より、そちらへ行く」ジョウシはいったん言葉を切った。「ところで、この怪物どもじゃが……」
「大丈夫」チョウヨウはジョウシの懸念を察して彼女の言葉を遮った。「たぶん、大丈夫だ」
ジョウシは油断な吸血鬼軍団に睨みを利かすと、怯える人間たちの間をかき分けて闘技場のエントランス前に進み出た。そこにはチョウヨウと彼女を支えて立っているタンゴがいた。ジョウシには自分より頭一つ半は大きいはずのチョウヨウの姿が随分と小さく見えた。それほど目の前の仲間はやつれきっていたのだ。
「酷い姿じゃな、二人とも」
「あんたこそ、見られたもんじゃないよ」
チョウヨウは乾いた弱々しい笑い声をたてた。
「お願いだ。この人をあんたに止めてほしいんだ」
超然と佇むタンゴにジョウシは視線を移した。
「想い人の暴走を止めに行った者が、今度は止めらるる側になったというわけか、タンゴ?」
タンゴはジョウシに顔を向けた。しかし、その目はガラス球のように無表情で、そこには自分が知っている陽気で仲間思いの青年の姿はなかった。
「あたいのために悪いことをしようとしてんだよ」チョウヨウは哀願した。「いくら言っても聞き入れてくんないから、あんたに頼むんだ。あたいが造っちまった奴らは見ての通り、“やめろ”って念じたら、辛うじて止まったんだが、それだって、いつまでもつかわかんない。もう限界なんだよ、あたい……」
「堪えよ、チョウヨウ。頑張るのじゃ」
気丈な者の弱音ほど聞いていると居たたまれなくなる。それが苦楽を共にしてきた仲間であるなら、なおさらだ。チョウヨウに陳腐な言葉しか掛けてやれない自分の非力がジョウシは恨めしかった。
「さっき、身体を支配してた奴をやっつけてやろうとしたんだけど、駄目だった。それどころか、言葉が何度も何度も頭の芯にズキズキ響くんだ。『人間の血を飲め。飲めば傷も治る。楽になる』って……」
「そうだよ、チョウヨウ」突然、タンゴが口を開いた。「さっき僕も言ったろ。血だよ。嫌だろうけど飲むんだ。そしてたっぷりと傷にも塗りこめばいい。しっかり両方やるんだ。そうすれば、きっと良くなる。でも、戦士の汚れた血だけは絶対に駄目だ」
「もうよせ、タンゴ」
「ジョウシ……」タンゴは自分をたしなめたジョウシを見ると、彼女がいたことに、いま初めて気付いたように目を見開いた。「そうだ。君からも言ってやってくれよ、君が言ってたことを」
「我れが何を言うた?」
「忘れたとは言わせないぞ」タンゴのガラス球のような目に狂気の炎が瞬いた。「ほら、橇で話してたじゃないか。チョウヨウがおかしくなったのも、蘇りが遅れたのも、邪悪な血を使ったからだって」
「断言してはおらぬ」
「でも、まだやってないことを試さなきゃ。ナナクサがいれば、きっと同じことをするはずだよ」
「なにをしようというのじゃ?」
「『なにを』って。邪悪な戦士のじゃなく、彼らの血を使うんじゃないか」
タンゴは怯えた人間の中でも少年と少女を顎で指し示すと、ジョウシの顔を見やった。
「ナナクサなら絶対に賛成はすまいな」
「わかんない奴だな、君は。だから試してみるんだよ。それに心配しなくたっていい。別に彼らを殺そうなんて思ってないんだから。彼らからは汚染されてない新鮮で健康な血を少しもらうだけなんだ。それを使うだけだ。どうだい、君も名案だって思うだろ?」
ジョウシはゆっくりと頭を横に振った。
「こんな年端もゆかぬ子どもから血を獲るのか。で、どれほどの量じゃ。もし足りなければどうする、この子らが死ぬまで絞りつくすつもりか。それに人間たちの周りの怪物どもはどうじゃ。血を見ても大人しくしておるのか。あんなに、もの欲しそうに鼻をひくつかせておるぞよ」
「あいつらなら」タンゴは考えをまとめようとして言いよどんだ。「チョウヨウの命令がなきゃ動かないさ。今だってそうだろ。命令には絶対忠実なんだ」
「チョウヨウの状態が、お前にわからぬでもなかろう。抑えておくのも、もう限界のようじゃが」
「そんなことはない」
「お前らしくもない、冷静になれ」
「僕は正気だ!」
「いや。今のお前は……」
「うるさい!」
タンゴは突如、ジョウシの首を掴むとぐいと締め上げた。チョウヨウは彼の腕をもぎ放そうと試みたが、深手を負った彼女の力ではどうすることもできなかった。ジョウシの頸骨が軋む音がチョウヨウにも聞こえた。チョウヨウは苦肉の策にうってでた。彼女は正面にいた人間の少女からナイフを奪い取ると、自らのみぞおちに刃を当ててるや否や、それを一気に滑り込ませた。鋭い刃が肺を破って心臓に達すると気管を逆流した血がチョウヨウを激しく咳き込ませて大量吐血に導いた。彼女が血溜まりに膝を屈すると、吸血鬼軍団は自分たちを造った者の軛を解かれるどころか、一斉に両膝を屈して苦痛に顔を歪めた。
「駄目だー!」
自ら命を断とうとしたチョウヨウの姿にタンゴが恐怖の叫び声を上げた。彼はジョウシを放り出してチョウヨウに駆け寄ると彼女を抱きかかえてナイフを引き抜いた。傷口を押さえたタンゴの掌がみるみる真っ赤に染まっていった。タンゴの口から再び絶叫がほとばしった。それと同時に彼の身体から黒い靄が染み出してチョウヨウの傷口を掌ごと覆った。
「お姉ちゃん!」
投げ出されたジョウシは栗色の髪の痩せた少年の大声で我にかえった。数瞬前まで膝を屈していた吸血鬼軍団だったが、今は先ほどよりも毒々しい活気に満ち溢れていた。彼らは血を求めてジョウシが保護している人間たちに飛びかかろうと身構えた。その時、なんの前触れもなくエントランスの内側から大きな音が鳴り響いた。闘技場内へと続く大扉の閂が外れる音だ。続いて奥へと続く重い扉が次々と開け放たれ、そこから長い廊下の先にあるフィールドの一角が垣間見えた。ジョウシのヴァンパイアの目は巨大な何かから逃げ回る傷だらけのナナクサの姿をフィールドの遙か彼方に認めた。
「ナナクサ……」
吸血鬼軍団の行動は、さながら狭い場所に吹き込む疾風のようだった。彼らは新たな命令が出たかのように目の前の獲物そっちのけで、エントランスから闘技場のフィールドを目指して移動していった。
後には瀕死のチョウヨウと彼女を抱きかかえて悲嘆にくれるタンゴ。ジョウシと彼女を取り巻く三十人足らずの人間たちだけが残された。
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