11 / 51
第11話 最初の血
しおりを挟む
「無理なことをおっしゃられても困りますなぁ」と隊商を預かる世話役が苦笑いを張り付けた顔で首を横に振った。
「人を差し出さないのは、第一指導者に対する反逆だぞ」と隊商の行く手を遮った戦士が淡々とした口調でそう告げた。二名の戦士を両脇に従えた、抜け目のない鋭い目をした徴用係りの卒長である。
「滅相もございません」と世話役は心外そうに両手を胸にやると頭を垂れた。「喜んでお手伝いさせていただきますとも。それが、この世に生きる者の務めでございますから。ですが、村にいる間にしていただきたかったですなぁ。もしそうなら私どもの隊商も不足になった人員を募集できましたのに」
「村は村で、また戦士の徴用が行われる。どの道、村では隊商の募集も無理だろう」
「そんなことをおっしゃらず」
世話役は卒長の袖を引いて橇の脇へ連れて行った。その時、雪走り烏賊の馭者にそっと目配せをした。馭者は卒長を含む三名の徴用係の戦士たちから目を離さず、彼らからは死角になる方の手をシートの横に備え付けた弩弓の上にそっと滑らせた。その微かな動きを察した他の橇の馭者や隊商の警護たちも各々が自分の武器が手近にあるのを確かめた。
「こうしませんか?」無駄と知りつつ世話役は最初で最後の交渉を試みた。「徴用を見逃していただけたら、一週間分の食糧の他に深海鮫の肉も少々つけましょう。どうです?」
「深海鮫もか?」
「えぇ」
卒長の片眉が上がった。それを見た世話役は少なからぬ拍子抜けを感じた。戦士。特に徴用係りの戦士はまったく交渉に応じないと思っていたからだ。応じなければ応じないでいい。そうなれば半年前の戦士たちと同様、立派に殉教させてやった後、鮫釣りの餌にできたのに。そう思うと世話役は心の中で舌打ちせずにはいられなかった。だが彼はそんな失望をおくびにも出さず作り笑いを浮かべた。
「取引成立ですな。では一週間分の……」
「全部だ」
「はぁ?」
「食糧は全部いただく」
耳を疑った世話役は下腹に鋭い激痛が走るのを感じた。そして彼は膝を屈した。橇の馭者や警護は世話役が倒れるのと同時に攻撃を開始した。もちろん彼らの攻撃は三名の戦士にのみ向けられたのだが、馭者たちが二名の戦士を倒し、次の矢を弩弓に装填する間隙をぬって、雪原の中から彼らに向けて狙いすました矢が次々と放たれた。奇襲はあってという間に終わった。卒長が盾にした世話役の骸を離すと、雪原に掘った穴からを武装した男女の戦士が飛び出してきた。その中の一人が卒長に詰め寄ると彼を非難し始めた。
「奴ら、食糧を出すと言ってたぞ」
「一週間分だけだ」
「でも死人が出た」彼女は無数の矢に貫かれた戦士二名の死体を指差した。「あの中の一人は私の腹心だ」
「食い扶持が増えて良かったと思え」
なおも非難しようとする女戦士を突き飛ばした卒長は、武装を解除された隊商の生き残りの商人たちを眺め渡した。武器を突き付けられ、みな一様に怯えている。
「こいつらは、どうする?」戦士の一人が卒長に尋ねた。「戦士が無暗に隊商の人間を殺したと噂になれば、あのクソ指導者が黙ってないだろ。追っ手が掛かるぞ」
「『戦士が』じゃなくて盗賊が、だろ」
腹心を亡くした怒りから女戦士が唸るように歯を剥いた。
「盗賊どころか」と、卒長は女戦士を無視した。「俺たちは逃亡中の身だ。捕まれば並の極刑では済まん。だから喋る口と食べる口は少いに越したことはないんじゃないか」
そう言うと卒長は振り向きざまに近くにいた一人の商人の首に剣を力一杯振り下ろした。
*
その存在は、目覚めた時に必ずすることがあった。それは食事のように必要に駆られての行為ではなく、ましてや優雅に嗜好を満たすための欲求ですらなかった。敢えて言えば、それは意地や挑戦に類するものといってもよかった。だから止めるという選択肢はないも同然だった。その存在は陽が照りつける白銀の世界を黒い疾風になって駆けると、人間たちで賑わう城塞都市に辿りついた。そして城門前の大岩の陰で壮年男性の姿をとると、様々な防寒着に身を包んだ老若男女の隊商が行き交う城門前までゆっくりと歩を進め、挑むべきその巨大な敵を見上げた。やがて城門から雪走り烏賊に曳かれて出てきた数台の橇から道行く人間たちに視線を戻すと、彼は城門に向かって歩きだした。だが、城門からほんの少し手前でいつものように足が停まった。いくら頑張っても彼は城門に一歩も足を踏み入れることができなかった。遠い昔には捕まえた人間を脅して城門内に招待させようと試みたこともあった。また、いつの世にもいる波長の合う邪な者を使ったり、催眠術で人の心を操って侵入しようとしたこともあった。しかし、厳しい生存環境に置かれた人間には多かれ少なかれ、彼とは正反対の存在を崇める信仰の断片が心の内にあった。そのおかげで彼のもくろみは頓挫し、いつも中に入ることができないのだった。
今回も彼の挑戦は失敗に終わった。自分が完全であると信じるが故に、その苛立ちは尋常ではなかった。しかし完全なる存在を自負するが故に、また彼はその苛立ちを懸命に飲み込んだ。彼は自嘲するように少しだけ首を左右に振ると、再び身体を薄く溶け広がる黒煙に変えて大空へと姿を消した。そして苛立ちから再び感じ始めた食欲を満たすため、あてどなく雪原上を移動していたところで人間どもの殺し合いに出くわし、その甘美さに我を忘れて魅入ってしまった。なぜなら恐怖や痛み、特に神の似姿とされる人間同士が醸し出す憎悪の波動は、食欲はおろか、何ものにも増して彼の苛立ちを癒すだけでなく、心の空虚を埋めてくれる妙薬だったからだ。
その突発事態が起こるほんの少し前、存在は黒煙に変えた身体を人間の目には捉えられない薄さに広げ、狙いをつけたその集団を魚網のように包み込んでいた。そして五百年ぶりの悦びに身を震わせた。戦でも起こらない限り、決してありつくことができない幸せに酔いしれた。しかし思わぬ事態が最高のショーを台無しにしてしまった。突然の闖入者だ。その存在は闖入者に戸惑いつつも、それを察知できなかった隙だらけの自分に腹が立った。突発事態が起こったのは隊商と複数の戦士集団に対してだった。隊商の世話役を謀殺した卒長が、先ず闖入者に襲われた。闖入者の姿は人間のスピードでは到底捉えることができず、戦士と生き残りの商人たちは、事態を把握できないままに次々と切り裂かれた喉から血煙を上げて倒れていった。
その存在は我に返ると、この無粋な闖入者と、そいつが繰り広げる行為に激怒した。生き残りの商人たちに最大の恐怖と痛みをもたらす戦士たちを殺されて怒り狂った。しかもそれを奪った闖入者が自分の子孫であることを感じ取るや、怒りの炎はさらに激しく燃え上がった。その存在は残った人間に襲いかかろうとした闖入者を薄く溶け広がった黒煙の身体で絡め取ると、大地に目一杯に叩きつけた。そして黒煙の身体をいつもの痩せた壮年男性の姿に変えると、乱れた黒髪をそのままに邪魔者を睨みつけた。たとえ子孫でも、この暴挙を許すことはできない。どうしてやろうか。先ずはその精神をズタズタに引き裂き、次に細胞の一片一片に忘れえぬ苦痛を与え、その上で滅ぼしてくれようか。残虐な怒りにうち震えながら、彼は倒れている子孫を見下した。そして自分の心を子孫のそれにナイフのようにズブリと抉り込ませた。抉り込ませた先からは目覚めた時に感じた、あの時の揺らぎが、どっとあふれ出たことに彼は驚いた。自分のものに勝るとも劣らないドス黒さが彼の身体を隅々まで満たした。
「これは、これは」
彼は思わずそう呟くと、あれほど怒り狂っていた心を一挙に冷まし、三日月のように目を細めた。
「これは、これは」
彼は楽しげに、そうつぶやきながら大きく広げた両腕に迎え入れるかのように一歩一歩、踊るように倒れ伏した子孫に近づいていった。
「人を差し出さないのは、第一指導者に対する反逆だぞ」と隊商の行く手を遮った戦士が淡々とした口調でそう告げた。二名の戦士を両脇に従えた、抜け目のない鋭い目をした徴用係りの卒長である。
「滅相もございません」と世話役は心外そうに両手を胸にやると頭を垂れた。「喜んでお手伝いさせていただきますとも。それが、この世に生きる者の務めでございますから。ですが、村にいる間にしていただきたかったですなぁ。もしそうなら私どもの隊商も不足になった人員を募集できましたのに」
「村は村で、また戦士の徴用が行われる。どの道、村では隊商の募集も無理だろう」
「そんなことをおっしゃらず」
世話役は卒長の袖を引いて橇の脇へ連れて行った。その時、雪走り烏賊の馭者にそっと目配せをした。馭者は卒長を含む三名の徴用係の戦士たちから目を離さず、彼らからは死角になる方の手をシートの横に備え付けた弩弓の上にそっと滑らせた。その微かな動きを察した他の橇の馭者や隊商の警護たちも各々が自分の武器が手近にあるのを確かめた。
「こうしませんか?」無駄と知りつつ世話役は最初で最後の交渉を試みた。「徴用を見逃していただけたら、一週間分の食糧の他に深海鮫の肉も少々つけましょう。どうです?」
「深海鮫もか?」
「えぇ」
卒長の片眉が上がった。それを見た世話役は少なからぬ拍子抜けを感じた。戦士。特に徴用係りの戦士はまったく交渉に応じないと思っていたからだ。応じなければ応じないでいい。そうなれば半年前の戦士たちと同様、立派に殉教させてやった後、鮫釣りの餌にできたのに。そう思うと世話役は心の中で舌打ちせずにはいられなかった。だが彼はそんな失望をおくびにも出さず作り笑いを浮かべた。
「取引成立ですな。では一週間分の……」
「全部だ」
「はぁ?」
「食糧は全部いただく」
耳を疑った世話役は下腹に鋭い激痛が走るのを感じた。そして彼は膝を屈した。橇の馭者や警護は世話役が倒れるのと同時に攻撃を開始した。もちろん彼らの攻撃は三名の戦士にのみ向けられたのだが、馭者たちが二名の戦士を倒し、次の矢を弩弓に装填する間隙をぬって、雪原の中から彼らに向けて狙いすました矢が次々と放たれた。奇襲はあってという間に終わった。卒長が盾にした世話役の骸を離すと、雪原に掘った穴からを武装した男女の戦士が飛び出してきた。その中の一人が卒長に詰め寄ると彼を非難し始めた。
「奴ら、食糧を出すと言ってたぞ」
「一週間分だけだ」
「でも死人が出た」彼女は無数の矢に貫かれた戦士二名の死体を指差した。「あの中の一人は私の腹心だ」
「食い扶持が増えて良かったと思え」
なおも非難しようとする女戦士を突き飛ばした卒長は、武装を解除された隊商の生き残りの商人たちを眺め渡した。武器を突き付けられ、みな一様に怯えている。
「こいつらは、どうする?」戦士の一人が卒長に尋ねた。「戦士が無暗に隊商の人間を殺したと噂になれば、あのクソ指導者が黙ってないだろ。追っ手が掛かるぞ」
「『戦士が』じゃなくて盗賊が、だろ」
腹心を亡くした怒りから女戦士が唸るように歯を剥いた。
「盗賊どころか」と、卒長は女戦士を無視した。「俺たちは逃亡中の身だ。捕まれば並の極刑では済まん。だから喋る口と食べる口は少いに越したことはないんじゃないか」
そう言うと卒長は振り向きざまに近くにいた一人の商人の首に剣を力一杯振り下ろした。
*
その存在は、目覚めた時に必ずすることがあった。それは食事のように必要に駆られての行為ではなく、ましてや優雅に嗜好を満たすための欲求ですらなかった。敢えて言えば、それは意地や挑戦に類するものといってもよかった。だから止めるという選択肢はないも同然だった。その存在は陽が照りつける白銀の世界を黒い疾風になって駆けると、人間たちで賑わう城塞都市に辿りついた。そして城門前の大岩の陰で壮年男性の姿をとると、様々な防寒着に身を包んだ老若男女の隊商が行き交う城門前までゆっくりと歩を進め、挑むべきその巨大な敵を見上げた。やがて城門から雪走り烏賊に曳かれて出てきた数台の橇から道行く人間たちに視線を戻すと、彼は城門に向かって歩きだした。だが、城門からほんの少し手前でいつものように足が停まった。いくら頑張っても彼は城門に一歩も足を踏み入れることができなかった。遠い昔には捕まえた人間を脅して城門内に招待させようと試みたこともあった。また、いつの世にもいる波長の合う邪な者を使ったり、催眠術で人の心を操って侵入しようとしたこともあった。しかし、厳しい生存環境に置かれた人間には多かれ少なかれ、彼とは正反対の存在を崇める信仰の断片が心の内にあった。そのおかげで彼のもくろみは頓挫し、いつも中に入ることができないのだった。
今回も彼の挑戦は失敗に終わった。自分が完全であると信じるが故に、その苛立ちは尋常ではなかった。しかし完全なる存在を自負するが故に、また彼はその苛立ちを懸命に飲み込んだ。彼は自嘲するように少しだけ首を左右に振ると、再び身体を薄く溶け広がる黒煙に変えて大空へと姿を消した。そして苛立ちから再び感じ始めた食欲を満たすため、あてどなく雪原上を移動していたところで人間どもの殺し合いに出くわし、その甘美さに我を忘れて魅入ってしまった。なぜなら恐怖や痛み、特に神の似姿とされる人間同士が醸し出す憎悪の波動は、食欲はおろか、何ものにも増して彼の苛立ちを癒すだけでなく、心の空虚を埋めてくれる妙薬だったからだ。
その突発事態が起こるほんの少し前、存在は黒煙に変えた身体を人間の目には捉えられない薄さに広げ、狙いをつけたその集団を魚網のように包み込んでいた。そして五百年ぶりの悦びに身を震わせた。戦でも起こらない限り、決してありつくことができない幸せに酔いしれた。しかし思わぬ事態が最高のショーを台無しにしてしまった。突然の闖入者だ。その存在は闖入者に戸惑いつつも、それを察知できなかった隙だらけの自分に腹が立った。突発事態が起こったのは隊商と複数の戦士集団に対してだった。隊商の世話役を謀殺した卒長が、先ず闖入者に襲われた。闖入者の姿は人間のスピードでは到底捉えることができず、戦士と生き残りの商人たちは、事態を把握できないままに次々と切り裂かれた喉から血煙を上げて倒れていった。
その存在は我に返ると、この無粋な闖入者と、そいつが繰り広げる行為に激怒した。生き残りの商人たちに最大の恐怖と痛みをもたらす戦士たちを殺されて怒り狂った。しかもそれを奪った闖入者が自分の子孫であることを感じ取るや、怒りの炎はさらに激しく燃え上がった。その存在は残った人間に襲いかかろうとした闖入者を薄く溶け広がった黒煙の身体で絡め取ると、大地に目一杯に叩きつけた。そして黒煙の身体をいつもの痩せた壮年男性の姿に変えると、乱れた黒髪をそのままに邪魔者を睨みつけた。たとえ子孫でも、この暴挙を許すことはできない。どうしてやろうか。先ずはその精神をズタズタに引き裂き、次に細胞の一片一片に忘れえぬ苦痛を与え、その上で滅ぼしてくれようか。残虐な怒りにうち震えながら、彼は倒れている子孫を見下した。そして自分の心を子孫のそれにナイフのようにズブリと抉り込ませた。抉り込ませた先からは目覚めた時に感じた、あの時の揺らぎが、どっとあふれ出たことに彼は驚いた。自分のものに勝るとも劣らないドス黒さが彼の身体を隅々まで満たした。
「これは、これは」
彼は思わずそう呟くと、あれほど怒り狂っていた心を一挙に冷まし、三日月のように目を細めた。
「これは、これは」
彼は楽しげに、そうつぶやきながら大きく広げた両腕に迎え入れるかのように一歩一歩、踊るように倒れ伏した子孫に近づいていった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
Geo Fleet~星砕く拳聖と滅びの龍姫~
武無由乃
SF
時は遥か果てに飛んで――、西暦3300年代。
天の川銀河全体に人類の生活圏が広がった時代にあって、最も最初に開拓されたジオ星系は、いわゆる”地球帝国”より明確に独立した状態にあった。宇宙海賊を名乗る五つの武力集団に分割支配されたジオ星系にあって、遥か宇宙の果てを目指す青年・ジオ=フレアバードは未だ地上でチンピラ相手に燻っていた。
そんな彼はある日、宇宙へ旅立つ切っ掛けとなるある少女と出会う。最初の宇宙開拓者ジオの名を受け継いだ少年と、”滅びの龍”の忌み名を持つ少女の宇宙冒険物語。
※ 【Chapter -1】は設定解説のための章なので、飛ばして読んでいただいても構いません。
※ 以下は宇宙の領域を示す名称についての簡単な解説です。
※ 以下の名称解説はこの作品内だけの設定です。
「宙域、星域」:
どちらも特定の星の周辺宇宙を指す名称。
星域は主に人類生活圏の範囲を指し、宙域はもっと大雑把な領域、すなわち生活圏でない区域も含む。
「星系」:
特定の恒星を中心とした領域、転じて、特定の人類生存可能惑星を中心とした、移住可能惑星群の存在する領域。
太陽系だけはそのまま太陽系と呼ばれるが、あくまでもそれは特例であり、前提として人類生活領域を中心とした呼び方がなされる。
各星系の名称は宇宙開拓者によるものであり、各中心惑星もその開拓者の名がつけられるのが通例となっている。
以上のことから、恒星自体にはナンバーだけが振られている場合も多く、特定惑星圏の”太陽”と呼ばれることが普通に起こっている。
「ジオ星系」:
初めて人類が降り立った地球外の地球型惑星ジオを主星とした移住可能惑星群の総称。
本来、そういった惑星は、特定恒星系の何番惑星と呼ばれるはずであったが、ジオの功績を残すべく惑星に開拓者の名が与えられた。
それ以降、その慣習に従った他の開拓者も、他の開拓領域における第一惑星に自らの名を刻み、それが後にジオ星系をはじめとする各星系の名前の始まりとなったのである。
「星団、星群」:
未だ未開拓、もしくは移住可能惑星が存在しない恒星系の惑星群を示す言葉。
開拓者の名がついていないので「星系」とは呼ばれない。
赭坂-akasaka-
暖鬼暖
ミステリー
あの坂は炎に包まれ、美しく、燃えるように赤い。
赭坂の村についてを知るべく、男は村に降り立った。 しかし、赭坂の事実を探路するが、男に次々と奇妙なことが起こる…。 ミステリーホラー! 書きながらの連載になるので、危うい部分があります。 ご容赦ください。
こちら、ときわ探偵事務所~人生をやり直したいサラリーマンと、人生を取り返したい女探偵の事件ファイル~
ひろ法師
ミステリー
「あなたを救いたいのです。人生をやり直したい……そう思いませんか?」
会社を辞め、途方に暮れる元サラリーマン、金谷律也。人生をやり直したいと思っていた彼の目の前にNPO団体「ホワイトリップル研究所」と名乗る白装束を纏った二人組が現れる
リツのこれまでの行動を把握しているかのごとく、巧みな話術で謎の薬“人生をやり直せる薬”を売りつけようとした。
リツは自分の不幸を呪っていた。
苛烈なノルマに四六時中の監視。勤めていた会社は碌なもんじゃない。
人生のどん底に突き落とされ、這い上がる気力すら残っていない。
もう今の人生からおさらばして、新しい人生を歩みたい。
そんなリツに、選択肢は残されていなかった。
――買います。一つください
白装束が去った直後、ホームズのような衣装をまとい、探偵となった幼なじみ神原椿と、なぜか小学生の姿になった妹の神原紅葉が部屋に乱入。
―― この薬、絶対飲んじゃ駄目よ。飲んだら最後、あなたは……消されるかもしれない
なぜ薬を飲んではいけないのか。そして、なぜ消されるのか。
白装束の奴らは何者で、その目的とは。
消えた人はどこに行くのか。
陰謀渦巻くサスペンス・ミステリーが始まる……!
※10月より毎週土曜夜6時30分公開予定
【僕は。シリーズ短編集】僕は〇〇です。
音無威人
ミステリー
「僕は――〇〇ですか?」
自覚的狂人と無自覚狂人が対峙する短編集。
さて、狂っているのは誰でしょう……
僕でしょうか? あなたでしょうか? それとも……
※小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しています
※規約変更に伴い『僕は。シリーズ』を一つにまとめました。
ゾンビの坩堝
GANA.
SF
……とうとう、自分もゾンビ……――
飲み込みも吐き出しもできず、暗澹と含みながら座る自分は数メートル前……100インチはある壁掛け大型モニターにでかでかと、執務室風バーチャル背景で映る、しわばんだグレイ型宇宙人風の老人を上目遣いした。血色の良い腕を出す、半袖シャツ……その赤地に咲くハイビスカスが、ひどく場違いだった。
『……このまま患者数が増え続けますと、社会保障費の膨張によって我が国の財政は――』
スピーカーからの、しわがれた棒読み……エアコンの効きが悪いのか、それとも夜間だから切られているのか、だだっ広いデイルームはぞくぞくとし、青ざめた素足に黒ビニールサンダル、青地ストライプ柄の病衣の上下、インナーシャツにブリーフという格好、そしてぼんやりと火照った頭をこわばらせる。ここに強制入所させられる前……検査バス車内……そのさらに前、コンビニで通報されたときよりもだるさはひどくなっており、入所直後に浴びせられた消毒薬入りシャワーの臭いと相まって、軽い吐き気がこみ上げてくる。
『……患者の皆さんにおかれましては、積極的にリハビリテーションに励んでいただき、病に打ち勝って一日も早く職場や学校などに復帰されますよう、当施設の長としてお願い申し上げます』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる