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しおりを挟むソレイアは、父親同士が仕事で付き合いがあり、仲もよかったことからノックスと婚約していた。でもソレイアはノックスが大好きだった。幼い頃一度遊んでもらって以来、他に親しい子もいなかったソレイアは、すっかり彼を好きになってしまったのだ。それから、ノックスとは父親の仕事関係などでごくたまにしか会わなかったし、会ってもろくに話しかけることもできなかったのだが、それでもソレイアはずっとノックスのことを思い続けていた。だから14歳のとき、両親から自分の婚約者がノックスに決まったと聞かされたときは、ソレイアは驚き、信じられない気持ちだったが、でもとても嬉しかった。
婚約者になった2人はこれまでめったに会わなかったのを改めようと、会う機会をノックスが設けてくれた。
ソレイアとノックスは2人きりで出かけたり、お互いの家に行き来したりするようになった。
「今日はここへいこう」
「はい、ノックス、さん…」
名前すらなかなか呼べず、会話はいわれたことに答えるだけ。手も繋がなかったが、ソレイアはノックスといるときは顔を赤らめ恥ずかしそうにしつつも、心の中はドキドキと嬉しさでいっぱいだった。
ソレイアはノックスが大好きだったので、ノックスになにか頼まれたり、こうしろといわれれば、なんでもいうことを聞いた。ノックスも年頃になり、どこかから知識をつけて、性交(性欲処理)を頼まれたときもソレイアは断らなかった。
されるがままに服を脱がされ、とても恥ずかしかったが、体を預けた。
それからは2人会ったときはノックスにせまられ毎回えっちするようになった。胸が大きいソレイアはノックスの恰好の性欲処理となり、何度もえっちされていた。
今日もまた、ベッドのなかで裸の2人。
「あ…はぁ…」手と舌で、体を愛撫しもて遊ぶ。
「んぅ…」
普段はキスされることはなかったが、そのときだけはしてくれた。
ノックスがさらに腰の動きを強め、ソレイアはその刺激に思わず顔を歪め、赤らめる。
そして…2人は絶頂を迎え、声をあげ倒れ込む。
「ハァ…ハァ…」お互い気持ちよさに体が熱く、高ぶっていた。
ソレイアは、大好きなノックスにこうしてキスされ抱いてもらえる幸せを、息を切らせ、体をベッドに横たえながら感じていた。
そしてえっちが終わり、服を着終われば、ソレイアは1人で家まで帰されるのだった。
そんな日々でもソレイアは自分がノックスの婚約者である幸せを噛みしめ、結婚する日を心待ちにしていた。
町の教会で見かけた新郎新婦のウエディング姿に、わぁ…とソレイアは憧れ、自分たちの結婚式姿も想像した。町で、子連れの若い夫婦が笑いあっているのを見て、いいな…とソレイアは思わず惹きつけられ、自分たちもそのうち…とこれから幸せな家庭を築くことを夢見ていた。
ノックスとのそんな日々が、だいたい3ヶ月くらいは続いたのだが、最近になり、なぜかノックスからの誘いがなくなってしまった。
ソレイアはどうしたのだろうと不思議に思った。ノックスに会いたいと思ったが、これまで会うときはいつも向こうから誘ってくることしかなかったし、自分からノックスを誘うなんて恥ずかしくてできなかった。
だがある日、ソレイアはノックスに話があるから会ってくれと呼ばれた。久しぶりにノックスから誘われ、喜んでソレイアは出かけたのだが……。そこにはノックスと、その隣に自分たちと同じくらいの女の子がいた。サーモンピンクのポニーテールの目がぱっちりしたかわいい子だった。
ノックスは、「ソレイア、俺、この女の子を好きになっちゃったんだ。だから、婚約解消してくれ」といいだした。ソレイアはそれを聞き、一瞬なにをいわれてるのかわからず、頭が真っ白になった。
「ソレイアは表情に乏しくて考えてることがわからないし、自己主張も少ない、それに比べてこの子は元気で人懐っこくて表情もよく変わって……俺はこういう子のほうが好みなんだ」ソレイアは気が遠くなり、いわれていることがほとんどわからないようだった。
ノックスはその女の子と去っていき、ソレイアはしばらく佇んでいたあと、無意識に家まで歩いていった。
だんだん冷静を取り戻してくると、頭の中では先ほどの光景やセリフが思い浮かぶ…。
さっきの女の子はソレイアとは正反対な元気で社交的そうな子だった。いつまでも人見知りしてうまく感情を表わせない自分とは大違いだ。顔や髪色も冷たい感じのソレイアとは違って、かわいい系の顔であり、ノックスはそういうところにも魅力を感じたのだった。でもソレイアだって、表情には乏しくてもいつでも心の中ではノックスの行動に一喜一憂していて、その様子をよく見ればソレイアの感情はちゃんとわかるのだ。
自分は昔会ったときからノックスのことが大好きだったが、ノックスにとっては所詮自分は親に決められただけの相手だったのだ…。
その日、ソレイアは悲しみ、部屋でいっぱい泣いた。
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