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そして翌日──
私はちょっと用があるからと部下にいって仕事場を抜け出すとヴィクトル橋に向かった。これってアレンが今日の10時にヴィクトル橋までくるってことなんだろうか?よくわからないが、とりあえずいってみよう。私はちょうどAM10時に着くように橋まで歩いていった。
橋が見えてきて歩いていくと、向こうからもアレンが近づいてくるのが見えた。アレンはこちらに気づき、手を振った。
「ふたりをまいて出てくるのに苦労した」
とりあえず話をしようということで、私たちは土手にしゃがんだ。せっかくアレンがこうして機会を作ってくれたんだ。どうにか自分と戦うようにそむけないと……!でも痛いのはやっぱりやだなぁー……いいや!ここはそんなこといってる場合じゃない!でもどうすれば……そうだ!もうこれしかない!
「アレン!」私は決心し、アレンの目をキッと見た。
「私と戦って!!」
アレンは目をぱちくりさせている。「な、なに?」
「私と戦いましょう!」私はさっと立ち上がり、魔法を出す構えをとった。
「落ち着け、どうしたっていうんだ」アレンも立ち上がり、なだめようとする。
「私はあなたと戦いたいの!」
アレンはふうっとため息をつき、「昨日もそんなことをいってたけど俺は理由もなしに戦わないぞ」そして、「武闘大会じゃあるまいし。一体どうしてそんなことばかりいいだすんだ?」
私は手を下ろし、うつむいた。
「なにかわけがあるのか?」
アレンには私と戦うつもりはないようだった。私はもうこうなったら仕方がないと、覚悟を決め、すべてを話すことにした。また私たちは土手に座り、私は切り出した。
「私は倒されなければいけないの」
アレンはきょとんとした顔をした。
「あの、あなたはメトロヘルを倒すつもりなんでしょう?」
「なに?知ってるのか!」アレンは驚き、「まだこの町の人間には誰も話してないはずだが……」と考え込む。
そう、この世界は今メトロヘルという驚異に蝕まれている。たしか何十年前かの強大な魔導士が怨みを抱えたまま死に、そこに世界中の邪悪な思念が集まりメトロヘルは誕生した。魔王とは呼ばれていなかったが、ラスボスであり、放っておけば世界を破壊する。
「メトロヘルを倒すのに必要なアイテムが、私を倒すことで手に入るのよ。あなたが勝ったところをある妖精が見ていて、アイテムをくれるの」
「妖精?たしかにたまに俺たちの前には妖精が現れて色々助言をしてくることがあるが……」アレンは考え込む。
「それにあなたは私や、私の部下たちを倒すことによってかなり経験値が手に入るわ。次にいく場所での戦いでもきっと生かすことができる」
このダンジョンは割と大きいのである。
「そうか…!それで君は自分と戦おうなどと。だが、いくらメトロヘルを倒すためとはいえ君を倒すなんて……」
「妖精がくれるアイテムがなきゃメトロヘルは倒せないわ!」
私はお願いするようにアレンの目をじっと見つめいった。
アレンはしばらく私を見て、ふうっと息をつき、「わかった。世界の平和のため自分を犠牲にしようというんだな。仕方がないから君と戦おう。だが、サマンサ、君はなんでそんなに先のことを知ってる?」
私はドキッとして慌てた。まさかここがアニメの世界だと夢で見たとはいえない。
「えっと、あの、私は魔力が強いからその関係でたまに予知能力が働くのよ!」
私はそういってごまかした。アレンはこちらをじ~っと見た。真っ直ぐな目で見られると心の中を見透かされそうなのでやめてもらいたい……。私は汗をかいた。
「……そうか。俺は君と戦うが、やはり君を傷つけることなんてできない。そこで俺の技にちょうどいいのがあるんだが、どうだろうか?」「え?」
アレンは私にその技のことを話した。なんでも魔法で私を眠らせ、サンダースタンという電撃で攻撃すれば相手を気絶させられるちょうどいい強さで攻撃することができるのだそうだ。
「そうすれば君はほとんど苦しまずに気絶し、俺は君を倒したことになる。サンダースタンは当たりにくい技だが受ける方が受け入れれば簡単に命中する」
私はその案に感嘆した。痛いのは嫌だったので楽に倒れることができるのは嬉しい。この主人公、私のことをちゃんと考えてくれるんだなぁ……自分は悪役なのに……。その優しさに私はジ~ンとした。
私はアレンにまた魔導施設に乗り込んできてほしいと頼んだ。妖精が現れたのもそこだったからだ。アレンは他にも戦うにあたってどんな風に持ち込むか、どんなセリフをいうか、お互いどう戦うかなど、私の見た夢を思い出しながら色々と決め、芝居を打つことにした。とりあえず計画はうまく出来上がった。
「これで妖精が現れてくれればいいんだけど……」
「まぁ、現れなかったらその時はその時だ。やるだけやってみよう」
「これでうまくいけばあなたにアイテムを手に入れさすことができるわね」と私は喜んだ。アレンはなにかを考えていたようだが、「……そこがよくわからないんだ。どうして妖精はサマンサが倒されることによって姿を現すんだろう?」
「それは、私は悪役だもの。この町の人を散々苦しめてきたんだから、そんな私を倒して町を救ったあなたは妖精に喜ばれるのは当然のことよ」
「悪役?苦しめる?」アレンは私に説明を求めてきた。この主人公、まだ私がしてたことを知らなかったのか…。いいにくいことだったが、私は以前この町に魔導施設を作ろうと町の人たちにひどい強制労働をさせていたことを白状した。おとといあなたがたを襲った部下たちもそのためのものだと。今はもう気が咎めてやめさせたが、町の人たちからはきっとそのときのことで恨みを買っているといった。
私は話し終わり、アレンに責められるか軽蔑されることを予想し、心が締めつけられるようだった。
アレンは考えていたが、「……信じられないな……。この町でそんなことが起きていたなんて……」アレンはこちらを見、「それで、君の予知では君は俺に倒されたあとどうなるんだ?」
「それはよくわからないけど……きっと私は牢屋に入れられてそれなりの裁きを受けるんでしょうね……」私はその様子を想像し、心が重くなったが、それを覚悟でこれまでの行動をとったのだ。
「そんな!それでは処罰を受けるのか!?」アレンはガバッとこちらに向き叫んだ。
「君は、もともと世界を救うために悪役に徹していたのに…」アレンはうつむき、顔をしかめていた。
「……」私はそんなアレンに驚きつつ、「心配してくれてるの?ありがとう。でもあなたのほうがこの先もっと大変でしょう。怖くはないの?メトロヘルと戦うなんて」ときいた。
アレンはこちらに向き直り、「それはもちろん怖い気持ちもあるさ。でもメトロヘルを倒せるのは神の啓示を受けた俺たちだけだ。あいつを倒さなければ俺たちだけでなく俺たちの大切な人や、その他の関係ない人たちみんなが巻き込まれて死んでしまうんだ」
アレンは自分が選ばれた者として、悪を倒し、世界を救う決意を話してくれた。私はそのアレンの決意に聞き入った。
すごいなあ……この歳で世界を救うとは。たしか私よりも2歳年下だったはず。きっとメトロヘルという強大な悪に立ち向かっていくことは怖いことだろう。それでも、みんなのために頑張ろうとしているのだ。
私はそんなアレンのまっすぐな横顔にいつのまにか見入っていた。男らしくて、よく見ると顔立ちもいい、中の上に見えるがでも実際は欠点もなくてもっと上だろう。まだ少年ぽくて元気そうな感じだ。
アレンはこちらが見ていたことに気づいたのか、こちらを振り向き、そしてすぐにパッと前を向いた。その顔がどことなく赤いように見えた。すると、「サマンサ!」急にアレンは振り返った。
「はっはい!」
「俺は君を倒したあと町の人たちが君を牢屋に入れようとしても説得する!きっと君に処罰なんて与えさせない!」
「えっ!?」
そういったアレンの顔は、やはり気のせいではなく赤かった。とたん、私まで顔が赤くなり、心臓が騒ぎ出す。
(やだ!なに赤くなってるの!?私)私は胸を手で押さえうるさい心臓を必死で沈めようとした。そのとき……
「あっ!アレンたらあんなところにいたっ!ガルド!いたわ!こっちよーっ!」セシリアとガルドがこちらへ走ってきた。
「いったいなにしてたのよっ!探したんだからー!」
「あー、いや、すまない」
セシリアはこちらをキッと見「なんでこの人と一緒にいるわけ?」といった。
私とアレンは困って顔を見合わす、一応この先ふりだけとはいえ戦わねばならないのだ。敵のふりをしておいたほうがいいかもしれない。
アレンが「その、この女が本当に悪の組織のボスではないかと尋問していたんだ」とごまかした。
「それで、どうだったの?」セシリアは疑わしげな目で私を見る。
「うむ、話を聞いたところやはり許しがたい行為をやっていたことが判明したな」とアレン。
「じゃあ警察に突き出さなきゃ!」
「いや、それは待つんだ!」アレンは慌ててやめさせた。
セシリアはこちらに近づき、私の横にいたアレンの腕を私から引き離すようにぐいっと引っ張った。
「アレン、この町にはもう十分滞在したわ。早く次の町にいこうよ!」とセシリアはアレンの腕にしがみつきながらいった。
「いや、もう少し待ってほしい……」
「私早く次の町にいきたいわ!」セシリアはアレンにベタベタしている。
「……」私はぽかんとそんな様子を眺めた。
そういえば……このアニメ、ラスボスを倒したあとは俺たちの旅はまだまだ続く!Endで終わってたから、その後どうなったかはわからないけど、この女の子、ファンからはヒロインと呼ばれていたっけ。歳はたしか主人公と同い年、老けていて意地悪そうな顔の私と違い、キャピキャピして子供っぽい可愛い系の子だ。
私はなぜかモヤモヤした黒い嫌な感情が心を取り巻いたことに気づいた。私は顔を背け、もう戻ろうと歩き出す。「さぁ、一緒に戻りましょ!」セシリアもアレンの腕を取り、引っ張るが、「あっ」アレンはこちらを向き、「待て!」と叫んだ。私が振り向くと、「俺はお前をこのまま見逃すつもりはないからな!明日いくつもりでいるから待ってろよ!」と叫んだ。そういうと、アレンはセシリアやガルドと一緒に歩いていった。
私はちょっと用があるからと部下にいって仕事場を抜け出すとヴィクトル橋に向かった。これってアレンが今日の10時にヴィクトル橋までくるってことなんだろうか?よくわからないが、とりあえずいってみよう。私はちょうどAM10時に着くように橋まで歩いていった。
橋が見えてきて歩いていくと、向こうからもアレンが近づいてくるのが見えた。アレンはこちらに気づき、手を振った。
「ふたりをまいて出てくるのに苦労した」
とりあえず話をしようということで、私たちは土手にしゃがんだ。せっかくアレンがこうして機会を作ってくれたんだ。どうにか自分と戦うようにそむけないと……!でも痛いのはやっぱりやだなぁー……いいや!ここはそんなこといってる場合じゃない!でもどうすれば……そうだ!もうこれしかない!
「アレン!」私は決心し、アレンの目をキッと見た。
「私と戦って!!」
アレンは目をぱちくりさせている。「な、なに?」
「私と戦いましょう!」私はさっと立ち上がり、魔法を出す構えをとった。
「落ち着け、どうしたっていうんだ」アレンも立ち上がり、なだめようとする。
「私はあなたと戦いたいの!」
アレンはふうっとため息をつき、「昨日もそんなことをいってたけど俺は理由もなしに戦わないぞ」そして、「武闘大会じゃあるまいし。一体どうしてそんなことばかりいいだすんだ?」
私は手を下ろし、うつむいた。
「なにかわけがあるのか?」
アレンには私と戦うつもりはないようだった。私はもうこうなったら仕方がないと、覚悟を決め、すべてを話すことにした。また私たちは土手に座り、私は切り出した。
「私は倒されなければいけないの」
アレンはきょとんとした顔をした。
「あの、あなたはメトロヘルを倒すつもりなんでしょう?」
「なに?知ってるのか!」アレンは驚き、「まだこの町の人間には誰も話してないはずだが……」と考え込む。
そう、この世界は今メトロヘルという驚異に蝕まれている。たしか何十年前かの強大な魔導士が怨みを抱えたまま死に、そこに世界中の邪悪な思念が集まりメトロヘルは誕生した。魔王とは呼ばれていなかったが、ラスボスであり、放っておけば世界を破壊する。
「メトロヘルを倒すのに必要なアイテムが、私を倒すことで手に入るのよ。あなたが勝ったところをある妖精が見ていて、アイテムをくれるの」
「妖精?たしかにたまに俺たちの前には妖精が現れて色々助言をしてくることがあるが……」アレンは考え込む。
「それにあなたは私や、私の部下たちを倒すことによってかなり経験値が手に入るわ。次にいく場所での戦いでもきっと生かすことができる」
このダンジョンは割と大きいのである。
「そうか…!それで君は自分と戦おうなどと。だが、いくらメトロヘルを倒すためとはいえ君を倒すなんて……」
「妖精がくれるアイテムがなきゃメトロヘルは倒せないわ!」
私はお願いするようにアレンの目をじっと見つめいった。
アレンはしばらく私を見て、ふうっと息をつき、「わかった。世界の平和のため自分を犠牲にしようというんだな。仕方がないから君と戦おう。だが、サマンサ、君はなんでそんなに先のことを知ってる?」
私はドキッとして慌てた。まさかここがアニメの世界だと夢で見たとはいえない。
「えっと、あの、私は魔力が強いからその関係でたまに予知能力が働くのよ!」
私はそういってごまかした。アレンはこちらをじ~っと見た。真っ直ぐな目で見られると心の中を見透かされそうなのでやめてもらいたい……。私は汗をかいた。
「……そうか。俺は君と戦うが、やはり君を傷つけることなんてできない。そこで俺の技にちょうどいいのがあるんだが、どうだろうか?」「え?」
アレンは私にその技のことを話した。なんでも魔法で私を眠らせ、サンダースタンという電撃で攻撃すれば相手を気絶させられるちょうどいい強さで攻撃することができるのだそうだ。
「そうすれば君はほとんど苦しまずに気絶し、俺は君を倒したことになる。サンダースタンは当たりにくい技だが受ける方が受け入れれば簡単に命中する」
私はその案に感嘆した。痛いのは嫌だったので楽に倒れることができるのは嬉しい。この主人公、私のことをちゃんと考えてくれるんだなぁ……自分は悪役なのに……。その優しさに私はジ~ンとした。
私はアレンにまた魔導施設に乗り込んできてほしいと頼んだ。妖精が現れたのもそこだったからだ。アレンは他にも戦うにあたってどんな風に持ち込むか、どんなセリフをいうか、お互いどう戦うかなど、私の見た夢を思い出しながら色々と決め、芝居を打つことにした。とりあえず計画はうまく出来上がった。
「これで妖精が現れてくれればいいんだけど……」
「まぁ、現れなかったらその時はその時だ。やるだけやってみよう」
「これでうまくいけばあなたにアイテムを手に入れさすことができるわね」と私は喜んだ。アレンはなにかを考えていたようだが、「……そこがよくわからないんだ。どうして妖精はサマンサが倒されることによって姿を現すんだろう?」
「それは、私は悪役だもの。この町の人を散々苦しめてきたんだから、そんな私を倒して町を救ったあなたは妖精に喜ばれるのは当然のことよ」
「悪役?苦しめる?」アレンは私に説明を求めてきた。この主人公、まだ私がしてたことを知らなかったのか…。いいにくいことだったが、私は以前この町に魔導施設を作ろうと町の人たちにひどい強制労働をさせていたことを白状した。おとといあなたがたを襲った部下たちもそのためのものだと。今はもう気が咎めてやめさせたが、町の人たちからはきっとそのときのことで恨みを買っているといった。
私は話し終わり、アレンに責められるか軽蔑されることを予想し、心が締めつけられるようだった。
アレンは考えていたが、「……信じられないな……。この町でそんなことが起きていたなんて……」アレンはこちらを見、「それで、君の予知では君は俺に倒されたあとどうなるんだ?」
「それはよくわからないけど……きっと私は牢屋に入れられてそれなりの裁きを受けるんでしょうね……」私はその様子を想像し、心が重くなったが、それを覚悟でこれまでの行動をとったのだ。
「そんな!それでは処罰を受けるのか!?」アレンはガバッとこちらに向き叫んだ。
「君は、もともと世界を救うために悪役に徹していたのに…」アレンはうつむき、顔をしかめていた。
「……」私はそんなアレンに驚きつつ、「心配してくれてるの?ありがとう。でもあなたのほうがこの先もっと大変でしょう。怖くはないの?メトロヘルと戦うなんて」ときいた。
アレンはこちらに向き直り、「それはもちろん怖い気持ちもあるさ。でもメトロヘルを倒せるのは神の啓示を受けた俺たちだけだ。あいつを倒さなければ俺たちだけでなく俺たちの大切な人や、その他の関係ない人たちみんなが巻き込まれて死んでしまうんだ」
アレンは自分が選ばれた者として、悪を倒し、世界を救う決意を話してくれた。私はそのアレンの決意に聞き入った。
すごいなあ……この歳で世界を救うとは。たしか私よりも2歳年下だったはず。きっとメトロヘルという強大な悪に立ち向かっていくことは怖いことだろう。それでも、みんなのために頑張ろうとしているのだ。
私はそんなアレンのまっすぐな横顔にいつのまにか見入っていた。男らしくて、よく見ると顔立ちもいい、中の上に見えるがでも実際は欠点もなくてもっと上だろう。まだ少年ぽくて元気そうな感じだ。
アレンはこちらが見ていたことに気づいたのか、こちらを振り向き、そしてすぐにパッと前を向いた。その顔がどことなく赤いように見えた。すると、「サマンサ!」急にアレンは振り返った。
「はっはい!」
「俺は君を倒したあと町の人たちが君を牢屋に入れようとしても説得する!きっと君に処罰なんて与えさせない!」
「えっ!?」
そういったアレンの顔は、やはり気のせいではなく赤かった。とたん、私まで顔が赤くなり、心臓が騒ぎ出す。
(やだ!なに赤くなってるの!?私)私は胸を手で押さえうるさい心臓を必死で沈めようとした。そのとき……
「あっ!アレンたらあんなところにいたっ!ガルド!いたわ!こっちよーっ!」セシリアとガルドがこちらへ走ってきた。
「いったいなにしてたのよっ!探したんだからー!」
「あー、いや、すまない」
セシリアはこちらをキッと見「なんでこの人と一緒にいるわけ?」といった。
私とアレンは困って顔を見合わす、一応この先ふりだけとはいえ戦わねばならないのだ。敵のふりをしておいたほうがいいかもしれない。
アレンが「その、この女が本当に悪の組織のボスではないかと尋問していたんだ」とごまかした。
「それで、どうだったの?」セシリアは疑わしげな目で私を見る。
「うむ、話を聞いたところやはり許しがたい行為をやっていたことが判明したな」とアレン。
「じゃあ警察に突き出さなきゃ!」
「いや、それは待つんだ!」アレンは慌ててやめさせた。
セシリアはこちらに近づき、私の横にいたアレンの腕を私から引き離すようにぐいっと引っ張った。
「アレン、この町にはもう十分滞在したわ。早く次の町にいこうよ!」とセシリアはアレンの腕にしがみつきながらいった。
「いや、もう少し待ってほしい……」
「私早く次の町にいきたいわ!」セシリアはアレンにベタベタしている。
「……」私はぽかんとそんな様子を眺めた。
そういえば……このアニメ、ラスボスを倒したあとは俺たちの旅はまだまだ続く!Endで終わってたから、その後どうなったかはわからないけど、この女の子、ファンからはヒロインと呼ばれていたっけ。歳はたしか主人公と同い年、老けていて意地悪そうな顔の私と違い、キャピキャピして子供っぽい可愛い系の子だ。
私はなぜかモヤモヤした黒い嫌な感情が心を取り巻いたことに気づいた。私は顔を背け、もう戻ろうと歩き出す。「さぁ、一緒に戻りましょ!」セシリアもアレンの腕を取り、引っ張るが、「あっ」アレンはこちらを向き、「待て!」と叫んだ。私が振り向くと、「俺はお前をこのまま見逃すつもりはないからな!明日いくつもりでいるから待ってろよ!」と叫んだ。そういうと、アレンはセシリアやガルドと一緒に歩いていった。
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