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第6章 お披露目

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挨拶が一通り終わるとダンスタイムとなる。
ファーストダンスは今日の主役、ロゼがヴァイスと二人きりで踊る。

フロアに二人が立ち、ヴァイスがロゼの手を取りもう片方の手を腰へ廻す。
音楽が流れ出すと共に二人は一歩を踏み出した。

踊りはまだ苦手なロゼのために、ファーストダンスにはゆったりとした曲を選んだ。
ヴァイスがロゼを回すとたっぷりとドレープを入れたドレスの裾がまるで花が咲いたように大きく広がり、会場が感嘆のため息に包まれる。
———このドレスもダンスの時の視覚効果を考えて作ったのだ。

だがそのようなフォローをしなくとも、息が合ったロゼとヴァイスのダンスは見る者をうっとりとさせるほど美しかった。

(そういえばあの子…本番には強かったわ)

内気な雫だったが、学校行事など肝心の時には毅然とした態度で失敗などしなかった。
意外と肝が座っているのだ。

ホール中の視線を集めながら、二人は優雅に踊り続けた。




「ふう…」

バルコニーで心地の良い夜風を受けながら、ロゼは大きく息を吐いた。

「お疲れ」
そんなロゼにヴァイスは手にしていたグラスを差し出した。
「ありがとうございます」
受け取るとそれを一気に飲み干す。
よく冷えた果実水が疲れた身体に染み渡っていった。


「よく頑張ったね」
ヴァイスはそう言ってロゼの頭を撫でた。
「はい…」
ロゼが手にしているグラスを受け取り、傍へ置くとヴァイスはロゼを抱き寄せた。

「ヴァイス様…」
「これでやっと、我慢しなくて済む」
こめかみにキスを落とすとロゼは顔を赤らめた。
「ロゼ…」
ヴァイスの腕が優しくロゼを抱きしめる。
「俺の一番の宝物。愛しているよ、ロゼ」
「…私も…愛しています」
おずおずとヴァイスの背中へ手を伸ばすと強く抱きしめられた。



この半年間、あっという間で…夢のように長かった。

この世界に戻ってきた時はこんな事になるとは思っていなかった。
失っていた記憶を取り戻し、家族と再会できた事は嬉しかったけれど、不安も沢山あった。
けれど親友と再会し、五家の人たちに温かく受け入れられ…そして家族や友人とは違う、特別と思える人と出会えた。

愛するという気持ちがこんなに幸せだとは知らなかった。
ヴァイスと出会えた事…そして彼もまた自分を愛してくれる事。

「ヴァイス様…」
ロゼは愛しい人を見上げた。
「私…とても幸せです」

「ロゼ…」
「ヴァイス様と出会えて…この世界に帰ってこられて、本当に良かった」

まだ魔力の事や、不安な事は残っている。
けれど家族やヴァイス、そしてルーチェ。
皆がいればきっと乗り越えられるだろう。


「ああ…ロゼが帰ってきてくれて良かった」
ヴァイスは微笑むと、両手でロゼの頬を包み込んだ。

「ロゼ…」
いつも以上に甘味のある響きで名前を呼ばれ、熱を帯びた瞳に見つめられ…ロゼはそっと目を閉じた。

温かくて柔らかなものが唇に触れる。
そっと目を開くと視界いっぱいに紫色の光が満ちていた。

———なんて綺麗なんだろう。

もらった指輪に嵌められている石よりも…どんな宝石よりも綺麗な紫の瞳。

「ロゼ…愛しているよ」

私もと答えようとした言葉は熱い口づけに飲み込まれていった。
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