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第3章 惹かれる心
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(ロゼ様は今頃楽しんでいるかしら)
政務官たちへ午後のお茶を配り終えて、ひと息つきながらルーチェは思った。
ヴァイスとロゼを二人きりにする事に、不安がない訳ではない。
———もしもヴァイスがゲームのヴァイスと同じだったら…
ヴァイスは攻略が難しいキャラだったが、ヒロインへの恋心を自覚してからはむしろこちらが攻略される立場だった。
街へデートに行くイベントもあったが、ヴァイスは普段よく行く食堂や通りへとヒロインを連れて行く。
そこで知己に自分たちを見せつけその仲を認知させる———外堀から埋めていくタイプだった。
またそれまで女嫌いだったのが嘘のようにボディタッチも積極的で甘い言葉を囁き、そのギャップと強引な所が人気だった。
(でもロゼ様は…男性への免疫がないからなあ)
雫はとにかく男性が苦手だった。
いくらヴァイスは初対面から好印象だったとはいえ…あまり積極的に迫られたら大丈夫だろうか。
ロゼの心配をしながら、ルーチェは黙々と書類を捌いているフェールの様子を伺った。
いつもと変わらない様子の彼は、妹がデート中だとは知らないのだろう。
ロゼとヴァイスが会うのは今日で三回目とはいえ…妹を溺愛しているフェールが二人の関係に気づいていないとは。
(やっぱりこういう事は男家族は蚊帳の外なのね)
思わず笑みをもらしたルーチェの耳に、地響きのような音が聞こえた。
「フェール!」
バタン!と政務室の扉が開いた。
「…どうしました」
息を切らす父親を冷めた目でフェールは見た。
「ロ、ロゼが…」
「何かあったんですか」
妹の名前を出されてその顔が気色ばんだ。
「ヴァイスと…街へ出かけているらしい」
「———は?」
目を見開いたフェールの顔がすぐに剣呑なものに変わった。
「どういう事です」
「会議の後…オーウェンが近づいてきて〝今日は愚息がお嬢さんをお借りして街へ出かけているようで〟と言ってきたのだ」
「将軍閣下が?」
「———聞けばロゼとヴァイスは贈り物を交わしていたらしい」
宰相は深くため息をついた。
「あやつ…他の者や陛下にまで聞こえるような声で…さも二人が親しい関係のように言いやがった」
———外堀から埋めるのは父親譲りだったか!
宰相親子の会話を聞いてルーチェは思わず心の中で叫んだ。
宰相と並んで国王に次ぐ立場である将軍の言葉は重い。
その将軍が、息子と宰相の娘が特別な仲であると他の貴族たちの前で示唆したのだ。
たとえ共に街へ出掛けたのが本当ではなかったとしても…それは事実として認識されてしまうだろう。
そうなれば他の貴族たちはロゼへ手を出しにくくなり、自然、ヴァイスのライバルは減る事になる。
(親子連携プレーとは…さすがだわ)
「…ロゼが…ヴァイスと…?」
ルーチェが感心していると、呆然とした表情でフェールは呟いた。
「ばかな…いつの間に…」
信じられないという風に宙を漂わせた視線が、ふとルーチェを捉えた。
(しまった)
ルーチェは慌てて視線をそらせたが…すぐに人が近づいてくる気配を感じた。
「ルーチェ・ソレイユ」
ルーチェはおそるおそる顔を上げた。
「君に聞きたい事がある」
そこには〝氷の宰相〟の名に相応しい眼差しがあった。
政務官たちへ午後のお茶を配り終えて、ひと息つきながらルーチェは思った。
ヴァイスとロゼを二人きりにする事に、不安がない訳ではない。
———もしもヴァイスがゲームのヴァイスと同じだったら…
ヴァイスは攻略が難しいキャラだったが、ヒロインへの恋心を自覚してからはむしろこちらが攻略される立場だった。
街へデートに行くイベントもあったが、ヴァイスは普段よく行く食堂や通りへとヒロインを連れて行く。
そこで知己に自分たちを見せつけその仲を認知させる———外堀から埋めていくタイプだった。
またそれまで女嫌いだったのが嘘のようにボディタッチも積極的で甘い言葉を囁き、そのギャップと強引な所が人気だった。
(でもロゼ様は…男性への免疫がないからなあ)
雫はとにかく男性が苦手だった。
いくらヴァイスは初対面から好印象だったとはいえ…あまり積極的に迫られたら大丈夫だろうか。
ロゼの心配をしながら、ルーチェは黙々と書類を捌いているフェールの様子を伺った。
いつもと変わらない様子の彼は、妹がデート中だとは知らないのだろう。
ロゼとヴァイスが会うのは今日で三回目とはいえ…妹を溺愛しているフェールが二人の関係に気づいていないとは。
(やっぱりこういう事は男家族は蚊帳の外なのね)
思わず笑みをもらしたルーチェの耳に、地響きのような音が聞こえた。
「フェール!」
バタン!と政務室の扉が開いた。
「…どうしました」
息を切らす父親を冷めた目でフェールは見た。
「ロ、ロゼが…」
「何かあったんですか」
妹の名前を出されてその顔が気色ばんだ。
「ヴァイスと…街へ出かけているらしい」
「———は?」
目を見開いたフェールの顔がすぐに剣呑なものに変わった。
「どういう事です」
「会議の後…オーウェンが近づいてきて〝今日は愚息がお嬢さんをお借りして街へ出かけているようで〟と言ってきたのだ」
「将軍閣下が?」
「———聞けばロゼとヴァイスは贈り物を交わしていたらしい」
宰相は深くため息をついた。
「あやつ…他の者や陛下にまで聞こえるような声で…さも二人が親しい関係のように言いやがった」
———外堀から埋めるのは父親譲りだったか!
宰相親子の会話を聞いてルーチェは思わず心の中で叫んだ。
宰相と並んで国王に次ぐ立場である将軍の言葉は重い。
その将軍が、息子と宰相の娘が特別な仲であると他の貴族たちの前で示唆したのだ。
たとえ共に街へ出掛けたのが本当ではなかったとしても…それは事実として認識されてしまうだろう。
そうなれば他の貴族たちはロゼへ手を出しにくくなり、自然、ヴァイスのライバルは減る事になる。
(親子連携プレーとは…さすがだわ)
「…ロゼが…ヴァイスと…?」
ルーチェが感心していると、呆然とした表情でフェールは呟いた。
「ばかな…いつの間に…」
信じられないという風に宙を漂わせた視線が、ふとルーチェを捉えた。
(しまった)
ルーチェは慌てて視線をそらせたが…すぐに人が近づいてくる気配を感じた。
「ルーチェ・ソレイユ」
ルーチェはおそるおそる顔を上げた。
「君に聞きたい事がある」
そこには〝氷の宰相〟の名に相応しい眼差しがあった。
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