ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―

冬野月子

文字の大きさ
14 / 35

14 ゲームの結末

しおりを挟む
「あの人、校舎の裏で教師と抱き合っていたんですって」
「まあ。騎士団の宿舎に入っていくのを見たと聞きましたわ」
「図書館で逢引していたって……」
学園はアリスの噂で持ちきりだ。廊下を歩いていると幾つもの話が聞こえてくる。
「私が聞いたのは王太子殿下と……」
言いかけた女生徒が私に気づいてサッとその顔を青ざめさせた。
(別に……全部知ってるし)
そそくさと逃げるように立ち去った後ろ姿を見てため息をついた。

やはり、アリスが複数の異性と親しくしていたのは大きな問題となっていた。中でも一番の問題は、相手の中に王太子がいたことだという。
アリスは退学処分となり、倫理観が欠如していると判断され、矯正のため修道院へ送られたそうだ。
彼女と親しくなった者たちも相応の処分を受けた。
アルフレッド殿下も謹慎処分、離宮で再教育するという。

アリスは人の心につけ込むのが上手かったらしい。
家や仕事の重圧、兄弟との比較など、彼らのコンプレックスを理解し、癒すような言動を取っていたそうだ。
彼女がそのコンプレックスをどうやって知っていたのかは謎だとされているが、私とラウルは知っている。――それらはゲームに出てくる情報だからだ。
ただ、ゲームの殿下にはコンプレックスといったものはなかったはずなのだが……なんと、私に対して負い目があったという。
私のお妃教育の成果が想定以上に良かったらしい。そのことを留学から帰国後ずっと殿下は聞かされ続け、さらに学園での試験結果も私の方が上だったことが、殿下にとっては負担になったのだと。

そうして殿下は、私にはできない植物の研究に没頭するようになった。そしてある時、学園の温室に行った時にそこでアリスに声をかけられたそうだ。
遠慮のないアリスの明るさに殿下は癒され、何度か会うようになった。他の者たちのように抱擁したりといった接触はなかったそうだが、それでも二人きりで温室という人目に晒されにくい場所で会っていたのは事実だ。

自分が殿下のコンプレックスだったというのは、正直ショックだ。
私はただお妃教育を頑張っていただけなのに。
学校の試験は……まあ、数学や理科には前世の知識という裏技があったけれど。でも他の教科はこの世界で身につけたものだ。
(頑張った結果を負担だったと思われるのって……何だかなあ)
モヤモヤしてしまって、それをエディーとラウルに愚痴ったら二人は美味しいお菓子を買ってきてくれた。本当に、ウチの弟たちはいい子で可愛い。


私と殿下の婚約は解消された。
殿下の再教育のために、一度関係をリセットした方が良いと判断されたためだ。
「リセットということは……再び婚約する可能性があるの?」
婚約解消の理由を聞かされ、私はお父様に尋ねた。
「それはあるだろう、お前は何年もお妃教育を受けていたからな。それを無駄にしてしまうのはもったいないだろう。だが、もしもお前に結婚したい相手がいるならば仕方ないとも言っていた」
そんな相手はいないけれど……でも、これはチャンスなのかもしれない。
(そうよ、私は田舎暮らしをするのが夢なのよ!)
できればうちの、バリエ家の領地で過ごしたい。
夏休みに帰った時、最近発掘され整備したばかりだという温泉に連れて行ってもらった。
この世界に転生して初めての温泉はとても気持ちがよくて。景色も綺麗でご飯も美味しくて、本当に楽しい帰省だった。

(まあ……王宮へも通わなくてよくなったし。先のことはこれから考えるとして、少しのんびりしよう)
こうして、ヒロインの退場という思いがけない形でゲームは終わったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。

ふまさ
恋愛
 ──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。  彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。  ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。  だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。 ※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

処理中です...