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第3章 呪い
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「今日、授業が終わったら大神殿に来て頂けますか」
翌朝。
顔を合わせるなりオレールはイリスとレナルドに言った。
「今日?」
「昨日の事を父に報告した所、詳しく話が聞きたいと。…王宮にも内密に伝えて人を呼ぶそうです」
イリスとレナルドは顔を見合わせた。
「…何か心当たりがあるのか」
「———実は」
オレールは声をひそめた。
「大神殿の方で、ここ数日よくない徴が現れているのですが、もしかしたら関係あるかもと」
「徴?それは一体…」
「詳しくは大神殿でお伝えします。お二人とも来て頂けますよね」
「わ、私も行きます!」
側で聞いていたフランソワーズが声を上げた。
「…そうですね、フランソワーズ様も是非」
「ところでアルセーヌ殿下は…?」
イリスは教室を見渡した。
いつもならレナルドと共に登園しているアルセーヌの姿がどこにも見えない。
「今日は休むそうだ」
「休み?」
「具合が悪いとか。侍女の話では朝食もとらず部屋に籠っているらしい。———確かに、何かおかしいのかもしれないな」
「アルセーヌ様…」
レナルドの言葉に、フランソワーズの顔から血の気が引いていった。
「よくお越し頂きました」
祭司長は硬い表情で出迎えた。
「…何かあったのか」
その雰囲気にただならぬものを感じてレナルドが尋ねた。
「———貴賓室へ、ご案内します」
連れられて入った貴賓室には、アルセーヌの近従だという青年が既に来ていた。
「クーパー。アルセーヌの様子は?」
「それが…実は殿下は、行方不明なのです」
「は?」
「夕刻近くまで起きない事を不審に思った侍女が眠っているはずのベッドを覗くと、殿下はいなかったのです。城内は全て探したのですがおらず…今王都内へ捜索を出しております」
「見つからないのか?」
「追跡魔法を掛けたのですが…どうやら防御が掛かっているらしくて反応しません」
「どういう事だ!」
「アルセーヌ様が…行方不明…?」
「フランソワーズ様!」
力が抜けて崩れ落ちそうになったフランソワーズを慌てて支えると、イリスは椅子へと座らせた。
「アルセーヌは…自分で出て行ったのか?」
「おそらくは。側仕え以外の者が殿下の部屋に近づいた形跡はございません」
「何故…」
呟くと、レナルドは祭司長を見た。
「よくない徴が現れているといったな」
「はい…いつも神殿で祈りを捧げているのですが、三日前からその時に使う水晶に影が映るようになりました」
「黒い影?それはどういう意味がある?」
「読み取らせているのですが、影が覆ってきているとしか分からず…」
「———何が起きているんだ」
レナルドは苛立ったように室内を見渡した。
「アルセーヌの様子がおかしいのも、居なくなったのも…その水晶の影と関係があるのか?」
「おそらくは…」
『王子の加護が消えようとしておるのだ』
「…え?」
突然イリスの頭の中に声が響いた。
翌朝。
顔を合わせるなりオレールはイリスとレナルドに言った。
「今日?」
「昨日の事を父に報告した所、詳しく話が聞きたいと。…王宮にも内密に伝えて人を呼ぶそうです」
イリスとレナルドは顔を見合わせた。
「…何か心当たりがあるのか」
「———実は」
オレールは声をひそめた。
「大神殿の方で、ここ数日よくない徴が現れているのですが、もしかしたら関係あるかもと」
「徴?それは一体…」
「詳しくは大神殿でお伝えします。お二人とも来て頂けますよね」
「わ、私も行きます!」
側で聞いていたフランソワーズが声を上げた。
「…そうですね、フランソワーズ様も是非」
「ところでアルセーヌ殿下は…?」
イリスは教室を見渡した。
いつもならレナルドと共に登園しているアルセーヌの姿がどこにも見えない。
「今日は休むそうだ」
「休み?」
「具合が悪いとか。侍女の話では朝食もとらず部屋に籠っているらしい。———確かに、何かおかしいのかもしれないな」
「アルセーヌ様…」
レナルドの言葉に、フランソワーズの顔から血の気が引いていった。
「よくお越し頂きました」
祭司長は硬い表情で出迎えた。
「…何かあったのか」
その雰囲気にただならぬものを感じてレナルドが尋ねた。
「———貴賓室へ、ご案内します」
連れられて入った貴賓室には、アルセーヌの近従だという青年が既に来ていた。
「クーパー。アルセーヌの様子は?」
「それが…実は殿下は、行方不明なのです」
「は?」
「夕刻近くまで起きない事を不審に思った侍女が眠っているはずのベッドを覗くと、殿下はいなかったのです。城内は全て探したのですがおらず…今王都内へ捜索を出しております」
「見つからないのか?」
「追跡魔法を掛けたのですが…どうやら防御が掛かっているらしくて反応しません」
「どういう事だ!」
「アルセーヌ様が…行方不明…?」
「フランソワーズ様!」
力が抜けて崩れ落ちそうになったフランソワーズを慌てて支えると、イリスは椅子へと座らせた。
「アルセーヌは…自分で出て行ったのか?」
「おそらくは。側仕え以外の者が殿下の部屋に近づいた形跡はございません」
「何故…」
呟くと、レナルドは祭司長を見た。
「よくない徴が現れているといったな」
「はい…いつも神殿で祈りを捧げているのですが、三日前からその時に使う水晶に影が映るようになりました」
「黒い影?それはどういう意味がある?」
「読み取らせているのですが、影が覆ってきているとしか分からず…」
「———何が起きているんだ」
レナルドは苛立ったように室内を見渡した。
「アルセーヌの様子がおかしいのも、居なくなったのも…その水晶の影と関係があるのか?」
「おそらくは…」
『王子の加護が消えようとしておるのだ』
「…え?」
突然イリスの頭の中に声が響いた。
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