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第3章 呪い
03
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魔術大会も同じ訓練場で行われる。
「ずいぶんと結界が張ってあるな。一晩で掛けたのか」
昨日とは異なる空気に、周囲を見渡してレナルドが言った。
「魔法は剣と違って観客席にも被害が出る可能性がありますからね、まだ制御が不安定な者も多いですし」
「訓練場と観客席全体の、二重になっているのね」
「……アルセーヌ様は大丈夫なのかしら」
イリスとレナルド、オレールの会話を聞いてフランソワーズが不安そうに眉を曇らせた。
「出場者には防御魔法が掛かっていますし、治療担当も待機していますから大丈夫ですよ」
特に今年は王子であるアルセーヌが参加するためいつも以上に念入りだという。
「オレール様は詳しいのですね」
「兄がいますので。それに神殿の方からも手伝いが出ています」
怪我の治療や回復は神官の方が得意ですから。オレールはそう説明した。
アルセーヌは順当に勝ち上がり、三回戦を迎えた。
対戦するのは二年生の女生徒だ。
「風魔法が得意なようですね。魔力も高いです」
「…もしかして出場者全員調べてあるのか?」
びっしりと書き込まれているノートを見ながら言ったオレールに、レナルドが呆れたような視線を向けた。
「情報収集は戦いの基本ですよ」
オレールは顔を上げると笑みを浮かべて答えた。
試合が始まった。
アルセーヌがいくつもの氷の粒を放つ。
それを風で飛ばされるとすかさず水へと変化させて相手を包み込んだ。
しばらく風と水の攻防が続いていたが、やがて相手の攻撃に光が混ざり、雷へと変化した。
風が舞い上がり、竜巻のように渦を巻いた中から放電された光がアルセーヌへと襲いかかると水の壁がそれを遮った。
「…あ」
その瞬間、明らかに強すぎる魔力を感じイリスは思わず声をあげた。
「イリス?」
「危ない…!」
イリスが叫ぶと同時に激しい爆発音が訓練場に鳴り響いた。
観客席は騒然となった。
「アルセーヌ!」
レナルドが階段を駆け下りて行く。
爆発音と共に湧き上がった煙が消えると、訓練場に倒れているアルセーヌの姿が現れた。
「……!」
フランソワーズが声にならない悲鳴を上げた。
彼女の身体が震えだしたのを見てイリスはその肩を抱くと視線を訓練場へと移した。
「一体何が…」
「…魔力が…変化した…?」
目を見開いたオレールの隣で、イリスは小さく呟いた。
対戦相手の女生徒は呆然とした様子でその場に座り込んでいた。
「ずいぶんと結界が張ってあるな。一晩で掛けたのか」
昨日とは異なる空気に、周囲を見渡してレナルドが言った。
「魔法は剣と違って観客席にも被害が出る可能性がありますからね、まだ制御が不安定な者も多いですし」
「訓練場と観客席全体の、二重になっているのね」
「……アルセーヌ様は大丈夫なのかしら」
イリスとレナルド、オレールの会話を聞いてフランソワーズが不安そうに眉を曇らせた。
「出場者には防御魔法が掛かっていますし、治療担当も待機していますから大丈夫ですよ」
特に今年は王子であるアルセーヌが参加するためいつも以上に念入りだという。
「オレール様は詳しいのですね」
「兄がいますので。それに神殿の方からも手伝いが出ています」
怪我の治療や回復は神官の方が得意ですから。オレールはそう説明した。
アルセーヌは順当に勝ち上がり、三回戦を迎えた。
対戦するのは二年生の女生徒だ。
「風魔法が得意なようですね。魔力も高いです」
「…もしかして出場者全員調べてあるのか?」
びっしりと書き込まれているノートを見ながら言ったオレールに、レナルドが呆れたような視線を向けた。
「情報収集は戦いの基本ですよ」
オレールは顔を上げると笑みを浮かべて答えた。
試合が始まった。
アルセーヌがいくつもの氷の粒を放つ。
それを風で飛ばされるとすかさず水へと変化させて相手を包み込んだ。
しばらく風と水の攻防が続いていたが、やがて相手の攻撃に光が混ざり、雷へと変化した。
風が舞い上がり、竜巻のように渦を巻いた中から放電された光がアルセーヌへと襲いかかると水の壁がそれを遮った。
「…あ」
その瞬間、明らかに強すぎる魔力を感じイリスは思わず声をあげた。
「イリス?」
「危ない…!」
イリスが叫ぶと同時に激しい爆発音が訓練場に鳴り響いた。
観客席は騒然となった。
「アルセーヌ!」
レナルドが階段を駆け下りて行く。
爆発音と共に湧き上がった煙が消えると、訓練場に倒れているアルセーヌの姿が現れた。
「……!」
フランソワーズが声にならない悲鳴を上げた。
彼女の身体が震えだしたのを見てイリスはその肩を抱くと視線を訓練場へと移した。
「一体何が…」
「…魔力が…変化した…?」
目を見開いたオレールの隣で、イリスは小さく呟いた。
対戦相手の女生徒は呆然とした様子でその場に座り込んでいた。
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