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37.あなたと共に

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ティーナとアルフィンが帰った途端、ラウルに抱き上げられ…寝室へと連れて行かれた。

抵抗しようとしたけれど…体格も力も違う、魔法も全く使えない私が敵うはずもなく。
色々イタされてしまい…。
とてもさっきまで魔力を使い果たして寝たきりだったとは思えないんですけれど?!

「あー幸せだな…」
ベッドの中で私を抱きしめて嬉しそうなラウルを見ていると…これで良かったとは思うけれど。
「……嫌だった?」
少し暗い声に顔を上げる。
困ったような表情に…首を横に振った。
…行為自体は…嫌ではないけれど。
「…考えてしまって」
「何を?」
「あとどれくらい生きて…一緒にいられるんだろうって」
今までの私の身体は、呪いの影響で寿命が短かった。
呪いは解けたとはいえ…十八年間受けてきた呪いは既にこの身体も蝕んでいるはずだ。
また少しの間しかラウルと一緒にいられないかもしれない。
私が早く死んだら…ラウルはどうするんだろう。

「———それは分からないよ」
しばらくの沈黙の後、ラウルは答えた。
「でも人間、誰でもいつ死ぬかなんて分からないから。考えても仕方ないよ」
ラウルの手が優しく私の背中を撫でる。
「…死んでもこの身体は残るかな」
その温かさにもう一つの不安がぽろりと口から漏れた。

「残るよ」
きっぱりとラウルは答えた。
「本当に?」
「その事も調べたんだ。…これは推測も入ってるんだけど」
ラウルの胸へと抱き寄せられる。
「多分…アデル様や代々の魔女達の寿命は、本当はもっと短かったはずだよ」
「え?…どういう事…?」
「人間の女の子の身体が、あれだけの呪いに耐えられるはずはないんだ」
古の…封印してもなお魔力が溢れ出すほどの力を持った邪神。
その身代わりが人間の…しかも少女の身体では、確かに耐性が違いすぎる。
「二十年か…どれくらいかは分からないけど、もっと早くに死んでいたはずだ」
「…でも…実際は…」
「それだけ最初の———ララの魔力が…魂が強かったんだ」
私の魔力が…?

「とっくに肉体は力尽きていたけれど、魂の強さのおかげで生き長らえていたんだろう。だけど魂でも支えきれなくなった時に…繋ぎとめられていた肉体は消滅してしまったんだと思う」
…それは…つまり…。
「最後の数年間は…私の身体は幻だったって事?」
「そうだね…だからあっという間に消えてしまった。でも呪いが解けて魔力を失った今でも、こうやってフローラ様は生きている。…だから少なくても身体が消滅する事はないよ」
「———そう…良かった」
私はラウルの胸に頬をすり寄せた。
「あなたに…同じ悲しみを味合わせたくないもの」

「そうだね。あんな光景は二度と見たくない」
ラウルのキスが頭に落ちてくる。
「フローラ様を長生きさせる方法はこれから研究するし、もういくつか考えているから。大丈夫だよ」
「長生きさせる方法って…?」
「例えば精と一緒に魔力を注いでみるとか」
顔を見合わせて真顔でラウルが答える。
———ええと…それは…

「真っ赤になって、可愛い」
顔を綻ばせたラウルに口付けられる。
「…そういう事することばかり考えてるの?」
「仕方ないだろ、男なんだし。ずっとずっと欲しかったんだよ?」
私の頬を両手で包み込んで、拗ねたような顔を見せるラウルに子供だった頃の面影が見えたけれど…ラウルの言うずっとはその子供の頃からなんだよな…
「……マセガキ」
「それだけ貴女が魅力的だって事だよ」
聞こえないように呟いたつもりだったのに、しっかり聞こえていたらしい。
「だから一日でも早く婚約しないとね」
だから?
「きっとこの先フローラ様が欲しいと言う王族や貴族が殺到するから。早く俺のものだって知らしめないと」
———それでもあの王子のように諦めない者も多いんだろうけど。
ため息混じりにラウルが呟く。
…他は分からないけど、確かにジェラルド様は…一生諦めない気がする。

「———大丈夫よ。こうやってあなたが側にいてくれれば」
私はラウルの手に自分の手を重ねた。
「そういう人達から護ってくれるんでしょう?」

「もちろんだよ」
温もりと、優しさと、愛情と…。
この手から与えられる全てが私を護る力になるから。
「ずっと側にいてね」
「ああ」
———もう、未来は怖くない。

私は愛する人に包まれる幸せを感じながら瞳を閉じた。
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