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第四章 隠された真実
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「アングラード伯爵」
廊下に出されてからも喚いていたシャーロットの声が聞こえなくなると、国王が口を開いた。
「パトリシア嬢の件、知らなかったこととはいえ伯爵にも辛い思いをさせた。申し訳ない」
「――謝罪ならば、こちらのルーシーにもお願いいたします」
セドリックはルーシーの肩を抱いた。
「ルーシー嬢にも?」
「彼女は、パトリシアの妹なのです」
「妹?!」
「生まれる前から養子に出ることが決まっていたので公式の記録には残っておりませんが。ルーシーはレンフィールド侯爵と夫人の間の子供です」
「……黙っていて申し訳ございませんでした」
ルーシーは驚きの表情を浮かべた一同に頭を下げた。
「まあ、妹……だからそっくりだったの」
目を見張ったまま王妃が口を開いた。
「エリオット。お前は知ってたのか?」
「少し前に聞きました」
アーノルドに尋ねられ、エリオットは答えた。
「アメーリアも知っています」
「アメーリアも?」
「……あの子はパトリシアの親友だったものね」
王妃はルーシーへと歩み寄ると、その手を取った。
「ごめんなさいね、私たちのせいでパトリシアやご両親に酷いことをしてしまったわ」
「王妃様……」
「お母様も亡くなってしまって、その上養父母も亡くして……とても辛い思いをしてきたのね」
「……はい……」
じわりと涙が浮かんだルーシーを、王妃はそっと抱きしめた。
「兄上」
視線でエリオットに促され、メイナードは一歩前へ出るとルーシーを見た。
「――本当に……私は愚かだった。許せと言えるはずもないが……すまない」
そう言うとセドリックへと向き直る。
「伯爵にも申し訳ないことをした。パトリシアにも……彼女を信じてやれば良かった」
メイナードはセドリックとルーシーに向かって頭を下げた。
「――正直、殿下のことは許せませんが」
セドリックは口を開いた。
「パトリシアにも隠しごとがあったせいで殿下に心を開くことがなかった。だから殿下も彼女を信じられなかったのでしょう」
「……それでも、婚約者として彼女を信頼しなければならなかったのだ」
「では、そう思う気持ちを忘れずに、これから良き王となってください」
「……ああ、約束する」
顔を上げるとメイナードとセドリックは視線を合わせた。
「……ひとつ、疑問なんだけど」
アーノルドが口を開いた。
「卒業パーティの時、パトリシア嬢は義姉上の嘘を否定しなかったんだろう? 公の場でやってもいないことを言われてどうして否定しなかったんだろう」
「……それは、そうすることで婚約を解消してもらえるのではと、そう思ったのではないでしょうか」
ルーシーが答えた。
「否定して、嘘だと分かれば婚約は継続します。でもお姉様はそれを望んでいなかったのですよね」
「婚約を解消されて自由の身となる、そのために嘘を利用しようとしたのかもしれませんね」
セドリックが言葉を継いだ。
まさか、修道院へと追放されるとはパトリシアも思わなかったのだろう。
それぞれの心と思惑が重なり、結果取り返しのつかないことになってしまったのだ。
「――アーノルド、エリオット」
メイナードは弟たちを見た。
「お前たちは大丈夫だろうが。私の二の舞には決してなるな」
「分かってるよ」
「もちろんです」
弟たちに頷くと、メイナードは国王に向いた。
「私はもう一度シャーロットに話を聞きます。その内容次第では、この婚姻を解消しようと思います」
「そうだな」
国王は頷いた。
「お前も今一度己の行動を省みて、今後の進み方を考えるといい」
「はい」
「では改めて。エリオットとルーシー・アングラード嬢の婚約についての話をしよう」
国王は一同を見渡した。
廊下に出されてからも喚いていたシャーロットの声が聞こえなくなると、国王が口を開いた。
「パトリシア嬢の件、知らなかったこととはいえ伯爵にも辛い思いをさせた。申し訳ない」
「――謝罪ならば、こちらのルーシーにもお願いいたします」
セドリックはルーシーの肩を抱いた。
「ルーシー嬢にも?」
「彼女は、パトリシアの妹なのです」
「妹?!」
「生まれる前から養子に出ることが決まっていたので公式の記録には残っておりませんが。ルーシーはレンフィールド侯爵と夫人の間の子供です」
「……黙っていて申し訳ございませんでした」
ルーシーは驚きの表情を浮かべた一同に頭を下げた。
「まあ、妹……だからそっくりだったの」
目を見張ったまま王妃が口を開いた。
「エリオット。お前は知ってたのか?」
「少し前に聞きました」
アーノルドに尋ねられ、エリオットは答えた。
「アメーリアも知っています」
「アメーリアも?」
「……あの子はパトリシアの親友だったものね」
王妃はルーシーへと歩み寄ると、その手を取った。
「ごめんなさいね、私たちのせいでパトリシアやご両親に酷いことをしてしまったわ」
「王妃様……」
「お母様も亡くなってしまって、その上養父母も亡くして……とても辛い思いをしてきたのね」
「……はい……」
じわりと涙が浮かんだルーシーを、王妃はそっと抱きしめた。
「兄上」
視線でエリオットに促され、メイナードは一歩前へ出るとルーシーを見た。
「――本当に……私は愚かだった。許せと言えるはずもないが……すまない」
そう言うとセドリックへと向き直る。
「伯爵にも申し訳ないことをした。パトリシアにも……彼女を信じてやれば良かった」
メイナードはセドリックとルーシーに向かって頭を下げた。
「――正直、殿下のことは許せませんが」
セドリックは口を開いた。
「パトリシアにも隠しごとがあったせいで殿下に心を開くことがなかった。だから殿下も彼女を信じられなかったのでしょう」
「……それでも、婚約者として彼女を信頼しなければならなかったのだ」
「では、そう思う気持ちを忘れずに、これから良き王となってください」
「……ああ、約束する」
顔を上げるとメイナードとセドリックは視線を合わせた。
「……ひとつ、疑問なんだけど」
アーノルドが口を開いた。
「卒業パーティの時、パトリシア嬢は義姉上の嘘を否定しなかったんだろう? 公の場でやってもいないことを言われてどうして否定しなかったんだろう」
「……それは、そうすることで婚約を解消してもらえるのではと、そう思ったのではないでしょうか」
ルーシーが答えた。
「否定して、嘘だと分かれば婚約は継続します。でもお姉様はそれを望んでいなかったのですよね」
「婚約を解消されて自由の身となる、そのために嘘を利用しようとしたのかもしれませんね」
セドリックが言葉を継いだ。
まさか、修道院へと追放されるとはパトリシアも思わなかったのだろう。
それぞれの心と思惑が重なり、結果取り返しのつかないことになってしまったのだ。
「――アーノルド、エリオット」
メイナードは弟たちを見た。
「お前たちは大丈夫だろうが。私の二の舞には決してなるな」
「分かってるよ」
「もちろんです」
弟たちに頷くと、メイナードは国王に向いた。
「私はもう一度シャーロットに話を聞きます。その内容次第では、この婚姻を解消しようと思います」
「そうだな」
国王は頷いた。
「お前も今一度己の行動を省みて、今後の進み方を考えるといい」
「はい」
「では改めて。エリオットとルーシー・アングラード嬢の婚約についての話をしよう」
国王は一同を見渡した。
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