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第四章 隠された真実
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「お兄様!」
学園の応接室の扉を開くと、ルーシーは中にいた人物へと駆け寄った。
「ルーシー、少し見ないあいだに綺麗になったな」
駆け寄ってきたルーシーを抱き止めると、セドリック・アングラードは妹を見つめて目を細めた。
「いい学園生活を送れているようだ」
「はい。お兄様もお変わりありませんか」
「ああ」
「お父様とマリーお姉様は?」
「元気だよ、ルーシーに会えなくて寂しそうだけど。そうだ、送ってくれたリングピローを大層喜んでいてね」
そう言って、セドリックは懐から封筒を取り出した。
「これはマリーからお礼の手紙だ」
「ありがとうございます!」
封筒を受け取るとルーシーは嬉しそうにそれを見つめた。
「――エリオット殿下ですね」
後から部屋に入ってきたエリオットの姿を認めて、セドリックは胸に手を当てると腰を折った。
「セドリック・アングラードです。妹がお世話になっております」
「エリオットだ。セドリック殿のことはルーシーからよく聞いている」
エリオットは手を差し出した。
「ルーシーとのこと、認めてくれて感謝する」
「妹の幸せが一番大事ですから」
差し出された手を握り返してセドリックはそう答えた。
口調こそ穏やかだが、エリオットへ向けるその鋭く、値踏みするような視線は、彼が本心ではエリオットとルーシーの中を未だ歓迎していないことを感じさせた。
「お兄様」
ルーシーがセドリックの耳元へ口を寄せると何かささやいた。
「――そうか」
頷いて、セドリックは改めてエリオットへ向いた。
「ルーシーの家族のことを知って、それでもこの子を望むのですね」
「ああ」
セドリックを見返してエリオットは頷いた。
「ルーシーに辛い思いをさせたことは謝る。だが、それとルーシーを望むことはまた別だ」
「――そうですか」
冷たさを感じる青い瞳の奥の光が少し和らいだように見えた。
初夏の風が薫る季節となり、セドリックが王都へやってきた。
辺境伯の爵位を継ぎ新しい当主となる許可を国王から貰うためだ。
そしてもう一つ、エリオットとルーシーの婚約を正式に結ぶための手続きを行うのも重要な目的だ。
「お兄様はどれくらい滞在するのですか」
ルーシーが尋ねた。
「挨拶回りや色々と片付けたい用事があるから、十日間くらいかな」
「それではお忙しいのですね……」
「妹のために割く時間くらいは取れるよ」
セドリックはしゅんとしたルーシーの頭をくしゃりと撫でた。
「皆に土産も買って帰りたいし。買い物に付き合ってくれるかい」
「はい!」
兄を見上げるとルーシーは顔を綻ばせた。
「随分と仲がいいんだね」
これから別の約束があるというセドリックと別れ、エリオットとルーシーは学園の廊下を歩いていた。
「そうですね、お兄様もお父様も可愛がってくれています」
「それにしても仲が良すぎるんじゃないかな」
「そうですか……?」
ルーシーは首を傾げた。
「うちの兄たちとは全然違うな」
「……それは、弟と妹の違いではないでしょうか」
「そうなのかな」
エリオットは立ち止まるとルーシーへと向いた。
「ルーシーはセドリック殿のことが好き?」
「はい」
「セドリック殿もルーシーが好きみたいだね」
「それは兄妹ですから」
「でも血は少ししか繋がっていないだろう」
「……もしかして、ヤキモチを焼いているのですか」
ルーシーの言葉に図星だというようにエリオットは眉をひそめた。
「自分の好きな子が他の男と抱き合っていたら不快になるよ」
「ふふ、心配しないで下さい」
そんなエリオットにルーシーは微笑んだ。
「血の繋がりは薄くても、お兄様にとって私はずっと昔から『妹』なんです」
「ずっと昔から?」
「はい」
ルーシーは笑顔のまま頷いた。
学園の応接室の扉を開くと、ルーシーは中にいた人物へと駆け寄った。
「ルーシー、少し見ないあいだに綺麗になったな」
駆け寄ってきたルーシーを抱き止めると、セドリック・アングラードは妹を見つめて目を細めた。
「いい学園生活を送れているようだ」
「はい。お兄様もお変わりありませんか」
「ああ」
「お父様とマリーお姉様は?」
「元気だよ、ルーシーに会えなくて寂しそうだけど。そうだ、送ってくれたリングピローを大層喜んでいてね」
そう言って、セドリックは懐から封筒を取り出した。
「これはマリーからお礼の手紙だ」
「ありがとうございます!」
封筒を受け取るとルーシーは嬉しそうにそれを見つめた。
「――エリオット殿下ですね」
後から部屋に入ってきたエリオットの姿を認めて、セドリックは胸に手を当てると腰を折った。
「セドリック・アングラードです。妹がお世話になっております」
「エリオットだ。セドリック殿のことはルーシーからよく聞いている」
エリオットは手を差し出した。
「ルーシーとのこと、認めてくれて感謝する」
「妹の幸せが一番大事ですから」
差し出された手を握り返してセドリックはそう答えた。
口調こそ穏やかだが、エリオットへ向けるその鋭く、値踏みするような視線は、彼が本心ではエリオットとルーシーの中を未だ歓迎していないことを感じさせた。
「お兄様」
ルーシーがセドリックの耳元へ口を寄せると何かささやいた。
「――そうか」
頷いて、セドリックは改めてエリオットへ向いた。
「ルーシーの家族のことを知って、それでもこの子を望むのですね」
「ああ」
セドリックを見返してエリオットは頷いた。
「ルーシーに辛い思いをさせたことは謝る。だが、それとルーシーを望むことはまた別だ」
「――そうですか」
冷たさを感じる青い瞳の奥の光が少し和らいだように見えた。
初夏の風が薫る季節となり、セドリックが王都へやってきた。
辺境伯の爵位を継ぎ新しい当主となる許可を国王から貰うためだ。
そしてもう一つ、エリオットとルーシーの婚約を正式に結ぶための手続きを行うのも重要な目的だ。
「お兄様はどれくらい滞在するのですか」
ルーシーが尋ねた。
「挨拶回りや色々と片付けたい用事があるから、十日間くらいかな」
「それではお忙しいのですね……」
「妹のために割く時間くらいは取れるよ」
セドリックはしゅんとしたルーシーの頭をくしゃりと撫でた。
「皆に土産も買って帰りたいし。買い物に付き合ってくれるかい」
「はい!」
兄を見上げるとルーシーは顔を綻ばせた。
「随分と仲がいいんだね」
これから別の約束があるというセドリックと別れ、エリオットとルーシーは学園の廊下を歩いていた。
「そうですね、お兄様もお父様も可愛がってくれています」
「それにしても仲が良すぎるんじゃないかな」
「そうですか……?」
ルーシーは首を傾げた。
「うちの兄たちとは全然違うな」
「……それは、弟と妹の違いではないでしょうか」
「そうなのかな」
エリオットは立ち止まるとルーシーへと向いた。
「ルーシーはセドリック殿のことが好き?」
「はい」
「セドリック殿もルーシーが好きみたいだね」
「それは兄妹ですから」
「でも血は少ししか繋がっていないだろう」
「……もしかして、ヤキモチを焼いているのですか」
ルーシーの言葉に図星だというようにエリオットは眉をひそめた。
「自分の好きな子が他の男と抱き合っていたら不快になるよ」
「ふふ、心配しないで下さい」
そんなエリオットにルーシーは微笑んだ。
「血の繋がりは薄くても、お兄様にとって私はずっと昔から『妹』なんです」
「ずっと昔から?」
「はい」
ルーシーは笑顔のまま頷いた。
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