恋するソレイユ

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7 悩む異邦人

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「あ、どうも」

 八月に入ってしばらく経ったある昼下がり、古書店に入ると、先客から声をかけられた。エティエンヌ・モンクレーヌだ。
 ああ、とギャレットは帽子を持ち上げて会釈する。

「先日もまたうちの妹がご迷惑をおかけしたみたいで……いつもすみません」

 エティエンヌは心から申し訳なさそうな顔で頭を下げ、ジュヌヴィエーヴの行動を詫びる。ギャレットは少し苦い顔をしたが、小さく首を振った。

「彼女は、お父上から、その……折檻されたりはしなかっただろうか?」

 ジュヌヴィエーヴを送り届けたときの彼女の父親の様子から、なんとなくそんな予感がしていたので、他家のこと故に関わっていけないことだと思いつつも、なんとなく心配でつい尋ねる。エティエンヌは「さすがに父も娘に手はあげませんよ」と苦笑した。一時間ばかり怒鳴り散らしていたが、と付け加えられたので、ちょっとだけ顔を顰めるが、そういうところは一応は父親なのだな、と少しホッとして頷く。

「だって、大切なに傷がついたら困るでしょう?」

 そんなギャレットの心を突き刺すように、エティエンヌは嫌な笑みを浮かべてそう言った。
 なにを言われたのかわからず、ギャレットは手にした本を取り落としながら、隣に並んだ青年の横顔を唖然と見遣った。

「あの人にとっては、商品なんです。ジジも、僕達も」

 目の前の棚にあった本の背表紙を撫でながら、エティエンヌは話を続ける。

「特にジジは、あの容姿でしょう? 父にとっては最高の利用価値がある商品なんです。欠陥品の僕や、反抗的なアントワーヌと違って」

 ジュヌヴィエーヴは口を開けばとんでもないが、黙って微笑んでいれば最高の職人の作った精巧な人形ビスクドールですらも霞む美貌を持っている。野山を駆け回って育ったわりに肌の色は真珠のように白く、陶器のように滑らかな光沢を持ち、陽に透ける淡い金髪も、長い睫毛に縁取られた薄青い瞳も硝子細工のように繊細で、つんとした桜桃のような唇があどけなくも艶っぽい。
 そんな彼女を手に入れたいと思う男がそれなりにいるだろうことは、同じ男として、悲しいことだが容易に想像がつく。そして、それがもしも、金銭によって叶うことならば、大枚をはたく男が世の中にはいくらでもいるだろうことも想像出来た。
 彼女は金のなる木なのだ。そんな大切なものに傷をつけて、商品価値を下げるつもりはないのだということを、エティエンヌは皮肉気に嘲笑っている。

 ジュヌヴィエーヴが父親を毛嫌いしている原因はそれか、とギャレットは思い至った。
 世の中には、最低な父親というものはいくらでもいる。英国にもいたのだから、この国にいないわけがない。
 それでも、ギャレットが今まで見て来た父親達の中で、この兄妹の父親は特に最低な男だと思えた。

「ねえ、ムッシュウ」

 拾った本を睨みつけたまま黙り込んだギャレットに、エティエンヌは声をかける。

「少しでもあの娘を可愛いと思ってくださるなら、救ってやってはくれないでしょうか?」

 そう言う彼の瞳はとても悲しげで、胸が締めつけられるような感じがした。

「聞いているかも知れませんが、あの娘は可哀想な身の上です。ずっと父を知らずに育って来たというのに、娘という駒が必要になった父に、騙されてパリまで連れて来られた。もう二年も、大好きなお母さんとも、お祖父さんやお祖母さんとも会わせてもらえていない」

 その話は少しだけ本人から聞いて知っている。パリの出身ではないという話を聞き、生まれを尋ねたところ、ローヌというリヨンの南の方だと答えてくれた。病気がちだった母に会いたいのに、故郷に帰らせてもらえないのだ、と悲しげに。

「喧しく生意気な娘だということは重々承知です。けれど、そんな彼女が家に帰ること以外で初めて望んだのが、あなたに会いに行くことでした」

 エティエンヌは覚えている。
 五月の半ばを過ぎた少し暑さのあった日。体調を崩して横になっていたエティエンヌの許に、興奮気味なジュヌヴィエーヴが駆け込んで来た。
 聞いて、と彼女は瞳を輝かせながら言い、びしょ濡れになった大切な帽子を掲げて見せた。とても素敵な人がこの帽子を拾ってくださったの――彼女はそう言って花のように笑った。こちらの家に来てから初めて見るような笑顔だった。
 あの笑顔がもう一度見たくて、エティエンヌはジュヌヴィエーヴがギャレットに会いに行くことに付き合った。生まれつき心臓があまり強くないエティエンヌにとって、出歩くのがしんどい日もあった。けれど、可哀想な妹の嬉しそうな顔を見たさに付き合っていた。

「あんなに年の離れた娘と結婚して欲しいというわけではありません。もちろん。そうなってくれることが一番ではありますが……」

 唖然とした表情で見つめてくるギャレットを見つめ返し、エティエンヌは頭を下げる。

「せめて、あの家から、あの子を連れ出してやって欲しいのです」

 家によって生かされている自分では出来ないことだから、と言って悲しげに微笑み、手にしていた本の代金を支払い、店をあとにした。
 店内に残ったギャレットはしばらく目当てのものを捜して店内に留まったが、エティエンヌの言葉を反芻してしまい、集中出来なくなって結局店を出た。





「お戻りなさいませ、旦那様」

 悶々としながら家に帰り着くと、執事のルイが出迎えてくれた。

英国おくにからお手紙が届いております」

 ステッキと帽子を預けて寝室に向かおうと階段を昇りかけると、慌てたように執事は言い、恭しく銀盆を差し出した。
 手紙は四通だった。それを受け取ってさっと差し出し人を確認するが、ひっそりと溜め息が零れた。

「今日の夕食は軽いものにしてくれ」

 手紙の内容を想像し、急に胃がもたれ始めたような気がする。きりきりと痛む腹部に顔を顰めて告げると、仏蘭西人ながら忠実に仕えてくれている執事は「畏まりました」と頷き、料理人に伝える為に奥に戻って行った。

 寝室に入って書き物机の抽斗を開き、愛用のペーパーナイフを手にする。幼い頃に亡き父からもらったそれは、使い始めて四十年ほど経つにもかかわらず、スウーッと綺麗に封を開けてくれる。銘のあるものではないが、なかなかによいものだと思っている。
 ペーパーナイフをしまって老眼鏡を取り出す。顔になにかつけることは煩わしくて好まないが、ここ何年かは文章を読むのに苦労するようになっているので仕方がない。

 面倒なものだろうな、と思いつつ開いた一通目と二通目の手紙は、親類の者からの手紙だ。内容は金の無心。揃って投資に失敗した為に生活に困窮していることを訴えていて、一族の長であるギャレットには救いの手を差し伸べる義務がある、と宣っていた。
 知るか、と舌打ちして机の端に放り投げ、三通目を開く。顧問弁護士のローガンからで、そろそろいい年なので数年以内に息子に代替わりをしようと思う、という内容の連絡だった。有能で信用の出来る男だったので残念に思いつつも、彼が自分より十歳は上だったことを思い出し、やるせなさを感じた。
 最後の一通は、甥のドナルドからだった。子供のいないギャレットの跡を継ぐことになるだろう甥は、月に一度はこうしてご機嫌伺いの手紙を送って寄越す。それは異国に赴任して来た今でも欠かされることはない。律儀なものだ。
 当たり障りない近況報告と寄宿学校での生活のことが綴られた甥の手紙を一通り読み、溜め息と共に親類達からの手紙の上に重ね、もう一度ローガン弁護士からの手紙に目を通した。甥からの手紙より、ギャレットにとってはこちらの方が重要である。
 一応、こちらへの赴任期間は一年から二年と言われて来ているが、延びる可能性もある。特に不都合を感じていないので、延期を要請されれば快諾するつもりではいるが、その前にローガン弁護士の引退が決まるようならば、一度きちんと話し合う席を設けなければ。そのことを認めた手紙を作成し、封をする。

 溜め息と共に眼鏡を外して顔を上げると、外はもうすっかり暗くなってきていた。どうりで見づらい筈だ、と思いつつ、手許にあったランプに火を入れた。
 揺らめく小さな炎を見つめながら、ふと、強い光を宿しながらも、頼りなげに揺れた少女の瞳を思い起こす。
 濡れ鼠でやって来た少女がとんでもない願望を口にした日から、既に十日ほどが過ぎている。二日と空けずにギャレットの通り道に現れていた少女は、あの日からまったく姿を見せておらず、少々気がかりではあった。
 年頃の少女のことなので、きっとなにか考えるところがあるのだろう、と思ってはいるが、ギャレットに「抱いて欲しい」と言って来た思いつめた表情が忘れられず、なんとも言えない気持ちでいたのだ。

 先程偶然会った彼女の兄は、彼女を助けてやって欲しい、と言っていた。
 騙されて遠い土地に連れて来られ、最愛の肉親との再会も叶わずに、父親の決めた相手と縁づかせられることが決まっている身の上は、あまりにも不幸だ、と嘆いていた。その思いにはギャレットも同情を禁じ得ない。
 しかもエティエンヌは、ジュヌヴィエーヴのことを『商品』だと言っていた。つまり、あまり社交界に出入りしているわけでもないギャレットにさえもよくない噂ばかりが聞こえてくるあの父親は、自分の娘を金に換えるつもりなのだということなのだろう。本来なら持参金を用意するところを、相手から金を受け取って嫁にやるつもりなのだ。なんという男だろうか。

 金銭的な援助を目的とした婚姻関係が成立するのは、大昔から存在する習慣だということはわかっているし、ギャレットの知人の中にもそうして結婚した者は何人かいる。彼等の結婚生活は上手くいっている者と不幸なものになっている者が半々だ。事情があれば仕方がないことだとは思うが、納得していない娘を父親が金目的で売るように嫁がせるのは、さすがに如何なものかと思う。

 しかし、親戚でもなく、更にはまったく関わりのない異国人の自分に、いったいなにが出来るというのだろうか。
 彼女が望むように抱いてやったとしてもなんの解決にもならないだろうし、合意の上であっても、彼女の父からは強姦魔として訴えられる可能性の方が高い。エティエンヌが願ったように何処かに連れ去ったとしても、彼女の父が追っ手をかけたり警邏に訴えたりするとしか思えない。未だ反感情の燻る異国の地で問題を起こすことは即外交問題となるのはわかりきっているので、常識的に考えて、面倒事は極力避けなければならなかった。

 溜め息を零しつつ目頭を押さえる。老眼が進んでいる所為か、最近とても目が疲れやすい。
 結局のところ、ギャレットは彼女に関わるべきではないのだ。こんな些細なことだろうと、外交官として赴任して来ているギャレットが関われば、いずれ国同士の問題に発展する恐れがあるのはわかりきっている。
 ようやく戦争が終結して平和になって来たところだというのに、再びそのような状況に戻るような事態だけは回避しなければならない。

(だが――…)

 困ったことに、ギャレットはとうに関わってしまっている。そして、あの強気で突拍子もない行動を取る少女のことを、多少なりとも可愛いと思ってしまっている面もある。
 それは恋愛感情などではなく、親戚の少女の成長を見守るような、そういう心地だったのかも知れないが、確かに愛情の類ではあった。

 過去に亡き妻から手酷い裏切りを受けてから、ギャレットは親類とも他人とも極力関わらないように生きてきた。けれど、多少でも愛しいという感情を持ってしまった少女のことを、簡単に見捨てられるほどに非情でもない。

(馬鹿な感情を抱いてしまったものだ……)

 彼女を取り巻く環境がよりはっきりと見えてきた今、助けてやりたいとは思う。
 どうすることが最善であるのか――執事が夕食の時間を報せに来るまで、ギャレットは思い悩んでいた。



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