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カラSide (完結)

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カラSIDE
 今日はこんな事があったよ。
俺は、海に向かって話しかけている。村の人から、今の時間が満潮だと教えられたからだ。
「カラ、泊めてくれるって。代わりに、渡島の事を聞きたいってさ」
後ろからバクさんの声が聞こえ、俺は振り返った。
「ありがとうございます。バクさんにほとんど任せちゃって」
「いいんだよ。笑顔で話しかければ、向こうも笑顔で返してくれるからさ」
 バクさんはそう言って、俺の隣に立った。
「レイは、何て言っていたの?」
「わかりません」
「正直だね」
 俺は満潮になると、レイに会いに海へ行く。でも、俺が一方的に話しかけるだけだ。
「おーい。泊めてはくれるけど、酒の肴が必要なんだ。カラ、話をしてやってくれ」
 ザシさんが村の子供たちに纏わり着かれながら、駆け寄って来た。
「ザシさんが話してもいいんですよ?」
「いやぁ、俺は小さな子供を抑えるので精一杯だ。それに、語るのはカラの方が上手いだろう?」
 ザシさんがそう言うと、子供たちは「しょぱく無い海があるって本当なのー?」と、俺に尋ねてきた。
「本当だよ。とっても大きな湖だって言う人もいるけどね」
俺は子供たちに返答した。
「それにしても、本当なのかなぁ。いつも怒っている山があるなんて」
 人を信じやすいバクさんも、首を傾げつつ子供たちに話しかけた。
「本当だよ。ずっと南に行くとあるんだって!」
 子供たちは口々に話しつつ、俺たちを村の中心へと誘った。


 俺は、何故レイが生きる事を選んだのかを理解したかった。レイは自分の出来る事をして、生涯を遂げた。しかし、その生き方を自分は出来るだろうか。自分がレイと同じようになったら、生きようと思うだろうか。
そして、同じような人がいたら、俺はどう接するのだろうか。その答えを、自分なりに見つけたかった。その答えが見つかるまで、俺は是川に帰るつもりはなかった。
 大人の儀式を終えた後、旅に出たい事をザシさんに話した。ザシさんも俺の話を聞いて「俺も、知りたいな」と言って、俺と一緒に旅をする事になった。ザシさんも、自分が出来る何かを、まだ見つけていなかった。俺の勝手な想像だったが、そんな気がしていた。
その話を何処からか聞き付けたのか、バクさんも一緒に旅に出る事になった。
「ラドに『ちゃんと帰るよ』って言ってあるから大丈夫だよ」
バクさんはそう言って、無邪気に微笑んでいた。
バクさんとラドさんの思いは一緒だ。村を守るために、バクさんは色々な物事を見聞きしたいのだ。そしてラドさんは村に残り、村を守っていくそうだ。
 俺は子供たちに纏わり着かれながら、海に振りかえった。
「レイ、また明日会おうね」
 俺はいつ、誰に見せても恥ずかしくない大人になれるのだろうか。俺もザシさんもバクさんも、自分の事を大人だと、自分で認めていない。
 だから、旅に出た。
俺たちは四人で、旅に出た。
 
第9部 了 
 
『潮が満ちたら、会いに行く』     了 
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