『潮が満ちたら、会いに行く』

古代の誇大妄想家

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 午後、沼津から再び数人の男女がやってきた。
「鞭虫と、ここらの水について知りたいからな」
 沼津から来た人たちはそう言い、ハムさんは「俺は詳しく言う事は出来ませんよ」と言いつつも、人手が増えた事を喜んでいた。
それから数日経ち、子供のお腹も通常になり、ロウさんもシイさんと仁斗田島の酋長との話し合いを終えた様だ。ロウさんは第三者の目で、シイさんら巫子の派と、酋長ら人間で考える派の仲裁をしていたらしい。
「自分の、元居た場所だからな」
 ロウさんは是川の人間だが、すぐに仁斗田島の人たちと馴染んだそうだ。ハムさんの話を信じない人もおり、その人の説得にも当たっていた。
 体調が良くなったシイさんを、ロウさんが連れてきた。
「まったく、どうしてシイをあそこまで持ち上げたんだ」
ロウさんはシイさんの扱いに、とても憤慨していた。
 どうやら、シイさんは望んで派閥を作ったわけではなく、勝手に祀り上げられたそうだ。僕もシイさんとじかに何度も会ったのだが、特に神秘的な何かは感じられなかった。
「私は、目が良かったのよ」
シイさんはそう言った。
 シイさんは右手と左手、どっちに石や木の実を持っているか当てる遊びで、幼い時からほぼ当たっていたそうだ。
「手の動きを見れば、だいたいわかるのよ」
 僕も近くに落ちていた小石を右手に握って見せると、見事に言い当てたのだ。
「じゃあ、これならどうだ?」
 ハムさんも加わり、シイさんに両手を出した。
「あ、これは両手に握っているわね」
 シイさんは簡単に言い当て、ハムさんは驚いて、両手に握っていた小石を零してしまった。
「本当に、何かあるんじゃないのか?」
 それを見ていたザシさんも驚き、シイさんを見つめた。
「残念だけど、私は人間よ。ただ、人の手足や顔の動きを見るのが得意だから、嘘をついていたりしたらすぐにわかるのよね」
 シイさんは舌を出しながら、誇っているのか困っているのか、よくわからない表情で言った。
「でも、だからこそこのまま流浪していたら、みんなの体力が持たないって分かったの。交易品も無く、食料も尽きていたのよ。けど、私たちは交流せずに暮らす方法を探っていた。それで、一つの島に目を付けたの。偶然、その島には池があって、私たちが暮らしていけそうな環境だった。それで、私はさらに巫女らしくなった。させられたの」
シイさんは悲しげな眼になり、顔を伏せた。
僕はシイさんの特技を見て、レイの観察する力を思い起こした。
 もし、レイがリウさんらから神様扱いを受け続けていたらどうなっていただろう。そんな漠然とした思いが、僕の頭の中に浮かんだ。
「色んな人が、いるんだな」
 僕は誰にも聞こえない様な声で呟いた時だった。海を見たシイさんが声を出した。
「あら、あれは何処の船かしら?」
 その声で僕たちも海を見たが、あれが船だとわかるには、相当時間がかかった。

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